くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「むすびつき」畠中恵

2018-08-31 05:44:23 | 時代小説
 「しゃばけ」最新刊。
 いつもは二ヶ月くらい待って借りることが多いのですが、今回は整備してすぐだったみたいで、新刊棚にありました。
 畠中恵「むすびつき」(新潮社)。
 今回は若旦那の前世を妖たちが気にかける話がメインですね。
 まずは金次と若長の話「昔会った人」、若旦那留守中に三人の死神が訪ねてくる「ひと月半」、鈴彦姫のピンチ「むすびつき」、鬼女もみじが三百年前の縁をたどってくる「くわれる」、輪廻転生がテーマの「こわいものなし」。
 わたしは「くわれる」がいちばんおもしろかったのですが、なんか中途半端な終わり方だったので、続きが気になってなりません。
 鬼女のもみじは、三百年前若旦那の前世だった坊主と言い交わしたものの、親が反対して別の男とめあわせようとしたため逃げてきたらしいのです。
 もみじと故郷を出てきたのが悪鬼の青刃。親はこの青刃との縁談をすすめたいらしいのです。
 ちょうど来ていた栄吉が、新作の団子と考案の元になった菓子屋について話しています。
 もみじはものすごい美人ですが、悪鬼なので人を食います。青刃も然り。栄吉と青刃が賭けをすることになり、場合によっては栄吉は食べられるかもしれません。若旦那が機転をきかせて引き分けになるように算段するものの、もみじと於りんが拐われる騒動があり……。
 この本で何冊めなんだろうとか、もう一度読み返したいけど順番を正確にはたどれないなーとか、いろいろ思いますが、キャラクタープレイもありつつ、今回もするっと読めました。
 栄吉が登場するといつも思うんですが、辛あられ食べてみたいわー。

「わたしの本の空白は」近藤史恵

2018-08-30 05:57:47 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 タイトルが「わたしの本の空白は」(角川春樹事務所)だったので、ビブリオミステリかと思っていました。
 記憶喪失ものです。主人公「わたし」は病院で目覚め、「三笠南」という名前だと知らされます。記憶を失っているため、バス停の表示みたいだと思ってしまうあたりがおもしろいですね。
 慎也という夫が現れて、義母と義姉のいる家に帰ることになります。
 つっけんどんだけど、クールな中にも配慮をしてくれる義姉祐未。認知症気味で誰かの助けが必要な義母。東京に住むたった一人の妹小雪。
 そして、夢の中に現れる美しい男性。
 ロマンチックサスペンスという感じの作品です。
 自分自身のこと以上に、夢の中の男性のことを思い出したい南ですが、周囲はそれを快く思わない。
 やがて、その男性は慎也の弟の晴哉だと分かるのですが、義母も祐未も慎也も、そのことには触れたがらない……。
 南の思いと切なさ、忘れたかった出来事の重さが苦しいです。
 蛙の王子と、晴哉が自宅で飼っていた蛇は、何かのメタファなんでしょうか。
 渚パートの話が、どこかで進行していく余白のような展開が、やっぱりうまいなぁと思うのでした。

「平安女子の楽しい!生活」川村裕子

2018-08-29 05:59:27 | 古典
 千年前の女子も、ガーリーだったことが伝わってくる一冊。川村裕子「平安女子の楽しい!生活」(岩波ジュニア新書)。
 古典常識を学びたい人にもってこい。「インテリア&ファッション」「ラブ」「ライフ」の側面から平安時代の生活を紹介してくれます。
 この標題からもわかるように、できるだけ現代の中学生に親しみがもてるようなポップな表現が使われています。
 「蜻蛉日記」の説明は「王朝ブログ」! さらに、口語訳も「シャンプーして、メイクして、ふんわりいい匂いがする着物を着た時の気持ち。そういう時は、誰も見ていない所でも、心のなかはわくわく気分!」(「枕草子」「心ときめきするもの」)という感じで、どきどきマーカーラインが入っています。
 特に服装とか調度品、文のやりとりなど、わかりやすい表現で、読んでいると楽しいんです。
 「忘らるる身をば思はず誓いてし……」の二つの解釈の話もおもしろく読みました。
 ①心配なの……。私のことを忘れちゃったんだから、あなたの命、きっとなくなっちゃうわよ。(脅迫オトメ説)
 ②心配なの……。あなたの命がなくなると思うと私、本当に本当に心配なの。(純情オトメ説)
 わたしは①だと思ってましたー。
 今回は岩波ジュニア新書をまとめて配架しました。中学生には豊かな知識に触れるいいシリーズだと思います。

「スイカのタネはなぜ散らばっているのか」

2018-08-28 07:40:41 | 自然科学
 8月上旬、息子の三者面談がありました。
 階段を上って踊り場で足を止めると、図書室のインフォメーションがあります。
 春先は「本屋大賞」の歴代図書が司書さんのコメント入りで紹介されていました。
 司書さんは、息子の友達のお母さん。今回は、新着図書情報でした。
 そのなかでわたしが読みたいと思ったのが、「スイカのタネはなぜ散らばっているのか タネたちのすごい戦略」(草思社)。稲垣栄洋、絵・西本眞理子。
 さっそく図書館で借りてきました。
 タネというのは、とにかく自分のエリアを広げて芽吹く使命があるのだなと思わされました。
 栄養分にあたる部分が、それぞれの植物で違う。米、大豆、林檎の例が印象的です。
 南瓜の果肉が残っていると、発芽が制限されてしまうというのも驚きました。
 だって、南瓜なんて畑の端っこにも自然に生えてくるものでしょう?
 果肉に、発芽を妨げる物質があるのだそうです。
 その他にも、種の外側を硬い殻が包んでいるもの(梅とかアーモンドとか)も多いと感じました。
 意外だったのは、みかん。接ぎ木で増やすので、タネが入っているのは、他の柑橘類と受精したものだそうです。
 わたし、給食に出たみかんを植木鉢に埋めたら芽を出したことがあるけど、こういうの新種なんですかね?(十五センチくらいで枯れました)
 子孫を残すために植物が工夫していることがよく分かりました。
 息子にもおすすめしておきたいと思います。わたしはもう返したので、学校から借りてきてね。

「一発屋芸人列伝」山田ルイ53世

2018-08-27 05:36:57 | 芸術・芸能・スポーツ
 雑誌のおすすめ本で読んで、興味が湧きました。
 山田ルイ53世「一発屋芸人列伝」(新潮社)。タイトル通り、印象的なフレーズで一世を風靡しながらも、その後失速した芸人さんの現在を描いています。
 レイザーラモンHG、コウメ太夫、テツandトモ、ジョイマン、ムーディ勝山と天津・木村、波田陽区、ハローケイスケ、とにかく明るい安村、キンタロー。、髭男爵の十組が取り上げられています。
 そう、自らの活動も振り返っているんですね。髭男爵さん、ついこの間だと思ったら、紅白出場は十年前だったというではないの。
 そんな前だっけ?
 最近時の経つのが早いですよね。いやまあ、わたしがほとんどテレビ見ないせいもあるんですけど。だいたい、どんな芸風だったかわからない方もいらっしゃいます……すみません。テツandトモは好きで、特集番組も見たのでよく覚えていますが。(今CMも出てますよね)
 えーと、ムーディ勝山さん。
 わたしは地元東北放送のラジオ番組「それいけミミゾー」のラジオカーで親しんでいたものですから、歌で人気のあったことを知りませんでした……。だから、登場のたびに「チャラチャッチャッチャラーラ」って歌ってたのか! と……。
 この本には、ラジオカーのことはひとつも触れられていませんが、ロケバスの運転手云々で天津・木村氏と争ったという話題が紹介されています。
 HGさん、安村さんの奥さんの話題が素敵だと思います。仕事が思うようにいかないときでも、支えてくれる姿にぐっときました。(HGさんの奥さんは社長だそうですよ)
 そういえば。テレビでも同様の企画があって、結婚式の余興の仕事で定期的に収入がある芸人さんの話をしていたと聞きました。(ラジオだったので、誰だったか聞き逃しました)
 「一発屋」とはいいますが、ここに登場された方々は記憶に残っている芸人さんたちだと思います。携帯の予測変換ですんなり出てきましたよ!
 教え子で芸人を目指している子がいたのですが、先のことを考えてやめてしまったと聞きました。
 第一線を走り続けるのは大変なことですよね。

「気がつけば動物学者三代」

2018-08-26 11:36:56 | 自然科学
 書店で見つけてたら買うのに! 先に図書館で見つけたので借りてきました。
 今泉忠明「気がつけば動物学者三代」(講談社)。 
 お父さん(吉典さん)の研究の手伝いをしているうちに、様々なプロジェクトに参加して「イリオモテヤマネコ」や「ニホンカワウソ」の写真を撮ったり生態を調査したりするようになります。
 読んでいて印象が強かったのは、標本づくりの大切さです。
 今はカツオブシムシを使ってつくるという話がおもしろかった。
 科学博物館にある標本は、世界のものと比べると数が少ないそうです。 
 アメリカでハイウェイを走っているとき、余りにもひかれた動物の死骸が多かったので標本にしたいと思ったものの、頭蓋骨が破壊されていることから断念したといいます。
 おもしろいんですが、読んでいるうちになんだかこのエピソード知ってるんだけど……というものが多くて。
 冷静に考えると、以前同じコンセプトの本を読みましたよね。「ボクの先生は動物たち」。 
 さすがに本書ではお父さんのことを隠していません(笑)。
 最近監修の仕事も多くてそのために勉強をしているとか、七十過ぎても現役でフィールドワークに出かけていくというお話も、わくわくしますね。
 

「ブラバン甲子園大研究」梅津有希子

2018-08-25 04:58:49 | 芸術・芸能・スポーツ
 金足農業の準優勝、素晴らしいですね。東北勢の活躍は心が浮き立ちます。
 わたしも、これまで教え子が二人、甲子園のマウンドで投げています。
 先月、この文庫が出たときに、近い将来図書室に入れようと思ったものの、自分で買うのは踏ん切りがつきませんでした。
 が、本校吹奏楽部が大きい大会に出場することになり、応援をこめて特集本棚を作ることにしたのです。
 吹奏楽がテーマの小説や「あるある吹奏楽部」などを揃えているうちに、この本も並べたくなりました。
 しかし、どこにも売っていなくて。
 五件めでやっと発見です。よかった。

 わたしは、読んだあとにそれまでとは価値観が変わる本に魅力を感じます。この本は、まさにそんな一冊。
 梅津有希子「高校野球を100倍楽しむ ブラバン甲子園大研究」(文春文庫)。
 高校野球の名門校は、吹奏楽部もコンクールの上位入賞校だった。オリジナルの曲や演奏の様子を、様々なエピソードとともに紹介しています。
 地区の野球応援も、仕事柄ほぼ毎年行っています。「コンバット」「アフリカン」「ダッシュケイオー」は分かります。(なぜ「ケイオー」なのか謎でしたが、もともと早慶戦で使われた曲なんですね)
 読んでいるうちに、「チャンス紅稜」がどんな曲なのか知りたくなって検索してしまいました。
 たまたま甲子園応援の番組を見て、アレンジ担当の生徒さんがどんな曲も応援仕様にしてしまうのにびっくりしたんです。(「関白宣言」をアレンジしてました。また初見で吹けちゃうバンドもすごい)
 解説していたのは、もしかして梅津さん?
 ちなみに、娘は通信教材で読んだ(図書館機能がある)そうです。
 甲子園の応援を漫然と見ていた自分が憎い。やっぱり、読みたいときに入手しないといけませんね。

 ※梅津さん、「だし生活、はじめました。」の方なんですね。以前読みましたよ! また借りてきたい気分になりました。

「繕い屋」ほかライトノベル

2018-08-24 05:15:02 | YA・児童書
 矢崎存美「繕い屋 月のチーズとお菓子の家」(講談社タイガ)。
 悪夢を見る人のトラウマを読み取り、調理して食べさせることによって傷を癒していく連作です。
 印象的だったのは、「お菓子の家」。
 大学進学の費用を父に出してもらいたいと連絡をした真梨子。父は離婚の原因を真梨子が知らないことに気づきながらお金を出してくれます。しかし、父が浮気をして自分たちを棄てたのだと信じていた真梨子は、さんざんひどいことを言ってしまう。
 その後、母の姉から「浮気したのは母」と知らされ、部屋を探ると父から送られてきた数々のプレゼントが……。 
 父にはもはや会ってもらえない。
 その思いから、家に男性が訪ねてきてドアをノックされる夢を見るようになります。
 散歩で知り合った「花」という女性と、猫の「オリオン」が、真梨子の夢の家をお菓子に変えて食べるようにいうのです。
 花は、人々の傷を内面から癒してくれます。
 両親を亡くした。リストラにあった。離婚して、娘も遠くに行ってしまった。そんな人々が、花のおかげで悪夢から抜け出せます。
 しかし、最後の「透明な夢の中に」で、傷を癒すために花が相手の体内に入り込んでいくことが発覚! それを見ていた従弟の友が愕然としていたので、実際目に見えるのだと思います。
 散歩とか新幹線の中で、という話もあったのですが……。人目に触れないの?

 「京都西陣なごみ植物園」の二巻も読みました。
 近くにできたカフェで「晴明の愛でた桔梗」を高額で売り付けようとする詐欺があったり、角倉了以の茶会の再現のプロジェクトで「禁花」を探したりするの、おもしろかった。
 神苗くんにライバル登場、も今後が楽しみです。
 
 それから、「偏差値70の野球部」(小学舘文庫)も読んでみましたが、三巻冒頭で挫折。さっぱり野球小説っぽくならないの……。

「三千円の使いかた」原田ひ香

2018-08-23 05:55:59 | 文芸・エンターテイメント
 原田さんの経済小説「三千円の使いかた」(中央公論新社)、おもしろいですよー。
 御厨家の姉妹真帆と美帆。母の智子。祖母の琴子。ホームセンターで知り合った安生。
 彼らの視点で、お金や生活について考えることができます。
 美帆は、入社当時からお世話になった先輩がリストラされたことにショックを受け、自分の生活を見直すことにします。
 姉の真帆から固定費の見直しを提案されますが、今一つ不安のため、節約アドバイザーの講演を聞きにいきます。
 曰く「8×12は魔法の数字」。毎月八万ずつ、ボーナス二万貯めると一年で百万円が貯められる!
 先日の旅行でかなり散財してしまったわたしには、頭の痛い問題です。
 子どもが大学に入るまでに一千万貯める目標がある真帆ですが、友人が結婚する話を聞いて複雑な気持ちになります。
 豪華なダイヤの婚約指輪、新居は新築のタワーマンション。しかも、真帆が結婚したときに仕事を辞めたことを信じられなかったというんです。
 真帆の旦那さん、いい人だなぁーと思います。
 
 わたしと同年代の智子。「すべての不調は更年期に通じる」、わかる、わかります!
 先日腰が痛くて大変だったのは、現在すっきり治りましたが、左肩が痛いのは? 奥歯がしくしくするのは? それから、美帆の恋人が奨学金返済で結婚話が行き詰まるエピソードも、なるほどと思いました。

 ふらふらと浮き根草のように生きている安生の考えを変えた「事件」が印象的でした。
 長く付き合っている相手がいるのに、アルバイト先の女の子が妊娠したといっておしかけてくる。
 この後悔をどう償うか、琴子が背中を押してくれます。
 家計簿の話題もなるほどと思います。
 結婚当初はつけていたんだけどなぁ。今はどんぶり勘定なので、反省しております。

「龍にたずねよ」

2018-08-22 05:56:48 | YA・児童書
 みなと菫さんの新作「龍にたずねよ」(講談社)、買いました。娘の読書感想文にどうかな、と思って。
 結論からいうと、読書感想文向きのストーリーではないので、娘には読ませていません。いませんが、わたしはおもしろくて一気に読みました。
 おてんばで知られる青海領の八姫は、隣国萩生の領主のもとに人質に向かうことになりました。
 境界の山で「狐のゴンザ」と呼ばれる若い男(権三郎)と出会い、これから先は命がけの戦いになると予言されます。
 権三郎は、先の領主「おじじ様」の使用人。周囲の意地悪にめげそうな八姫に不思議な術を見せて慰めてくれます。
 そんな中、好戦的な羽田軍が攻めてくることが分かり……。

 八姫の明るさと素直さ、神様なのにちょっと不器用な権三郎、二人を優しく見守る「おじじ様」、八姫の父や兄、と魅力的なキャラクターも素敵です。
 龍と出会ったからといって、その力で戦に勝てるわけではないし、自滅してしまった領主たちがいない状態でこれからどうなるかはわからないのですが、未来を思う彼らのまっすぐさが、やっぱりいいなぁと思うのでした。