くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「小さな物語のつくり方」江坂遊

2013-10-31 19:43:22 | エッセイ・ルポルタージュ
 授業で創作活動を取り入れようかなーと思って借りてみたんですが。
 いや、全く毛色が違いました。「小さな物語のつくり方」(樹立社)。「ショートショート創作技術塾・星派道場」という副題。
 まあ、星新一ならわたしも好きなので、その唯一のお弟子さんならと読みはじめたのですが。
 すみません、江坂さんとは笑いのツボが違うようです。読んでも読んでも、すっきりしない。ついには、お手本として収録されているショートショートを中心に読むようになってしまったんですが、これも、なんだか好みでないというか……。
 中盤は悪くないのに、オチが肩すかしでがっかり、という作品あり。さらに、オチの重要性を語っているのに、なにがおもしろいのかまったくわからないものあり。わたしの読解力が足りないの? 
 「直面する問題」と「みんなガラス玉」「ベル」は理解できたし、結構楽しく読みましたが、「河馬に塩」が本当にわからなくて。この本を読んだほかの方には分かるのでしょうか。何らかの補助知識が必要なのですか? 三回読み直したけど、まるでわからない。
 こんな話です。
 テントコロ博士は弟子のカモ君とネギ君に、河馬を生け捕りにする方法を思いついたと言います。河馬は塩を好むので、沼の縁にまいておく。その塩をなめているところをつかまえる。「河馬も当然、油断をしておるだろう。どうかな」
 やってきた河馬は「球状のもの」を抱えており、落ちていた木の枝でそれを割ります。スイカ割りですね。河馬は、まいてある塩をちょっとつまんで振り掛け、おいしそうに食べ始める。最後、引用します。

 テントコロ博士は頭を抱え込みながらも、ネギ君とカモ君にこう言われた。
 (一行あけ)
 「河馬は今、油断をしておる」

 「マヌケ落ち」だという話ですが、おもしろいの? 非常に悩みます。
 

「鈴の神さま」知野みさき

2013-10-30 19:53:58 | ファンタジー
 読んでよかった物語です。ほんわかと、心がまるくなる。
 知野みさき「鈴の神さま」(ポプラ社)。時代を超えて鈴神安那と交流する村の人々のことを描いています。あの話の人物が後半で語られたり。こういう傾向の話は大好きなので、読み終えるのが惜しかった。
 ピアノのレッスンのことで母と喧嘩した冬弥は、四国で暮らす祖父の家にやってきます。そこに現れたのは、浅葱色の水干を着た子ども。祖父を「夏彦殿」と呼び、妙に時代がかった言葉で話します。
 四国の、小さな町。あんこのおいしい饅頭がある雛屋(ひよこや)。特定の人にだけ見える安那。彼はもう千年ほども生きているというのです。そして、冬弥には幼名で呼ぶように言う。
 しかし、ある運命が冬弥には降りかかります。
 しっとりとした心地よい物語です。冬弥以外の主人公たちは、安那が鈴守神社の神であることは知りません。それでも、彼らの記憶に残り続けることでしょう。

「この役立たず!」堀井憲一郎

2013-10-29 21:19:50 | 総記・図書館学
 ある日、M先生の机の上に、やたらと分厚い一冊の本を見かけました。
 その名も「ホリイのずんずん調査」。気になって聞くと、堀井憲一郎という名を教えてくれました。
 早速図書館でチェック!
 と思ったものの、名前が覚えられない。付箋紙に書いたのに、それを貼った手帳は車の中だよ。
 その後、一冊だけ発見しました。「この役立たず! ホリイのずんずん調査」(文藝春秋)。95年から週刊文春で連載していたんですね。そのためか高島俊夫先生のお名前も数回出てきて、わたしは満足です。
 ホリイさんはテレビショッピングが一週間にどのくらい放送されたかを調査したり、日本三大急流の速さを比べたりします。ダウンタウンの二人の本を比較して、一人称の統一具合から、松本は自分自身で書いているけど、浜田はライターが入っていると推察。(坂井真紀さんの本についても語っています)
 ものの見方がおもしろい。
 ところで、今回はわたくし、改行を多くとってみました。下田治美や伊集院静は改行多いらしいよ。ナンシー関と野坂昭如は少ない。高島先生は中間より上かな。
 チョコボールを買い占めてエンゼルマークを探したことも。
 年号の語呂合わせを調査する回が印象的です。栄えある第一位「イイクニ作ろう鎌倉幕府」。大化改新はバリエーションが多すぎるとのこと。「無事故」「虫殺し」などあるそうです。
 そういえば、年号語呂合わせの本を持っていました。「院政はじまるやろ(1086年)」とか「鉄砲伝来いごよさんが増える(1543年)」とか、覚えましたね。
 はっ、この本に「ロッパさん」という語呂合わせが出てきて、「古川禄波ではないか」といわれる場面がありますが、いやー、うちの母は黒船来航を「いやござったロッパさん」だと言い張るんですよ。ペリーさんだというのに。なんかのキャッチフレーズと混じっているんでしょうね。
 回を追うごとに楽しくなるので、続編を借りられないかと思案中です。

今日一日読んだまんが

2013-10-28 19:24:23 | コミック
 文化祭代休です。歯医者と美容院にいきました。今日読んだまんが。
 出かける前ににしむらともこ「極上! めちゃモテ委員長」。九巻から十二巻。娘が地道に集めています。わたしには言ってこないので、もっぱら夫が買い与えているのですが、古本屋なら一気に買えるのになーなんて思ってしまう。
 で、いつも委員長の美容講座があるんですが、どうもわたしは、こういうの読み飛ばしてしまうんですよね。美容に興味ないからかな? と思ったけどお菓子のレシピもそうだった。
 でも、実はこのシリーズの料理本を買ったことがあるのですよ。シュークリームがおいしそうだったから。当時娘は全く関心がなかったため、学校の自由閲覧コーナーに置いていたんですが、いつの間にか行方不明です。
 委員長料理下手だよね。
 あ、美容院でグッチ裕三さんのレシピを見たからちょっと書いておきましょう。豚肉に塩胡椒、天ぷら粉をまぶして油であげ、ケチャップとわさびを混ぜたソースをかけるそうです。
 そうそう、料理まんがも買いました。鈴木小波「ホクサイと飯」。漫画家のブンさんの食生活まんがですが、うーん、これも説明を飛ばして読んでいますね。「読めば料理したくなる」と書いてありましたが、いや、うちの食卓には向いていませんでした……。
 というのも、義親は一汁三菜が基本。それより少ないと嫌みたいで。ブンさんの基本一品料理は受け入れてもらえそうにないのです。
 でも、干し柿大福はおいしそうだった。
 ついでだから、この前ラジオでやっていたレンコンサラダ。レンコンは酢水でゆでて、きゅうり、ハム、レタスなどとヨーグルト+マヨネーズであえます。
 今晩もそれにしようかと思ったけど、スーパーにレンコンがなかった。鶏肉のネギ塩焼きと、大根サラダ、豆乳絞った残りを加えた芋饅頭を作ろうと思っています。
 それから、鈴ノ木ユウ「コウノドリ」がすごくおもしろかった。産婦人科医の物語です。わたしは医療ものに弱い。ヒューマニズムとか一般的にはあまり知られていない常識も好みです。まあ、自分も妊婦だったので共感できる部分がかなり大きかったんですが。
 高校生の女の子が妊娠してしまう話の、彼のお父さんには泣かされました。産婦人科医は、非常にハードなお仕事ですよね。わたしの住む市にはお一人しかいないため、わたしは隣の市にお世話になりましたよ。一緒に入院した方が、
「初めて来たときにまだ結婚前だったから、おろすなら別の医院を紹介するって言われて、慌てちゃったよー」と言っていましたね。
 出産にはドラマがある、と感じさせられる作品でした。三巻が十二月発売だそうです。
 あと、歯医者で椎名軽穂「君に届け」を二巻まで読みました。これ、両思い前がいいっていわれているみたいですよね。歯医者には五巻までしかありません。ちょうどいいのってどのくらいだろうか?

「星影の女」「身も心も」風野真知雄

2013-10-27 21:01:52 | 時代小説
 やっと、「妻はくノ一」の続編を読むことができました。わたしと同じ時期に借り始めた人がいるのか、二巻「星影の女」が戻ってくるのに半月くらいかかりまして。三巻「身も心も」のあらすじを読むと、彦馬が出入りしている松浦静山公のお屋敷に飯炊きとして入り込んでいるというじゃないですか。では、まだ再会してないんだ? でも、だからといって、二巻を飛ばして読むのもなあ。
 我慢強く待ちました。途中で二巻が欠本だったらどうしようとか思ったこともありますが、無事二冊借りました。……そう、今度は四巻がなかったんですが。
 でも、二巻のラストが非常にはらはらするところで終わったので、続けて借りておいてよかった。
 彦馬の名探偵ぶりが際立ってきています。「甲子夜話」のエピソードの裏に潜む事実を掘り出していく。
 例えば、猟師が自分に向かって吠える犬に腹を立てて殺すと、気づかぬうちに頭上に蛇が狙っていた。
 彦馬は、それまで何年も犬と猟をしていたのに、吠えることに腹が立ったり、蛇に気がつかないなんてことはないのではないかといいます。類似の話では討たれた首が飛んで蛇に噛みついたりもする。一太刀で首を落とせるはずはない。
 静山公は、自分の管轄でおきたある事件を、この話に委託したようです。中国人の王兄弟(つまり、ワン兄弟です……)との件、だそうで。
 わたしは、つい説話的なものをそのまま受け入れてしまうんですが、そのことにも疑問をもつのもありなんですね。
 しかし、織江は彦馬との暮らしの中でずいぶん奔放ですよね。これでは隠居してでも探し出したいと思うよなあ。
 再会したらシリーズ第一部が終わるとか、そういう感じなんでしょうか。(とりあえず、シリーズの続きがあるのは知っています)
 昨日は文化祭。寒かったので風邪をひいたかも。調子よくないですー。

「はるひのの、はる」加納朋子

2013-10-25 20:41:52 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 びっくりした。加納さんらしい着地点でした。
 ある目的のために特殊な能力を利用することにした女性。彼女はふとした節目の折に、ユウスケの前に姿を現します。とある川縁での春。漫画家と肝試しに行く夏。恋しい人を思う女性(でも、この展開は結構わかりやすいと思います)に協力する秋。鷹(チョウヒ)を育てる少女美鳥と知り合う冬。ユウスケはそのたびに「はるひ」と名乗る女の子から頼みごとをされるのです。
 そして、再びのはる。ユウスケは美鳥、漫画家の甥っ子の翼と高校で再会。さらに、はるひにそっくりな華と出逢うことになるのです。
 ユウスケ、とは「ささら さや」の赤ん坊だったユウスケです。「てるてるあした」ではちょっと成長していましたが、今回はもう高校生ですよ。
 といっても、わたし、まだ「ささら さや」読んでないんですが。
 「はるひのの、はる」(幻冬舎)。用意された二つの結末と、その未来を変えるために「はるひ」が選んだ運命が、かなり衝撃的でした。
 それにしても、はるで登場したぼさぼさ頭の人物がそうつながるとは。細かいところまで伏線が張られています。翼の家の飼い犬の名前とか。
 でも、彼女がチョウヒを群れに返そうとする意図に悩んでしまいました。文脈から言うと、はるひが美鳥の死を巻き戻したのは最後ですよね。その前の別の未来で、彼女のチョウヒが人を襲ったということでしょうか。
 「二の句が継げない」も、イッサと知り合っていなくとも「返す言葉もない」とセットでいいのかな。そういうパラドックスはありますが、おもしろいと思います。
 華への気持ちは、前・後で違っていますよね。
 とりあえず「さや」を倉庫から出してみました。明日は文化祭だから、読めないでしょうけどね……。
  

「蟲師」漆原友紀

2013-10-23 21:03:38 | コミック
 読み終わっちゃったよーぅ。すごく残念です。もっともっと読みたいのに。
 漆原友紀「蟲師」(アフタヌーンコミックス)。全十巻。
 宮部みゆきや加門七海が強くお薦めしていたので読んでみたかったのですが、結構売ってなくて古本屋で立ち読みしたけど、なんだかぴんとこない感じがしてやめたのです。
 この夏、なんと二冊百円で売っていたので買ったのですが、それもすっかり忘れて、トランクに入れたままでした。
 秋口に取り出して読んでみたら、これがすごいおもしろいじゃないですか。物語構成も、雰囲気もとにかく好み。こういう物語を、自分も書きたかった、というほどの作品です。
 ひとつひとつの作品が素晴らしくて、大体一日に二本くらいしか読めません。密度が濃いのです。
 でも、全部、読んでしまいました……。内容をある程度忘れるまでしまっておくべきでしょうか。
 そうですね……木と同化してしまう男の話とか、山の主になった男とか、そういう話が印象に残っています。(こう書いて気づいたのですが、わたしは「変身・変化」ものが好きなんですね)
 古き時代の文化や風俗、時折作者のおばあさんから聞いた話がおまけで描かれるんですが、なんだか、やっぱり現代と過去はつながっているのだな、と思わされます。でも、その気配は急速に失われているというか。
 物語の狂言まわしともいえるギンコの目を通して、わたしたちは普段は見ることのできない蟲の世界を垣間見ます。世の中の「障り」は、蟲がもたらしていることが多い。その中には生と死が絡められることもあり、蟲に憑かれた女が子どもを生むこともある。
 ある花によって、一日の命を幾度も繰り返していく娘の話も忘れられません。彼女の目に映る光景は、もはやわたしたちのものとは違うのです。
 影踏みで実体化する話も、とてもよかった。(なんかタイトル覚えていないんですね)
 酒づくりの話、鏡磨きの話、ギンコの過去、書き留め留ために生まれてきた娘などなど、世界観に圧倒されます。
 アニメもよかったと聞くのですが、借りられるんですかね。(TSUTAYAの会員でもないですけど)

「お江戸の都市伝説」

2013-10-22 21:14:18 | 古典
 出版は五年前です。時間があるときに読もうと思って鞄に入れたまま、それごとしまい込んでいました。見つけてからもつれづれに、あちらこちら読んだもので、どこかを繰り返して読んでいたり。
 「お江戸の都市伝説」(PHP文庫)。江戸期にまとめられた怪談や説話から取り出した物語をジャンル分けして紹介しています。「耳袋」や「諸国百物語」「稲生物怪録」といったところですね。
 わたしはそういう系統の話が大好きな小学生でしたが、当時読んだような本は最近刊行されていませんよね。それこそ「都市伝説」や「実録怪談」は多いですが。
 この本に紹介されている「宗丹狐」は、千利休の孫に化けて茶会に出席した(もちろんお茶をたてるのです)そうです。風流ですね。それから、空から降ってきた男の話がインパクトありすぎでした。足袋だけはいていたそうです。京都の武家の息子なのだといい、愛宕山で出会った老僧のあとを着いていったはずだと話します。彼の足袋は、確かに京で作られたもの。天狗の仕業だろうと噂されたそうですが、奉行所の役人は扱いに困って罪人を入れる「溜」に落としたのだとか。
 ほかにも「飴買い幽霊」や「雪女」「河童の相撲」の話もあります。いまどきだとこういう話はうけないんでしょうか。娘は帯を見て、
「狐の嫁入りって、怖いの? しゃべる猫は?」
 と不思議そうなんですが、まあ、あんまり刺激的ではないかもしれませんよね。
 ただ、やっぱり割り切れない不思議な感じが、こういう物語からは立ち上がるのです。そう、「あやし」といえばいいのでしょうか。
 このところ、図書委員会で壁新聞づくりをしているのですが、学年の読書家にインタビューしようと企画したら、
「都市伝説しか読んでないみたいですけど、それじゃダメですよね?」
 という学年があって、人選には苦労しました。怖い話を好きだという人は、一定数いますよね。ただ、最近は血なまぐさい傾向が強いようにも思うのです。ちょっとしんみりするものが残ることが必要ではないでしょうか。

「烏は主を選ばない」阿部智里

2013-10-20 19:12:22 | ファンタジー
 細かいところを忘れていますが、おもしろかった。阿部智里「烏は主を選ばない」(文藝春秋)。
 もちろん、「烏に単は似合わない」の姉妹編です。桜花宮に飛び込んできた若宮お付きの少年、雪哉が主人公で、陰謀渦巻く宮中の様子を描きます。兄長束を主上にと画策する一派から命を狙われる若宮。味方と呼べる人は非常に少なく、警備も澄尾という男が一人だけ。若宮の要求はかなりハイレベルで、雪哉はへとへとなんですが、段々と彼の人柄に惹かれていきます。
 賭博のかたに売り飛ばされたり、桜花宮に同行したことが発覚しそうになって一人だけ取り残されたり、それでも若宮の考えの根底がわかっている雪哉は対応します。
 今回も周到に隠されたある事実に、しっかり騙されました。それは、雪哉の素性に関することです。どうりで人物紹介に名前が書いてないはずだよ。敦房に関しても。あ、信頼できる情報源が誰かは予測していましたよ。 
 思うに、長束と自分の兄とが、無意識のうちに雪哉の中で重ね合わされているのではないかと。血筋とか命運によって選ばれることへの憤りとでもいいますか。雪哉がぼんくら次男坊を演じているのは、もう冒頭からわかっているし、若宮自身も同じような立場です。だから、若宮にも即位してほしくなかったのではないでしょうか。うがちすぎですか?
 こうなると、若宮が浜木綿たちとどういう政治を行っていくのか、気になりますね。
 今回は澄尾がすごく格好よかったので、続編での活躍も期待しています。

「奇跡の教室」伊藤氏貴

2013-10-19 19:35:31 | 社会科学・教育
 何度もチャレンジしたのに、なかなか読み切れない本というのがあります。わたしにとっては、「灘校」「銀の匙」「エチ先生」の橋本武先生の本がそうだったのです。図書館から三回くらい借りたかな……。今回も移動文庫用に貸してもらって、借りたままでした。でもっ、今回はちゃんと読みましたよ! 素晴らしくて橋本先生の本を買いに走りました。うーん、是非ともこのプリントをやってみたい。「銀の匙」読んでないけどね。(これも買いました)
 伊藤氏貴「奇跡の教室」(小学館)。副題は「エチ先生と『銀の匙』の子どもたち」「伝説の国語教師・橋本武の流儀」です。
 灘校は中高一貫で、六年間同じ先生にみっちりと習う。中でも橋本先生は「銀の匙」を教材として教科書にはない「学び」を伝えてきた。教え子たちは各界で活躍し、亡くなった遠藤周作さんや弁護士の海渡雄一さんがいる。そんなイメージを持っていたんです。
 いや、この情報が間違っているわくではありません。でも、それだけではない。簡単にはまとめられません。橋本先生の授業を、現在の視点から見つめると、ポートフォリオであり、メディアリテラシーの視点をもち、クリティカルリーディングでもあったと、著者は語ります。橋本先生自身は、それを「脱線」としています。「銀の匙」をなぞりながら、日本の伝統文化や古典、研究レポートと多角的に展開していく。自分の幼少期を振り返った作文を書いたり百人一首をしたり。好きな表現を視写したり語句を使って短文作りをしたり。
 毎回手製のプリントを持ってきて、それを自分でまとめていく。年度末に製本するそうです。うわー、やってみたいよー。そう思っていたら、学年の変わり目に転校することになった生徒さんが、どうしてもそのプリントをやりたいと橋本先生にお手紙を書いて送ってもらったエピソードがあって、目頭が熱くなりました。
 また、独特の授業に焦りを感じてか、苦情めいたことを言った生徒に「すぐ役立つことは、すぐに役立たなくなります」といったところも、ぐっときました。
 国語は「学ぶ力の背骨」という言葉も印象的です。わたしは関心を持ったことは、ノートに内容を書き留めてきたんですが、その活動自体が非常に国語的だったのかもしれないと思いました。
 わたしはどちらかといえば熟読玩味はしない方なので、反省しきりです。
 ただ、追体験が大切だと話される部分は、とても納得しました。ある本で、国語の教科書に蟻のことが書いてあったら、実際に校庭に出て観察をするのか、というようなことが書いてあって、わたしはそれのどこがいけないのか、ともやもやしたものが残っていたのですね。
 先生の教え、もう少し読んでみます。