くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ホタルの光は、なぞだらけ」大場裕一

2014-08-31 04:54:39 | 自然科学
 同僚のA先生が、息子さんから読書感想文の相談を受けたそうです。
 本は、今年の課題図書、「ホタルの光は、なぞだらけ ー光る生き物をめぐる身近な大冒険」(くもん出版)。
 六時間ほど作文に付き合い……、そして思ったことは。
「どうして、これが課題図書? 科学の解説みたいな本に、どういう感想文を書けばいいの?」
 息子さんには、驚いたこととか新しく知ったことをまずまとめるように言ったけれど……、と困惑していました。
 ここ数年、中学校の課題図書は、日本文学、翻訳文学、自然科学系の三冊になることが、確かに多い。
 A先生は東野圭吾とか伊坂幸太郎が好きなので、こういうのは読まないでしょう。
 読書というのは、自分の守備範囲でないものには手を出さないもの。小説も科学分野も、という人は多くないかもしれません。
 さて、この本。筆者は名古屋大学大学院生命農学研究科の先生です。
 光るミミズの発見から語り起こし、発光生物のあれこれから科学とはどういうものか、ということについて語られています。
 わたしが感じたのは、まず、常識を疑えどういうこと。
 希少だと思われていた光るミミズは、実は意外にありふれていた。発見とは丹念に観察したり調べたりすることによってもたらされるものかもしれませんね。
 なぞを解き明かしていくためにどういう方法をとるのか。そういうところも、大場先生の情熱が感じられてわくわくしました。

「鈴木成一 装丁を語る。」

2014-08-30 11:06:41 | 総記・図書館学
 ブックデザインに関わる話題が大好きなんです。でも、写真が多いと高いよね。
 リニューアルした図書館で借りてきました。「鈴木成一 装丁を語る。」(イースト・プレス)。
 読んで半月くらい経ってしまったのですが……。おもしろいです。ああ、この本の装丁もそうだったのね! というカバーが多い。
 例えば宮藤官九郎「きみは白鳥の死体を踏んだことがあるか(下駄で)」。カバー下にも川嶋さんの写真が入っていたとは! しかも、宮藤本人が、「町の著名な白鳥写真家川嶋氏の写真を使いたい」と語ったそうで。
 「ブレイブ・ストーリー」も「白夜行」も「えんぴつで奥の細道」も「むかしのはなし」も「present」、「流星ワゴン」、「ドミノ」、「東京バンドワゴン」……。
 「奇跡のリンゴ」のカバーのために、木村さんの「底なしの笑顔」を撮ってきてとお願いしたら、その後ほとんど同じデザインの「二匹目の何とやら」が続出したというのはおかしかった。
 「美丘」の裸写真、女性はプロだけど男性は角川の社員さん、というのもちょっと笑ってしまいます。
 川島容子「伊勢丹な人々」(日本経済新聞社)、清野恵里子「きもの熱」(集英社)を読んでみたい。あと、鳥居みゆき「夜にはずっと深い夜を」(幻冬舎)も、気になります。

「村上海賊の娘」上 和田竜

2014-08-28 21:22:20 | 時代小説
 校長先生が朝会でブックトークして寄贈いただきました。
 「女の子に読んでほしい」とのことでしたが……。
 先生、これを読んで血湧き肉踊る女子は、本校にはいません……。残念ですが。
 景姫、わたしは嫌いではないんですが、乙女のイメージするストーリーとは違うと思うのです。
 和田竜「村上海賊の娘」(新潮社)。まだ上巻しか読んでいません。し、しかも、読むのに1ヶ月かかっている。
 最初から姫登場までが、わたしにとっては読みづらかった。男世界のドラマだからでしょうか。「太閤記」大好きだったので、戦国ものだからというわけてはないと思うんですけど。
 女だてらに海賊稼業。醜女と呼ばれる景姫は、大阪では自分のような顔立ちがもてはやされると聞いて、本願寺の門徒の上乗りを買って出ます。信長の家臣を殺してしまった景姫は、泉州侍の七五三兵衛(しめのひょうえ)と出会い、その屋敷に招かれることに。
 後半は延々と合戦で、門徒たちが命をかけて繰り出す様子にあわれな気持ちになりました。
 わたしの村上海軍のイメージは、森野亜紀の「碧のミレニアム」なんですが。
 コミカルな登場人物たち。劇画を読んでいるようにさらさらと入ってきます。七五三兵衛の息子の次郎とか、門徒の留吉とか、男の子がかわいい。
 テレビで、現在の様子を放送していました。本屋大賞で観光客を呼び込みたいということで。
 下巻も読むつもりで持ってきましたが、車に置きっぱなし……。す、すみません。

「じぶんリセット」小山薫堂

2014-08-22 05:12:53 | 哲学・人生相談
 教え子がスポーツアナウンサーなので、普段はAMラジオを聴いています。でも、夫の車で出かけるときはFM。そこで「じゃぱもん」という番組をやっているのが気になって。パーソナリティのお一人が「こやまくんどうです」と名乗るのを、ずっと脳内変換できずにいました。
 小山薫堂「じぶんリセット」(河出書房新社)を読んで、「おくりびと」とか東日本大震災の折りにカレンダーの企画をされた放送作家さんだと知りました……。
 この本、「14歳の世渡り術」の一冊です。しかも副題は「つまらない大人にならないために」。
 でも、大人が読んでも納得です! それは、わたしが思春期真っ只中の人たちと過ごしているからなんでしょうか。中でも、これ。
「僕なりに、『働くということ』を突きつめていくと、『いちばん目前の宿題を一生懸命こなしていくことの連続でしかない』という答えにたどり着きます。」
 そうそうそうそう! そうですよね!
 それから、お金について。
「僕は『社会の血液』のようなものだと思っています。お金が社会の隅々まで行き渡ることによって、全体が元気になり、さらによりよく回っていく。気持ちよくクリーンにお金を使うことが、健全で豊かな社会の形成につながります」
「お金は拍手だと思って使うべき……僕はそう考えています」
 どういうことか。気持ちよく使えるように工夫しましょうということではないかな、と思いました。気持ちの持ち方というか。
 小山さんは、実際に大学の授業で、「もしも、一万円を無駄遣いできるとしたら……」という課題を出したそうです。アイデア術の授業。うーん、わたし? い、いつも無駄遣いしてますよ……。当然のごとく本ですよ。まあ、そういうことではないんですけどね。
 あ、もうひとつ、紹介しておきたいエピソードがあります。小山さんがNHKの合唱コンクールに関わった(嵐の「ふるさと」を作詞したそうですよ)ときに、「歌の上手い、きれいな声の人だけを集めても良い合唱にはならない」と聞いて、感銘を受けたんですって。「いろんな声が集まってひとつのハーモニーが生まれ、人の心を揺さぶる合唱になるというのです」
 全校での合唱練習が始まる時期に、生徒たちに知らせたいと思いました。
 わたしもそうですが、ついついくよくよと考えてしまってもいい結果にはなりませんよね。切り替えてやれることをする。「自分にはコントロールできないことがある」と理解し、最善の力を尽くした上で、結果を「なるようになる」と受け止める。そういう覚悟というか心構えで、臨むべし、ですね。リセットの方法を知ることも、その一助だと思います。

「左足のポルカ」手島織江

2014-08-21 04:50:25 | YA・児童書
 「本屋大賞」のおすすめの本紹介で、気になっていた一冊。手島織江「左足のポルカ」(偕成社)。ずっと探していたんですが、リニューアルした一関図書館で発見しました。
 借りてきてから読み出すまでが長いわたし。しかも、崖から落ちる少年の身体から、左足が抜け出して旅に出るという奇想天外な作品です。
 この左足、ある秘術でものを食べたりしゃべったりできるようになる。
 そして、旅に出ます。南極探検隊の船に密航し、船員たちの前で演説。パーティーでヒロインを演じたり犬ぞりを引いたり……。
 なんとも風変わりですが、個性的で軽快な左足の語り。ラストでは、これが死にゆく彼の手記であることがわかります。どうやって書いたの? あっ、指にペンを挟んだのか?
 犬たちに引っ張られてあちらこちらに吹っ飛ばされながらも、負け惜しみみたいなことを言い張るあたりがおもしろかったです。 

「蜂に魅かれた容疑者」大倉崇裕

2014-08-20 05:09:02 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 大倉崇裕、初読みです。でも、これ、シリーズ第二弾。「蜂に魅かれた容疑者 警視庁総務部動植物管理係」(講談社)。
 カバーにひかれて借りてきたんですが、これ、先行作品もぜひ読みたいです。以前「七度狐」もチャレンジしようとしたんですけどね。
 元捜査一課の敏腕刑事だった須藤と、警察博物館勤務の薄(動物オタクの女子)のコンビがいい味出してます。
 薄さん、制服着ているのに婦警に見られないそうですが、外見描写が服装しかないので、細かいイメージは想像で補いました。サバイバルにも慣れた(動物観察でケニアやらガンズバイやらに行っているので)薄は、いざとなるときの強い味方。須藤のベルトで投石器を作って、ライフルを持った相手と対戦したりする!
 動物だけでなく、草花や昆虫にも詳しいのがすごい。彼女の前身を知りたい!
 というわけで、返却日に探したのですが、一冊めは貸し出し中でした……。

「給食のおにいさん 卒業」遠藤彩見

2014-08-19 02:52:03 | 文芸・エンターテイメント
 「俺」こと佐々目宗。給食の調理を担当しながら再び料理人になるという目標を立てている佐々目ですが、ダブルワークを始めてしまい、目の回るような忙しさで、調理場の雰囲気がよくないことに気づくのが遅くなりました。マトリョーシカトリオは険悪、毛利さんは栄養教諭の申し込みをしていない。
 また、給食費を滞納する家もあり、そこの子どもたちは挙動が心配。私立中学を受験したいルミは模試の結果が悪くて落ち込んで。
 この本、帯には「あのおにいさんに、モテ期、到来!?」と書いてあったのですが、ううん? どこが? という感じ。まあ、美玲ちゃんのことなんでしょうが、小学生に思いを寄せられるのが「モテ期」とも思えない……。
 はっ、毛利さんのことですか?
 
 今回は、佐々目が自分の夢を話したら、隠居したこんにゃく屋の磯辺さんにたしなめられるあたりが非常におもしろかった。
「好きなことだけしていられる人生が幸せなもんか。嫌なことも辛いこともあるけど伸びていけるのが、本当の幸せなんだ」
 それを自分なりに咀嚼できたからこそ、お別れの言葉の「レシピ」につながっていったのだと思うのです。
 「給食のおにいさん」、三冊ともとてもおもしろかったです! 卒業、おめでとう!

「今こそ読みたい児童文学100 」赤木かん子

2014-08-18 04:44:47 | 書評・ブックガイド
 先日、研修で仙台に行ってきました。講師時代に勤めていた学校の近く。もうずいぶん変わっていて、知っているお店は文房具屋さんくらい?
 その余暇を使って読んでいたのが、「今こそ読みたい児童文学100」(ちくまプリマー新書)。
 赤木さんオススメの児童文学が紹介されています。非常にコンパクトでいきいきしていて、わたしはこういう読書エッセイが好きなんだとつくづく思いました。
 100あるうち、自分で読んだことがあるのは、12作品しかありませんでした……。好きな作品を繰り返して読むタイプだったのでしょう。「ハイジ」「家なき娘」「秘密の花園」「小公女」が大好きです。
 読んでみたいなと思うのは、まず「砦」!(モリー・ハンター)
 それから、「台所のマリアさま」「バレエダンサー」(ルーマ・ゴッテン)。
 あとは、「たった独りの引き揚げ隊」(石村博子)もぜひ。
 本校図書室にも古い本たくさんありますが、どのくらいこちらで紹介されている作品があるのか、見てみようと思いました。
 この日の研修、オペラ歌手の方が素晴らしい声を聞かせてくださいました! 「蝶々婦人」の解説もしてくださったのです。オペラでは俳優さんの外見よりも歌声が配役を決めるというのがおもしろかった。ヒロインはソプラノ、相手役はテノール、悪役はバリトン(あくまで類型化した例ですけど)。
 自分が知らずにいることを、適切に教えてもらえるのって、楽しいですね。

 で、赤木さんのもう一冊、「お父さんが教える図書館の使いかた」(自由国民社)。これは、レポートの書き方指南です。情報収集の仕方から丁寧に書いてある。これを見ながら調べ学習の指導をしてもらえたら、バッチリです。購入した図書館なら、コピーして掲示してもいいんだって。太っ腹!
 

「ホリデー・イン」坂木司

2014-08-17 12:36:24 | 文芸・エンターテイメント
 息子の歯医者に付き添い。
 息子の治療が終わる前に読み終わってしまい、ああ、このあとどうしよう? と悩んだのですが、その後すぐ会計まで終わったのでホッとしました。今後は二冊、持って行きます。
 坂木司「ホリデー・イン」(文藝春秋)。
 坂木さんの本、八割以上は読んでいるので、シリーズものの番外編だという意識はありました。ただ、シリーズが多すぎて、細かいところを覚えていない。
 まんがのスピンアウトみたいな感じでした。ラストにあとがきがありますが、映画をみたあとなら、すっごい楽しいのではないかな。
 ひとつひとつ、人にはドラマがある、というのを感じさせます。
 好きなのは、「前に、進」。なぜ、彼が大和のところに来ようと思ったのかが描かれるのですが、事実を知らない人の前に息子として立とうという進に胸を打たれます。
 ジャスミンさんの励ましも、いい。こういう必要なときに適切な慰めを伝えるのって、わたしは非常に苦手なので、うらやましいです。最終話でも、ホストたちくらいの子どもがいてもおかしくない年齢だと独身女性が嘆く場面で、
「おかしくはないけど、当然のことでもないわ」
 というんです。
 ナナさんが、中学時代にめぐりあった親友の「ミキちゃん」について語る話とか、お母さんのリハビリについていく大東くんの話もいいです。
 それぞれのラストシーンが、次の話の冒頭につながっていく構成。
 わたし、「ウインター・ホリデー」は読んでいないので、今度はそちらを借りてこようかな。
 

「代書屋ミクラ」松崎有理

2014-08-16 20:32:07 | 文芸・エンターテイメント
 ふふふ、「喜多四番丁」「八萬町」「蒼羽通り」!
 なかでも「刻文丁」には笑いました。仙台の町を反実仮想した物語です。「代書屋ミクラ」(光文社)。
 作中では「北の街」と呼ばれる地方都市で、大学を卒業して間もない「僕」(ミクラ)が、次々と気になる女性に相手にされないまま、論文を書いていきます。
 なんというか、結構困難がある論文ばかりなのですが、ミクラはめげずに取り組むのですよ。これ、ジャンルとしてはSFらしいんですが。わたしとしては、学生時代に過ごした街なので、いろいろ懐かしい。ミクラはたいがい自転車で移動するので、最近の感じがしないですね。携帯も使わないし。
 筆者はわたしとほぼ同時期に仙台に住んでいたんですね。
 花屋、理髪店、アンパンの販売、幼なじみ、喫茶室。そのときそのとき憧れの人がいるんです。でも、いつもミクラの思いは叶わない。
 ああ、でも、なんていったらいいんでしょう。彼の心の中にある神・アカラ様をはじめ、奇想天外な展開がおもしろかったのです。
 独身主義のトキトーさんが女性不信から抜け出したのは喜ばしいですね。
 わたしはこういう話、大好きです。