くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「野菜の教科書」

2017-05-30 22:40:52 | 産業
 調べ学習のために食物の本を用意しようと思ったら、本校図書室十五冊くらいしかないのです。
 まだ先のことなので、徐々に集めるつもりですが、テーマはそのとき生徒たちが決めるので予測がつきません。
 とりあえず、「毎日使える! 野菜の教科書」(宝島社)を買ってみました。監修は管理栄養士の川端理香さんとのこと。
 野菜の豆知識や保存法、名前の由来とか選び方などが書かれています。
 今、テレビで「さやえんどう」と「絹さや」の違いがあるのかというCMをしていたのでさっそくページを開いてみました。
 「絹さやの由来は絹が出す音と似ているから」ですって。(さや同士がこすれあう音が絹の音に似ているらしい)
 さらには「板ざや」という品種もあるそう。
 なすは、ヘタを焼いてはると口内炎にきくそうですよ。
 また、ハムスターにアボカドは食べさせてはいけないとか、しいたけの学名は「エドダス」だとか、トリビアルな内容になっております。
 わたしなら、伝統食についてどういうテーマを設定して調べるかなー、と考えるのもおもしろいです。

「しつけ屋美月の事件手帖」相戸結衣

2017-05-30 07:23:42 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 似鳥さんの動物園シリーズを読むと、さらに動物ものを読みたくなってしまう。
 相戸結衣「しつけ屋美月の事件手帖」(マイナビ文庫)。古川の本屋さんで平積みしていて気になっていました。
 というのも、相戸さんが自作のポップをつけているのですが、そこに「実家は栗原市」と書いてあるから。(現在は富谷在住)
 郷土関連の本へのアンテナは高くしないと!
 で、購入したところ、自作ペーパーが封入してあって。イラストもお上手ですね。

 美月は、犬の訓練士として働いています。もともとは災害救助犬の訓練を行っていたのですが、両親を失い、現在は愛犬のスピカと暮らしています。
 幼なじみの獣医師糸川や、雇い主の須寺、店にやってくる犬たちとその飼い主らと繰り広げられる日々が描かれます。
 太りすぎのラブラドール。眼鏡屋の庭で迷子になったチワワ。小学生の女の子たちをめぐるトラブルなど、犬にからむ事件が次々におこります。
 我が家の愛犬は、しつけがなかなか行き届かず何かヒントになることもないかなあーと甘い期待をしていたのですが、都市部ではスクールに定期的に犬を通わせるものなんですね!
 最近駅ができたとか、ステンドグラス前で待ち合わせとか、場所のモデルは仙台かと思われます。東西線沿線でしょうか。
 女の子たちと犬嫌いの母親のかかわりや、最終的には変化する糸川との間柄なども、読み応えありました。

「読書狂の冒険は終わらない!」三上延・倉田英之

2017-05-29 20:19:51 | 書評・ブックガイド
 3月末、練習試合の帰りに図書館で借りた一冊が、どこを探しても見つからなくて、紛失届を出して現品で返すことにしたのです。
 でも、本屋さんで売ってなくてねぇ。
 何件か回ったところで、ふと入った古本屋さんで見つけました。
 三上延・倉田英之「読書狂(ビブリオマニア)の冒険は終わらない!」(集英社新書)。
 一気に読みました。おもしろかった。
 お二人とも同年代。わたしも、読書体験が結構似ているので、そばで話を聞いているようで楽しかったのです。
 横溝とか乱歩、「Palm」も懐かしい。もちろん、読んでいない本もたくさんありますよ。でも、友達から聞いたことがあったり、知識としては知っていたりする。「グイン・サーガ」は友人が読んでいたなあ。
 わたしはモダンホラーは読みませんが、キングにはまった友人ならいました。
 喜国さんの本棚探偵シリーズや、新井素子に氷室冴子も懐かしい。
 珍本として「生者と死者」が紹介されていました。ちょうど見たテレビで又吉さんもこれを取り上げていました。「消える短編小説」について。
 わたしとしては、「しあわせの書」が好きなのですが、あれは説明するとネタバレになってしまうからねぇ。

 本はとってもおもしろかったので、自分でもほしいなあ。
 

「四〇一二号室」真梨幸子

2017-05-24 19:48:10 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 久しぶりに手にとった真梨幸子。「四〇一二号室」(幻冬舎)。
 著者プロフィールの出身校が多摩美大の「映画化」になっていたのは、誤植ですよね……。
 所沢のタワーマンション最上階に暮らすベストセラー作家三芳珠美が転落事故。その日、自衛隊の航空機が墜落して電線を切り、大規模な停電がおきました。
 彼女をライバル視していた根岸桜子は、編集者西岡によってその後釜に据えられるのです。
 珠美の考えていたプロットをモチーフに、所沢でおきた事件と遊廓の闇を描くことになった桜子は、阿部貞がかつて偽名に使った名「田中加代」を名乗る女や、古本屋のオーナーに会い、珠美が何を描こうとしていたのか疑念を感じながら執筆を続けます。
 古本屋で売られる「田中家のアルバム」や、病棟で植物状態にある女性の独白、桜子の葛藤や編集者たちの確執。加代が珠美に売りつけようとした写真にはどんな意味があるのか。

 途中、昏睡状態で入院中の女性は珠美ではないと予測はつくのですが、(以下、ネタバレ)…… マンションのオーナーとして冒頭に登場した祥子だとは。しかも、彼女が西岡の妻だとは。なぜ珠美がこのマンションに住んでいるのかという謎はありましたが、彼の策略だったのですね。
 しかも、不動産屋社員がその娘だったのには驚きました。
 自分の意志を伝えられない祥子の見舞いに来て、ただ一人彼女に信頼感を与える人。マンションをすすめるような話をしながら、巧妙に諦めさせるように促している。
 祥子が嫌がっていた看護師たちを殺害したのは、彼女だということですよね。どうしてその思念を読み取れるのか? 祥子のモノローグと思われるのは、娘の思い込みだってこと?
 ラストで、これまでのもつれた糸がつながるのは爽快なのですが、なんだかこじつけたような感じが拭いきれませんでした。 
 

「鴨川食堂いつもの」「おまかせ」

2017-05-23 05:23:13 | 文芸・エンターテイメント
 某書店に行ったとき、何か一冊買わなくてはという状況があり、そのときに選んだのが柏井壽「鴨川食堂」(小学館文庫)。しかも二冊。
 「いつもの」は、蕎麦、カレー、焼きそば、餃子、オムライス、コロッケ。
 印象に残ったのは「オムライス」です。香味野菜好きな男性が、友人の家庭教師を引き受けたとき、そのお母さんが作ってくれたもの。
 ところが、友人は受かり、彼自身は不合格に。以来彼に勝つことなく苦しい思いをしているというのです。
 親友がライバルになり、張り合う気持ちを抑えきれずにいる彼が食べたいと思うオムライスの隠し味とは?
 また、「焼きそば」は石巻焼きそばがモチーフになっていて、親しみを感じました。

 「おまかせ」は、味噌汁、おにぎり、生姜焼き、冷やし中華、唐揚げ、グラタン。
 「おにぎり」の恋人同士の別れ、切なかった。
 自分で食べたいのは「冷やし中華」ですね。鶏飯風、おいしそうです。
 今回は結構エキセントリックな人とか、自分の言いたいことをまくしたてるような依頼人もいて、びっくりしました。こいしが不愉快になる場面もありました。
 それぞれの思い出は食で蘇る。
 さて、わたしにはそういうこだわりの味はあるのか? 基本、なんでもおいしく食べるので、もう一度食べて同じ味かどうかわからないかも。
 あっ、アルバイトをしていた中華料理屋さんのトマトそば(ラーメン)を食べたい!

「幹事のアッコちゃん」柚木麻子

2017-05-22 20:18:31 | 文芸・エンターテイメント
 夫が買った「野武士のグルメ」を読んだら、猛烈にパンケーキが食べたくなってスーパーで買ってみました。「厚盛りパンケーキ 湘南ゴールド」おいしかった。半分でやめるつもりだったのに、全部食べてしまったくらいです。
 アッコちゃんのシリーズを読むと、なんだかあれもこれも食べてみたくなるのですよね。スムージーもポトフも。今回は鍋ごと届けられて、毎日味噌やトマトソースを加えてちょっとずつ味を変えていき、五日目はカレースープにするのがおいしそうです。
 それから、秘伝のソースを使った焼きそば。
 「幹事のアッコちゃん」(双葉社)。シリーズ三冊目です。
 三智子の後輩社員に幹事の極意を伝える表題作は、幹事自身が楽しむことが大切だといいます。五日間連続の忘年会。中にはおとなしい人だけが集まる会なんていうのもあります。
 また、アッコさんを真似するくらい好きなのに、どれもこれもうまくいかず逆恨みする女性も登場します。
 ここに出てくる梅干しも、おいしそうだなあー。
 これまでは四編のうち二編がアッコさんの物語で、残りは少し遠い感じがしたのですが、今回はあとの二編も三智子の物語です。
 再びアッコさんに誘われて、習い事に付き合ったり、焼きそばの屋台を手伝ったりします。
 五日間って、アッコさんの考えには必要なものなんだなと思いました。

「この母にして」斎藤輝子・北杜夫

2017-05-20 19:56:53 | エッセイ・ルポルタージュ
 この本のジャンルは、どこに分類するべきなんでしょう?
 母子対談であることや、中心になるのが茂吉の話題なのだから「詩歌」とも思ったのですが、ふたりの話題に歌が頻繁に出てくるわけでもないし。
 輝子さんも北杜夫も鬼籍に入り、最早「伝記」レベルかもしれないと思ったり。
 購入したのは、茂吉ブーム真っ只中の二年前ですが、情報が多すぎて少し距離を置いていたのです。
 今年は短歌の授業があったのですが、あれほど熱中した茂吉のエピソードで生徒に提示できるものが少ない。
 結局、義父の紀一から「しげよし」と勝手に改名させられそうになった話題にしたのです。(実際病院ではそう呼ぶように通達したそうですし)
 そしたら、調べ学習に使った本に「本名は茂吉(しげよし)」と書いてあった!
 このことについて、北さんはこの本で「紀一お祖父さまは、茂吉のことを『シゲヨシ』ってわざと、そう呼ばせていたんでしょう?」と。
 輝子さんはそれを受けて「そうね、そのほうが病院の後継ぎとしておさまるからかしらね。その伝でいうとあなたは『ムネヨシ』……(笑)」
 北さんの本名は宗吉です。平岡百穂が名付けたそう。
 家族として語るゆえのエピソードがおもしろかった。
 輝子さんは茂吉が養子になると決まったとき8ヶ月。その後弟が二人も生まれています。西洋さんと米国さん。紀一がヨーロッパとアメリカに出かけていたときに生まれたから。お二人とも、戦中は肩身が狭かったようです。
 戦時中のことも詳しく話されていますよ。山形に疎開したときのことや、茂太さんが買った家がものすごかったこと、病院が焼けてしまって北さんは寮から帰省できなかった、とか。
 由香さんのことも書かれていました。犬のことも。
古本屋で掘り出し物として買ったのです。思い立って県内の図書館蔵書検索してみたら三館しか持っていなかった。1980年、文藝春秋発行、値段八百円でした。

「キッチン・ブルー」遠藤彩見

2017-05-19 05:24:22 | 文芸・エンターテイメント
 某古本屋(わたしと読書傾向が似ている人がいるのでは疑惑のある店)で購入した本。遠藤彩見「キッチン・ブルー」(新潮社)。
 遠藤さんの本は「冷蔵庫探偵」から「給食のおにいさん」までほぼ持っているわたし。
 食に関わる短編が六つ収録されています。
 誰かに見られることに怯えて、一人でしか食事ができない灯。外食を避けるために自宅でできる仕事を選び、現在は翻訳をしています。今回は化学に関する専門用語が多いため、監修してくれる人を紹介されました。
 彼のおおらかさに惹かれて、少しずつ関わりをもちはじめた灯でしたが……。
 うまくかみ合ったふたりの姿にほっとしました。(「食えない女」)
 また、「味気ない人生」も印象的です。
 階下の住人の騒音に悩まされる希穂。真夜中の歌声、夫婦げんか、ベランダの煙草。ストレスで味覚障碍を起こします。何を食べてもおいしくない。つらい思いを抱えた彼女が巡り会ったのは、食感を大切にする堀さんの手料理。唯一食事の楽しみを感じるために、堀さんのやっているボランティアを手伝います。
 味覚を取り戻した彼女が、呆然としてしまったラストには驚きましたが、意外とそれはそれで納得と言いましょうか。その衝撃もふっと抜けるようなユーモアがありました。何よりも悩みから抜け出せたことにほっとします。
 食べ物に関するドラマ、好きなジャンルなので楽しく読みました。

「快晴フライング」古内一絵

2017-05-18 20:54:03 | YA・児童書
 古内さんの「フラダン」が、高校の課題図書に選出されましたね。
 デビュー作「快晴フライング」(ポプラ社)を、震災直後に各学校図書館に寄贈してくださいました。
 あれから六年、文庫になったり表紙がスカイエマさんだったり、何度か手に取ったのに読み切れなかったというのに、今回は一息に読みました。
 中総体応援本として紹介しようと思ったことがきっかけではありますが、ぱらぱらと中をめくったら、あれ? あれ? なに?
 シャールさんが出ている!
 水泳部の部室に、シャールさんが来たと書いてあるのですよ。他のページも確認したら、お店も出てるしジャダさんもいる。何より本人が「トラァグクイーン」と言っている。
 シャールさん、この小説の中心人物だったのですね。というより、「マカン・マラン」がこちらのスピンオフなんですね!
 読みはじめたら、案の定頑固な顧問は柳田だし(笑)。
 
 面倒見のいい部長を事故で失った水泳部を、他人に関心のなかった主人公・龍一がなんとか立て直していく物語です。
 顧問に大会のリレーで優勝すると宣言したものの、残されたのは息継ぎも飛び込みもできない部員ばかり。幼なじみの敦子と練習を仕切りますが思うようにはいきません。
 そんなとき、クラスから浮き気味の美少女雪村が能力の高いスイマーであることを知り……。
 シャールさんが登場するからには、この子がLGBTなんですよ。
 男子として生きていきたいのに、周囲からは理解されない。抜群の泳力をもちながらも、女子として競技に出たくはない。
 シャールさんが作ってくれた銀色の水着で、体型を隠して男子として出場することを彼らは目論見ます。
 ユニークな部員たちも、内面には悩みがあります。でも、お互いに支え合っている。
 そういうことが伝わってきました。
 「マカン・マラン」にも、もしかしたら水泳部のメンバーが出ているのかもしれませんね。読み返したくなってきました。

「後悔病棟」垣谷美雨

2017-05-15 19:59:37 | 文芸・エンターテイメント
 「もし人生がやり直せるなら、何歳に戻ってみたいですか?」
 と帯に書いてあります。
 わたし自身は、戻ってやり直したいとは思わないのですが、敢えてひとつ言うのであれば、学生のときに司書資格をとればよかったかなという後悔はあります。自分なりには研修しているのですが、学問として学んでおくチャンスがあったのだから挑戦すればよかったな、と。

 垣谷さんの「後悔病棟」(小学館文庫)は、自分の人生に屈託を抱える人々の物語。
 彼らは末期癌のため、主人公ルミ子の勤める病院に入院しています。
 ルミ子は美人で努力家ですが、自己評価が低く相手の気持ちに寄り添った発言が苦手です。
 ある日花壇で発見した聴診器を使ったところ、患者さんの思いが伝わってきて……。

 芸能界デビューを諦めさせられたと恨む、人気女優の娘。学生結婚した妻との会話がお金のことのみと愕然とする会社員。娘の結婚を反対して二十年も過ぎてしまった頃、その男が大成功していることを知った母親。
 中でも衝撃的だったのは、憧れの女子が教師の財布から盗みをしたことをかばった友人への罪悪感を抱え続ける男性の話です。
 友人は内申が悪くなり、受験に失敗。なんとか入った高校も中退してしまうのです。
 後ろめたさを抱えながら、妻と息子との幸福な生活を送っていた彼は、ルミ子が導く別の世界で、自分が犯人であると話します。その結果、彼が知ってしまったのは……。
 これから先、ずっと疑念を抱えていくことになるのかと思うと、やりきれません。
 ルミ子が幸せをつかみ、聴診器を必要としなくなったことが何よりでした。