くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「マンガッタン」

2016-03-30 02:46:10 | 雑誌
 「マンガッタン」というタイトルだけでピンとくる方は少ないかもしれません。
 石巻復興情報マガジン「マンガッタン」。創刊準備号から七号までを寄贈いただきました。
 この本、半年くらい前に石巻を訪ねたときにも萬画館で売っていました。井上きみどり、うえやまとち、倉田よしみ、わたせせいぞう、三浦みつる、きたがわ翔といった方々が寄稿されています。「かぼちゃワイン」とか、懐かしいですね。
 ビッグ錠のカレーを食べ歩くまんがも、一味違って面白かった。あるカップルが石巻を訪れます。彼は海の幸をふんだんに食べられると期待しますが、彼女は魚介類が苦手。でも、カレーは大好き! 次々においしそうな店を探しあてるのです。
 一気に読んでみて、わたしが興味をひかれたのは土山しげる。「野武士のグルメ」の方なんですね。「極道めし」とか……。任侠ものはほとんど読まないのでなじみがなかったのですが、食べるシーンがすごくリアルなんです。
 七号には「助六一代」という作品が載っていました。
 実在するお寿司屋さんがモデルだそうです。なんか見覚えがあると思ったら、ここでお昼を食べようしたのに定休日だったお店でした! こうやってみるとやっぱり食べたくなってきますね。
 震災から五年。石巻をはじめ被災地は日常を取り戻しつつあります。ただ、以前とは違うと思う部分もままあります。わたしは内陸に住んでいるので、それ以上に沿岸部にはのしかかったものが大きいのではないかと心配です。
 前を向いて歩く、その大きさをたくさんの方に知っていただきたいですね。

「食堂つばめ 忘れていた味」

2016-03-29 05:37:30 | ファンタジー
 「食堂つばめ」も六冊めです。ペース早いなあ。
 今回は、エレベーター事故で瀕死の重傷を負った人々を探す男性が登場。彼は餃子を食べたいらしいのですが、すごく忙しそうに走りまわっていてなかなか店に現れない。
 子どもと離れてしまい嘆き続ける女性や、店員さんを連れてきて、彼らの蘇生に一役買います。無事に見つけてもらった子どもは、その直前まで、自分よりも少し年長の少年と一緒だったと語りますが、どうやらその少年とも関係があるらしく……。
 
 餃子がすごくおいしそうです。アボカドの餃子食べてみたいー。
 我が家では餃子だけたくさん食べるという習慣がないのですが、楽しそうでいいですね。
 ラストで出てくる激辛ラーメンも気になるため、この日のお昼はみそラーメンになりました。

 ちなみに夜はハヤシライスとポテトサラダ、松橋流エッグベネディクトでした。 
 松橋周太呂「すごい家事」(ワニブックス)でおいしそうだったので。
 でも、高野豆腐がうちの子たちには好みではなかったようです。固かったからか……。
 この本を読むと東京ハンズに痛烈に行きたくなります! 仙台駅にオープンしたらしい! ただわたしにそういう余裕がないので、とりあえずホームセンターでウタマロ石けんを買ってみました。

「マカン・マラン」古内一絵

2016-03-28 19:51:08 | 文芸・エンターテイメント
 震災から間もなく、古内さんがデビュー作「快晴フライング」を寄贈してくださいました。お父さんが古川出身とのことで、わたしがよく行く書店で古内さんの本はよく紹介されています。
 これも、そこで巡り会った一冊「マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ」(中央公論新社)。料理小説が好きな方にはオススメですよー。

 「マカン・マラン」とはインドネシア語で夜食を意味するそうです。深夜しか開いていない不思議な店。店主のシャールさんはドラァグクイーンで、昼間はダンスで使う衣装や小物の店をやっています。お針子さん(もちろんみんなドラァグクイーン)の賄いに、と始めたのが今の店。
 シャールさんの同級生柳田(中学校の教員)や、一人暮らしのおばあさん、若い女性などなど、常連たちが集まって静かに過ごす隠れ家のような店なのです。
 「春のキャセロール」は広告代理店で働く塔子の悩み。「金のお米パン」は、突然食事を拒否しはじめる中学生に戸惑う柳田。「世界で一番女王なサラダ」は、この店を取材するつもりできた女性ライターの葛藤。そして、「大晦日のアドベントスープ」は、ドラァグクイーンのジャダの決意が描かれます。
 この春夏秋冬の四作で語られるのは、御厨清純という男性が、なぜ「シャール」になったのか。そして、周囲にどれだけ愛されているか。
 その生活を守りたいと感じる人々の暖かさが、じんわり胸にしみます。
 個人的には、仙台で過ごしていた少年が参加した「くりこま高原で行われた昆虫採集」が気になります。「くりこま高原」は駅の名前で、栗駒山付近一帯はそういう呼び方はしないように思いますね。

「名作うしろよみ プレミアム」斎藤美奈子

2016-03-27 15:03:40 | 書評・ブックガイド
 買って読んでいない本が、図書館の棚にあると悔しい気がします。わたしだけかもしれませんが。
 しかし、必ず買うであろう本を棚で見つけたのに、書店で巡り会えないのはさらにつらいものです。
 斎藤美奈子「名作うしろよみ プレミアム」(中央公論新社)。これは青い表紙。赤い表紙の方は持っています。全部読み切ってないのが、さらに悔しいですが。
 図書館にそろそろ返しに行かなくてはならないのに、まだちまちまと読んでいます。借りるてときには、「名作ぞろいだけど、読んでいない作品も多いからどうだろうー」と不安でしたが、そこはそれ、おもしろく読みました。
 戦争文学として読まれている「夏の葬列」。初出はヒッチコックマガジンだそうです。ミステリ風のショートショートとして書かれたなんて、意外です。
 わたしが最もおもしろく読んだのは、「少年と少女の部屋」。「小公女」とか「ハイジ」とか、なじみのある作品が取り上げられていました。「ハイジ」は原作と違う(ペーターが車椅子を落とす場面が描かれない)のでスイスでは見放映なんだって。わたしも、あの場面は必要だと思っているので納得します。
 「愛の妖精」懐かしいなー。わたしはジュニア版(ピンクのカバー)でしか読んだことがないので、ちゃんと読みたいと思ってはいるのですが。
 「ライ麦畑」はずっと縁がないままできたのです。全部妄想と解釈できるなんて聞くと気になる。
 「肥後の石工」は、小学生のころ好きだったので懐かしく思い、図書室で探してみたら「浦上の旅人たち」しか見つからず。
 「半七」も全部文庫で持っているのですが、どこにしまっているやら……。転勤決まって荷物を持ち帰っている今日この頃、段ボールの置き場がありません……。
 白州正子「かくれ里」がすごく気になります。講談社文芸文庫で出ているらしい。
 ところで、昨日丸善でこの本売っていました。ごめんなさい、今回は買いませんでした……。

「野生動物と共存できるか」高槻成紀

2016-03-24 05:21:55 | 自然科学
 著書のお名前にピンときた方は、東京書籍の国語教科書(一年)の「オオカミを見る目」を読まれてはいませんか?
 高槻成紀「野生動物と共存できるか 保全生態学入門」(岩波ジュニア新書)は、オオカミをはじめ様々な生物の実例を用いて保全生態学について紹介しています。
 「オオカミを見る目」に補充を加えた文章も載っていますし、三年生の「絶滅の意味」(中静透)で描かれているリョコウバトやジャワマングースのことも。ラッコとコンブの例に、さらにはウニやシャチの数も関わっていたことが判明して、知的好奇心を刺激されてしまいます。教材研究にはもってこいの一冊。
 わたしは絶滅について調べ学習をさせるために、文献やら新聞記事やらを集めているのですが、そこに書かれていたことが集約されているため、知識がぎゅっと集まってくるようで、非常にエキサイティングでした。
 
 

「カエルの歌姫」如月かずさ

2016-03-23 18:12:59 | YA・児童書
 「YA150」の気になる作品を追いかけているわたしですが、図書室で特集を組むには数が足りません。自分は読んでいても、市立図書館から借りたものだったりしますからね。
 実は最後の発注で、この本に紹介されていたものを結構入れたのです。でも、予算があるからそれほど入れられず。
 中でもこの本は、読みたい作品上位だったのに、なんと品切れ重版未定! えーっ、わたしが行ってる図書館には入ってないし、検索かけても持っている図書館少ないです!
 なんとかならないものかと古本屋をめぐることにしました。
 そしたら、二件目で発見。しかも格安でした! 本の神様はいますね!
 如月かずさ「カエルの歌姫」(講談社)。
 ゴツい中三男子花咲圭吾(「ぼく」)は、かわいいものが大好き。女の子になりたかったと心密かに考えています。
 そんな彼が見つけた「特技」は、女声で歌うこと。男の声も女の声も出せることを「両声類」というんだそうです。で、練習の甲斐あって非常に魅力的な歌が歌えるようになる。
 「雨宮かえる」の名前で昼の放送に流された歌をめぐって、校内はすっかり夢中に!
 そして、花咲はクラスメートの水瀬さんがその歌を聞くと微笑むことに気づきます。「氷姫」とあだ名される彼女のことを知りたくなって……。
 修学旅行のあたりのエピソードなんてすごく楽しいですよ。
 ちょっとマニアックな趣味のふたりが、本当の自分を伝えられる相手を見つけたのがハッピーだったと思います。
 

「3D パズル塗り絵」ジョアンナ・ウェブスター

2016-03-21 09:24:02 | 芸術・芸能・スポーツ
 子どもたちがゲームばかりしていて不満なわたし。
 娘が興味を持ちそうなパズル塗り絵を買ってみました。
 はじめはアートセラピーシリーズの「パズルぬりえ&点つなぎ」(グラフィック社)でした。娘もこういうのが好きです喜んで塗ったり点つなぎをしたりしていました。
 ただパターンが単調で色合いが近すぎるため、色鉛筆がうまく乗らなくて。黒に近い色が三色くらいあると、灰色か焦茶かもっと違う色か迷うのですよ。
 そしたら、夫が四十色の色鉛筆を買ってくれて、塗り絵熱が再燃。
 もっと複雑な感じのものを塗りたくなって買ったのが、「3D パズル塗り絵」(ブティック社)です。
 これは、丸とか四角とかで幾何学的に構成されているのがおもしろい。
 塗り続けるのが楽しいですよ。写真は娘と一緒に塗ったものです。
 わたしがいない間に、娘は勝手に塗っております。色鉛筆もいつの間にか削ってくれていました。
 

「おひさまジャム果風堂」高森美由紀

2016-03-20 10:18:14 | 文芸・エンターテイメント
 地元紙の書評で取り上げられていたので、注文しました。高森美由紀「おひさまジャム果風堂」(産業編集センター)。
 遊園地のヒーローショーでスーツアクターをしている拓真は、ある日妹のサトミが亡くなったという連絡を受けます。
 両親も他界しており、一人遺された子ども・昌(あきら)を引き取ることにしたものの、どう接したらいいのやら。昌自身も、サトミとの生活が閉鎖的だったためかぎこちなくて。
 それが段々と近づいていくのが面白かった。
 昌は箸の持ち方や一般的な食事もわからない子どもです。食事は弁当や給食だけ。
 でも、唯一、サトミはジャムだけは手作りをしていたのだそうです。
 父が事故で亡くなったあと、母は手作りジャムの店を開いて兄妹を養ってきました。
 その思い出と、拓真が昌のために作る料理(ジャム使用)に優しさが溢れています。
 また、スーツアクターの同僚であるつばさの存在が大きいですね。
 彼女は「昔、ヒーローに助けられた」というのですが、これが後半の伏線になっているので、気づいたときには涙ぼろぼろでした。
 わたしの個人的な感覚では、(以下ネタバレ)
昌が実は姪だという設定はなくてもよかったんじゃないかと思うのですが、タイトルから考えるにこのあと続編があるのでしょうか。(果風堂は母の店なので、拓真や昌が店を開くわけではない) 
 親子の情愛とかつながっていくものとか、考えさせられました。

「カルト村で生まれました。」高田かや

2016-03-16 02:49:30 | コミック
 新聞広告で見て、読みたくて読みたくてその一心で仙台まで行ってきました。高田かや「カルト村で生まれました。」(文藝春秋)。
 具体的に名称は出てきませんが、これはヤマギシ会のことを書いているのだと思います。
 親と子が一緒に暮らさない。(子どもだけで共同生活をしています)
 自給自足で、一日二食。(食事抜きのこともあるので、常に空腹)
 世話係の言うことは絶対。体罰は当たり前。
 手紙は検閲される。服は共同。
 「所有のない社会」を目指しているため、お金も持ちません。

 まんがを読んで思ったのは、世話係さんに相当な嫌悪感を抱いているなということですね。
 厳しくしつけられるわけです。でも、子どもだからそれが負担に感じる。世話係さんが自分の勝手で怒っているようにも思います。大人になると見方も変わるようですが。
 
 宗教って、よかれ悪しかれその家の教育に影を落とします。
 禁止されていること。その理由。ペナルティ。葛藤。
 主に子どものころの出来事が描かれます。子どもだからこそ、自分で選んだわけでもない環境(宗教)に苦しめられるのです。
 ちなみにうちの息子は数ページで読むのをやめてしまいました。同世代だから、読んでいてつらい感じがしたようです。

 村も変わってきていると、最後にかやさんは言います。わたしにとって、「洗脳の楽園」のイメージが強いこの村。他のカルト集団にしてもそうですが、世相の移り変わりで影響を受けているのでしょう。
 成長後のエピソードも読みたいです。 

「青と白と」穂高明

2016-03-14 22:09:59 | 文芸・エンターテイメント
 穂高さんの新刊が、TSUTAYAで平積みになっている!
 新聞広告に、この「青と白と」(中央公論新社)が取り上げられていたのは知っていたので、買いに行かなければと思っていました。
 震災から五年。その節目の年にこの本が出版されたことは、大きな意味があると思います。
 
 悠子は、三十歳を過ぎてから作家として生きることを決めて、アルバイトをしています。
 震災の日、アパートから家族に連絡を取ろうとしますが、全く電話がつながらない。アルバイトを休むこともできず、許可を得て携帯が使える状態で仕事を始めましたが、同僚から嫌みを言われます。
 名取で祖母と同居を始めた両親。結婚して泉に住む妹の夏子。高校時代の友人たち。安否を確かめることができず、不安の中での生活。
 
 穂高さん自身がモデルであろう悠子と、その家族を中軸に描かれています。仙台の被害。沿岸部の友人の死。そして、母親の妹である由美子の死。
 幼少期から、由美子に支えられてきた悠子。山元町に嫁ぎ、そのほのぼのとした優しさで、母親や妹から一歩引いて歩いていた悠子を助けてくれたのでした。
 この本を読んでいる間に、義両親が山元町に出かけて苺を買ってきてくれました。五年経ったことで、日々の生活が戻ってきていることを実感します。けれど、まだ復興したとは言えません。
 
 悠子が幼いころの思い出が、青と白をモチーフに描かれていきます。
 浅葱幕、露草、海、沼、白鳥。
 仙台市内の地名も頻繁に出てくるので、地元の住民としては親近感がありますね。
 中でも、南小泉は友人の家があったためわたしもよく訪れたものでした。懐かしいな。彼女が亡くなってから行くこともなくなり、切ない気持ちを感じます。近くにある若林区役所まで水がきたのですね……。
 
 傷つき、迷い、自分を見失いそうな悠子が、「書くこと」を決意するラストに、勇気づけられます。