くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「筆のみが知る」

2023-10-24 20:10:32 | 時代小説
近藤先生の時代もの、とっても好きなので、これ新シリーズですよね? 続刊ありますよね? 
病を理由に引きこもる料亭の娘、真阿。居候としてやってきた絵師の火狂と関わるうちに、怖いと思っていた夢の真相を知り……
どの話も切ないですが、「犬の絵」がつらかった……🐕‍🦺
漫画だったら、おそらくイケメンに描写されるであろう火狂。
四十過ぎでしかも相撲取りのような男なんです。でも、そこに安心感がある。
そして、相当に美少女であろう真阿の今後も気になります。

「縁結びカツサンド」

2023-10-23 08:31:16 | 文芸・エンターテイメント
えー、コテン、いい! お店に行きたい! 特に食べたいのは、楽描きカレーパン。普段の私はカレーパン買わないんですけど、これは食べてみたい。うずらの卵入ってるやつ。
ドーナツもコルネも、もちろんカツサンドもたいへんおいしそうです。
コーヒー淹れてもらって、お店で食べたい。

うらら商店街を歩いている気分になりますし、常連さんとも仲良くなれそう。
花ちゃん一家が素敵だし、愛ちゃんは応援したくなる。
自信がないまま店に出るようになったパン屋の三代目和久の成長を描く連作。
登場人物たちのその後が出てくるのも嬉しい。

「怖い女」「怖い家」

2023-10-22 15:42:08 | 社会科学・教育
母なる存在の恐ろしさを、多数の文献から紹介している「怖い女」。
「妖鬼妃伝」「黒い家」「ギリシャ神話」「マハーバーラダ」など、怖い本の紹介としても楽しめるのでは?
私は「古事記」が好きなのでイハナガヒメやトヨタマビメのエピソードが興味深かった🍀
都市伝説もいろいろありますねぇ。

対をなすのが「怖い家」。
生まれ直しと成長のメタファでもある家の情景が、神話から現代小説まで事例をあげながら語られる。
「ラーマ・ヤナー」懐かしい!
「古事記」にも見られる禁忌の伝承は、家のあり方にダイレクトに関わってくるのですね。
私もずっと小野不由美、宮部みゆき作品には家を描くものが多いと思ってたので、実に興味深かったです。
「ゴーストハント」「残穢」「営繕かるかや」以外にも思い浮かぶ作品たくさんあるなあ。「三島屋変調百物語」にも多いと思うんですよ。
こういうスタイルの論文、もっと読みたい。

「俺ではない炎上」

2023-10-21 21:19:08 | ミステリ・サスペンス・ホラー
二度読み必至です!
いつもいいところでカメラワークが切り替わるんですよ。
泰介にピンチが迫ったり、サクラが睨みつけたり。
ラストまで途切れることのないハラハラ。
「自分のせいじゃない」と自己擁護すること。ネットの情報を鵜呑みにすること。
考え直してみたくなります。
冤罪についての本を何冊か読んだことがありますが、ミステリ性という点でも面白い。
どの人も怪しいし、手のひらを返したように見方も入れ換わる。
主人公の心も。
逃げ続けるうちに今まで信じていたことが歪む。偶然と必然が絡み合い、登場人物たちはある地点へと導かれていきます。
面白かった!

「みちのく妖怪ツアー」謎解き編

2023-10-18 06:54:31 | YA・児童書
た、玉……🐱💧
ラスト、まっすぐでやさしい優くんにじんわり。
怖い妖怪ばかりでもないんですよね。
もちろん、問答無用の怪異はたくさんあるのですが。
イベント系と自由研究系の「謎解き」、そして今回も外さないグルメ。
近隣の地名が出てくると、嬉しい😆
やさしかったガイドさんが豹変したり、ちょっとした選択が悲劇につながったり……
夏休み、いつもとは違う町で出合ってしまう異界への扉。
今年のような猛暑には、ぞっとするような怪談、印象的です。

この本は、「みちのく妖怪ツアー展」(登米市横山不動尊)で買ってきましたー。
妖怪チズガヨメヌが出たらしく、曲がるところを間違って遠回りしちゃいましたが、無事にたどり着けました。
木札はなまはげです👹
横山不動尊に来たのは30年ぶりくらいかも?!
先生方の妖怪推しポイントがとても楽しかったのです。
中でも佐々木先生が語る座敷わらし、三浦哲郎先生の話題があってすごく嬉しいです!(三浦文学で卒論書きました)

「あなたはここにいなくても」

2023-10-17 19:00:03 | 文芸・エンターテイメント
記録と記憶について考えさせられた。
離職とともに写真を焼いてしまう人。ホスピスに入る前に断捨離を決行する人。
「捨てる」ことだけではない、彼女たちなりの思いのつなぎ方。
渋皮煮を作る人も、旦那さんにリクエストする人も、気持ちは同じ。
物として残すこと、誰かの気持ちを後押しするために動くこと。
その人を喪って、改めて気づくこと……。
どうしてもいつか訪れる、いとしき人との別れを考えると、私たちは時と思いとを大切にしなくてはならないと感じました

「27000冊ガーデン」

2023-10-15 10:13:31 | ミステリ・サスペンス・ホラー
学校司書の駒子と書店員針谷が解決する本の謎。
殺人事件から祖母の読んだ本まで、多様な事件を、本を手がかりに追っていく。
理不尽な前任校の担当者、本当に嫌な奴ですね! 受験生が本を読むの、何が悪いんだ! 新しい司書さん、素敵だわ。
「罪の声」読みたくなりました。

教え子の羽多くんがかっこいい。これは惚れるよね。
そして、ラストの話を読んで、自分が高校のときの図書館には栗本薫が多数あったことを懐かしく思い出しました。
あのころは、JUNE小説の第一人者で、部活の先輩がよく借りていたな。
作中の女の子の、母親世代に該当する年代ですからね……

「偽りの春」

2023-10-10 17:39:26 | ミステリ・サスペンス・ホラー
元捜査一課の敏腕刑事ながら、現在は交番勤務の狩野雷太。
彼が捜査する事件を、加害者側から描く連作。倒叙ものです。
ランドセル、薔薇の花、蔵、彫刻等、今回も小道具に引かれました。
特に「見知らぬ親友」が好き。美容室で泣きそうになりました💧
「サロメの遺言」とセットです。

続編は「朝と夕の犯罪」
兄弟として育ったアサヒとユウヒ。
父の死が二人の道を分ける。
再会したユウヒから誘われたのは、ある偽装誘拐だった。
一見成功したかに思われたが…
第二部は、子どもを置き去りにして餓死させた23歳の女性を尋問する烏丸を視点に展開。
生き残った長男夕夜。彼は誰の子どもなのか。なぜ母親は、アパートに戻ることができなかったのか。

美織の絶望がひしひしと伝わってくる後半。つらい。
ラスト、平穏な生活が垣間見れてよかった。

「私たちはどこで間違えてしまったんだろう」

2023-10-08 15:47:30 | ミステリ・サスペンス・ホラー
のどかな田舎町に暮らす仁美は、秋祭りの日に何者かが投入した毒で、母を失う。幼なじみの涼音、修一郎も弟妹が亡くなり、今までの暮らしが崩れ落ちていく。
親しみを感じていた近所の人々は、犯人と疑われる人を次々と糾弾する。

疑いが疑いを呼び、誰を信じられるのか。
大人になっても事件に縛られ続ける仁美たちだけれど、誰かを守ろうとする思いや葛藤が切なかったです。
しかし、和菓子屋の親父は腹が立ちますな。
久しぶりに急き立てられるように読みました(笑)
後半の、ペンダントの形のエピソードが素晴らしいです。

「事件は終わった」

2023-10-07 19:44:10 | ミステリ・サスペンス・ホラー
すごく、すごく優しい話だった。
想像していた展開とは違いました。
地下鉄でおきた悲惨な事件。死傷者もあり、PTSDに苦しむ人もいる。
拡散された事件の映像。階段から落ちて怪我をしたテニスの選手。彼を取材する報道部員。
「未来ドア」が印象的でした。尾辻さんの傷が辛い。

だけど、どの話にも救いがある。
苦しみは、見方が変われば解放につながっていく。
本編を貫くある謎が解決されたとき、「事件は終わった」のだと実感しました。
ただそれに費やされる時間は、マスコミが思うよりも長いかもしれません。