くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「吸血鬼のおはなし」八百板洋子

2015-01-20 05:24:59 | 雑誌
 月に一度、市立図書館から学校用に本の貸し出しサービスを受けています。わたし自身だと目を向けないような作品もあって、参考になります。
 今回の五十冊の中にあったのがこれ。八百板洋子・文\齋藤芽生・絵「吸血鬼のおはなし」(月間たくさんのふしぎ2009年3月号・福音館書店)
 繊細な挿絵と「吸血鬼」というモチーフに、何気なく読み始めたのですが、すごくおもしろい。
 八百板さんがブルガリアのソフィア大学で学んだときに耳にした「吸血鬼」の物語を紹介しています。

 トランシルバニアのドラクル候。領土を巡る戦いから、敵方に恐れられていたことが伝説化していく。
 これは、同じ大学にトランシルバニア出身の人がいて、ヴラド四世は英雄だと教えてもらったのだそうです。
 また、「青い炎の館」という物語も話してくれました。この吸血鬼は、自分の恋した人を守るために彼女から十字架を受け取り、自分の仲間たちにかざす。
 命を捧げてしまう吸血鬼の物語に、八百板さんは驚きます。
 美しい愛だけでなく、思いを寄せた娘の家を揺るがす死者もいます。屋根の上に乗って暴れるぶよぶよの革袋。孤独のまま死んだ若者の魂が、この世の愛を求めるのだろうと、語ったおばあさん。
 吸血鬼に恋した娘、ペストを患って亡くなっても母親のために妹を迎えにいく男、旅から帰った恋人が冷たい身体をしていてもそりに乗ってついていく娘……。
 吸血鬼の伝説は、蘇る死者として捉えられ、語られ続けているのです。
 そこに、「愛のおなはし」という側面を八百板さんは見いだします。

 怖さの中にもロマンチックな再話で、こういうタッチの本は好きです。自分でも持っていたい。
 ただ、「たくさんのふしぎ」って小学生くらいが対象だと思っていたので、ずいぶん大人っぽいようには感じました。