くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「月刊少女野崎くん」椿いづみ

2014-06-28 05:06:19 | コミック
 実は長いことずっと気になっていたんですが、先日捉販のチラシをもらって、一巻を買いました。
 そしたら、おもしろいのなんの。普段はギャグも冷静に読むわたくしが、ぷっと吹き出してしまうじゃないですか。(特に野崎くんが千代にプレゼントを強引に渡そうとするエピソードが好きです)
 何回か読み直して、娘のピアノコンクールの帰り足で、本屋に寄り、残りの三冊を一気買い。わたしが夢中になって読むのを見た息子が「貸して」といって読み、娘もそのあと読んで。結局、一週間くらいで息子は四回読んだと言っています。
 わたしが好きなのは、やっぱり野崎くんです。
 なんだろう、この魅力は。こういう人柄で少女まんがを描くギャップですかね? 千代が彼を好きになったあたりのことも知りたいなー。
 ほかにも魅力的なキャラがたくさん出てくるのですが、あとは堀さんもいいなぁ。
 椿いづみのほかのまんがも読んでみようと、「親指からロマンス」も買ってみました。
あ、このエピソード、「野崎くん」にも使われてる! という場面が結構あって、ルーツを見ているような感じ。でも、こっちは4コマじゃないんですよ。マッサージの才能をもつ女の子が、体中凝っていそうな男子を見つける(笑)。
 意地悪な姉がその後出てこないのですが、(まだ四巻始めころまでしか読んでないんです)あれっきりの人?
 話を戻して。
 野崎くんたちの今後、楽しみです。7月には新刊が、8月には企画本が出るそうですね。
 ちなみに、息子はたぬきが気に入っているそうです。

「ペテロの葬列」宮部みゆき

2014-06-25 21:34:44 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 なぜ、この小説のタイトルが「ペテロの葬列」(集英社)なのか。
 おそらく、発想の起点がこのレンブラントの絵画だからでしょう。キリストのそばに最後までいながら、自分は弟子ではないと否認した聖ペテロ。師を否定した殉教者。
 作中の羽田光昭は、腹心であった御厨尚憲を裏切ります。彼らは、詐欺事件の黒幕として、いくつもの事件に関与します。いかに商品を信用させるか。いかに金を出させるか。そのような技術を指南するのです。
 御厨の遺体が見つかったとき、わたしはイエスの復活をイメージしました。架空取引と宗教は、共通点が多いように思います。こんなことを言ったら叱られるかもしれませんが、扱っているものの実質は目に見えない。
 自分のそれまでの罪を拭うように行動する羽田は、悪意とともに存在する〈飢え〉を撒き散らしませんでした。それは、前作「名もなき毒」とは異なった行動でもあります。
 けれども、事件を発端として、周囲の人々の生活が暴かれていきます。
 杉村三郎にも、新たな道が拓けます。しかし、それは読者にとってはかなりやりきれないものだともいえるでしょう。
 噂に聞いていたので、なんとなく予想してはいたものの、ため息が出てしまいました。「探偵」としての出発は、嬉しいものではありますけどね。
 
 今回の作品の中で、青色申告の会長さんを表した部分があります。
「人は基本的には善人だ。そして、おそらくこの社長のような人は、どんな状況に置かれても善人であろうとするだろう。まわりに流されず、正しいことと間違ったことを、自分のなかでしっかりと見極めて行動するだろう」
 わたしも、このようなスタンスでいきたいと思うのですけど、難しいですね。

「イーヨくんの結婚生活」大山淳子

2014-06-18 21:21:55 | 文芸・エンターテイメント
 とても寓話的な物語でした。大山淳子「イーヨくんの結婚生活」(講談社)。
 長男の太一郎がインフルエンザで急死。夏目家に婚約者を名乗る女がやってきます。太宰薫。妊娠中らしい。
 次男は高校教師、三男は医者、四男は「青い蝶」を追いかけて行方不明。五男の伊代太と結婚させてはどうか。兄弟たちの伯父志賀直弥は提案します。
 伊代太は、これまで何かを断ったことがありません。ハンサムだし頭もいい。言い寄る女の子たちも受け入れるので、常にブッキング状態。高校卒業資格を取らせて大学へと考えていた矢先、志賀の頼んだ湿布を買いに行って試験を欠席したほどです。姪っ子の宿題の絵日記も書いてあげるし、もちろんこの話も素直に受けます。
 だんだんと物語の背後が見えてきます。小さな偶然の積み重ねで命を失った母の小春。その死を受け入れられずに失踪した父銀之助。妹の子どもたちの面倒を見ると誓った志賀と妻波子。
 人物名が文豪パロディなのもおもしろかった。幼なじみは雅子です!(夏目雅子と雅子妃の名前をかけてあるみたい)
 彼女が海外の仕事で挫折を味わったところも、考えさせられました。
 わたし自身はイーヨくんみたいな人は苦手ですが、おもしろく読みました。

「さいごの毛布」近藤史恵

2014-06-16 21:02:45 | 文芸・エンターテイメント
 老犬ホーム「ブランケット」で働くことになった智美。内気で人と関わることが苦手なので、なかなか就職が決まりませんでした。
 ホームのオーナーは麻耶子さん。元高校教師だそうですが、すごく派手な格好をしています。また、もう一人、碧さんという女性も働いています。
 事情があって飼い主とは暮らせない犬たち。女優の広告塔として利用されているような「クロ」、まだ若いのに預けられている「タヌ吉」、飼い主の死後に遺言によって預けられた「小麦」。
 ときには敷地内に置き去りにされる犬もいます。
 だんだんとホームでの生活に慣れていく智美ですが、碧には何やら秘密があるらしく……。

 わたしも、犬は大好き。この仕事は、犬好きにはつらいだろうと麻耶子さんがいいますが、理不尽なことを見せられることも多く、憤りを感じてしまうからでしょう。
 犬の一生が幸せであればいいのですが、そうではない場合もある。そのときに、「ブランケット」のように包み込んでくれる存在があってほしいと思います。
 また、この物語は犬にとっての暮らしだけではなく、家族のことも考えさせられます。一緒に暮らすことにわだかまりがある智美。家を出るときにも、誰も止めはしませんでした。
 彼女の心に残るのは、母親が倒れたときにいつもよりも冷静に対処したことを責める妹の言葉です。
 おそらく、慌てていて何もできなかった自分を隠そうとしての非難なのでしょう。でも、智美の努力を打ち消してしまいます。
 便利屋の灰原くんとのやりとりが楽しい。鹿肉をめぐって、奈良出身だから食べないと言い張る智美がかわいいですね。
 これまでの劣等感を、だんだんと払拭していけるだろう未来を、感じました。

「調律師」熊谷達也

2014-06-15 05:53:17 | 文芸・エンターテイメント
 熊谷さんは、わたしと同じ高校を卒業された大先輩。そして、この本を読んで、やはり先輩である及川浩治さんのCDを買おうかなと思いました。
 もともとピアノ曲が好きなので、この本もとてもおもしろく読みました。「ピアノのムシ」で調律師という仕事に興味をもったことも大きいでしょうね。
 「調律師」(文藝春秋)。元気鋭のピアニストだった成瀬玲二は、交通事故で妻を失います。さらに、ピアノを弾くときには見えていた色調が、なぜか「匂い」に変化している。つまり、不具合があると異臭を感じるようになるんです。
 その能力は、もともとは妻が持っていたもの。
 このような特殊な能力の持ち主が主人公ですから、悩みながらピアノを弾く女の子とか、全校で「第九」を歌う学校の伴奏者とか、魅力的でした。(「第九」は近くのN中も行事にしてしましたが、もしやそれがモデル?)
 でも、熊谷さんがあとがきに書かれたように、この物語はシフトチェンジをします。成瀬が出張で仙台を訪れた日、東日本大震災が起こるのでした……。
 熊谷さんは、組合の講演会で、この震災と気仙沼(熊谷さんが勤めていた学校があります)のことを描き続けるとおっしゃったそうです。
 岩手・宮城内陸地震からも六年。また、いつ、なにが起こるかわからない。
 成瀬がこだわり続けたものが昇華され、ピアノのやさしい音色が残っているラストが、良かったと思います。

「珍獣病院」田向健一

2014-06-14 13:30:19 | 産業
 「珍獣病院 ちっぽけだけど同じ命」(講談社)。
 珍獣というのは、つまりエキゾチックアニマルのことを指します。
 動物病院の患畜は主に犬と猫。トカゲとかウサギとか、受け付けてもらえないこともあるんだそうですね。
 田向健一さんは、田園調布動物病院の院長。子どものころからたくさん動物を飼っており、イグアナを育てるために部屋を改装してジャングルみたいにしてしまったほどだそうです。(お父さんが大工さんだから、そういうのをぱぱっと作ってくれたらしい)
 やはりもともとの住環境と合わなければ、動物も住みよくないですもんね。
 カメも、リクガメならともかく、ミドリガメを部屋で放し飼いする飼い主さんがいて、甲羅が乾燥して変形することがあるのだとか。
 日本には獣医師を育成する大学が十六校しかないというのも驚きました。実感の向かいに畜産専門の獣医さんがいて、子どもの頃は飼い犬のケアをしてもらったものです。「動物のお医者さん」とか「獣医ドリトル」とかで馴染みもありましたし。
 クラスの子が獣医さん希望だそうです。この本、おもしろいんじゃないかな?
 カエルも結石になるとか、カメの甲羅をパテを使って直すとか、プレーリードッグははげるとか、いろんなエピソードが楽しかった。

 

「万能鑑定士Qの事件簿」8

2014-06-11 03:14:13 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 映画化された回です。莉子は綾瀬はるか、小笠原は松坂桃李が演じるんですよね。ラジオで、ルーブルロケを行ったと聞いたので、もっとヨーロッパ滞在が長いのかと思っていました。
 日本での「モナリザ」公開に際して、現地学芸員を採用したいルーブル美術館。あるきっかけでその試験に参加することになった莉子は、見事に本物の「モナリザ」を指摘し、その座を射止めます。もう一人の学芸員里桜とともに、専門家から講義を受けることになりますが……。
 ルーブル美術館の学芸員との打々発止のやりとりがあるのかな、と以前の巻を読んで思っていたのですが、外国人詐欺グループが登場してきたり、角川映画の看板話があったりで、ちょっと意外な展開でした。でも、これだけ絵が出てきたら、映画としての見栄えはあるでしょうね。「モナリザ」の贋作12枚とか!
 小笠原と莉子の間が近づいたのも、印象的でした。

「やがて、警官は微睡る」日明恩

2014-06-08 15:54:26 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 多分、今が人生でいちばん忙しい気がします。
 今日も雨の中、地区の陸上練習会に行き、終わってからテスト問題づくりのために学校へ。頑張りましたが、市立図書館に返す本の片づけを忘れていました。
 来週はPTAバレーなので、その準備も。
 でも、そんな中でも三日かけて読んだのが、日明恩「やがて、警官は微睡る」(双葉社)。
 武骨な武本と、相棒の塩崎。塩崎の兄が作ってくれる弁当ネタが好きだったんですが、さすがにもう塩崎の光背効果は少なくなっていました。
 それにしても、武本はもう四十目前ですか! そこで見合いをすることになって、待ち合わせたホテルが大惨事に。
 このホテル、二十階が特別室になっていて、ある会合がもたれていました。そこに現れたのは、双子の少年。しかも外国人です。彼らは残虐的な人格障害があり、自分たちの両親と近所の赤ちゃんを殺害。戸籍上ではもう存在しないことになっています。
 ホテルの従業員として潜入した男たちが、会合で受け渡された品物を奪って元締めのもとへ送れば、仕事は終わるはずだったのですが……。
 結構スプラッタでしたし、なんともやりきれない気持ちになることもありましたが、武本の鉄人ぶりにただただ圧倒されます。
 塩崎とのやりとりや、同僚たちの変化も読み応えがありました。チョコレートバーを無性に食べたい……。
 それにしても、このホテル、開業して間もないのに、もうかなり破壊されて忌まわしい場所になってしまいますたよね。営業できるのかどうか、気になったのは、わたしだけでしょうか。

「万能鑑定士Qの事件簿」8

2014-06-06 04:58:04 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 7まですごいスピードで読んできたのに、この巻、さっぱり莉子が登場しないので、半月くらいほうってしまいました。代休の間、やっと読み、台湾に行ってみたくなりました!
 ひなびた海辺の町から観光名所まで、台湾の描写が鮮やかなんですよ。波照間島の水不足解消を願うあまり、詐欺に引っかかったとしか思えない議員さんを改心させるべく活動する、莉子と幼なじみの二人。(葵、結愛)異郷の地で三人が見たものは……。
 非常におもしろいのですが、シェラトンは日本語ができるからという理由で十九歳の女の子を雇ってくれるのか? と疑問に思いました。
 また、彼女の弟。年子でも十八歳以下ですよね? 車で迎えにきてくれたりバイク修理を仕事にしていたりと、そんな年には感じられないのですが?

「他人を攻撃せずにはいられない人」片田珠美

2014-06-04 04:45:39 | 哲学・人生相談
 生協のチラシで気になったものの、注文しないまま時は経ち。
 書店で探して買いました。片田珠美「他人を攻撃せずにはいられない人」(PHP新書)。
 ネット人生相談を読んでいると、世の中にこんなに自分本位な人がいるのかと愕然とすることがあります。自分の仕出かしたことの始末がつけられない人。信じられないようなことをして相手を傷つけても、保身しか考えない人。
 善意に溢れた様子で近寄ってきて、自分の大切なものを奪っていく人について相談する方も多いこと。
 この本も、筆者のもとに相談に訪れた方々のエピソードが紹介されています。
 恋人との不仲を相談した友人が、いつの間にか彼の新しい相手になっていた。専業主婦になってほしいと言われ、モラルハラスメントを受けた。
 いろいろ考えさせられましたが、中でも「根性曲がりにつける薬はない」には笑ってしまいました。もともとは、ラ・ロシュフコーが言ったそうです!
 自己評価が低く、他人の幸福が許せない人が、攻撃に走るのだとか。それなら、我が身の幸せをかみしめて(笑)、まともに受け取らない方がいいのかもしれません。
 日々自分の力のなさを痛感しますが、へこたれないことですかね。いつも笑顔で。