くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ストップ! 自子チュー」小野田正利

2014-05-28 21:10:18 | 社会科学・教育
字の間違いではありませんよ。「ストップ! 自子チュー」(旬報社)。自分の子ども中心に世の中が回っている保護者のことを示しています。
 学芸会に桃太郎十六人、鬼二人。わが子は主役と譲らないのだそうです。舞台そのものよりも、子どものことしか見ていないので、それで成り立ってしまう。
 筆者の小野田正利さんは大阪大学大学院教授。他の本も読んだことがあるような。
 「教育とは、自信と自立のために」という言葉が胸に残りました。
 なんとか自分の力で生きていける人になること。わたしも、それが社会への一歩だと思います。ご飯の用意、電気系統の作業、人づき合い、仕事、健康維持……様々な要素から生活は成り立ちます。うまくできなくとも金銭で解決する道があることもあります。また、その逆も、然り。
 ただ、中学生と接していると、年々精神的に幼くなっているように感じるのも事実です。
 学校では係活動や清掃がありますが、作業手順を考えられない人も見られます。
 わたし自身も、わが子に家事を教えているかと言われると、謝りたくなってはくるのですが。
 そして、できると自信を持って活動できた結果が、成長に反映するのでしょう。
 小野田さんは、まんが「斉藤さん」をあげて、主人公のように「おせっかい」ができるようになるといいと言った主張をしています。今まで手に取らずにいたのですが、読んでみようと思いました。

「甘いもんでもおひとつ」田牧大和

2014-05-26 20:45:01 | 時代小説
 あんこが大好きなので、こういう味わいのある物語に引かれます。
 田牧大和「甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺」(文藝春秋)。
 藍千堂は二人の兄弟が営む和菓子屋。もともとは父親の店百瀬屋の職人だった茂市が譲ってくれた店です。
 二人は叔父によって百瀬屋を追われ、その後も数々の嫌がらせを受けています。兄の晴太郎は菓子職人、弟の幸次郎は運営。上進物を中心に商っています。
 柏餅の季節。晴太郎はいつもの上等なものの他に、手軽に味わえる四文程度のものを売り出してみたいと言い出します。
 幸次郎に渋い顔をされながらも、なんとか完成しそうなある日、柏の葉が百瀬屋に買い占められていることが発覚し……。
 登場人物たちが非常に魅力的で、田牧さんの作品の中でも印象に残るものだと思います。まず、茂市。店を兄弟に明け渡し、自分は一介の職人に戻る。できることではありません。でも、彼のつくる羊羹は一味違うらしいです。あるご贔屓筋は、いっぺんに一竿いけるそうです!
 ことあるごとに笑いをかみ殺している姿が微笑ましい。
 百瀬屋の一人娘お糸もかわいい。父の企みをいち早く察して、兄弟に教えに来てくれます。田牧さんは、男二人女一人のパターン多いような気がしますね。
 で、わたしが心引かれるのは、雪姫様ですねー。「氷柱姫」ともあだ名されるクールビューティー。腕もたつし、性格もまっすぐです。
 この姫との縁談を持ちかけられたのが、松沢荘三郎。こちらも青竹のように爽やかな方です。
 お互いに引かれあう二人。人によってはおてんば娘を押し付けられると感じる人もいるんだそう。ものの見方はおもしろいですね。
 創作和菓子も非常においしそうで、わたしとしては「桃代桜」もくずきりもいいですが、焼きたての金鍔をご馳走になりたい! と思うのでした。

 さて、本日でブログ開設から二千日だそうです。早いものですね。あの頃担任していた生徒たちも、もう大学生です!
 これからも地道に読んでいくつもりです。よろしくお願いします。

「戦力外捜査官」似鳥鶏

2014-05-23 21:23:26 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 冬に東京に行ったとき、ドラマのポスターがあちこちに貼ってありました。
 夫がビデオに撮っていて、娘が毎日一本ずつ見ていたのでわたしも一緒に視聴。でも、原作とは全然違っていました。「戦力外捜査官 姫デカ海月千波」(河出文庫)。
 七年前の幼女殺害事件と連続放火事件とのつながりとは? 高校生のような童顔のキャリア、海月千波はなぜ捜査一課に配属されたのか。
 千波のお守りを任せられた、「俺」こと設楽恭介。火災現場で柿の木に登った彼女を救うおうとして落下。めでたく「戦力外」の御墨付きを拝領します。
 でも、「戦力外」って、そういうことだったのですね! 二人の関係とあれよあれよという間の展開に、楽しい時間を過ごしました。出勤前に読みましたよ、ラストシーン。続編も読みたい。
 途中、千波が「おおきなかぶ」の疑問点を投げかけます。た、確かにおじいさんおばあさんの次は孫娘、犬、と続くのは不自然……。息子夫婦は? 
 千波の発想には、驚くばかりですね。
 Wikipediaを検索したら、7月に動物園シリーズの新刊が出るとのことなので、それを励みにしばらく頑張ろうと思いました。
 
 

「宰領」今野敏

2014-05-22 20:39:41 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 「隠蔽捜査5 宰領」(新潮社)です。ドラマの勢いかなかなか図書館に戻ってこなくて。
 今回、竜崎さんは神奈川県警と警視庁との溝をめぐる問題に遭遇。またもやシンパを増やして帰京します。
 代議士が誘拐され、乗り捨てられた車には運転手が殺害されていました。警察にかかってきた電話は、死刑囚の釈放を求めます。
 しかし、竜崎には、その死刑囚の身内が脅迫者だとは思えないのでした。
 東大を目指す息子の発熱、叩き上げの刑事との対立など、読み応えがあります。
 そういえば、わたしはドラマはさわりしか見ていないのですが、伊丹が古田新太なのはナイスだと思いました。
 

「トリュフとトナカイ」泡坂妻夫

2014-05-20 03:26:42 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 現代ミステリー短編集として岩崎書店から出ているシリーズ。泡坂さんの作品があったので借りました。「トリュフとトナカイ」。
 でもねー、これって少年少女向けの入門シリーズですよね? わたしが中学生だとして、これを読んで泡坂さんのファンになるでしょうか。
 泡坂作品の魅力といえば、軽妙な言葉遊びとトリッキーな展開。まあ、たしかに予想外の展開です。トリックにも説得力がある。
 収録作品は、「開橋式次第」「金津の切符」「トリュフとトナカイ」「蚊取湖殺人」。
 表題作は、レストランで会食をしていた人が、シェフに日本にもトリュフがあるといったことから、それを信じようとしない彼と喧嘩。実証しようと現地に向かいます。ところが山は電熱鉄線で入ることができず、そこに日本にはいないはずのトナカイが崖から落ちてきて……。
 不条理な感じですが、この話の中心は貨物車の一両目だけが盗まれるトリックを探ること。でも、ちょっと強引な展開ですよね。
 こうやってみると、泡坂さんの作品、わたしは長編好みのようです。シリーズものも。
 ちなみに最初に読んだのは「写楽殺人事件」でした。
 亡くなったときに、直前まで「亜智一郎」の新刊準備をしていたと聞いたような気がするのですが、もう出版されないのでしょうか。

「ギャングエイジ」川端裕人

2014-05-19 07:10:40 | 文芸・エンターテイメント
 先日、友人が入院したので、暇だろうからと本を差し入れました。
 その中で、彼女が最もおもしろかったというのが、これ。川端裕人「ギャングエイジ」(PHP)。表紙はスカイエマさんです。
 採用が決まっていた教師が辞退したために、急遽小学校に勤めることになった日野晃道。小学校の担任だった先生に憧れ、彼と同じように頑張ろうと誓いますが、授業中にたち歩いたり、勝手な行動をしたりする子どもたちに悪戦苦闘。しかも、その前年にも新採用の先生が辞めてしまったのだとか……。
 辞めた先生が学校ボランティアに入ったりまた採用って、あんまりないのでは? とも思うのですが、日野のひたむきさとか物語の勢いのよさで一気に読んでしまいます。
 ああ、そうそう、次々に行事がきて忙しいのですよ、学校って。
 子どもたちも個性的です。みんなで「スイミー」を暗唱したり学芸会から逃げ出したり。クラスのリーダー格の少年が目標を聞かれて「ギャングになりたい」と答える場面も印象的ですよね。
 一学期から始まって終業式までの一年間が描かれます。
 中でも衝撃的なのは、日野が憧れていた先生が、教育に失望して退職したことを知るところでした。先生、わたしより若いじゃないの! まだまだ現場で活躍できるであろうに、残念です。
 でも、そういう力を持った教師が、精神的に追い込まれていったことも、つらい。
 そんな中で再生していくものもある。大人たちも変化していく。
 今、若い教師が少なくなりました。迷ったときに助言してくれる年の近い教師も。ベテランは多いですが、最初から同じようにはできない。
 ふとしたところに、励ましになるような部分もありました。
 

「忘れ物が届きます」大崎梢

2014-05-18 19:15:13 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 息子の歯医者に付き添い。待合室で、息子は「天才探偵SEN」を、わたしは「忘れ物が届きます」(光文社)を読んでいました。親子で、歯医者で、大崎梢。
 で、「沙羅の実」に目が潤んで、待合室で泣いてしまうわたし……。
 だって、これが泣かずにいられますか? 親友に託した椿の実。その真実に胸が痛くなります。
 新居の相談に乗るために顧客の家にやってきた小日向。現れたその父親に、自分の小学校時代に隣のクラスの担任だったと言われて驚きます。
 当時、一晩帰らなかったことから騒動になったこと。同じ日、親友だった佐々木の継父が事故で亡くなったこと。先生は淡々と話すのですが、小日向はどうしても拭い去れなかった過去と、椿の実との関わりについて真実をつかむことになります。
 大崎さんらしいあるしかけがうまく決まっています。車の中で涙を流す小日向の感情に、わたしもつい……。
 続く「君の歌」も、中学時代の甘酸っぱさがきゅんときますね。「仰げば尊し」の扱いと電話のやりとりが好きです。
 それから、ラストの「野バラの庭へ」。上流階級のお嬢様が失踪した六十年前の真相を手記にする仕事受けた香留。兄の婚約者だったその人について語る志保子さんの思い出を聞きに鎌倉に通います。しかし、話が佳境に入ったある日、志保子さんが亡くなったという知らせが……。
 物語は二転三転。最後に、失踪した統子さんが白い花の咲く中で「あの頃の男の人の中で、大広間に活けられた艶やかなバラの花ではなく、野に咲く白い花にわたしを重ねたのは、宗太郎さんだけよ」と語る場面の美しいこと。
 花の名を尋ねる香留に、
「自分で調べなさい。甘えちゃダメ。しっかり自分の感性と知性を磨き、視野を広く持って、そして、いい男をみつけなさい。素敵な恋をしてね」と言う。ここもいいですねー。
 この可憐な白い花が何かって?
 それはタイトルに書いてあります。これも、大崎さんらしい。

「伝説のエンドーくん」まはら三桃

2014-05-16 20:53:45 | YA・児童書
 校舎内に残る無数の落書き。
 「エンドーくんは体育祭の星」「エンドーくんの愛はふめつ」「エンドーくんは変化をおそれない」「エンドーくん、今でしょ」なんてのもあります。
 果たしてエンドーくんとは、何者なのか。頭がよくてスポーツ万能。おまけに容姿端麗。そんな奴いるのかと、新任体育教師清水はいぶかります。
 比較的落ち着いた中学校。清水は二年生の担任になりますが、着任式で校歌の歌詞を間違えてしまう。「清爽」を「清掃」だと思い込んだのですね。だから「おそうじ先生」というあだ名がつきます。
 でも、どうやら以前は「せいしょう」という歌詞だったよう。これを変えたのがエンドーくんらしいのです。
 同じ二年生の学年に、東大を出たものの定年間近なのに一介の理科教師を淡々と続けている児玉という教師がいます。彼のあだ名は「失速」。
 一部の保護者からは認知症気味なのではないかと言われているかと思えば、別の保護者からは家庭環境のことまでよく配慮してくれる先生だと思われている。もともと気を許している石田をはじめ、同僚たちはなんのかんの言っても児玉先生に救われています。
 二年生六クラスの担任の教師一人ひとりにスポットを当てた学校小説。六クラスあれば主任は学担ではないのでは、なんて思いつつ、非常におもしろく読みました。
 わたしとしては、同じ国語教師の矢島が主人公の「エンドーくんはお金よりつよし」が好き。生徒たちの未来への危惧や自分の生き方へのプライドが感じられます。
 中学生は多感です。わたしも日々これでいいのか悩む毎日ではありますが、とにかく自分の気持ちを伝え続けていかなければならないと思います。ひたむきに、めげずに、じわじわと、頑張ります。

「クイズ王の『超効率』勉強法」日高大介

2014-05-14 04:36:31 | 社会科学・教育
 クイズ、大好きです……。
 テレビはほとんど見ないけど、クイズ番組がかかっていればつい夢中になってしまう。解答者と一緒に答えることもしばしばです。
 先日、新書の棚をぼんやり見ていたとき、この本が目に飛び込んできました。「クイズ王の『超効率』勉強法」(PHP新書)。
 言われてみれば、たしかにクイズって、博覧強記のイメージが強い。それに自分が解く場合にも、頭の中の引き出しからうまく探り当てるような努力をしている。
 日高さんは、記憶のフックにひっかける勉強法をしていたのだといいます。メモリーツリーと同じ原理だと思うのですが。
 わからなかった問題はひたすら書いて何度もやり直す。同じ問題集を十往復目安に解いていく。早押しの解答率を高めるために、問題の助詞に注意しながら先読みする。
 彼がクイズ王にならんと決意するのは中学二年生。ウルトラクイズへの出場を夢見て精進を重ねました。
 しかし、番組自体が最終回を迎え、日高さんは愕然とします。
 「アタック25」や「タイムショック」などの出演の話題もありました。奥さんともそこで知り合ったというのは驚き。ご夫妻でクイズへの研鑽を積んだりしているのかしら。
 基本的なクイズ30問が紹介されていましたが、わたしは二巡やって19問の正解でした。クイズ王への道は遠い(笑)。
 こうやってみると、わたしはその場で答えを思い浮かべて終わりになりますね。紙に書くとか答えを覚えるとか、最近していないような。受験生時代はさすがにやりましたけど。
 ご自身が関わった「ヘキサゴン」の事前テストの話がありましたが、珍回答をするような方でも、繰り返してやるうちにクイズの力がついていく。学習もまた然りであろうと思います。なにか、拓けるものがあるのでしょう。
 漢検一級に挑戦したレポートもあります。学習もクイズも繰り返してコツをつかむことが大切ですね。

「遠野物語へようこそ」三浦佑之・赤坂憲雄

2014-05-13 04:04:25 | 社会科学・教育
 遠野物語百周年にちくまプリマー新書から出た本です。「遠野物語へようこそ」。
 わたしはわりとあれこれ考えずに、目についた本を買ってしまうのですが、この本もずいぶん長いこと本棚に眠りっぱなしでした。今回、遠野に行ったことだし読んでみよう! と鞄に入れて部活の大会に行ったら、そのまままたしまい忘れて……。
 あ、でも「遠野奇談」と合わせて読むとおもしろいんですよ。佐々木喜善の語りを、柳田国男はちょっと変えている。
 本書のラストで、赤坂先生が「遠野物語は文学と民俗学の側面をもつ」という意味のことをおっしゃいますが、そのあたりと無縁ではないような気がしてきます。
 遠野に限らず、日本各地にその土地ごとの伝承はあったはず。しかし、「遠野物語」はほかの民話とは一線を画しているように思います。どのように語られ、読み解かれるのかにスポットをあてたこの本。「奇談」には取り上げられなかったものについても描かれていました。
 例えば、オシラサマ。
 わたしのイメージでは、「遠野物語」の中でも目につきやすい話だと思うのです。現在も博物館などに飾ってありますし。(とおの物語の館では、映像化もされていました)
 でも、わたしはまだ「聴耳草紙」を読んでいないので、そちらにはあるのかも。
 で、最も違うと感じたのは、第二話なんです。早地峰山の女神になりたかった末娘が、姉のところに降りた霊華をとって自分のものにしてしまう。
 第三話がこの本に紹介されていませんので違うかもしれませんが、喜善は末娘の治める土地では盗みを悪としなかったという説を続けて語ります。
 こうなると、「遠野物語」本編も読みたくなってきますよね……。
 あと、遠野の昔話のベースは山の民の習俗ではないかな、と思いました。狼とか熊とか天狗とか。山では里の風俗とはまた異なる文化がある。
山里としての融合のようなものを感じました。