くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「命の意味 命のしるし」上橋菜穂子・齊藤慶輔

2017-02-23 22:14:43 | エッセイ・ルポルタージュ
 上橋菜穂子・齊藤慶輔「命の意味 命のしるし」(講談社)。
 これはっ、図書館にほしい。そう思う一冊でした。
 上橋さんが「獣の奏者」の外伝を描くときに、原稿を読んでもらったことがきっかけで、テレビ番組にお二人が取り上げられることになったそう。
 齊藤さんが救う猛禽類は、けがが癒えたら野生に返す。ステップを踏んで段々とケージをかえていく。
 フライングケージまできたら、放鳥も近いのだとか。
 でも、中には翼を失うなど、保護された状態のまま生きるしかない個体もあるのです。
 上橋さんはふくろうにはじめて触ったと語られていました。柔らかい羽根。知らない世界のままでいることと、何かを通してその一端に触れることは大きく違う。
 また、ファンタジー小説がどのように産声をあげるのかなども興味深いと思いました。
 齊藤さんの本、前任校には配架したのに読んでいないんです。今度は借りてみますね。

「夢のお仕事さがし大図鑑」

2017-02-22 20:30:53 | 社会科学・教育
アキヤマ香「17ーオン」(双葉社ジュール)
青木幸子「zoo keeper」(講談社イブニング
)
岩下慶子「ボッコンリンリ」(講談社デザート)

「夢のお仕事さがし大図鑑」(日本図書センター)で紹介されたまんがで、読んでみたいものをリストアップしました。
 ところが、これが置いてない! 古本屋も見たのですが。
 ほかは結構メジャーな作品も多いのに。まあ、地道に探します。
 この本、職業調べのために借りてきたものなのですが、生徒にはウケが良かった。自分の知っているまんがも多かったのでしょう。
 例えば、表紙に掲載されているのは、「鈴木先生」「健康的で文化的な最低限度の生活」「宇宙兄弟」「コウノドリ」など。
 「飲食とサービス」「いのちと教育」「暮らしと安全」「マスコミとアート」「芸能とスポーツ」の五冊で、それぞれにかかわる仕事を紹介しています。
「大学教授 柳沢良則」では、男女比8:2と男性の多さもわかります。平均月収758000円で、「中学教師 鈴木先生」の倍以上ある!
 「競技かるた選手 綾瀬千早」なんてのも。 平均月収0円……。まあ、プロ問題はまんがでも描かれているので、それもそうですよね。

「古書カフェすみれ屋と本のソムリエ」里見蘭

2017-02-20 20:42:46 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 おいしそうな食事を出してくれる古書カフェで、自分の悩みにかかわる本を紹介してもらえる。いいですねぇ。この本を読んで、「すみれ屋に行きたい!」と思わない人はいないと思います。
 「古書カフェすみれ屋と本のソムリエ」(だいわ文庫)。
 絶対好きなモチーフで、しかも筆者は里見蘭。予想通りおもしろく読みました。続編読みたい!
 
 すみれ屋は、オーナーのすみれと、古書スペース担当の紙野くんで営む店。
 恋人同士のすれ違いや、再婚家庭でのトラブルなどを察知した紙野くんは、自分のおすすめする本を買ってくださいというのです。
 ある人には「にんじん」、ある人には「猫語の教科書」。わたしは「料理歳時記」と、「パン屋のパンセ」が読みたいな。

「恋とごはんと虹色日和」浅野りん

2017-02-19 19:20:08 | コミック
 本屋で目について買ってしまいました。こういう、おいしそうなまんがに弱い。
 最近は、青葉ぱせり「朝ごはん亭」とか高井研一郎「続 横浜百年食堂」とかも読みました。
 「恋とごはんと虹色日和」浅野りん(少年画報社)。気がつくと、どうもみんな「思い出食堂」の連載ものらしい。わたしだけでなく夫も、この傾向が好きなので、つい買ってしまうのですよね。(他の出版社ですが、「いぶりぐらし」とか)
 帯の雨宮くんの「うっま!!」という表情に惹かれて。
 
 三十二歳の独身OL陽向明日美。同僚に誘われて婚活イベントの料理教室に参加します。
 タンドリーチキンをつくるときに、力強くもみ込んだせいで袋に穴を空けてしまった男性がおり、自分のものを渡します。表情の硬い彼。
 その彼に誘われて、翌日会うことに。
 実はこの雨宮くん。緊張すると睨んだような硬い表情になってしまうのです。陽向に一目惚れしたために、そういうぎこちない様子になったのだとか。
 付き合うことになった二人が、いろいろと食事を作っていきますが、それがまたおいしそう。
 
 この日、息子が調理実習で習ったというホイル焼きを作ってくれたので、わたしはこの本に出ていた「かぼちゃサラダ」と「じゃがいもと玉ねぎのお味噌汁」を作っちゃいました。

「剣と紅」高殿円

2017-02-18 09:25:35 | 時代小説
 高殿円さんが時代小説! しかも、大河の主役井伊直虎を描いているというので、読んでみました。(大河は見ていませんが……)
 「剣と紅 戦国の女領主・井伊直虎」(文春文庫)。
 今回の大河ドラマ開始とともに、関連本が随分出たのでその一環かと思ったのですが、連載は2011年。
 井伊直虎は、日本史のど真ん中には出てこない人物かと思うのですよ。こういう人をモチーフに描こうと思われた動機を知りたいように思います。

 この娘は世を動かすだろうと名僧に予言された香(かぐ)。人の死を予兆する黒い靄を目にし、先を見通す力をもつことから、民衆から「」と崇められます。
 井伊家の一人娘だった香は、いとこの亀之丞(直親)と結婚して家を守ることになっていました。しかし、ある謀略から亀之丞の父が死に、彼自身も逃げ落ちていかなければならなくなります。
 家老の息子小野政次が求婚してきますが、香は剃髪し、尼になることを宣言。
 政次は戦国の世を渡るために、井伊家中の武将たちを謀殺していく中心となります。
 香は、政次とともにある白い影が気になるのですが……。

 直親が逃亡先で情を交わした娘きぬ、奥山家の四姉妹、祖父直平と尊師南渓、商人瀬戸方久。様々な人物たちも魅力的です。
 また、成長した養子の直政が、家康に昔語りをするという構成も、血脈が受け継がれていく世を感じさせてくれます。
「誰しも、橋の上で同じ水を二度と見ぬ」
 効果的に使われるこの言葉と合わせて、歴史のうねりを味わえる一冊でした。


 今日でブログをはじめて三千日となりました。早いものですね。

「総選挙ホテル」桂望実

2017-02-16 19:48:39 | 文芸・エンターテイメント
 総選挙?
 そう、このホテル、従業員の総選挙が行われるのです。
 その時点で所属する部署ではないところで「当選」することもあり、企画部にいた黒田はウェイターに、調理師だった中西はベルボーイになります。
 花屋になりたくて転職した小室は、なんとフロント。そして、清掃の派遣だった後藤はウェディング部門に変わることに。
 桂望実「総選挙ホテル」(角川書店)。
 つぶれそうなホテルの再構築のために社長に就任した大学教授。
 彼はこの仕事を実験と受け止めて、総選挙をはじめとした様々な試みを提案します。
 大変なのは、アイデアだけ預けられる支配人ですが……。
 すっとんきょうに感じられる提案も、実際にはじめてみると次々によい方向に転がっていき、ホテルに活気が戻ります。
 旅行でいいホテルに巡り会えると嬉しいですよね。
 わたしも、リピーターになりたいと思うホテルが何軒かあります。
 サービスが思い出につながっていくのですね。食べ物だったり、ふとした笑顔だったり。
 桂さんはコメディタッチのサクセスストーリーがおもしろいので、楽しく読みました。

「サッド・フィッシュ」佐藤青南

2017-02-14 21:50:22 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 発売直後、コンビニで買ったのですが。
 いつまでも積んだままでした。佐藤青南「サッド・フィッシュ 行動心理捜査官・楯岡絵麻」(宝島社文庫)。
 このところなかなか本をじっくり読めず……読んでもレビューが書けず……と、少し憂鬱に過ごしていたのですが、テスト期間で部活もないので結構続けて読めました。
 「サッド・フィッシュ」とは、人間の感情(悲しみ、怒り、嫌悪などの英単語の頭文字)を表したものだそうです。
 今回は、シンガーソングライターの薬物中毒死、中学生の女の子のリンチ、近隣トラブル、それから、絵麻の昔の恋人・塚本が登場する話の四作。
 塚本は公安の捜査官で、国際テロ組織にスパイとして潜入した看護師の行方を探ってほしいと依頼します。
 塚本はサイコパスで、人の痛みを知らない男。そうと知りながらも変装して潜入する絵麻でしたが、彼女を心配した同僚たちが捕まってしまうのです。
 テロ組織の訓練を受けている敵の前に、なすすべもないピンチに!
 圧倒的な力の差といいますか……。
 テロリズムが身辺に近づいてくる可能性は、平和に暮らしているつもりの毎日にも皆無ではないのですね。
 

「帰ってきた海馬が耳から駆けてゆく」5

2017-02-13 22:54:12 | エッセイ・ルポルタージュ
 1月上旬。
 娘の希望によりアニメイトに行ったところ、マンガの新刊コーナーになんと! 「海馬が耳から駆けてゆく」の五巻が積んであるではないですか。 
 ちょっと待って。わたし、海馬何巻まで買ったんだっけ? 確か二年前の正月に三巻を買ったような……? 四巻を読んだかどうか自信ないんだけど。
 そういうときは、ブログ検索してみるとどこまで読んだかわかりますよね。便利便利。
 で、やっぱり買ってなかったので、二冊入手致しました。菅野彰「海馬が耳から駆けてゆく」(新書館)4と5です。
 先に五巻から読み始めたので、月夜野さんの「50の宴」に出てくる「妖精さん」の意味が分からずちょっと困惑したのです。
 でも、四巻にはしっかり書いてありました。あっ、五巻のラストにも参加されたマンガ家さんたちからのお祝いメッセージがあって、そこにはありましたよ。
 なんだかんだでしょっちゅう会っているお友達とのやりとりとか、様々な企画(サプライズ)とか、なんだかすごく近く感じるのですよね。
 読者も仲間に入りたくなるこのエッセイ。五巻で最後なんて残念です。(新シリーズ始まっているそうで、ちょっと安心)
 個人的に、Nさんの小池百合子の物真似を見てみたい……。

「砕け散るところを見せてあげる」竹宮ゆゆこ

2017-02-12 19:11:22 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 本屋で非常に気になっていた一冊を、図書館で見つけました。
 ところが、返す日になったというのに、見つからないのです。
 わたしは常に複数借りるうえ、三軒の図書館を利用しているため、なんか管理が甘くなっていたらしく、部屋にも車にもない。
 探しまわってトランクの中の箱から発見して、1日で読んで返してきました。
 竹宮ゆゆこ「砕け散るところを見せてあげる」(新潮文庫)。
 母親と二人暮らしの清澄は、全校集会で周囲から紙礫を投げつけられる一年生玻璃を見かけます。
 「ヒマセン」(暇な先輩)と揶揄されながらも、玻璃の被害を食い止めたいと願う清澄でしたが、彼女にはある秘密が……。
 で、この小説、構成上のある仕掛けが施されているのですよ。
 ヒーローになりたいと願う高校生の彼には、実際河川事故で人命救助をして亡くなったお父さんの影響が強い。
 ネタバレ回避でこのあたりまでしか言えませんが。
 わたしはこういうどんでん返しは好きなんです。ただ、ラストの一行がどうこうと帯か何かに書いてあったそうですが、あまり実感できませんでした。
 孤独や苦しみを表すのであろうUFOのメタファは効いていると思います。尾形姉妹もいい。
 ただ、このタイトルは合わないように思うのは、わたしだけ?

「最後の秘境 東京藝大」二宮敦人

2017-02-11 19:38:59 | 社会科学・教育
 すごい気になる本ですよね。二宮敦人「最後の秘境 東京藝大 天才たちのカオスな日常」(新潮社)。
 予想通りおもしろかった。
 「鞴祭」の神主も巫女さんも藝大というエピソードを立ち読みしていて、これはいけそうだぞ、と。
 
 二宮敦人さんはホラーも描く作家さんだそうで、藝大でチェンソーを持ち上げようとしてさっぱり持ち上がらず、敵役に持たせるなら振り回せるようなものにしようと決意する。
 奥さんが藝大の彫刻科で学んでいるのだそうです。
 美術学部(美校)と音楽学部(音校)とに別れ、隣は上野動物園。
 競争率は二十倍以上。学科は細かく分かれいて、指揮科は二人、古楽リコーダー学科専攻は全学年で一人。
 紹介される皆さん個性的で、特に長唄三味線専攻の川嶋志乃舞さんが印象的でした。
 津軽三味線で何度も日本一になった彼女は、プロの演奏者としても活躍しています。
 しかし、ずっとやってきた津軽三味線と、長唄三味線は内容が全く違う(楽譜の書き方すら違う!)と気づいたのが高校三年生の夏!
 
 鍛金・彫金・鋳金の違いや、日本画の膠の話、口笛で入学した人、部屋で雨を降らせる活動……。
 こういうのに取り組んでいる人がいるんですねぇ。
 これ、映像で見てみたい気もします。でも、現実をそのまま写しても演出だと思われそうですよね。