くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ストーカーとの七○○日戦争」内澤旬子

2019-06-30 19:15:14 | 社会科学・教育
 内澤さんの新刊!
 うおー、何年ぶり? と思ったけど、前作「漂うままに島に着き」が初読みで、その後あれこれと既刊を読み漁ったわたしとしては、これ、待ちわびていた本なのです。
 前作のあとがきで、現在はこの理想的な住処から移り住んでいることや、何やら困っていることが匂わされていて、一体何があったのかと。
 付き合っていた人との別れ話がこじれて、嫌がらせを受けていたのですね。
「ストーカーとの七○○日戦争」(文藝春秋)。仙台に出張した帰りに買いました。
 このところ、なかなか本をちゃんと読めずにマンガばかり手に取っていましたが、これは読めた!
 よくここまで書いたよなー、内澤さんへの敬意を表明したいと思います。口語表記が、すごく身近に感じられて、もういかに困り果てているかよく分かる。
 小豆島に住んでいるため、相手が上陸したかどうかで緊急体制がしかれるシステムに感心しました。警察が、頑張ってくれている感じ。
 だけど、いろんなことが引き金になって、示談したのにメッセージがくるし、2ちゃんねるで中傷されるし、そのことで相談すればかなり際どいことまで繰り返して話すことになるし、本当にお気の毒です。
 中でも、警察に相談したら、実は前科があって知らされていたのも偽名だった! ってーのは、相当ショックですね!
 当時SNSでのやり取りはストーカー認定されないとか、削除依頼を出しても手続きが煩雑で受け入れられないとか、いらいらするような出来事がたくさんあります。
 相手がいつ近くに現れるか分からない恐怖。実刑を受けても長くはないので、やがて保釈されるのです。そうしたら?
 他の犯罪なら再犯は不特定だけど、ストーカー被害はターゲットは一人に絞られてしまう。位置情報の提供と、病理認定して治療ができるようにしてほしいとの考え、賛成です。
 こじれた人間関係は、苦しいですね。二度と会いたくない人は、噂を聞いただけでもやりきれない思いがします。
 内澤さん、応援してます。次の新刊、また待ってますね。

「箱根0区を駆ける者たち」佐藤俊

2019-06-15 11:01:45 | 芸術・芸能・スポーツ
 先日、農大まんががおもしろかったので、ここはやっぱり東海でしょ! と、この本を手に取りました。
 佐藤俊「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)。
 新年、青学の箱根駅伝連覇を阻んだ東海大学の、前年度四年生をモチーフに描かれています。
 メソッドとも言われる原監督のやり方とは異なる、両角監督の理念。そして、最後の箱根に賭ける四年生の思いを、十区間に分けて綴ってある。
 0区、というのは、エントリーされなかったメンバーがサポート役として活動することを示しています。
 有力視されながら故障に泣いた選手、マネージャーとして雑務を引き受ける人(女子マネさんまでいるのに驚きました)、給水、タイム計測、付添、声がけ、そして、当日選手として走ったメンバーのことも、紹介されています。 
 わたしはテレビ放送が開始した時期から、十数年箱根駅伝を視聴していました。東海も結構応援していたけど、両角監督の記憶がない……。
 検索したら、バレー部なら伊藤さんとか泉水さんと同学年なんですね。緒方さん一年のときの四年生かー、と思いました。
 東海大学のカラーというか雰囲気が、全体によく出ていて楽しく読みました。学部の名前は変わったのね。(体育学科→競技スポーツ学科のように。スポーツ・レジャーマネジメント学科ってのもある)
 出雲や全日本駅伝もかなり見ていたため、背景はよく分かりました。大会前にロードレースで一定の成果を出す必要があるとか、シード権とか。
 年齢を重ねてスタッフや保護者寄りの視点で読んでしまうところもありました。
 箱根目前の先行レースに出られなくなったことを報告に来て号泣する阿部くんのエピソードとか、スタッフとしてチームを支えていることを告げたときに両親からかけられた優しい言葉とか、両角監督の「教員」としての考えとか。
 今だけではなく、卒業したあとどういう選手になるのか踏まえた、「出口」を意識した指導にはうなずかされました。
 今は新年から駅伝を見ることもなくなったので、選手の名前を聞いても正直、顔が浮かびません。これが、応援している選手だったらもっと胸に迫ったかもしれませんが、そうでなくても充分おもしろい!
 両角監督が理想的な指導者とは言い切れないところが、またなんとも言えません。結構迷ったり、コーチとの擦り合わせをしてなくて選手が困惑したりしてる(笑)。

 読んでいる間に、東海のバレー部に持川さんの娘さんと、櫻田先生の息子さんがいることを知りました。やっぱり、親視点になるのは仕方ないのか。
 学生スポーツの魅力、わたしは、卒業後に競技を継続しない選手の存在って大きいと思うのです。こういうテーマの本、もっと知りたいな。

「三枝教授のすばらしき菌類学教室」

2019-06-08 19:55:05 | コミック
 香日ゆらさん新刊です! ネットで読んではいたのですが、出版されて嬉しいな。「三枝教授のすばらしき菌類学教室」(KADOKAWA)。
 キノコをモチーフに、東京N大学に通う天谷洸輔。同じ学校に通うつもりだった同級生が厚木キャンパスと知ってショックを受けたところ、なぜか世田谷キャンパスを歩く小学生の麻衣ちゃんと知り合い、「キノコの王子様」と言われます。
 麻衣ちゃんに連れていかれたのは、キノコの描かれたスーツを着た三枝教授の研究室。あれこれあって、「キノコの王子様」を引き受けるはめに。
 キノコの知識も教えてもらえるし、やっぱりさすが香日さん、すごくおもしろいです。
 応援団の猪口さんのインパクト!
 えー、実はうちの夫、この大学出身でして。もちろん、この踊りは踊れるらしいです。若い頃は、友人の結婚式で踊ったと言ってました。(ビール瓶で)
 ただ、残念ながら見せてもらったことはありません。自分の結婚式でも、そういう余興はなかったので。普通、大根用意しておくんですか! 
 
 それから、友人の榎木さんが「押しは押しであって、恋愛感情とは別物から」「押しに私の存在を認知されたくない」というのが、すごくよく分かります!
 あれだけ熱くバレーの試合を見に行ったにも関わらず、わたし選手に声をかけたこともないです。
 「押し」という言葉、当時はなかったですが。
 大学ものというジャンル、結構好きです。ただ、同じ大学が舞台だった「もやしもん」は途中で挫折しましたが……。

「育休刑事」似鳥鶏

2019-06-05 22:46:12 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 待ち望んだ似鳥さんの新刊! お子さんが生まれたそうで、おめでとうございます。
 捜査一課の刑事秋月春風(二十代後半)は、男性ながら育休を取得。年上妻の沙樹さんが仕事に復帰し、三ヶ月になる長男の蓮くんの世話を引き受けています。
 沙樹さんの親友で、春風の姉の涼子も加わると、様々なトラブルに巻き込まれます。
 質屋に行けば人質にとられ、実家からの帰りには渋滞の中で隣り合ったラッピングカーが瞬間移動(?)していることに気付き、ショッピングモールでは爆弾騒ぎ。
 その中で七ヶ月まで成長した蓮くん。
 赤ちゃんの話題って、尽きませんよねー。
 荷物が多い。分かる分かる。赤ちゃん同士で交流しようとする。うんうん。年配の人に話しかけられる。そうだよねー。
 わたしも、同僚が連れてきた赤ちゃんを抱っこさせてもらうとき、うちの子の幼い頃を思い出します。
 沙樹さんの仕事については、第一話で見当がつきますが、そう思って読んでもにやにやできるので、大丈夫です。
 まだ七ヶ月までの事件しか描かれないので、続編ありですかね? あと五ヶ月は育休継続できる気がします。
 似鳥さん、去年は十周年フェア頑張ってらしたけど、プライベートではお父さんになっていたのかー、と新鮮な気持ちです。
 あとがきの日付は「平成三十一年四月」。平成最後の執筆、そして令和での出版なんですね。
 赤ちゃんのあのふわっとした甘いにおいとか、やわやわとした手触りとか、愛しいですよね。世の中の赤ちゃんたちが、みんな幸せになってほしいな、と思うのでした。