くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「あさのあつこのマンガ大好き!」 その1

2012-01-31 21:22:40 | 書評・ブックガイド
この本を読んで、いちばんの感想は、「あさのさん、もうお孫さんがいるんだ~」。その次は、「あさのさんと柏葉さんて同じくらいの年なのね」でした。
まあ、それはさておき。
先日、女性週刊誌で、あさのさんと三浦しをんさんが「大人読み」できるまんがについて対談するっていうから意気込んで立ち読みしたんですが、うーん、なんか懐かしい作品を並べているなという感じがしました。
この本も、コンセプトとしては同じなんですけどね。「あさのあつこのマンガ大好き!」(東京書籍)。
多分、原稿を書いたというよりはインタビューものだと思うんですが。かなり話し言葉だし。巻末に年表がついていて、あの地震のときには東京のホテルにいたとか。(でも、そんなときなのに、「東京書籍の編集者がインタビューに来たのにはあきれた」とのこと。)
校正間に合わなかったのかも、と思うような改行のミスも二カ所ありました。
仕方がないのかもしれないけれど、アニメと原作まんががごちゃごちゃに語られていることが、厳密な意味ではどうなのかと感じます。特に最終回が違うことなど言及されていました。
あさのさん自身が、自分の作品のメディアミックスにそれほど抵抗がないと語られているので、そのせいもあるんでしょうか。
古い作品ほど、同一視される傾向が強いように思います。「ひみつのアッコちゃん」の呪文なんてアニメだけだし。(あさのさんも「あつこ」だから思い入れが強いそうです)
わたしは、ちょうどあさのさん世代とお子さん方の世代の間なので、自分にとってどんぴしゃという作品は少なかった。読んでいるけど、好みではないものが取り上げられていた感じですね。
その筆頭は、「ホットロード」。ごめん、別マでこれだけ飛ばして読んでいた。全く興味ないです。このころなら、わたしの好みは多田かおるだなー。「ピンクの雪が降ったら」とかデボラさんとか……(タイトルなんだっけ?「きみの名はデボラ」?)。聖千晶もよかった。最近、「お祭りシリーズ」(苫子と峻平ちゃんですね)を読み返してしまいましたよ。
それから「ろくでなしBLUES」も嫌い。いや、不良ものだからという訳ではないですよ。それなりに読んではいるので(弟がそういうの好きなのです)。
この作品の嫌な点はふたつ。ヒロインが好きになれない(敵に捕まるような役立たずは許せん、と思いました)。序盤ギャグ調だったのが、人気とともにシリアスになっていくのが納得できない(ジャンプはいつもそうですけどね……「キン肉マン」までそうなったときには困惑しました)。もしわたしのイメージによる記憶違いだったらごめんなさい。
最後にあさのさん推奨マンガ36タイトルの紹介があるのですが、わたしと被るのは数作品(萩尾さんのと、「らんま1/2」「とりぱん」)くらいですね。うーむ、道理であさの作品との間になんだか隔たりがあると思った。
お好きなのは手塚治虫と吉田秋生だそうです。ただ、「BANANA FISH」がアッシュの死で幕を閉じるのが不満だそう。わたしはあれはあれでいいと思うんですが。アッシュの最期の表情、目に浮かびます。
吉田さんの作品、わたしは「吉祥天女」が好きだったんですが、それについてのコメントはなかったなー。「川よりも長くゆるやかに」や「櫻の園」はあるので、やはりあさのさんの空白期にあたるところが、わたしの思春期だったということでしょうか。(年表にはタイトルが記載されていますが)
こういう企画はおもしろいかも。感化されたらしく、わたしもまんがについて語ってみたくなりました。

「てるてるあした」加納朋子

2012-01-30 05:38:06 | ミステリ・サスペンス・ホラー
早速図書館で加納さんの本を借りてきました。「てるてるあした」(幻冬舎)。
佐々良という町にやってきた「私」(照代)は十五歳。両親が享楽的な生活をした揚句、夜逃げを決行。照代だけが、母の遠縁にあたる鈴木久代さんに預けられることになります。
久代さんは「魔女」とも「閻魔大王」とも言われる厳しい女性で、元は小学校の先生。しぶしぶ同居させてはくれますが、働くことを求められます。
久代さんの友達のお夏さんと珠子さん、みんなが自然に集まるサヤさんの家、その友人のエリカさん。子供のユウスケとダイヤ。電気屋の松ちゃん。市場の大木さん。
小さい町。全く知り合いのいない第一歩から、次第に親しい人が増えていくのです。
高校生のエラ子(本当は「偉子」で「よりこ」)と知り合い、数学の問題を解いてやったことで、勉強に対する思いに気づく照代。勉強がしたいのか、高校に行きたいのか。久代さんに言われた言葉を噛み締めながら、次第に視野を広げていきます。
照代と久代さんは共同生活を続けますが、ある日、家に幽霊が出現。腰を抜かしそうになる照代をよそに、久代さんは淡々としている。どうやら心あたりがあるらしいのですが……。
テーマに据えられるのは、虐待の連鎖でもあります。照代も母も、久代さんに向き合ってもらったからこそ生きていける。
やたらと早く最終章にたどり着いたなと思ったら、なぜか、途中の二編をとばしていて、意味不明の登場人物や出来事があって頭を抱えてしまいました。いつの間にカセットをあげてしまったの? 冷蔵庫の絵って何? 等々。いや、なんでとばしてしまったのか、記憶が曖昧です。「幽霊とガラスの林檎」を読み終わったところで、用事があったんでしょうね。(娘にピアノを買ったので、その手続きかと)
で、買い物してから「花が咲いたら」を読み、夕ご飯を作って「実りと終わりの季節」を読んだんです。
でも、まあ、事情がクリアーになってから「ゾンビ自転車」と「ぺったんゴリラ」を読むと、伏線がはっきりしますね。
夏の暑い日、エアコンも扇風機もないし、家電は旧式であると語る照代は、久代さんの言葉を紹介します。
「あたしが死ぬまでもってくれりゃあもうけもん」
それに対して、
「家電は普通、百年ももちませんよ」と返したら、久代さんは笑ったというのですよね。
読んだからわかるのは、久代さんは自分の死期を知っているということ。
とても、重い。
この話は、視点が照代でありながらも、根本のところは久代さんの物語であるように思います。
前作の「ささら さや」を読んでいないのですが、おそらくそこでも、久代さんは堅苦しくて背筋をぴんと伸ばしたおばあさんなのでしょう。
最後に一人だけ特別に受け持った女の子のことが、今でも不憫でならず心にひっかかっているような。厳しいけれど、いつも誰かを気にかけている久代さん。ワカッテルヨ、キイテルヨ、シッテルヨ、ヤッテルヨと答えた沢井やす子。彼女が何者なのかを告げずに、何気なく「慶子さん」(けいこ、とふりがなが!)と言ってくれるやさしさ。
壊れてしまっても、またかたちを変えて誰かの役に立てる。そんなメッセージも伝わってくる物語でした。

「ハエザワ先生の理科教室」相澤信

2012-01-29 11:30:36 | 自然科学
ハエザワ先生こと、相澤信先生。家人がお世話になったので、お目にかかったことも講演を伺ったこともあります。だから、この本の骨子もある程度分かっていたのですが、なんとなく気になって。古川のN書店で平積みになっているのを買いました。
生物の教師として赴任した学校で、ハエを生きた教材として研究されてきたことをまとめた作品です。「ハエザワ先生の理科教室 生物時計と子どもの生活リズム」(文芸社)。
理科嫌いな生徒が指摘されつつある時期、なんとかその楽しさを伝えようと奮闘する相澤先生。知人からもたらされたイエバエを教材にすることに決め、女子高生たちに「血統書つきのハエ」を提示します。
実はわたし、大概の虫は苦手じゃないし、冷静に駆除もできるのですが、蛆だけは駄目なんです……。成虫は手で叩いても平気なんですが。
だから、女子高生たちがはじめは抵抗感をもちながらも、実験を通して虫を見る目が変わっていくのがおもしろかった。
サナギに変化する物質は、体のどのあたりにあるのか。水や漂白剤につけてみてはどうか。ハチみたいにダンスをするのか……。
毎年、研究の成果を冊子にまとめていたそうです。
二十二年経って、当時の女子高生が母親として子供に理科的な思考を伝えるようになっているのかどうか。
そのことをアンケートで掘り下げるところ、わたしにはたいへん興味深いものがありました。
教育って、自分の血肉になるものなんだということを、感じさせられたんですね。考察し、実験し、試行錯誤の中からたどり着くことをまとめていく。子供に自由研究の朝顔の観察についてアドバイスすることにも、きちんと教えられたことをいかしていけるのです。
文中にある女子高、農業高校は、学科改編で今は違う校名になっています。先生が勤務されていた頃に在籍したであろう知人の顔が数人浮かびました。教えを受けているのかしら。
さて、わたしも受験生の担任。朝型の生活リズムに切り替えができなくて失敗したなんていうお話を聞くと心配になります。
夜更かしは肌の健康にも大敵! 10時から2時にかけては成長ホルモンが分泌されるんだよ! という話をするのですが、中には、10時に寝るなんて考えられないという子もいます。
睡眠のリズムが狂っていくと、きちんとした生活が送れない。とても心配ですよね。これから先はもっと宵っ張りな子供も増えるかもしれません。
あー、しかしわたしは毎日ものすごく早く寝るので、夜中に目が覚めることたびたびです。それもちょっとどうかなー。朝型タイプってことでしょうか。昼寝も滅多にしませんね。
震災時の苦労についても書かれています。大崎、大変だったんですね。非常に活動的な相澤先生の姿勢に、パワーをいただける本でした。

「宿命」東野圭吾

2012-01-28 06:24:38 | ミステリ・サスペンス・ホラー
ある重大なキイが、ラストまで隠されています。小説だからできることなのかも。
東野圭吾「宿命」。講談社ノベルズ版で読みました。この時期の作品は結構好きですね。今はなんとなくスカした感じがするというか(失礼)。
「分身」もこういうモチーフだったような気がするんですが。「似ているのに違う二人」に関わるストーリー展開は多いように思います。
和倉勇作は、幼い頃、近所の「レンガ病院」でサナエさんという女性によく遊んでもらいました。しかし、彼女は転落事故で命を落とします。
事件性があるとして調べていた父親(刑事)は、ある男性が訪ねてきたことから捜査を断念。勇作は不信感を抱きます。
ある日、レンガ病院で、同じ年頃の少年を見かける。お互いに何となく敵愾心を感じる。
少年はある大手企業の跡取り息子、瓜生晃彦。二人は同じ小学校に入学し、陰湿な感情を抱きつつもある種のライバルとして成長していきます。
ある殺人事件があって二人は再会しますが、そのとき勇作の初恋の人、美佐子が、晃彦の妻となっていたことがわかる。晃彦が自分に対して壁を作っていると感じていた美佐子は、勇作の登場に揺れ動きます。
美佐子の父親もレンガ病院に長期入院したことがあり、その後ある企業に入社。美佐子自身も大学を出たあと、すすめられて就職します。新人ながら役員室の担当になり、晃彦の父親のもとで働くことに。
晃彦は医師として研究室に残っているのですが、この父親から紹介されたことで結婚することになったのですね。
かなり長く説明してしまいましたが、美佐子はこの結婚に見えない糸が絡んでいたような気がしてならないのです。
晃彦と美佐子、美佐子と勇作、勇作と晃彦。三人を巡る運命の糸。そこに隠されている企業の秘密とは。
正直にいえば、もう序盤でサナエさんと晃彦の関係は予想がつくのですが、でも、それでも一気に読みたくなるスピード感はすばらしいと思うのです。(さらにもうひとひねりあります)
晃彦は、高校生のときに真実を伝えられ、しばらく学校を休みます。おそらくレンガ病院に足を運ぶのはこの時期でしょう。
医学部への進学を決意して学校に戻った後のこともいろいろと想像はつきます。
ラストシーン、勇作との会話がこの作品の見せ場といえるでしょう。
晃彦は、父親の抱えた秘密を美佐子に見せたくなかった。美佐子が持っていたノートを読んだときは、衝撃とともに、ある種納得がいったに違いないと思うのです。
しかし、たしかに須貝の行動は正気を疑うようなことですね。実際に共同研究を申し込まれたとしたら、ピックアップされていた博士たちなどう受け止めたのでしょうか。

「おばさんとトメ」くるねこ大和

2012-01-26 05:38:45 | コミック
うちの娘、最近自分のことを「トメ」と名乗ります。息子も以前は「おばさん」役に甘んじていたのに、このごろは「ぼくはトメ吉~」といっている。同じ猫だろ。あんたは「ぼんにい」です。
「えー、トメちゃんがいい~」
でも、このところ「ぼんにい」と呼ぶと返事します(笑)
コミックスも着々と増えていますが、なかなか売っていない本屋もあって、お正月に東京に行くと決めたとき、新幹線で読めるようにと買いに行ったらなくて、桜木町駅に内接する本屋さんには欲しかった巻だけなくて、かなりがっかりしていました。
この本は、旅行前に買って秘匿していたのですが、本屋めぐりが趣味のわたしですら一度しか発見したことがない。貴重な出会いでした。「おばさんとトメ」(幻冬舎)。
買ってすぐお昼食べながら読んで、そのあともなんだかんだ短期間に四回くらい読んでいるんですが、わたしもトメちゃんびいきになってしまう。
子供のお気に入りは、トメが成長しておばさんと同じくらいの大きさになったら、という想像のあたり。「トメねこぱんち」もよくいうフレーズです。
わたしは、「巣」にぼんにいが押しかけるところが好きですね。
二人は朝から晩まで「くるねこ」の台詞を言いあうほど。
「おひざのんのしていい?」「は~、トメトメ」「ちんまり」「これは夢?それともまほう?」
ためしに「それ、何巻に出てくるの?」と聞くと、「たぶん二巻!」なんて答えてくれますが、①~③は図書館で借りた本なので、家には(まだ)ありません。
桜木町で悩んだ揚句、結局は買わなかった「くるねこ丼」も熟読していました(帰ってきてから買いました)。ネットもわたしの携帯から見ているのですが、先日パソコンで(モバイルなのであまり開けない)、くるさんの撮った動画を見たんですね。
もうくぎづけ!
「か~わい~」「トメちゃんだ!」「こぼん、ふとってないとおもう」「あはははは」「あしにもぶちがある~」と好反応です。
どうも胡ぼんのイラストと本猫のイメージが合致しないらしく、あの愛らしい姿に心ひかれたモヨウ。
そういえば、胡ぼんは「かあさん」というのに、トメは「おばさん」と呼ぶわけもやっとわかりました。わたしは一読しただけなので、前半の細かい部分忘れています……。
二人があまりにも夢中なので、夫も読んだそう。
「好みが渋い」と言っています。
何か頼むと、「あ~い」と返事をしてくれるのは、トメの真似なんだそうです。影響されやすい子たち。
わたしもこのところくるさんのブログを連日覗いているのですが、紙媒体とはまた違う味わいもある。楽しい。三月末に出る⑨が楽しみですが、うーむ、その頃にはうちの学年がもう卒業しているのですね。不思議な感じ……。
今回全然ブックレビューじゃないですね。「ごめんね、すまんね、ゆるしてね」(胡ぼんの台詞から)

「金の空想科学読本」柳田理科雄

2012-01-25 01:53:14 | 自然科学
ベスト25に「メロス」! すばらしい。これだけでも一冊を買う価値はありです。「先生方がこの原稿をどう評価するのか気になる」というようなことを柳田さんはおっしゃいますが、わたしはこのシリーズではいちばん好き。細かい部分まで読みこまれているのがよくわかります。
花婿の頑迷さ。そうそう。たしかにメロスにとって大きな障害です。なにも夜明けまでかけなくともねぇ。ぶらぶら歩くのに時間をかけすぎるというのも納得です。それから、この話の山場、清水の湧き出る場面の解釈が秀逸! 熱中症だったのね、メロス!
わたしは「人質」との比較検証を授業の中核にしているので、この原稿も生徒に紹介しました。(一部でウケていました)
柳田理科雄「金の空想科学読本」(メディアファクトリー)。既刊十冊から読者によって選ばれた25作品を収録しています。いわばベスト盤。(版?)
わたしも一冊めから期間を置きながらもずっと読んできましたが、だいたいどの作品も記憶にあります。(わからないのは、未読の⑩に収録されたものでした)
強さをジャイアント馬場に例えるあの作品(ジャバ!)も、ウルトラ兄弟の成績発表も、ハイジのブランコも! 細かい数字はともかく、原稿の流れもオチも不思議なほど覚えていて、楽しかったー。
欲をいうなら、星飛遊馬企画のクリスマス会が不首尾に終わるあの原稿も読みたかったのですが(笑)。
今回、図書室に文庫版で6・5まで入れたんですが、少年たちには好評です。床に座り込んで読んでる子までいました。わたしも息子の影響で、特撮には詳しくなったので、初版のときよりもよっぽど詳しくなりましたよ。
「金」というだけあってゴージャスです。⑩も読みたくなってきました。あれ、⑨は読んだっけ?
しかし、「ジャバ」はおもしろかったし、コンセプトも気に入ったんですが、わたしにはいまひとつ夢中になりきれないところがあって、発売早々に買った①と②は人にあげてしまったのですよね。
息子と特撮ものを見るようになった現在、読み返したら昔よりも盛り上がるかもしれません。
しかし、最強の「ガマクジラ」は未知です……。

「どうしてくれる!?」「これで解決!食の不思議」

2012-01-24 05:45:02 | 産業
アルバイトをしたのは、大学二年から三年にかけての一年半。ウェイトレスでした。ほかの職種をしたことはありません。
だから、結構背景が見えるんですよね。料理に虫が入ったとか、接客がよくなかったとか、筆者も言っていますが、よくあることです。もちろん、防ぐために注意はしますよ。
虫は、野菜の葉の影に残ることがある。五目そばに入っていたというので料理を作り直しましたが、同席したい彼女が、
「食欲がなくなるよね。同じものを食べたくないよね」と連呼。彼はほとんど食べていませんでした。
「どうしてくれる!? 店長1万人のクレーム対応術 37のトラブルから学ぶ対応術」(日経BP社)。著者は外食相談研究会。
その前に、「なるほど繁盛店 これで解決!食の不思議」(画・竹島未来)というまんがを読んでいて、どちらもレストランの経営とトラブルをおこしやすい問題に触れているなーと思っていたら、どちらも雑誌「日経レストラン」の連載記事だった。(時期はずれています)
クレーム対応というと、「社長を出せ!」ですよね。あの本もおもしろかった。
こちらで目についたのは、ごねてなんとか自分だけ得をしようとする人が増えているということです。あわよくば金銭の享受、ですね。
クレームの基本は、撃退ではなく「共感」。相手の怒りに寄り添うことが大切だそうです。言われてみれば、カッとなったときに火に油を注ぐような言動では困りますよね。水などをこぼして衣服を汚したら、綺麗なタオルを差し出す。クリーニングをする、代品を購入する、となった場合はそれなりの手順があるのですね。
料理をこぼしてしまうのは、相手への受け渡しがうまくいかないから。ううーん、わかりますわかります。しっかりつかまないうちに手を離してはいけません。
それから、相手の話は途中で遮らず、最後まで聞くこと。これも大切ですよね。(わたしは性格が雑なので、気をつけなくては……)
まんがの方でも、クレームに項目をさいていますが、「お客様と共に解決策を探る姿勢で臨む」「具体的な方法と結果を示す」なども納得ですね。ロールプレイングの練習も載っていて、これは「話す」授業でやってみてもいいかも。(今年はもう終わりましたが)
で、心理学で接客を分析する項目が興味深いと思います。「行動の反響」という原理があって、自分がどんな態度をとるかで相手の対応も変わってくるというんです。同じように、気の合う相手との会話では知らず知らず同じジェスチャーをしたり、口調が似てきたりする。手の表情(腕を組むとか、下げおろすとか)や立ち位置(斜め45度くらいが無難)にも意味があるそうです。
コーヒー・紅茶・生ビールのかたやも、いろいろとテクニックはあるようでしたが。ワインの「飲用適温と「料理との相性」の表がおもしろい。冷旨系(リンゴ酸系)にはさっぱり爽やかな食材、温旨系にはこってりスパイシーな食材が合うそうです。
「似たもの同士は相性が良い」ことから、例えばタコ。レモン・塩・しそなら白ワインに合いますが、キムチを載せると赤ワインに合うようになる。これが、キムチに生クリームをかけたソースを作ると、また白ワインに合うようになるんですって。
すごいなあー。
こういう内容の近い本を比べて読むのはおもしろいですね。ためになりました。(……何の?)

「モノレールねこ」加納朋子

2012-01-23 21:32:55 | ミステリ・サスペンス・ホラー
いやー、おもしろかった。以前、若林千夏先生の感想文の本で興味をもったのですが、借りたはいいが読まずじまいでした。今回は、私立入試を控えた生徒が過去問を採点してほしいというので解いてみたら、そこに「パズルの中の犬」からの出題がありまして、それがまた、いいところで切れているんですよ。一体、幼い娘を一人残して、この母親はどこに行っていたのか。
読んでみたら、「あー、そうなのねー」という種明かしではありましたが、どの短編もしみじみと胸に迫る佳作でした。
加納朋子「モノレールねこ」(文藝春秋)。加納さんの作品を読むのは、多分十数年ぶり。「ななつのこ」のシリーズを読んでいたのですが、どうも作品の色合いが苦手で遠退いていたのです。
でも、俄然やる気(?)が出てきました。図書館からもう少し借りてきたいと思います。
全体としては、記憶を巡る物語が多いように感じました。どの物語も、ラストの位置から振り返ると過去が見える。「モノレールねこ」を通して文通していた少年が、相手の「タカキ」を知る。「ポトスの樹」では、ダメ親父と見下していた父親が、どうして川で溺れたときに息子を助けなかったかを知らされる。これ、さらに「孫」という対象がいいんですよ。父親のイメージする南国のポトスと、実はそれは誤解だったというところもおもしろい。
ふと思い出しました。わたしの父は沖縄に旅行にいって、海水でも生きていくことのできる樹にいたく感動。ご近所の方にそのことを熱心に語るんですが、樹の名前を「マングース」と思いこんでいて、怪訝な顔をされていました。
「それ、ハブと戦う動物では?」
そう、もちろん「マングローブ」です。すみません、くだらない話題でしたね……。
好きなのは、「シンデレラのお城」と「セイムタイム・ネクストイヤー」です。もう、泣きそうでした。
ミノさんという男性と偽装結婚することになった「私」。実は幽霊になった婚約者の「瑞樹」と暮らしているため、実際に結婚することはできないけれど、母親を安心させたいというのですね。
一緒に暮らすうちに、「私」にも彼女の姿が見えるようになり、さらには赤ちゃんまで生まれてくる。「貴樹」と名付けられた子供から、「私」は自分が忘れようと封印していた事情を思い出します。
ミノさんが「私」にとってどういう存在なのか。それが明かされる後半で、冒頭の「たぶん、私は傷ついた顔をしたのだろう」がいきてくる。
二人で築いた綺麗な夢のお城。でも、空想だけでは済まない部分もあります。「貴樹」のことですね。お母さんが話すとは思えないので、やっぱり不思議な力が働いたとしか……。
で、「セイムタイム」ですが、ある程度展開は読めるのです。年に一度、同じホテルの同じ部屋に現れる娘。幼くして死んだ娘が、成長していくのを見つめ続ける母親の物語です。
昨年は風邪をひいたといい、今年は一言も喋らずに、哀しい表情をする。こちらもやはり「幽霊」と呼ばれますが、その二つの意味を後半で説き明かす構成がすばらしい。で、読み直してみると、始めの日に廊下でばったり出会うのが、ベルボーイなんですよね。やられました。
菊池健さんの扉絵が、またすごくかわいい。特に動物が。ぬいぐるみの猫の表情、絶品です。

「帰命寺横丁の夏」柏葉幸子

2012-01-22 21:25:40 | YA・児童書
すばらしいです。さすがは柏葉幸子! 「帰命寺横丁の夏」(講談社)、いいですよー。もっと前に読めばよかった。
小学五年生の「おれ」(佐田和弘)は、勉強、スポーツ、女の子からの関心などすべて三番手の少年。ある夜、自分の家から外へ出ていく白い着物の女の子を目撃します。
幽霊だ、と大騒ぎしたために、翌朝は遅刻寸前。地区の縦割り授業の最中に、これまで見たことのない女の子(しかも、昨夜の幽霊にそっくり!)を発見し、親友の裕介に話しますが、逆に驚かれてしまいます。だって、その子は二人の幼なじみで、しかも和弘とは同じクラスだというんですよ。
「信夫あかり」というその少女、和弘が探るほどに何かあやしい。
自分の住む家のあたりが、かつて「帰命寺横丁」と呼ばれていたことを知った和弘は、それをもとに「自由研究」と言い張っていろいろと調べようとするのですが、どうも聞く相手は何か隠している雰囲気。マンションの九階に住むおばあさんの水上さん、隆盛寺の住職、町内会長さん……。
様々な人(しかも老人)が、和弘は何か知っているのではないか、と探りを入れてきます。彼らと話すうちに、だんだんとあかりのことを伝えてはならない気持ちになって……。
帰命寺横丁とは、御本尊に祈れば自分にとって大切な、亡くなった人が帰ってくるという信仰から名付けられた地名だったのです。でも、自分がもとは誰だったかはわからない。家族からは関わりのないところで、ひっそりと生き返る。まるでもともとそこにいたように、なにがしかの力が働くらしいのです。和弘は、彼女が還ってくるのを目撃したことから、その力が及ばない。あかりが暮らす家に、声だけの母親(透明ママ)がいることも、他の人には姿が見えるらしいこともわかっています。
あかりが、生まれかわる前に読んでいた雑誌「デイジー」の連載小説「月は左にある」が秀逸です。だから、この本は二つのお話がセットされているんですよね。お得だと思いませんか?(笑)
あかりはこのお話の続きを知りたい。そこで、和弘は、あかりの母親であった安藤さんから雑誌を借りてコピーします。(二人にお互い様のことは話していません)
出版社に連載の続きを知りたいと尋ねたけれど、どうもそのあとの号には作品が載らなかったらしいのです。
作者の名前はミア・リー。中国人か、という説も話しあわれますが、どうも同じ市内(益田という町です。モデルは角館かな?)出身らしい。
なんと裕介のおばあさんがその正体を教えてくれます。そして、和弘はこの物語の続きを書くように作者をせっつくのですが……。
石の鳥という魔女が、息子に国を治めさせようとする策略と、そのために費やす膨大な時間。湖の側にある城。毎日潜っては真珠を探し続ける少女。牢につながれた盲目の女と、白髪の王子。ロマンチックでしょーっ。
わたしとしては、未完の物語を八十歳を越えて書こうと決意するミア・リーの思いに打たれました。
始めの構想とは少し違うかもしれません。でも、このラストに託された優しさに、和弘は心を動かされます。
表紙の佐竹美保さんの絵が、また素敵です。また宝物のような一冊に巡り会えました。

小林芳雄

2012-01-20 05:48:22 | 〈企画〉
<小林芳雄>
明智の弟子で、少年探偵団のリーダー。一般的には「小林少年」と呼ばれている。ポプラ社の少年探偵ものでは絶大な人気。(妹もファンだった)
しかし、この人はたくさんの謎に包まれている。家族はいるのか。歳はいくつか。どうやって明智と知り合い、どうして少年探偵団を結成したのか。だいたい明智が海外に行っている間はどこで何をしているのか……等々。
「妖怪博士」では十四五歳と書かれていた。「幽鬼の塔」ではもう助手としてお茶を出してくれる。いくらなんでも小学校低学年ではないだろうから(と書いて不安になってきた。低学年だったらどうしよう)、明智との歳の差は最大十八と仮定する。(「幽鬼」二十八歳のときティーンエイジャーということ)
とすると、「魔術師」ではハタチ過ぎているはず。「鉄塔王国」はさらにその後だろうから、もう少年とは言えない気が……。
ちなみに彼の特技は「女装」。作者の趣味か。何歳くらいまでならウェイトレス姿が似合うだろう。
そういえば、文代夫人はいつの間にか表舞台に登場しなくなった……。



と、だいたいこのあたりで原稿は唐突に終わります。多分二人のことを書いたら、気が済んだのでしょう。
明智が登場する作品は、大人向けと児童向けがあって、ポプラ社版は既存作品を子供用にリライトしているものも大分加わっています。(「魔術師」もそうですね。あとは「蜘蛛男」とか。「吸血鬼」は「地獄の仮面」と改題されています)(リライトするのは乱歩ではないです)
だから、明智の設定が混乱しているのかもしれません。書き直しのときに、別のキャラクターを無理矢理「明智」にしていることも少なくないし。
ちなみにこのシリーズ、岡崎さんによると(「読書の腕前」)学校図書館では当然のように人気が高く、傷んだ本を入れ替えるためのセールスマンが専門にいたそうですよ。さすがに、現在の中学図書室ではあまり見かけません。小学校ならあるんでしょうか。昨今でも改訂されていますし、文庫も出版されているところを見ると、まだ需要はあるのでしょう。
乱歩のはちゃめちゃぶりが顕著な大人ものを紹介すると、わたしにとっては「恐怖王」ですね。(「仮面の恐怖王」ではないので注意)
自分の存在をアピールするために、米粒にまで「恐怖王、恐怖王」とサインを残す執拗さに、つい笑ってしまいました。そんな技を持っているなら、そっちで活躍のする方が名を売れるように思うのですが。
あ、わたしが最も好きな乱歩作品は「白髪鬼」です。復讐もの。おもしろいよー。