くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「筆のみが知る」

2023-10-24 20:10:32 | 時代小説
近藤先生の時代もの、とっても好きなので、これ新シリーズですよね? 続刊ありますよね? 
病を理由に引きこもる料亭の娘、真阿。居候としてやってきた絵師の火狂と関わるうちに、怖いと思っていた夢の真相を知り……
どの話も切ないですが、「犬の絵」がつらかった……🐕‍🦺
漫画だったら、おそらくイケメンに描写されるであろう火狂。
四十過ぎでしかも相撲取りのような男なんです。でも、そこに安心感がある。
そして、相当に美少女であろう真阿の今後も気になります。

「木挽町のあだ討ち」

2023-10-01 15:49:57 | 時代小説
これ絶対面白い! 装丁読みです。
予感的中でした。

芝居小屋の裏手で行われた一幕もののような仇討。
時を経て、見事討ち取った若侍・菊之助の縁者を名乗る男が関係者に話を聞きにいく。
これが、隠された真実があることがどんどん明らかになっていくんですよ。

話者は意図的に語っているし、後半になるに従って芝居以上に芝居らしく演出されていることが分かるような構成・伏線が面白い。
そして、一人一人の経歴がとてもいい。人情をひしひしと感じさせます。
特に好きなのは、無口な久蔵(小道具作りの職人)とお内儀の与根の話「長屋の場」です

「おやごころ」

2023-09-30 09:46:30 | 時代小説
「まんまこと」シリーズも9冊目。
新妻の和歌と仲良く暮らす麻之助の、お気楽だけど奮闘する様子が描かれます。
もう何年にもわたって読んでいるので、私もすっかり髙橋家に馴染んだ気持ち。
江戸店でなくなった品物探し。夫婦の揉め事。こじれた縁談。
そして、待望の赤子が誕生。
前妻を産褥で失ったことから、非常に不安を感じていた麻之助。
私自身も、そのあたりには個人的に辛いことがあり、当時「ときぐすり」という言葉に慰めを感じたものでした。
失った日は、帰らない。
だけど、新たな希望は生まれる。
いつの間にか、あの日から十年経っていました……。

「三島屋変調百物語」

2023-09-24 09:05:55 | 時代小説
「よって件のごとし」

「三島屋変調百物語」が大好きなので、新刊楽しみにしてました。
宮部さんの死鬼もの!
異界に向けて救いの手を伸ばす人々、故郷を棄てざるを得ない人々の心が胸に迫ります。
賽子の話もよかった。しかし、この呪いなキツイ……
異種婚姻譚がこういう展開になるのもすごい。


「青瓜不動」

怪談というよりも、集団(藩など)の悲劇が語られることが多くなったきたなと考え、怪談は人々の「業」から生まれるものなのだと気づく。
とうに決着のついた物語であるはずなのに、それを聞くのは辛い。受け止めるには力がいる。そう思いました。
懐かしい人も登場する「青瓜不動」、桃源郷の終わりを描く「針雨の里」が好き。
「だんだん人形」は語られていくうちに物語の体裁が整えられていくと感じたし、「自在の筆」の悪魔のようなやり口(?)には創作者の葛藤を感じました。

ところで、182ページのルビ「おかぼ」は、隣の行の「陸稲」につくべきものではないのかと思うのですが…

「亥子ころころ」西條奈加

2020-06-29 21:00:49 | 時代小説
「まるまるの毬」の続編!
南星屋の治兵衛、お永、お君、石海たちにまた会えます。
今回もどれもおいしそう! 求肥で作った「竹の春」を食べたいー。
更に今回は渋い職人雲平が加入します。
武家で働いていた弟分の亥之吉から連絡が来なくなったことを心配して江戸に出てきたものの、行き倒れてしまったのです。
若い頃は諸国を旅してきた治兵衛にとって、雲平の技術は心引かれるものでした。
しかも、けがで思うように作業ができない治兵衛には渡りに船と、彼を雇うことにします。
なぜ亥之吉は姿を消したのか。
同時期にその雇い主が亡くなったことに、つながりはあるのか。
そんな謎と家族の機微、江戸の風俗が豊かに描かれていて、しみじみします。
続編ありますよね?

「黒武御神火御殿」宮部みゆき

2020-01-01 14:54:54 | 時代小説
あけましておめでとうございます

 「黒武御神火御殿」(毎日新聞出版)。「三島屋変調百物語」の六冊目です。
 聞き手を「小旦那」の富次郎に替えての幕が開きます。
 「泣きぼくろ」は、富次郎の幼なじみだった豆腐屋の一家に起きた惨劇。
 わたしも、あります。泣きぼくろ。複雑。
 次の「姑の墓」は、禁忌を破る悲劇が描かれています。なぜ、この家の女たちは花見に行けないのか。
 近づいてくる展開が想像できるだけに、不安が高まります。
 姑になるのは怖い気がします。
 「同行二人」は、病で妻子を失った飛脚についてくる幽霊。のっぺらぼうです。でも、嘆き悲しんでいるのは分かる。
 何故彼は泣くのか。雷で焼け落ちた茶店との関係はあるのか。
 そして、表題作「黒武御神火御殿」です。
 ご禁制の耶蘇教に関わるらしき半纏が持ち込まれ、大金を払ってでも聞いてほしいとやってきた札差しの息子。
 神隠しにあった女中とその男とは、見知らぬ屋敷に捕らわれていたことがあるというのです。
 重くて、怖い物語でした。彼らの背負う過去と、座敷で燃え続ける火山。逆恨みに近い執念。
 そこに捕らわれた六人のうち、助かって現世に帰れるのはたった一人。意地の悪い嫌がらせをしてくる屋敷と、陰に隠れているらしき甲冑姿の主人。
 恐ろしい家のモチーフ、宮部さんよく描かれますよね。「おそろし」も、そうだった。
 怖い中にも軽妙な短編を差し込むようにしている、と以前おっしゃってましたが、今回は今までと毛色が違う気がしました。
 やはり聞き手が変わったからか。おちかのところでは話さないような内容でしたね。

「ねんねこ書房謎解き帖」

2018-10-10 05:28:56 | 時代小説
 伽古屋圭市「ねんねこ書房謎解き帖 文豪の尋ね人」(実業之日本社文庫)を読みました。
 この「文豪」は永井荷風。馴染みのカフェーから姿を消した女給さんを探してほしいといいます。
 ねんねこ書房は、神田古本屋街から少し入った路地にある古書店。主の根来佐久路は文筆の傍ら「萬相談」も行っています。
 関東大震災で職を失った石嶺こよりは、なんとか雇い先を探そうとこの店にやって来ます。
 そこで目にしたのは、兄の相談にきた若い女性でした。彼女の話を聞いただけで、佐久路にはある程度は推理ができた様子。真相を知りたがるこよりに、芥川の「羅生門」を差し出した佐久路は、まず自分で考えるようにいうのでした。

 「羅生門」は、教育実習でやったなぁ。芥川が結末を変えたということも知っています。
 全体的に芥川のエピソードが多いですね。こよりもすっかり読書好きになっていきます。
 他には、涙香の「幽霊塔」、谷崎「秘密」、村井弦斎「食道楽」、そして、荷風の「ふらんす物語」。
 あらら、わたし、どれも読んでません。(近代文学を最も読んだのは学生時代かも)
 でも、こういう文学ものは好きですね。文豪エピソードものはものすごく好きなので、無駄な知識はやたらあります。

 評判の西洋料理店に怪異の噂が流れる話がおもしろかった。女主人が、「この地は呪われてなどいませんし、怨霊もいませんから」とはっきり言う理由が印象的でした。
 

「むすびつき」畠中恵

2018-08-31 05:44:23 | 時代小説
 「しゃばけ」最新刊。
 いつもは二ヶ月くらい待って借りることが多いのですが、今回は整備してすぐだったみたいで、新刊棚にありました。
 畠中恵「むすびつき」(新潮社)。
 今回は若旦那の前世を妖たちが気にかける話がメインですね。
 まずは金次と若長の話「昔会った人」、若旦那留守中に三人の死神が訪ねてくる「ひと月半」、鈴彦姫のピンチ「むすびつき」、鬼女もみじが三百年前の縁をたどってくる「くわれる」、輪廻転生がテーマの「こわいものなし」。
 わたしは「くわれる」がいちばんおもしろかったのですが、なんか中途半端な終わり方だったので、続きが気になってなりません。
 鬼女のもみじは、三百年前若旦那の前世だった坊主と言い交わしたものの、親が反対して別の男とめあわせようとしたため逃げてきたらしいのです。
 もみじと故郷を出てきたのが悪鬼の青刃。親はこの青刃との縁談をすすめたいらしいのです。
 ちょうど来ていた栄吉が、新作の団子と考案の元になった菓子屋について話しています。
 もみじはものすごい美人ですが、悪鬼なので人を食います。青刃も然り。栄吉と青刃が賭けをすることになり、場合によっては栄吉は食べられるかもしれません。若旦那が機転をきかせて引き分けになるように算段するものの、もみじと於りんが拐われる騒動があり……。
 この本で何冊めなんだろうとか、もう一度読み返したいけど順番を正確にはたどれないなーとか、いろいろ思いますが、キャラクタープレイもありつつ、今回もするっと読めました。
 栄吉が登場するといつも思うんですが、辛あられ食べてみたいわー。

「居酒屋ぜんや」

2018-07-01 09:34:05 | 時代小説
「ほかほか蕗ご飯」「ふんわり穴子天」「ころころ手鞠ずし」「さくさくかるめいら」の四冊を読みました。
 坂井希久子「居酒屋ぜんや」シリーズ(角川春樹事務所)。
 ずっと読みたくて、図書館で全部揃うのを待っていました。
 余り裕福とは言えない侍の家の次男林只次郎は、鶯のルリオを拾って育てたところから、その鳴き声を認められてかなりの収入が得られるようになりました。
 美声を聞かせることで他の鶯もその声を真似るのですね。
 知り合いから連れて来られた「ぜんや」で、女将のお妙に一目惚れし、鶯仲間の大店のご隠居を紹介しているうちにすっかり常連になります。
 しかし、お妙を探る何者かの存在に不穏な空気が……。

 お妙の夫の亡くなった事件、何やらきな臭いものがあるのでしょう。
 わたしは、お妙の義姉お勝さんと、只次郎の嫂の父柳井殿が好きです。
 ぜんやのお料理もいつもおいしそうで、わたしも空気のように店の末席でご飯を食べながら只次郎や皆さんのやり取りを見つめていたいわ、と思いました。
 とりあえず、冷奴にするときは豆腐を拭いてみます。
 
 実は昨年、途中からでも読んでみるかと「穴子天」を借りてきて、最初の「花の宴」だけ読んだのです。
 お妙が弁当を作って、ご隠居さんたちと花見にいく話。鯛茶漬けおいしそうだし、柳井殿の羽織のエピソードも印象的だったのですが、なんだか背景がうまくつかめなくてやめてしまったのですよね。
 今回、通しで読めてよかった。

「落ちぬ椿」知野みさき

2018-06-11 20:13:11 | 時代小説
 知野さんは海外でお仕事されているそうですね。
 それなのにこんな時代小説を描かれるとは。才能のある方だなーと思います。
 今回は「上絵師律の似面絵帖」(光文社文庫)を三冊続けて読みました。「落ちぬ椿」「舞う百日紅」「雪華燃ゆ」。
 両親を辻斬りに殺された律は、父の仕事の上絵師を継ぎますが、若い女の腕ではなかなか認められません。
 幼なじみの涼太とは思いを寄せ合う間でありながら、身分違いと諦めています。(お母さんの言動は、どう見ても律寄りなんですが)
 旧知の同心から頼まれて似面絵を描いたところ、よく似ていると評判になり、その後捜査に関わることになります。
 わたしにとって「上絵師」というと、泡坂妻夫さんのイメージですねー。泡坂さんは定紋上絵師なので、律のような絵は書かないと思いますが。
 なかなか認められずにいる律を支えてくれる人々は、涼太や妹の香をはじめ、暖かいです。
 ちょっと厳しい呉服屋の女将さんが印象的です。(図書館に返してしまったので、名前を覚えていません……)
 妹さん(上と同じ)と、雪永さん(こっちはなぜか覚えています)のその後を知りたい!
 弟の慶太郎が菓子屋に奉公するのですが、兄弟子の「吾郎さん」が気になります。
 この本の前に「深川二幸堂菓子ごよみ」も読んだので、どこかでつながるのかな? と思ってしまいました。