くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「食堂つばめ5」矢崎存美

2015-05-31 20:07:28 | ファンタジー
 昼前に読みはじめたら結構するすると読んでしまい、でも出かける用事があったのでいまさっき読み終えたところです。
 「食堂つばめ5 食べ放題の街」(ハルキ文庫)。
 去年の夏、県大会の監督会議で一冊めを読んでから、短いターンで五冊読んだことになりますね。
 食べ放題、わたしも大好き。とはいえ、なかなか行く機会はないですよね。どうせなら質のいいものを食べたいですし。すぐ思いつくのは旅行に行ったときの朝食などでしょうか。

 見知らぬ女性が部屋にいて、ぎょっとする沙耶。誰何していると、アパートのドアを叩く妹の声。家には連れ戻されたくない! そう思う彼女に、ノエと名乗る不思議な女性はあるノートを読ませてくれますが……。
 沙耶が小学生のとき妹の舞が生まれ、それ以来家事を一人で担ってきたこと。高校生のころは祖母の介護も。両親からは虐げられ、舞には嫌みを言われていた沙耶は、幼なじみの美苗と再会して家を出る決意をしました。祖母からもらっていたお金でアパートに引っ越し、誰にも知られないように生活していました。だから、いきたかったうどん屋さんにも足を運べず、その未練のような思いが「つばめ」の外観に投影されています。
 沙耶は、街にすっかりなじんで、「つばめ」のメンバーとも親しくなります。でも、どうして生き返ることにしたのか、舞の意図は何か、さらに表紙カバーのこの眼鏡の男性は誰か、そう思いながら読みました。
 新たな生活に飛び出していく沙耶が、どんどん魅力的になります。

 小食といいながら、この街での沙耶はよく食べます。白玉抹茶あんみつとはどんなものか想像したり、現実では食べたことがないような団子もおいしくいただく。
 あっ、今日は厳美渓にいってかっこうだんごを買ってきたので、わたしもお団子食べました! 子どもたちはこういうとき、必ずあんこ。わたしはみたらしをいただきましたが、やっぱりRちゃんのところのお団子が懐かしい……。子どもの頃から大好きだったのですが、今はお店を閉めてしまったので。
 わたしがこの街に行ったら、この団子が食べたいです!

「暗い夜、星を数えて」彩瀬まる

2015-05-30 20:21:55 | エッセイ・ルポルタージュ
 愛読しているブロガーさんが、彩瀬まるさんに注目しているとおっしゃったので図書館から借りてきました。「暗い夜、星を数えて 3・11被災鉄道からの脱出」(新潮社)。
 東日本大震災のとき、旅先の福島で被災し、避難所で数日を過ごされた彩瀬さんが、そのときの様子を残してくれています。そして、三か月後、八か月後と現地を訪れて、当時出会った方々と再会したときのことを描きます。
 震災当時、わたしは思うように文章が書けず、当時のことを日ごとに忘れてしまいそうでもやもやしています。携帯は使えず、家では節電のために固まって部屋にいることになっていたので、プライベートな作業ができないのです。仕事には歩いて行けたのですが、指導要録のまとめのシーズンだったし。
 誰かの目から見た震災、これを記録していくことは必要だと思いました。

 相馬に近づいた新地駅で、旅先の彩瀬さんは被災します。乗り合わせたリカコとともに列車から離れ、避難所へ。それから、そこで知り合ったショウコさんの家にお世話になりました。
 福島駅からバスとタクシーで福島空港へ行ったもののあまりの混雑に飛行機は諦め、タクシーで那須塩原まで出て始発の新幹線で帰宅したのだそうです。それが、3月16日。
 第二章は「すぐそこにある彼方の町」というタイトルです。わかりますか? 東京駅からたった三時間で被災地に着くのです。でも、この2つの町の意識は全く違う。それに愕然としてしまうことを、彩瀬さんはきちんと表現してくれます。
 また、このとき彼女は友人と会う傍ら、時間をみてボランティアに参加するのですが、そこでもらったタマネギのことが長いこと胸を離れない。この象徴化がうまいなあ。
 また、その後にリカコさんやショウコさんと再会するエピソードが書き下ろしで入っています。リカコさんとは連絡先を交換していないのです。(携帯使用できないし、それどころではないですよね)
 でも、そのときの体験を記したエッセイを読んで編集部に連絡をくれたのだそうです!
 なんというか、巡り合わせってあるんだなぁ、と思いました。

 あれから四年めを迎え、記憶は薄れてはいきますが、わたしにとってその日の場面場面は消えることはないでしょう。教室棟と特別教室棟とのつなぎが大きくたわんだときの空間の大きさ。泣き出す女の子。無事を知らせにきてくれたSくんが、「イオンにいたらガラスがすごい勢いで割れた」と言っていたこと。近くの生徒を送りながら家を見に行ったときの子どもたち。雪が降るなか、発電機でジェットヒーターを動かして会議をしているなか、家族と連絡がとれないまま学校に待機していた二年生。
 
 彩瀬さんの体験を読みながら、思いおこすのは自分にとっての「あの日」なのです。
 

「避難所」垣谷美雨

2015-05-28 05:16:57 | 文芸・エンターテイメント
 なるほど! 言われてみればそこも避難所なんですよね。
 垣谷さんにしては、トリッキーな設定じゃないけど(笑)、すごく考えさせられました。「避難所」(新潮社)です。
 このところ、また東日本大震災関連の本を読んでいます。
 架空の町鴎ヶ浜市(原文は鴎は旧字)に住む主婦三人を軸に、震災の悲劇をコメディも交えつつ描きます。
 元保母の椿原福子。母子家庭で飲み屋をやっていた山野渚。赤ちゃんを育てる漆山遠乃。三人とも、震災で家族や仕事を失い、足枷となるようなものを抱えながらも、自分の苦痛の根本は震災があったから顕在化したわけではないことを悟るのです。
 中でも、夫と義母を失い、義父と義兄に虐げられている遠乃に胸が痛みました。彼女は非常に美人で、福子などは「白雪姫」に喩えるほどです。
 避難所でも人目を引いてしまい、苦痛を覚える。
 それなのに、リーダーに立候補した男性が、この避難所では仕切りを使わないと言い出して、もう腹が立って腹が立って。
 プライベートな空間がないのは、つらいことですよね。
 また、渚の息子昌也が、クラスから浮いている描写も、気の毒でした。担任の先生がそういうことに気づかない鈍感な人だ、という彼の言葉に、自分のことを省みてみたり。
 うーん、でも、昌也の消息がつかめない時期、彼女の制止を振り切って学校を出て行ったことをひどく責めましたよね? それは謝らないんだろうなあ。なんか、渚の勝ち気さは、一緒に過ごすと気になるように思うのですが。
 
 鴎ヶ浜のモデルはおそらく気仙沼ですね。大船渡線で一関に出てるし、補助金も宮城県からもらっています。
 参考書籍は石巻とか高田のものもありますね。
 登場人物たちが、わたしにとって非常になじみのある言葉遣いをしているので親しみがわきました。
 垣谷さん、どなたか気仙沼の方を知っているのでしょうか。

「物語のおわり」湊かなえ

2015-05-27 05:21:21 | 文芸・エンターテイメント
 図書館に返してしまったので、詳細が曖昧かもしれません。
 湊かなえ「物語のおわり」(朝日新聞社)。
 山間の町のパン屋の娘・絵美は、山の向こうにある生活に思いをはせる少女です。いつもハムサンドを買っていく高校生「ハムさん」と親しくなり、彼と一緒に山を越えた町に出かけます。乗り物酔いが激しく、具合を悪くした絵美を送ってくれたことで、父親から大目玉を喰らいますが、ハムさんはまじめに付き合うつもりだと宣言。しかし、大学を卒業して郷里に戻ってきたハムさんと結婚を目前にしたとき、子どものころの友人から、流行作家松木流星の弟子にならないかと誘われます。彼女はミステリ小説をほめてくれた友人。自分の力を試したいと駅に向かった絵美でしたが、そこにはハムさんの姿が……。
 これが第一話で、リドルストーリーの体裁になっています。
 絵美がしたためたらしいこの小説は、萌という少女から船で知り合った妊婦へ。そして、カメラマン志望だった男性へ。自転車で旅をする女性へ……と、手渡されていきます。
 彼らは、みな、何か迷いがあり、そのことで悔やんでいる。もしかしたら、この作品が悩みを少しでも解消してくれるのではないか、と託されるのです。
 読んだ人々は、それぞれが自分なりに続きを想像します。ハムさんは見送りにきたのだと考えたい人もあれば、無理に連れ戻しにきたと予測すり人もいる。また、作品の要約の仕方もそれぞれに違っていておもしろかった。
 最終的に原稿は「ハムさん」の手に届きます。自分の妻がモデルと思われる小説ですから。
 そして、萌がどういう立場なのか、この物語の本当の結末はどういうものなのかが明かされます。
 構成が工夫されていてすごくおもしろいのですが、「絵美」の描いた作品の内容が気になって仕方ありません。
 だって、ワイドドラマになったら場所を北海道に変えて「道産子刑事なんとか三五郎」(視聴率もかなり低い)になったんでしょ? 御曹司が死んで美女がどうのこうの、しかもタイトルは「すずらん特急」ですよね。毒殺にすずらんを使うトリックを考えたというあの作品(ハムさんに少しずつ送ったもの)なんでしょうか。
 タイトルから考えると時刻表もの、なんですかね?
 ケータイ小説の「ガラスちゃん」との比較が興味深いです。

「レガッタ!」濱野京子

2015-05-26 20:22:46 | YA・児童書
 濱野さんの青春部活もの「レガッタ!」(講談社YA!)です。
 気になっていたんですが、なにしろ三巻まであるし、「竜の木の約束」が今ひとつ好みではなかったので躊躇していたのですが、いやいや、すばらしかったです。
 「水をつかむ」「風をおこす」「光をのぞむ」、それぞれ高校生の一年間を描いています。だから、行事としてはどの巻にも同じ大会が描かれているんですが、主人公有里の成長が感じられてあっという間に読んでしまいました。
 飯塚有里(あり)は、優等生の姉と比べられがちなことが不満です。教頭職にある父親に、成績不振を理由に部活をやめさせられた過去から、高校では自分の好きな部を最後まで続けたいと思っています。
 入学した美園女子高(通称「ソノ女」)で、中学二年まで所属したバドミントン部に入ろうと思ったのに、やはり三年生まで続けてきた人たちにはかなわない。それなら、ほとんどスタートラインが変わらないボート部を選んではどうか。ソノ女からはかつてオリンピック出場を果たした選手もおり、インターハイでも常連の強豪です。
 でも、仮入部してみたら、他の一年生は全員「漕ごう会」に参加して意気投合しており、なかなか親しくなれないうえ、自分を敵対視する同級生もいて……。

 ここ数年、母校のボート部で教え子が活躍したニュースを聞いていたので、なんとなく親近感がありました。
 でも、ボートのルールは全然わからなかったのですが、読んだあとには結構詳しくなったように思います。インターハイ予選近いから、競艇場前に見に行こうかと思うくらいです(笑)
 物語で、ボートのことを何も知らなかったお母さんが、応援にやってきて競技の美しさに魅了されるところが好きですね。とにかくパワーが必要なためによく食べる有里に、おいしいご飯を作ってくれます。(好物は豚肉の天ぷらだそうです)
 女の子たちの友情や葛藤、時々恋模様などもあり、楽しく読めます。まんがとかドラマにしてもおもしろいかも。わたしは部長のはる香が好き。
 有里たちが卒業しても、ソノ女のボート部はパワフルに続いていくことでしょう。そういう連続性のようなものを感じさせられるのも魅力的でした。

「消えゆく野生動物たち」子供の科学編集部

2015-05-18 16:01:34 | 自然科学
 週末、東京に行ってきました。
 浅草は三社祭ですごく混んでいましたね。雷門提灯が半分閉じている珍しい光景も目にしましたよ。
 本当は「鳥獣戯画展」が開催されている国立博物館に心惹かれていたのですが、科学博物館に行きました。地球館が改装中で、展示は半分くらいでしたが、じっくりいろいろ見られて楽しいですね。

 しかし、こうやって理科的分野を見ていると、自分の興味範囲がすごく狭いことがよくわかります。わたしは生物分野にしか足が向かない! しかも、絶滅危機動物ばかり。
 種ということについて考えさせられます。狼とかパンダの映像、イリオモテヤマネコの剥製、外来種に脅かされる生態系。
 展示を見てまわるうちに、またこの先も、絶滅に至る動物たちが顕著になるのかな、と思いました。身近にいたはずだったのに、いつの間にか姿を消してしまうような。それは、つらいことです。

「消えゆく野生動物たち そのくらしと絶滅の理由がわかる絶滅危惧種図鑑」(誠文堂新光社)。子供の科学サイエンスブックの一冊です。
 なぜ絶滅の危機にさらされているのかが、5つのパートで紹介されます。
「生息地が失われる」「乱獲される動物たち」「汚染される環境」「外来種との戦い」「地球温暖化の脅威」。
 現在数が少ない動物の説明もあり、わかりやすいと思います。
 イシカワガエルと呼ばれるカエルが、最近になって沖縄島と奄美大島では遺伝子的に違うことが判明したというのが興味深いです。
 
 あ、ちなみに別冊ニュートンの生物多様性特集も買いました。どちらも写真がふんだんに入っていて高い。(二冊で五千円近い)
 近々「絶滅の意味」について調べ学習をするつもりだからなんですが、来年はもう教科書改定してしまいます。新しい教材には絶滅に関する説明文があるのでしょうか。気になります。

「自覚」今野敏

2015-05-10 05:26:27 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 「隠蔽捜査5・5 自覚」(新潮社)です。図書館で発見。いつの間に刊行していたのか……。ドラマ化のタイアップ企画でもあったのか、気楽に読める短編集です。
 いつも物語の脇を固めている皆さんが、いかに竜崎に支えられているかが描かれます。だから、基本的に、事件発生→現場の混乱→主人公が竜崎に連絡→警察的見解からは外れているけれど、全うなアドバイスを受ける→解決、というパターンです。
 でも、だからおもしろくないのかというと、そうでもない。
 何人かは、このままずっと、大森署の署長でいてほしいと思っているようですね。
 いつもは敵対視してくる野間崎も、実のところ竜崎が好きなんですよ!
 ラインナップは、副署長の貝沼「漏洩」、竜崎の心を奪ったこともある女性キャリア畠山美奈子「訓練」、管理官の野間崎「人事」、刑事課長関本「自覚」、地域課長久米「実地」、強行犯係長小松「検挙」、最後は伊丹「送検」です。
 同じ組織での出来事が多かったため、様々な視点が見られておもしろかった。
 関本なんか「実地」では久米と口喧嘩してますし、「検挙」では会議で検挙率アップを伝えて、強行犯係にむちゃくちゃなあてつけをされています。(スーパーで包丁を買った主婦が銃刀法違反って、そんな馬鹿な……)
「訓練」が好きですね。
 畠山美奈子はハイジャック犯に対抗するスカイマーシャルの訓練を受けることになります。訓練に選ばれるのは光栄なことですが、一緒に参加するのはSATなどから選ばれた男性たち。しかも、自分だけがホテルを用意してもらっており、他のメンバーは機動隊の宿舎に泊まるというんです。初日が終了したあと、幹部と飲みに行くことになって、女としての立ち位置に屈辱的なものを感じる。
 ところが、竜崎は、自分がその立場だったら女であることを最大限利用するというんですよね。
 訓練の本質を見誤らないよう、体力を使うより頭を使ってこそ、キャリアであり女性ではないか、と。
 そのあとの挽回がすばらしいのです。
 わたしはあんまり彼女に好感を持っていなかったのですが、この機転の利かせ方はいいですね。
  
 ドラマ化に関してはカバー見返しの著者紹介に書いてありました。しかも、二人のキャスティングまで。
 うーん、「隠蔽捜査」は竜崎がメインではあるけど、やっぱり伊丹あってこそなんでしょうか。

「夢幻花」東野圭吾

2015-05-09 12:39:51 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 黄色い変化朝顔が重要なモチーフときいていたので、東野圭吾が時代もの? と思ったのですが(表紙だって浴衣の女の子がいるし)、全然違いましたね!
 先祖から受け継がれるものが現在に影響を与えているとことから、これは因縁話かな。
 「夢幻花」(PHP)。後半、出かけた先でも読んでしまいました。だって気になるじゃん!

 水泳のオリンピック候補だった梨乃は、とある事情から引退を決意します。そんな中、従兄の尚人が自殺したという連絡を受け、葬儀に駆けつけます。
 尚人はプロのミュージシャンを目指して活動をしており、自殺をする理由が思いつかないほどに何でもできる人でした。
 悲しむ梨乃に、祖父が声をかけてくれます。その温かさに触れて、祖父の家に遊びに行ったとき、庭一面に咲く花々に感心した梨乃は、園芸についてブログを始めてはどうかと提案。更新作業をするために、頻繁に顔を出すようになりました。
 そのなかで、鮮やかな黄色い花が植木鉢で開花したのを目撃します。今まで見たことのない花。しかし、それをブログに載せることに祖父は躊躇する。
 数日後、講義が終わってから出かけると、祖父が倒れていて……。

 祖父を殺害したのは誰なのか、尚人の自殺には理由があるのか、そして、彼女に接触してきた要介と弟の蒼太はどんな関わりを持っているのか。
 まあ、どちらかといえは、視点は蒼太の方がメインなんですが。
 彼は朝顔市で知り合った女の子とのやりとりを父親にとがめられたことを結構引きずっています。一家で出かけていた朝顔市にも同行しなくなり、なんとなく溝ができたまま実家を出て大学に進学。現在は院生ですが、屈託を抱えています。
 というのも、彼が学んでいるのは原子力エネルギーなのですね。震災で転換してしまった世相に、今後の身の振り方を迷っている。
 東野さんは原発問題に結構こだわりのある人だと思うので、蒼太の結論に納得させられるものがありました。
 昨今、再び稼動させる案が出ているとも聞きますが、ここはやっぱり収束するための手段を全うしてほしいですね。
 夢幻花もまた同じ。破滅に向かうことが予測されながらも、法を違えていないとするのは、問題だと思うのです。

「生きる悪知恵」西原理恵子

2015-05-08 05:15:18 | 哲学・人生相談
 すごいなあ、スマートフォンの予約変更機能。「さいばら」と入力すると、「西原理恵子」が出てくる!
 それだけメジャーなんですね……。「晴れた日は学校をさぼって」とか読んでいた身としては隔世の感といいますか……。(大袈裟?)
 「生きる悪知恵 正しくないけど役に立つ60のヒント」(文春新書)。
 人生相談って、やっぱり回答者の人柄が出ますよね。
 西原さんに相談したい人は、やはり彼女な破天荒なコメントを期待しているのでしょう。わたしは読んだことないけど、伝説の北方謙三のような。(文中にもその話題がありました。ところで、こちらは予約変換されなかったよ……)
 女子から「キモイ!」と言われて悩んでいる高校生男子に「中2から高2くらいの男子は全員キモイ!」と返し、48歳の自営業の方がなかなか親と仲良くできないといえば、「親子仲よくなくてヨシ!」。
 ちなみに就活に悩む大学生には「正面から入れないなら、横入りすればよし」、愛猫の死から立ち直れない女性には「すぐに新しい猫を補給すべし」 ですよ。ははは。
 このころって、まだ高須さんとのことは公表してないんですね。何ヶ所か話題が出ますが、紹介文として、「西原さんと親交のある高須クリニック院長・高須克弥氏」と書いてありました。
 と学会の記念本によれは、お二人はそちらのイベントにも連れ立っていらっしゃるそうですよ。
 

「ボランティアバスでいこう」友井羊

2015-05-07 05:13:40 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 友井羊「ボランティアバスでいこう」(宝島社文庫)。
 東日本大震災から四年、わたしもやっと被災地に足を向けられるようになりました。もともと内陸に住んでいるため、沿岸部にはなかなか行かなかったんですが、それ以上にためらいがあって。
 あちこち行ったわけでもないのですが、最も衝撃的だったのは陸前高田です。七八年前に訪ねたときの町並みが全く戻っていないというか……。あのときお昼を食べたお店も、もうどこなのかわからない。海と貝のミュージアムも休館だそうですね。奇跡の一本松は賑わっていましたが……。
 大学生の大石は、被災地山浦へのボランティアバスを企画します。援助活動というよりは、内心就職活動へのポイント稼ぎなのですが、そこで巡り会った人たちと活動していくうちに考えが変わってきて……。
 まずは、会社員の遠藤。どうやら思い入れが強いらしく、他の人以上に働きます。がむしゃらな行動を続けるうちに熱中症になってしまう。
 かれを介抱してくれたのが、元教員の成子さん。旦那さんと一緒に参加しています。山浦で教師をしていた教え子(震災で亡くなったそうです)を悼んでやってきたようです。
 そんな成子さんは、非常に人間観察に優れた人で、遠藤の抱える苦悩を解決してくれます。
 実のところ、遠藤は自分が幼い頃に家を出た母親のことを思って山浦を訪れたのでした。

 震災とボランティアとの関わり、ずかずかとは踏み込めない領域など、考えさせられる面も多く、かつ、連作に仕掛けられた技ににやりとしてしまいます。
 わたしは、大石が自分の活動を顧みる「大学生 和磨の場合」が好きですね。不器用な田中さんの優しさが沁みます。