くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「そこにいるのに」似鳥鶏

2019-01-29 21:49:17 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 似鳥さんのホラーショート「そこにいるのに」(河出書房新社)。
 容赦のない設定が遺憾なく発揮されております。
 「怪を編む」のアンソロジーに収録されていた「イルカのシール」が「六年前の日記」として巻頭に入ります。
 イルカじゃなくて、キャラクターの「クママリ」のシールが貼られていることになっていますが、この「クママリ」が全編にちょこちょこ組み込まれていて、なんとなく不気味な感じを与えるのです。
 ぬいぐるみ、特別な新幹線車両、キーホルダー……。

 日常のふとした部分を逸脱する物語は、ほんの一歩違う道に踏み出してしまったことから最悪の末路をたどることになります。
 何気なく始めたエゴサーチで、自分としか思えない人物が最低の行動をしているのを目撃する。書き込みも白熱し、自分ではないと証明はできない。実際にその時間、その場所に同じ服装で自分はいた。どうすればいいのか……。
 さらに添付されたURLにアクセスすると、ひどい怪我を負う自分の姿が写し出されて……。
 「痛い」は、平凡な名をもつ吉田美咲を襲う恐怖。
 わたしが印象的だったのは、他に「写真」と「おまえを見ている」。
 似鳥テイストとしては少し薄い気もしますが、ホラーものとしての需要は高そうです。表紙を見た同僚から読みたいと言われました。じわじわと似鳥ファンを増やしたいと思っております。

「札幌いいね!」

2019-01-28 20:13:56 | 歴史・地理・伝記
 昔書いた日記を読み始めたらはまってしまって、あれこれと懐かしいです。
 わたしは結構な記録魔でして、いろんなことを日記に書いていました。
 今回、読み返したくなったのは、最後に観戦した教員大会。三島市の東レ体育館を会場に行われたものです。
 そしたら、開始時刻15分前に、北海道教員クラブの会場はここではないと気づき、駅まで走ってタクシー飛ばしてやっと間に合ったのでした。
 会場入ってすぐにOさんが目に入ってきて、感激したものです。四番。ライトでばしばし打ってました。ブロックも三本くらい止めていて、格好よかった。
 翌日も二試合見たようですが、結果とかは書いてなかった。まあ、でも満足しています。
 で、YouTubeでなんと当時の春高決勝戦が見られるのですね!! 藤沢商業対東海大四。17回大会なので、Oさん出ています。(この次の年に彼は網膜剥離で出場できなかったのです)
 やっぱり格好いいのですよー。当時の四高は左利き三枚そろえたコンビバレーが特徴で、この日は彼がよく決めていた。全部見るのもったいなくて、ちょこちょこ見ています。
 ここまで書いたら何も仮名にする必要ないですね……。札幌大谷の監督緒方さんです。

 で、荒井宏明「札幌いいね!」(TOブックス)。
 数年前に流行したご当地あるある本の一冊です。
 緒方さん、今札幌に住んでいるんだなあ、と思ったら借りてしまった。
 いや、直接は関係ないんですけど、わたしは都市の空気感が好きなんです。中学の修学旅行も札幌だったし。
 
 「三浦雄一郎さんもすごいが、父の故・敬三さんは超人レベル」! タイムリーな話題ですね。確かに確かに。
「『虹と雪のバラード』がかかると、会話をやめて聴き入る」。わたし歌えますよ!(妹が音楽で習ってきた)
 「受験生は担任から雪まつり禁止令が出る」。インフルエンザ流行期だからだそうです。

 「実は『なまら』はほとんど使わない」。「意味すら使わない若者も出てきた」とあり、18回春高で優勝したとき、二年生の何人かが「なんまら嬉しい!」とバレー雑誌のインタビューに答えていたことを思い出しました。
 言葉の面ではわたしの住む東北と共通している部分も多いですね。
「『いずい』の標準語に相当するものが思い浮かばない」。わかるわかる!
「『あめる』『ねっぱる』を使えてこそ北国育ち」。使いますー。ただ、「ねっぱる」は岩手では使わないみたいです。「『動詞+さる、さらない』を会話に混ぜる。例:このペン書かさらない」は岩手では普通。宮城と数キロしか違わないのに。
「本州からの転校生は放課後の『したっけ』で返答に詰まる」「『バイバイ』の意味もあるのよ」と書いてありました。本文には「『そうしたら』という接続詞としても使われる」とあります。
 昔、南由紀夫さんが対談で使ってたよ「したっけ」!
 由紀夫さん、今盛岡誠桜で指導されているとのことなので、岩手の図書館で地元スポーツ雑誌「standard」のバックナンバー見てきました。名前しかなかったけど、満足です。月刊バレーの春高特集も見てきました。緒方さんの指導歴「24年」にしみじみ……。
 
 「元スキーモーグルの里谷多英。ふたつ目のメダルも感激だった」には、ちょっと複雑な思いが……。
 里谷さんの四高時代の担任は、バレー部監督の桜田先生なのですが、今回いろいろ検索していたらお亡くなりになったと知って……。

 今回余計なことばかり書いていてごめんなさい。実家から雑誌持ってこようと思ったら、本棚ふたつ分ごっそり捨てられていて大ショックでした。

「徹底マネジメント」植田辰哉

2019-01-24 19:10:02 | 芸術・芸能・スポーツ
 三十年前、わたしは相当熱烈なバレーボールファンでした。
 守備範囲は大学。同じ年に個性的な選手がたくさんいて、どこのチームもおもしろかった。
 実際に視聴したことはないのですが、一人対九十九人の対戦クイズバトル、自分の得意分野で勝負できるのですよね。「三十年前の東日本インカレ」みたいなネタならできるかも、と妄想するくらい詳しかったのです。

 でも、ラリーポイント制になって以来まったく見ていません。最後に見たのは三島に教員大会を見に行ったときかな……。
 わたしは高校時代に全国優勝したチームのメンバーだったOさんが見たくて、その前の年に会津国体に行ったものの、時間がなくて開会式しか見られなかったのでした。あれからもう何年も経つのに、後悔は消えないものですね。仕事休んで次の日も見れば良かった。
 今年、Oさんは中学校の教員を退職して、私立校の監督に就任され、わたしも久しぶりに写真を見ることができました。(教え子が参加した選抜大会のプログラムで、十年前には一度見ています)
 ……三十年の間にずいぶん貫禄がついていて、かなり衝撃的でしたが、それでもブックマークつけてしまいましたっ……! 

 この間にバレー界がどうなっているのか、十年前に買って本棚のはじっこに置いていた「徹底マネジメント」(総合法令出版)を読んでみることにしました。
 筆者は、北京五輪代表監督植田辰哉さん。わたしは中学時代から新日鐵ファンだったので、かなり小躍りして買った記憶があります。
 しかし、なぜかさっぱり読めなかった。その後に出た真鍋さんの本はすぐ読んだのに。
 後半は結構おもしろいんです。商大の上野先生から「棚からぼた餅という選手はお前だけや」「長い監督生活の中で、こんなことは最初で最後や」と言われたエピソードが好きです。
 実は植田さん、四国から一般入試で大商大附に入ったのだそうです。頭角を表し、キャプテンとして活躍し、全日本にも選ばれた。
 マネジメントというタイトルだから、PDCAサイクルとかワークライフバランスとかデータ推移とかいろいろ言っているんですが、バルセロナオリンピックのときキャプテンとして心がけていたこととか、大古さんとのあれこれの方がずっとおもしろい。
 この十年、何度かトライしたのに、読みきれなかったのは、前半の語り口が偉そうだからではないかと思ったり。

 現在全日本男子監督は中垣内。賛否両論あるようですね。でも、次の監督候補って誰がいるのか?
 わたしの同世代の方々は、現在ほとんど高校の指導者です。Vリーグ監督って、荻野と秋山くらい?
 
 現在のバレー界ほとんどわからないのですが、全日本候補の一人JTの小野寺選手には注目しています。それは、お父さんを中学時代から応援していたから。
 大竹や鍋谷さんの娘さんも全日本で活躍していましたね。もうそういう時代なんだな、と不思議な気がします。

 ファイルを探してみたら、大学卒業の記事をとってありました。懐かしいなぁ。Oさんはやっぱり格好いい。成田さんの結婚式のコピーもとっておくべきだったよ……!

「イメコン」遠藤彩見

2019-01-23 21:20:28 | 文芸・エンターテイメント
 「イメコン」とは、イメージコンサルタント。南青山にオフィスを構え、世界的に活躍する一色一磨と知り合った高校生 直央は、市長がにわかに精悍なイメージになったことに驚きます。
 一色が、彼に合う服装をプロデュースするようになったからなのです。
 彼との交流で、直央自身も今まで見えなかった自分の姿に気づいていきます。
 遠藤彩見「イメコン」(創元推理文庫)。
 遠藤さんといえば、食に関する話が多いように思いますが、今回はちょっと違いました。
 高校ではこれまでの自分ではない新しいキャラクターで、友人に囲まれたいと考えた直央ですが、うまくいかなくて不登校中です。(わたしの読む本、結構な高確率で不登校の人物が出てきますね……)
 直央から見れば、一色はかなりのステイタスを持つ男性。しかし、ふと孤独を感じさせる表情を見せることもあります。
 一色と出会うことで、直央の考え方や生活が変わっていく。その姿がおもしろいと思いました。

「昨日がなければ明日もない」

2019-01-21 21:41:19 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 寒気、止まりません。
 帰ってきて結末を読み終わって30分は経つのに、寒くて寒くてこたつから動けない。風邪がぶり返したのではない、と思います。
 宮部みゆき「昨日がなければ明日もない」(文藝春秋)。杉村三郎シリーズの五作目です。

 今回は、「性」についてのテーマが感じられました。誰もが同じバランスで受け止めるのではない、と。
 「絶対零度」「華燭」「昨日がなければ明日もない」の三作収録。時期は2011年から翌年にかけて。(杉村は自分と同年代かな、と感じました)
 表題作品は最終話ですが、今回のメインは「絶対零度」だと思いました。

 杉村を訪ねてきた主婦は、娘の優美が自殺未遂で入院しており、婿から会わせることはできないと言われていると相談します。
 今まで何事も自分に打ち明けてくれた娘が、全く音信不通になるのはおかしい。入院しているらしいクリニックを訪ねても門前払いで、どうしたらいいのかわからない。
 杉村が調査を続けるうち、娘婿の佐々には逆らいがたい先輩がいることを突き止めます。彼らはホッケーチームを作っており、グラウンドやメンバー確保に手を焼いている。ホームページでは練習に積極的でない田巻という男に制裁を叫んでいます。
 田巻の情報を探るうち、妻が転落死し本人は行方不明であることがわかります。

 ものすごく、辛い真相です。
 何が嫌かって、優美が自殺未遂を起こしたのは佐々の「浮気」のためだというのが、あとになって分かることです。
 田巻夫妻の幸せを壊すきっかけを作ったのは、間違いなく優美なのに、事件のあと事情聴取まで転落の事情を知らなかったのです。佐々が先輩たちと一緒にそこまでの行動をしたことにショックを受けたように感じました。
 二十四歳という年齢。彼の失ったものの大きさに、ため息が出てきます。
 依頼は必ずしも「善」とは限らない。そう感じさせられる三篇でした。鮮やかに真相が反転し、語り手の前に「犯人」が現れる。なんとなく「火車」を思い出しました。
 そして、伴侶としての愛と信頼を裏切られたことが、どれだけ彼には辛いことだったのか、ということが痛いほど伝わってきたのです。

「花咲舞が黙ってない」池井戸潤

2019-01-16 05:46:24 | 文芸・エンターテイメント
 風邪引いて半分寝込んでました。インフルエンザではないので、家事ができるくらいには動けます。
 「杏さんフェア」の様相を帯びてきました。池井戸潤「不祥事」(実業之日本社ノベルズ)、「花咲舞が黙ってない」(文春文庫)。
 シリーズなのに出版社違うのですね。しかも、講談社からも文庫が出ているとか。
 杏さんは、舞が上司の足を蹴とばすシーンに衝撃を受けていましたが、それほど違和感はなかったです。

 東京第一銀行臨店指導を行う相馬は、女性の部下をつけると聞いて喜んだものの、それがかつての同僚花咲舞だと知って愕然とします。 
 舞は正義感が強く、目上の相手でも主張を通す跳ねっ返りで、ついたあだ名は「狂咲」。二人きりの臨店指導グループは、果たしてどうなるのか?
 大手デパート伊丹百貨店の息子であることをかさにきた若手行員にいらいらしますが、これがラストではすっきり解決します。
 池井戸さんはエンターテイメントに徹した作家さんだなと思いました。(ノベルズ版にはあとがきが入っています)

 バブル崩壊時期の銀行ものなので、携帯とかは出てきません。二冊目では合併を前提とした駆け引きなども描かれ、ここには半沢直樹まで登場します。 
 新聞連載だったそうなので、読んでいる人は毎日にやにやしてしまったのではないかと予想しました。
 別府温泉レベルアップ計画や、上司の芝崎さん行き付けの店などのお料理も美味しそうです。お寿司屋さんでは、亡くなった娘さんが遺した貯金通帳の謎を解きます。
 好きなのは「三番窓口」ですね。窓口での振り込みをモチーフにしており、ある計画を阻止できるかどうか手に汗を握る展開です。舞のテラーとしての実力の高さが素晴らしい。
 隠蔽に気づいたりもみ消そうとする上層部に苛立ったり、舞のストレートな物言いにはスカッとしますね。
 あと、できない行員の目を覚まさせるような行動がやっぱり好き。
 次は半沢直樹ですかね?

「ハブテトル ハブテトラン」中島京子

2019-01-15 21:00:57 | YA・児童書
 広島が舞台の小説を探したときに、雑誌で見つけました。中島京子「ハブテトル ハブテトラン」(ポプラ文庫)。 
 どうも舞台は広島市内ではないようでしたが、まあ探して読んでみようと思ったわけです。
 しかし、みつからない……。
 仙台駅前の書店三軒、地元でも探したのですが、もともとポプラ文庫のスペースが少ないのがいけないのか……。でも、あの中島京子作品ですよ?
 広島二日目、ジュンク堂でなんとか発見。無事入手しました。(その後、一応図書館などでも探してみましたが、やはりみつからないです)

 ハブテトルとは、備後弁で「拗ねている」というような意味。 
 小学五年生の大輔は、母の実家である広島県松永にやってきます。二学期の間だけ、そこの小学校に通うことにしたのです。
 彼は学級委員であることから周囲にあれこれ言われて、なんだかクラスの雰囲気はよろしくないしいじめみたいな様相を呈しているし、学校に行きたくなくなったのですね。
 ところが、広島空港で降りたら、迎えに来てくれるはずの祖父母の姿がない。
 おじいちゃん、出がけに骨折してしまったのです。それで、おばあちゃんが幼なじみのハセガワさんに行ってもらうことにしたと連絡されます。
 ハセガワさんは顔に傷があるおじいさんで、レトロなブルーバードに乗っています。どうやら二回も「別荘」に行って、その間に奥さんは亡くなったらしい。ハセガワさんはお好み焼き屋さんに連れて行ってくれ、その夜は泊めてくれます。
 新しい小学校では友達もでき、どうやら彼を好きな女の子も現れます。しかし、しまなみ海道の向こうには今治があると知ってから、とても落ち着いてはいられなくなります。
 今治には、サノタマミがいる、のです。
 一緒に学級委員をやっていて、クラスが乱れ始めたときに急に金髪になって登校し、間もなく転校していったサノタマミが……。
 ハセガワさんに頼んで今治に行く計画を立てたものの、車はゆっくりしか進まず、ハセガワさんは注意してきた後続の運転手を叱り飛ばします。しかし、橋の途中で車が動かなくなり、自転車で一人今治を目指すことに。
 このあたりの描写が爽やかで、自転車で何時間も走る大変さもあるんですが、主人公がぐんと成長していく感じがすごくいいと思いました。 
 ホテルで七割方読んでしまい、残りは帰ってきてから読んだのですが、物語に自然に溶け込める感じがしました。
 中島さんの本を数冊、図書館から借りてきました。この淡々とした味わいが素敵です。思えばわたし、「エ/ン/ジ/ン」くらいしか読んでないんですよね。エリアが増えた感じがして嬉しいです。

「菜々子さんの戯曲」

2019-01-11 21:18:30 | YA・児童書
 山本弘「ビブリオバトル部」シリーズで最も読んでみたい本、それが本書でした。
 高木敦史「菜々子さんの戯曲 Nの悲劇と縛られた僕」(角川スニーカー文庫)。昨年、古本屋で発見して続編とともに買ったものです。
 買ったものの、例によって車に積んだまま。先日整理していて見つけたものの、書庫に入れてしまい、なかなか読まずにいました。
 でも、この「冬ごもり」の間に読んでみようと思ったのです。
 結果からいうと、わたしはどうやら山本さんとは趣味が合わないのではないか? という結論に達しました。
 二冊で確か百五十円だったのでそれほど憤ってはいないのですが、登場人物(悪役)たちが小学生なのに……そんなことするのか? と気持ち悪くなりました。
 しかも、ですね。彼らが不良化したのは六年生。前年の五年生、主人公たちが過ごしている時間軸の中学三年、このあいだを行ったり来たりして話が進むのですが、五年生のときは厄介だなと思いながらも普通に友達として接しているのですよ。
 五年生で球技大会をサボり植物園で立ち入りを禁じられる場所に入り、六年生では主人公がいじめられて不登校になり原因はNにあると証言。他多数の児童には特におとがめなし。
 とある事故のためにNは亡くなり主人公は昏睡状態、菜々子さんは自分の本名を呼ばれると発作を起こすようになります。
 そう、「菜々子」は本名ではないのです。事故のときのことがフラッシュバックするため、仮に名をつけて呼ばれているのです。いわく、「名無しの菜々子さん」。
 そして、彼女は入院中の主人公のもとに通い、学校生活の諸々を話続けるのでした。

 冒頭で呼びかけた教師の話題が出てきます。勤続二十年を超える「ベテラン」だそうですが、生徒たちからは敬遠されており、菜々子さんから話を聞いているだけの主人公が、「人前に立つ仕事を選んだ大昔の自分を殴りに行ってやれたらいいのにね」と言っております。さらに、「老教師」という表現も。
 四十代で「老教師」? 
 彼の風貌からそこはおいておくとしても、「ベテラン」(長年の経験を持つその道の熟練者)という言葉とこのような描写は両立しない気がするのです。
 また、菜々子さんの価値観でしか知らない主人公が、その人を評価をするのはどうなのか? もし、本当に自分の選択に適性を感じていないなら転職でもするでしょうよ。
 まあ、全体的に教員には批判的な書かれ方をしています。

 また、「N」という呼び名も不思議な気がします。他の登場人物は「瀬戸」とか「高杉」とか名前がついているのに。
 やっぱりこれも「名無し」?
 

「ビストロ三軒亭の謎めく晩餐」

2019-01-10 05:50:41 | 文芸・エンターテイメント
 書店で「ラストは……泣けます! 美味しい癒しの日常ミステリー」という帯を見て買いました。
 斎藤千輪「ビストロ三軒亭の謎めく晩餐」(角川文庫)です。
 舞台役者として活動していた隆一は劇団の解散に伴い休職中、。そんなとき、姉の京子から食事に誘われます。
 三軒亭は、シェフの伊勢がその人だけのオーダーメニューを作ってくれるレストラン。テーブルにはギャルソンがつき、来店者をもてなします。
 フランス人ギャルソンが一時帰国する代替にとアルバイトをすることにした隆一ですが、先輩方との実力の差を感じます。
 その日、手作りケーキが入っているらしい箱を持ち込んだ女性は、なんだか行動がちぐはぐで……。

 すみません、わたし、隆一に共感できませんでした……。
 アルバイトをはじめてそこそこなのに、お客さんのために「ここ、犬もは入れるレストランにしましょうよ!」と口走るし、目標としていた俳優の仕事のためにレベルアップしようと始めたレッスンの講師と合わずにやめるし。
 以前の劇団の主宰をけなされて、ペットボトルの水を思い切り講師にかけたのです。
 このあたりですっきりする人、いるのでしょうか? ちょっとどうなのかと思うのですが。

 お料理は美味しそうです。
 ただ、オーダーメイドレストランでなくとも成立する話のようにも思います。
 大体、中にはあらかじめ作っておかなければ提供できないような料理もありますよね。
 まず一話の「季節野菜の饗宴テリーヌ」ですが、「色とりどりの野菜をゼリーでテリーヌ状にした料理」とあります。黒トリュフやユリ根などをコンソメスープでテリーヌにしてあるそうです。これは、事前に作っておくのが普通ではないかと……。スープを冷ますだけでも数十分かかるのでは。
 予約するときに食べたいものを伝えておくパターンもあるでしょうが、このお客さんは飛び込みです。

 三人の大食漢女性の話「ラクレット」は結構好きです。
 このとき髪を銀に染めるギャルソンの正輝とか、いかつくてオネェ口調のソムリエ室田さんとか、キャラクターもいいと思うんですけどねぇ。
 ラスト?
 すれっからしのわたしには泣けませんでした。すみません。
 

「秘島図鑑」清水浩史

2019-01-09 05:51:04 | 歴史・地理・伝記
 杏さんおすすめ「秘島図鑑」(河出書房新社)、図書館で見つけました。
 日本には、大小様々な島があり(本州も島ですもんね)、中には無人島も数多くあります。
 わたしは「鉄腕ダッシュ」が好きで毎回見ていますが、ダッシュ島のように、かつて人が住んでいたことがある無人島もあれば、これまでほとんど足を踏み入れたことがないよかいな島もあります。
 この本で取り上げられているのは、「日本人が行けない日本の島」。

 例えばラサ島(沖大東島)は、リン鉱石の採掘のために政府からラサ工業に譲渡。その後戦争の激化で民間人が引き上げ、在日米軍が射爆撃場に使用しているそうです。
 その他にも、南硫黄島、西ノ島、北方四島、沖ノ島といった島々が紹介されています。

 わたしが「島」と聞いて思い浮かべるのは「鳥島」です。アホウドリの研究のため長谷川博さんが逗留して、過酷な生活の中繁殖に人力された島です。現在は聟島に拠点を移そうというプロジェクトがすすんでいるわけですが、やはり一度減った生物を通常数に戻すのは難しいと思います。
 この島だけでなく、アホウドリの乱獲が行われた南鳥島や、炭鉱の採掘の衰退によって島民が去ったのち岩礁が沈下してしまった横島、38年間地図上に記録されてはいたものの実際には存在していない中ノ鳥島といったところが気になります。
 杏さんが話していた、「史上初の登頂成功」を目指した登山隊が、頂上で錆びたハーケンを見つけたエピソードも読めて良かった。