くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「桃のひこばえ」梶よう子

2015-01-27 02:13:33 | 時代小説
 待望の「御薬園同心水上草介」第二弾です。「桃のひこばえ」(集英社)。
 わたしが梶さんの作品を最初に知ったのが、前作「柿のへた」でした。
 御薬園同心という仕事、小石川養生所の人々、剣術に邁進する千歳という娘。こういうエッセンスがすごくおもしろくて、続きが出ないか楽しみにしていました。
 いやはや、この展開、驚きました。残り数ページで、千歳の縁談がすすむし、角造はやたらと柔らかくなっていてびっくり。水上さんのんきすぎです! と思っていたけど、きちんと構成されたドラマで、満足でした。

 ちなみに「ひこばえ」というのは脇芽のことのようです。
 御薬園の桃の木が倒れて、切り株から小さな芽が出た。それを選定して新しい木の命をつなぐのです。
 御薬園にやってきた見習い同心の吉沢角造。四角四面で融通のきかない彼を、園丁たちは「堅造」とあだ名します。そう、水上を「水草」と呼ぶように。
 何事にもきっちりしていて、相手にも厳しい吉沢ですが、アカザの影響を見抜いたり、ダイエットの相談にきた男に親身になってやったり、だんだん味が出てきます。
 妹の美鈴もいい。おっちょこちょいですが、明るくてさっぱりしている。二人の兄妹の絆を描いたのが「桃のひこばえ」なんです。

 蘭医の河島の旧友が現れる「清正の人参」もおもしろい。
 清正人参というのは、セロリのことだそう。加藤清正が騙されて持ち込んだといういわれがあるんですって。
 「あすぱらぐゅす」にも笑ってしまいました。「土筆のような形状をし、マツバウド、西洋ウドと呼ばれている」。
 小石川の御薬園、西洋から持ち込まれた植物もたくさんあるんですね。ローズマリーのようなハーブもあるそうです。
 
 とにかく心惹かれて仕方がないはさみを入手。誰彼となく自慢して、それなのに朝起きたらみつからなくておろおろする「くららの苦味」 、後添いとしてやってきた女の本心を感じさせる「相思の花」もおもしろかった。
 第三巻はあるのでしょうか。