くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ゆめじい」1 やまあき道屯

2012-08-30 21:24:32 | コミック
 掘り出しです。おもしろかった。
 本屋でつらつらと背表紙を見ているうちに発見して買いました。「ゆめじい 明治骨董奇譚」(小学館)。帯を見てじっくり考えたわたしだったのでした。
 こういういわくのある骨董から因縁を解いていく話、大好きなんですよね。でも、表紙の絵柄では判断しにくい。「手に入れた者に悪夢を見せるという享保雛」のフレーズを信じて買ってみました。
 京都一の目利きといわれる古道具屋。店主の「ゆめじい」が孫の小鞠と営んでおります。小鞠はまだまだ駆け出しで、古いお寺から偽物を買い取ったり詐欺師に騙されそうになったりします。ゆめじいが買い取った享保雛をほしいと言ってきた男(ゆめじいが策略でそう言わせたんですが)、夢の中に現れた女にとり殺されそうに。
 金だけを払わせて引き取った人形を、虎介という少年が買いにきます。
 ラストの少年の表情が、愛しい。
 わたしが好きなのは、「眠り怪盗捕物帖」。いや、こういう手法で眠らせられるのか疑問ではありますが、女医師を救いたいという気持ちはよくわかるのです。警察に信頼されるゆめじいの推理も効いています。「お月見の病」や「寄せ付けぬ箱」でも、その力が図抜けていることが語られる。
 どの話も、人間の根底にある温かさのようなものがあり、世の中は信じていいのだと勇気づけられるような思いがします。和歌の扱いもいい。
 「玉の輿神社のお守り」も印象的です。幼なじみの美子と再会し、その出世を喜ぶ小鞠ですが、彼女には「蟻地獄女」と異名のある詐欺師の疑いもある。美子からもらった真珠の指輪を、ゆめじいは本物だと鑑定しますが。
 小鞠に暴言を浴びせて去っていく美子ですが、決して本心ではないのでしょう。そのことを祈りながら美子のことを考える小鞠。
 「雨柳堂」とか「百鬼夜行抄」が好きなら、きっと気に入ると思います!
 でも、単行本にまとまるまで三年くらいかかっている気が……。二巻はいつ出るのかな。

「カラット探偵事務所の事件簿2」乾くるみ

2012-08-26 20:15:33 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 2巻はないと思っていたのに! 嬉しい喜びです。文庫になったので買ってみました。帯のあおりは、「えっ!? えええーっ!」「イニシエーションラブ」に並ぶ驚きなんだそうです。
 乾さんって、新刊出す度にこの作品を引き合いに出されますよね。 
 で、わたしが「カラット探偵事務所」は「1」と銘打ってあっても続編はないだろうと思っていたのは、ラストに井上さんの衝撃的な告白があったからなんですよね。あれを読んだら、当然のように井上さんが女性であることがわかると思うんですが、今回も語り口は「俺」で通されています。あの短編は書き下ろしだったので、もしかして連載を読んでいる人にはその事実がわからないのかしら、と思いつつ、ちょっとした表現ににやにやしながら読み進めたら、このエンディング。ふふふ、これだけ読んだら多分わからないままなのかもしれません。
 わざわざ書くのも大袈裟かなとも思いますが、やったね、井上さん! めでたしめでたし。
 えーと、途中でちょっと気づいてはいたんです。「竜宮城」のママは五十代で性別不詳なんだよ。なぜそこで「性別」? と思ったら、このお店がニューハーフパブだということは明白。「独身の男女」というのは、カレンと井上さん。そういえば本名を隠していたし。「妻子」にショックを受けたのはノンケだと知ったからですよね。ついでに章題は「つきまとう男」。「ファムファタル」ではなく「運命の人」。細かい!
 で、2006年の話ということになっているけど、「一子相伝の味」によれば2008年には二人でマルチ食堂に通っていますし。
 そうかー、子どももいるのかーと感激です。
 秘伝のソースのレシピを探る「一子相伝の味」と、ネットの足取りを追いかける「幻の深海生物」がおもしろかった。前回に比べて、一話の分量が少ないので読むのもスピーディーです。
 帯ではさらなる続編への期待が示唆されていますが、どうでしょう。1の文庫を探しに行きましたが売ってない……。

「怪談」柳広司

2012-08-23 05:55:51 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 やるな、光文社。最近、気になっています。いい編集さんがいるんだろうな。 
 今回読んだ「怪談」もおもしろかった。元ネタはラフカディオ・ハーンですね。換骨奪胎と聞いて、初めて柳広司を読みました。わたしは「耳なし芳一」が読みたくて。
 そうしたら、舞台はライブハウスで、「芳一」(ヨシカズと読む)はロックバンドのヴォーカル。(《鬼火》というビジュアル系。代表曲は「HEIKE」です!) 
 なんといっても、「カイモーン!」と叫ぶのがツボにはまりました。実際原作でもそのシーンがあるからね。
 ハーンの「怪談」は、小学生の時分から何度か読み返しているのでなじみがあるんでしょうか。「ろくろ首」「食人鬼」「むじな」、原作と二重写しに読める構成がいい。
 「雪女」は、巧みに原作をずらして、薄幸の女性由紀子の人生を描いています。蓑輪という主人公のネーミングが絶妙。でも、描かれる悪意が噴出する後半には驚きました。
 全体的にその傾向が強いかな、と。そして、とても映像的。
 「ろくろ首」のラストとか、「むじな」の声をかける場面とか、すっとそこだけが浮き上がるように目に浮かびます。コスプレにはちょっと笑った。
 さらに「食人鬼」では「ひかりごけ」をも引用しながらの展開で。(レッドデータブックも) 作品構成の背後が感じられるような気がしました。
 「鏡と鐘」のミステリアスなラスト。この話の原典は読んでいないので、ちょっと探してみようと思います。
 大切なものといわれたて鏡を差し出すときの葛藤、梱包されるときにも言い出せず、やっと返してほしいと伝えたのに罵倒された怒り、復讐の手段として近づいた父。女性の鬱屈した思いが凝縮されていて、怖い。
 最近、なんかホラーを読む機会が多いような感じがするのは、夏だからでしょうか。

「動物のお医者さん」佐々木倫子

2012-08-22 20:57:39 | コミック
 息子の夏休みも今日で終わりです。休み中、まんがに夢中になっていました。息子の愛するまんがは、「くるねこ」「ドラえもん」「ポケモン」「クレヨンしんちゃん」。
 8月に「OL進化論」の33巻が出たので、それを読み終わったあとに、何か新しい作品を読みたいというんですね。息子は結構繰り返してじっくり読むタイプ。秋月さんの「中間管理職刑事」を貸したところ、
「OLの上司の人だよね!」と大喜び。いや課長とは別人だとは思うんだけど……。勤続二十年って、実はわたしもそうなんだけど、同年代の人々って端から見るとこんな感じなのかなと複雑です。
 「おうちがいちばん」は今ひとつ気が乗らないようなので、わたしのとっておき「執念の刑事」を貸しました。高校時代からずっと持っているのですが、「自虐の詩」よりおもしろいと思うな。でも、久しぶりに読み返したら、小学生にすすめるのはやはり間違いだったかたと……。青年誌連載だった、そういえば。
 慌てて「孔明のヨメ」を貸したら、自分で「トコトコ三国志紀行」を発見して読んでいました。
 待てよ。息子の読書傾向を見ると、「動物もの」が好みのような。これはやっぱり「動物のお医者さん」でしょう! と、押し入れの棚の奥から全12巻取り出して、さっそく読み始めたのですが、なぜか3巻がない。自分では内容を読み込んだ本なので、何があったかはわかっています。棚をもう一度探せばあるかもしれないけど、キャビネットだのダンボール箱だの袋だのが積んであるので断念しています。いやー、懐かしい。ハムテル、二階堂、清原、教授、菱沼さん。このときの菱沼さんって、まだ三十前なんでしょうか。近道をしようとして雪に埋もれたり、就職が決まらないと悩んだり、やっと決まれば昼休みに抜け出してきたり。
 連載当時、わたしはハムテルと同じ高校三年生。大学生のときもずっとリアルタイムで追いかけていたので、エピソードも細かいところまで覚えています。単行本には入っていない表紙のカラー配色まで覚えている。(部分的にですけどあおりコピーで覚えているのもありますよ)
 ついでに「虹と雪のバラード」も歌えます。(妹が音楽の授業で覚えてきた)
 あれから早くも二十年。もうハムテルたちも開業して、中堅の獣医師さんとして活躍中なんだろうなーと思います。(菱沼さんは相変わらずなんでしょうね。教授、何歳だろう)
 何年か前にドラマ化しましたが、二階堂役が要潤だったのがわたしとしてはドンピシャでした。「お医者さん」というタイトルだけど、そうなるまでの学生時代のおもしろさが魅力ですね。古本屋をまわったのに、3巻見つからないのでストレスです。講座を選ぶ回とか神谷くんの回を読みたい。
 画集とかポストカードとか、今も持っています。

「彩乃ちゃんのお告げ」橋本紡

2012-08-19 21:40:18 | 文芸・エンターテイメント
 「石階段」という話があるんですけど、これがすごく良くて。やっぱり橋本さん、いいなぁと思わされてしまうのです。
 「彩乃ちゃんのお告げ」(講談社)。この前読んだ「今日のごちそう」に広告が載っていたので、図書館で探してみました。橋本さんの本、もっと前から手に取ればよかった。でもでも、見方を変えればまだ読む在庫があるってことですからね。楽しみです。
 この物語は、ある新興宗教の次期教主である栃原彩乃という少女(五年生)を中心に、彼女がちょっとした幸せを運んだ人たちの様子が描かれます。
 この宗教、彼女の祖母が提唱したもので、小規模だけれども熱心な信者さんたちがいるようです。どうも内紛がおこりそうな気配なので、彩乃ちゃんは人目につかないところにかくまわれることになったのですね。(「教祖」と「教主」の違いも、この本で知りました)
 まず、智佳子さんというお姉さん。恋人との将来を予見されます。お別れにシャネルの新作マニキュアをあげる。
 三作入っているのですが、どの話も悩みのある人に寄り添ってあるヒントをくれる。彼らに少しでも明るい未来を示唆してくれているように感じます。一見普通の女の子なのに、周囲の人たちには、やはり彼女には特別な力があるのだと伝わる何か。
 「石階段」の主人公は、高校三年生の辻村徹平。社会奉仕の自由研究にと訪れた里山再生事業。軽く山頂を清掃して終わるはずだったのに、案内してくれた人から自分が子どもの頃には石の階段があったのだけれど、すっかり土に埋もれてしまったと聞かされ、つい一段掘り出してしまったんですね。いちばん上を出してしまったので、途中でやめるわけにはいかない。徹平は通う予定の塾も放り出して、ひたすら掘り続けます。一緒に始めたはずの友人はいなくなってしまい、さらに片思いの女の子とその友人が一緒にいるのを見てしまい、進路についても迷ったままです。でも、体を動かしていると、そういうことは忘れてしまう。
 彼のもとに、昼食のおにぎりを運んでくれる彩乃ちゃんです。さらに、今世話になっているという家が、例の片思いの女の子のおじさんであることが発覚。いろんなことがいっぺんに動いていくような力強さがあります。
 徹平は、彩乃ちゃんに銀細工のネックレスをあげます。ちなみに「夏花火」の佳奈がくれるのはビーズの指輪。彼らはなんとなくもやもやとしたものを抱えていたのですが、彩乃ちゃんによって解決の糸口をつかむ。この装身具はお布施をイメージしているのでしょうか。
 わたしは、焼きそば行ったり来たりのエピソードが好き。子どもの目から見た両親の微笑ましさ。こういう小道具を、よく思いつくなぁと感心してしまいます。

「地獄堂霊界通信」4~5

2012-08-18 22:16:16 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 シーズン終了。でも、気になって続きを探しに行ったけど、わたしがまわった書店では売っていませんでした。ノベルス版自体が、扱い小さいんだよね……。
 ううう、五巻で一区切りと思っていたのに、続きも読みたくなるんですよ。三人悪の今後の活躍が、地獄堂のおやじの秘められた力が、読みたくて仕方がない。ゴールデンアイズ。セレイネスを封じたのも、彼なんでしょうね。
 死神との決戦がついに始まります。子どもを失った母の思いを利用して事故を多発させたり、西ノ宮家の再興を願う一族を操って生贄を捧げさせたりと、あくどいんですよ。てつしたちが我慢できるはずはありません。
 しかも、最終的な狙いは拝征将の霊媒としての力。ヤマタノオロチを光臨させるつもり。世界中で蛇神として恐れられるその真の姿は、「ヨブ記」にも描かれた「レヴィアタン」という怪獣なんだそうです。
 「レヴィアタン」って、もしかして「リバイアサン」のこと? で、樹なつみの「デーモン聖典」のK2と同じもの? そういうことを考えてにやにやしてしまうのが、ちと恥ずかしいですね。
 4ではマッキーの車はぺしゃんこになったんじゃないの? という疑問を感じながらも、きっと年月の流れとしては、ドライブ、卵の形の石発見、魔法陣(後半の話の中に、前半が入り込んだ形)という順かなと思ったりして。
 香月さんの本は、結構パターンがはっきりしているんだけど、でも読んじゃうんだよねぇ。苦手なエッセンスもあるけど、でも引かれてしまう。作品の発表ペースも早いですよ。「僕とおじいちゃんと魔法の塔」もいつの間にかかなりの巻数になってるし。
 あと、今回ふと思ったのは、初出が十年以上前で中心人物が小学生だから、携帯電話が出てこないな、と。そういう便利道具がない方が、この世界は信憑性を感じさせるような気がします。
 もうひとつ。結構柔道をやっている人物が多い。てつしのおじいさんも、リョーチンのお母さんも、親分も、柔道家です。
 この十数年で、柔術をする若者の数が減っているんですよね。中学校の部活も減りました。世の中変わっていくなぁ、というのを、この作品を読んで感じてしまうのでした。

「宿題ひきうけ株式会社」古田足穂

2012-08-17 20:58:39 | YA・児童書
 息子には、難しかったような……。自分が小学生の時分に読んだから、なんとなくすすめたのですが、登場人物が六年生だったとは。四年生の息子はどう読んだのでしょう。おもしろいとは言ってましたが。
 「宿題ひきうけ株式会社」、大崎梢「クローバー・レイン」にもタイトルが出ていましたね。よくよく読んでみたら、わたしが生まれるよりも前発表された物語です。初任給が二万五千円。プロ野球の契約金が一千万円。算盤が達者だからと採用された会社は合理化を図って、彼は配置転換。ちなみに、宿題をやってあげる代金は十円です。
 社長のタケシは鍵っ子なので、自宅を「会社」として提供します。頭のいいアキコとヨシヒロが実務担当。活発なミツコが営業を引き受けます。新聞配達をするヨシダくんの弟たちの面倒をみることも。
 しかし、ある出来事をきっかけに会社のことがばれてしまい、解散。
 息子は「でも、六年生ではまた別の会社を作っていた」といっていました。彼らは新しく着任した三ノ宮先生に感化されて、学ぶことや集団のありかたについて考えていくことになります。その結果、世の中から宿題やテストをなくそうと主張する集団が必要だと感じたんですね。
 この物語の後半には、今の世の中を未来から見てみるということについても書いてあります。でも、発表から五十年。わたしたち自身が「未来人」として物語を見つめることもできるのです。
 もちろん、現在でも宿題はなくなっていません。見方によってはさらに過酷になっているかな。ただ、文中で彼らを憤らせた「相対評価」は、「絶対評価」に変わっています。5の人数が7%ではなくなったということですね。
 勉強するって、何か意味があるんだろうか。頭がいいってどういうこと? 世の中は勉強しなくても大金を稼いでしまう人だっている。こういうのは不平等ではないのか。
 うーん、時代背景がすっかり変わっていますが、テーマ性は現在にも深くつながっています。しかも、おそらく昔わたしが読んだ作品から大幅改稿してあります。(作中のテキストを古田さん本人の作品に変更。そのために流れも多少変わりますよね)
 現在だったら、どんな宿題を引き受けるのでしょう。やっぱり読書感想文?(笑)
 先日、三年前にどう考えても人の文章を丸写ししたとしか思えずに問い詰めたら、ネットから引き写したと白状した作品のサイトを発見しました。参考にするのはいいけど、写すのは駄目だよね。
 息子の作文、まだ読んでいません。それにしても、先月奴がうっかりテレビに向けて発射したBB弾のために、今頃画面が壊れてしまい、痛い出費になりそうです。もう一生銃は禁止! 

「地獄堂霊界通信」1~3  香月日輪

2012-08-16 05:28:44 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 他にも借りている本はたくさんあるに、ついつい「地獄堂」を読んでおります。山形の旅館で読んで、帰って読んで。短編連作なので読みやすい。キャラクターもわかりやすいし。コミカライズされているので、中学生には親しみがもてそうです。夏休み明けにはちょっとPRしようかな。
 魑魅魍魎が跋扈するイラズの森。そこを背に建つ上院小学校の五年生、金森てつし(てっちゃん)、椎名裕介(椎名)、新島良次(リョーチン)は「三人悪」と呼ばれるいたずら大王。しかし、そんな彼らが、薬局「地獄堂」のおやじと親しくなる(?)ことで、自分たち人間とは違う世界が、扉の向こうにあることに気づきます。
 病院の床下、日本家屋の壁の奥、日本画家の描いた掛け軸、隣の家の美少女、等々。
 不動明王尊、文殊菩薩、地蔵菩薩の力を授かった三人は、チームワークで妖かしたちに対峙していきますが……。
 わたしは三巻の「森を護るもの」がおもしろかった。森で拾ったイタチ(ハクビシン?)を連れ帰ったら、それは霊獣であり、少女の命を狙おうとする。新しいキャラクターも増えて、自然についても考えさせられます。
 このシリーズ、近くの図書館に一冊だけあって、気になってはいたのですが、途中から読むのも抵抗があったので未読でした。でも、こうやって講談社ノベルス版を読むと、やっぱり挿絵って大事かなと思ったり。だって、美少年の設定なのにあんまり……。
 それからですね、香月さんはどうも誤解をしているようなので一言。保健室の先生は「女医」ではありません。医師免許は取得していないと思います。
 「神隠しの山」では、遠足で姿が見えなくなった級友を探す場面があり、その「翌日」が日曜日であることから、土曜日が登校だったことが伺えますね。初出がいつなのか書いていないけど、まだ学校が五日制になる前でしょう。
 三冊続けて読んでみて、香月さんの原点のようなものが見える気がします。師匠から与えられる魔術書、チームワーク、異世界だけではなく悩みの根源は自分の住む世界にある、あ、ちょっと不良っぽい人も好きみたいですよね。日向の服装とかさ。
 買い置きはあと二冊あるので、次々読みますよ。

「まぼろしの薬売り」楠章子

2012-08-15 08:51:46 | YA・児童書
 「ほんなら堂」がもっのすごく好みだったので、期待して読んだのですが、なんだか中途半端な感じで残念です。楠章子「まぼろしの薬売り」(あかね書房)。
 息子の夏休みの読書感想文、実は「宿題ひきうけ株式会社」をすすめたのですが、読んでみたら六年生向きだった……。これなら四年生として対応可能かなと思ったのですが、いまひとつふんぎりがつきません。だって、長編シリーズのどこか一冊をとってきた感じなんだもん。
 美形の薬売り時雨は、弟子の小雨とともに旅をしています。不思議な病を治し、人々の思いを受け止め、二人の旅は続きます。ときには、薬では癒しきれないこともありますが、そんな経験も大切なもの。小雨はある流行り病で肉親を失い、時雨も同じように天涯孤独の身の上。時雨には雷雨という師匠がいたことや、実は女である(!)ということも発覚します。
 が、時雨が女である必然性をどこにも感じないんですよ。いいじゃん、男でも。支障ない支障ない。師匠のエピソードにしても、もっと深まりそうなんですけど。
 「椿屋敷の娘」が、いちばん好みかな。椿屋敷といわれるお屋敷のコウというお嬢さんが、このところ別人のようになってしまった。ある日は血まみれの野ネズミをくわえていた、という噂がたっているところに時雨たちは到着します。
 しかし、異種婚姻譚の割にはそのまんまというか。もうひとひねりあってもなーとも思いました。
 明治という具体的な舞台設定があるのですが、人物の背景はそれっぽくないようにも。
 

「週末は家族」桂望美

2012-08-14 20:13:45 | 文芸・エンターテイメント
 これは三人称で書いた方がおもしろいんじゃないかなー。 
 誰かを恋人として受け入れることができない「無性愛者」である瑞穂は、長らく友人として付き合ってきた大輔と結婚します。というのも、入院生活を通して、大輔が独り者では様々な手続きやそれに付随する説明が面倒くさいことに気づいたから。瑞穂の抱える悩みもひっくるめて、形だけの夫婦になることを提案します。
 大輔はシェイクスピアに傾倒しており、劇団を主宰しています。また、その演技力を生かして人材派遣の仕事もしているのですが、時々子役の必然性を感じていた。で、彼のお眼鏡にかなって、十歳の女の子が二人のもとにやってきます。ある施設の週末里親を引き受けたのです。
 ひなたというその少女は、始めから自分の役割を心得て、実に堂に入った演技をします。大輔は、劇団の新作劇にひなたを抜擢。「リア王」をモチーフにした新作劇となりますが……。
 というのを、三人の一人称で次々と描いていく訳です。でも、なんだか一人称って、周囲が見えにくいのですよね。四章まで続くとパターン化してしまって。
 テーマとしては、既成のイメージに流されずに生きることが大切なのではないかということかと思うんですが。例えば、母親は子供と暮らしたいはず、親と暮らせずにいる子供は面会を望んでいるはず、というような。ひなたは母親と会いたいとは思っていないし、来ると言って当日にはやはりキャンセルする母にいくばくかの疑問すら感じていないようなスタッフに辟易しています。自立したい。その思いが劇の脚本に反映され、大輔はそれを見てなんだか新しいドアを開いたような気になる。酷評だった公演も、台本を直してからは好評に転じます。
 それにしても、ひなた、母親とかなり幼いころは一緒に暮らしていたらしいのですが、そのあたり、わたしには納得できません。コーヒーにできるだけ砂糖を入れて飲んだという記憶があるようなんです。ただ、彼女が母親になったのは十四歳。両親も一緒に子育てをしようとは言わなかったという描写があるのですが。
 物心つく頃まで一人で育てられたんなら、こういう態度になるかな? 
 それはともかく、「連れ」という表現が気になります。瑞穂は、ひなたと親子にはなれないけど、「連れ」にはなれると考えます。うーん、でも、小説の地の文としてぴったりこない。
 それに対して、ひなたは自分たちを「チーム」と表現します。そっちの方がいいかな。
 わたしも週末は家族と遊園地に行ってきましたよー。最上川の舟下りもしました。楽しかった。