くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「洗脳」Toshl

2015-01-15 03:07:05 | 芸術・芸能・スポーツ
 洗脳に興味があるのです。
 なんていうと、誤解されそうですが、カルトに振り回される人々の行動とか、マインドコントロールから覚めたときの状況とかが気になります。
 Toshl「洗脳 地獄の12年からの生還」(講談社)。
 だから、この本もすごく読みたかったんですが、ずっと貸し出し中。
 この本の読者層は、どの要素に引かれているのでしょうね。わたしのように洗脳に興味があるという理由はそれほど多くはないでしょう。もともと筆者のファンだったという人がメインですか?

 X JAPAN というと、どんなイメージを思い浮かべるでしょう。わたしは「rain」という曲と、「豹変したヴォーカル」かな。
 ビジュアル系バンドの草分けでありながら、セミナーに傾倒したメンバーがいて解散、という印象が強いですね。
 数年前、藤野美奈子のまんがに観客としてライブを見たことが書いてありました。服装も全く変わって、トークも宗教的になっていたとか。
 で、その傾倒したメンバーTOSHI(本文が改名前の表記になっているため、同様にしておきます)が、教祖MASAYAにどのようなことをされたのかを書いたのがこの本なんです。
 TOSHIは、舞台の共演で知り合った守谷という女優と結婚します。守谷がMASAYAのセミナーのことを聞きつけて、自分も参加したいと誘う。彼女の巧みな誘導により、TOSHIはX Japanから脱退。繰り返される罵倒と暴力によって、考える力を奪われていきます。
 単独でストアライブ(MASAYAの曲を歌う)を行い、売り上げは全て守谷や世話役の女性に渡す。TOSHI自身には何も残らず、生活のために消費者金融をまわったりX時代の衣装を売ったり。
 MASAYAたちはホームオブハートという団体を運営しているのですが、自宅や本部はからにゴージャスでプールまである。外車も何台も。それでも足りないと責め立てるのだそうです。

 この守谷という女性、いろいろと傷心しているTOSHIを慰めて妻になるのですが、結婚して数ヶ月でホームオブハートの本部に行ったまま戻らなくなります。のちに被害者の方と話していて、誘い方があまりにも自分とよく似ているため、「仕組まれていたのでは」と考える場面もあります。
 でもね、TOSHIさん純情すぎる……。守谷から「五七五の俳句調のメッセージを書いた百枚を超える短冊をプレゼント」されて、涙が止まらなくなったというんですよ! 
「死ぬときは 手と手をつなぎ 逝きましょう」
 …………。
 まじですかっ?
 
 さらに、MASAYAに出会った当時は、彼が洟をすするのと痰を吐くのが気になって仕方なかったようなのに、後半には全くそういうシーンがなくなっています。
 癖なんてそう簡単には治りませんよね。その行動も、見えなくなっていたのではないでしょうか。

 ことあるごとに守谷や幹部たちから殴られ蹴られ、次第にぬけがらのようになるTOSHIのもとに、X Japanを再結成しないかという話が舞い込みます。
 TOSHIとYOSHIKIは幼なじみで、二人の間にはやはり余人が踏み込めない領域があるように思いました。
 YOSHIKIはロサンゼルスに住んでいるので、TOSHIがそちらを訪ねることもあり、またバンドについてMASAYAからの説明にしても矛盾を感じるようになり、逃亡を決意。
 ある人からの助けを受けて、潜伏先を用意してもらいます。この家のご主人の人格に触れることで、彼は改めて目を覚まします。
 
 宗教にしてもそうですが、女性がのめり込んでしまうとそのパートナーまでが引きずられてしまうことが多いのではないでしょうか。
 TOSHI自身、なんだかおかしいと思う場面はずいぶんあったようです。もちろん、洗脳から覚めてからの発言なので、そのときとはまた違った見解も入っているとは思いますが。
 ところで、この本部、那須にあったそうです。テディベアミュージアムの近くだって。うーん、何度か足を運んだものですが、よく覚えてないです。