ひじょーに不思議なのです。
amazonで「太郎が恋をする頃までには……」のカスタマーレビューを読んでみました。すると、このラストについて怒っているかたが何人かいらっしゃるんですね。
理由① 離婚することは結局差別問題に敗れたということになる。「破戒」の時代から社会風潮が変わっていない、問題がそれほど根強いことを読者に認識させるだけではないのか。
理由② 現実とは異なるエンディングでは納得がいかない。ドラマチックではなくともいいから、本当のことを書いてほしい。
という感じなのですが、わたしは②のかたに疑問を感じるのです。
なんで、現実と異なると嫌なのでしょう。エッセイでもない、れっきとした小説です。文中に「私小説」を依頼されるシーンがあるからでしょうか。
一人称の作品にはよくあることですが、「私=作者」と読んでしまうのですよね。でも、作品は作者から切り離されたテキストとして読むべきだとわたしは考えるので、「五十嵐今日子=私=栗原美和子」と考えるのは賛成できません。
重松清が書いた一人称小説がすべて彼の生活とイコールではないように。
この作品はかえって現実は「違う」ということを知ることで、読者をホッとさせるような面も持っているのではないかと思うのです。
また、②のように考えるかた、このあとのことを想像してほしいのです。
この作品には、「母と子」の結びつきに関わる描写が多く、実際今日子はハジメよりも母を選ばざるを得ないのですが。
今日子はお腹の中の子供との結びつきに、「太郎が恋をする頃までには……」と決意をしています。それは、親との縁を切っても出産しようという決意の現れではないでしょうか。
今日子は生まれてくる子供の未来に、赤ん坊のハジメがデモ行進に参加したときのことを思い描いていると思うのです。それは、実際に子供を連れて歩くということではなく、海地小夜子が母として自分の子供を育ててきたように生きることを示唆しているのだと思うのです。
この話には、故意に語られていないことがあります。そのひとつは、小夜子の出自です。彼女が出身かどうかはどこにも触れられていません。しかし、生まれた息子を連れてデモに加わるくらいですから、夫と同じ意識を持っている人と見ていいでしょう。
今日子は、母として小夜子のように生きる決意をしたのだと私は思うのです。
と、読み終わってからもかなり考えてしまう「太郎が恋をする頃までには……」が、二月に読んだ本の中でも印象的な作品だったと思います。
あとは、やっぱり「お母さんは勉強を教えないで」がすばらしいです!
そして「テンペスト」と「ふたりのイーダ」かな。まんがでは「神南火」(星野宣之)おもしろかった。二月は二十冊読みました。
amazonで「太郎が恋をする頃までには……」のカスタマーレビューを読んでみました。すると、このラストについて怒っているかたが何人かいらっしゃるんですね。
理由① 離婚することは結局差別問題に敗れたということになる。「破戒」の時代から社会風潮が変わっていない、問題がそれほど根強いことを読者に認識させるだけではないのか。
理由② 現実とは異なるエンディングでは納得がいかない。ドラマチックではなくともいいから、本当のことを書いてほしい。
という感じなのですが、わたしは②のかたに疑問を感じるのです。
なんで、現実と異なると嫌なのでしょう。エッセイでもない、れっきとした小説です。文中に「私小説」を依頼されるシーンがあるからでしょうか。
一人称の作品にはよくあることですが、「私=作者」と読んでしまうのですよね。でも、作品は作者から切り離されたテキストとして読むべきだとわたしは考えるので、「五十嵐今日子=私=栗原美和子」と考えるのは賛成できません。
重松清が書いた一人称小説がすべて彼の生活とイコールではないように。
この作品はかえって現実は「違う」ということを知ることで、読者をホッとさせるような面も持っているのではないかと思うのです。
また、②のように考えるかた、このあとのことを想像してほしいのです。
この作品には、「母と子」の結びつきに関わる描写が多く、実際今日子はハジメよりも母を選ばざるを得ないのですが。
今日子はお腹の中の子供との結びつきに、「太郎が恋をする頃までには……」と決意をしています。それは、親との縁を切っても出産しようという決意の現れではないでしょうか。
今日子は生まれてくる子供の未来に、赤ん坊のハジメがデモ行進に参加したときのことを思い描いていると思うのです。それは、実際に子供を連れて歩くということではなく、海地小夜子が母として自分の子供を育ててきたように生きることを示唆しているのだと思うのです。
この話には、故意に語られていないことがあります。そのひとつは、小夜子の出自です。彼女が出身かどうかはどこにも触れられていません。しかし、生まれた息子を連れてデモに加わるくらいですから、夫と同じ意識を持っている人と見ていいでしょう。
今日子は、母として小夜子のように生きる決意をしたのだと私は思うのです。
と、読み終わってからもかなり考えてしまう「太郎が恋をする頃までには……」が、二月に読んだ本の中でも印象的な作品だったと思います。
あとは、やっぱり「お母さんは勉強を教えないで」がすばらしいです!
そして「テンペスト」と「ふたりのイーダ」かな。まんがでは「神南火」(星野宣之)おもしろかった。二月は二十冊読みました。