去年と今年の研修の間に読んだ「生まれたのは何のために ハンセン病者の手記」がたまらなくいいのです! この間の一年という月日の長かったこと! 早く続きを読みたい気持ちでいっぱいでした。でも結局、研修先じゃなくて県図書館で借りたんだけどね。
〈昨年の読書ノートから〉
著者松木信さんの207ページまでの人生。17歳で発病。多摩全生園に収容される。弟の誠と孝も彼に続く。23歳で少年舎の寮父となり、教師を勤める義子と出会う。やがて義子にプロポーズするが、友人に結婚を反対され、彼は落ち込む。 園を逃亡するために匿ってほしいと現れた女と一夜の関係をもち、義子のことを諦めようとするが、結局先輩の仲介で結婚。この出来事を告白するべきかどうか苦悩する。
義子がプロミン(ハンセン病の特効薬)治療を始めるが、実は結核を併発している場合には重大な副作用が……。
妻の死、弟の死、自身は失明し、キリスト教にのめり込む。寮父をしていたころの教え子・五郎が、11歳年上の女と看護婦との三角関係に悩んで自殺。もう一人の弟が賭け事で借金を重ね、説得して改心させる。 さらに自治会を生まれ変わらせようと腐心しているのだ。あー、続きが気になる!
同じ全生園だし、共通する人物がいるかも? と「忘れられた命の詩」を読み返す。そしたら! なんと筆者がいちばん頼りにしている人が、松木さんではないの! 「良太」という名前になっていたからわからなかった!
寮父として子供たちに作文を書かせるにあたって、松木さんはこう言う。
「子どもたちの前途には恐るべき病魔が待っている。それと戦う言葉を持つことが大切だ。それが自己表現能力をつけることなのである。苦難のただ中で言葉も持たず、獣ように死んでいくほど悲惨なことはない。」
今年、あらためて借りてやっと全部読みました。この間にハンセン病に関わる本を読んだり、講演会に行ったりもしました。高山文彦「火花」は、北条民雄の生涯を描いたルポルタージュだけど、松木さんの文章から引用している部分もあり、しみじみ。(松本馨名義です)
松木さんは、エピソードの抽出がまた上手で、園長との確執とか売店の問題とかを自治会長として解決していく様子がいきいきと描かれます。片腕である平田さんと奮闘します。
わたしがちょっと不満だったのは「良太」がほとんど出てこないこと。確かに谺
雄二さんは草津の療養所に転院したとは思うけど、たまには消息を知らせてくれてもいいではないですか。
そう思っていたら、共産党員と意見が合わず、十三年務めた会長を辞任。しかし、党全員がそういう考えではない。自分の信頼する「平田も良太も」最後の一人になっても戦い続けると約束してくれている、という文で終わるのだ。
やっと出たよー良太! でもこんな最後の最後に突然出てくるようでいいの? それまで3ページしか出てこなかった良太のことなんて、普通忘れるでしょう。それとも、長谷良太=谺 雄二は識者にとって常識?
でも、とてもいい本なんです。欲しいんだけど、絶版の様子。何とかなりませんかねぇ……。
〈昨年の読書ノートから〉
著者松木信さんの207ページまでの人生。17歳で発病。多摩全生園に収容される。弟の誠と孝も彼に続く。23歳で少年舎の寮父となり、教師を勤める義子と出会う。やがて義子にプロポーズするが、友人に結婚を反対され、彼は落ち込む。 園を逃亡するために匿ってほしいと現れた女と一夜の関係をもち、義子のことを諦めようとするが、結局先輩の仲介で結婚。この出来事を告白するべきかどうか苦悩する。
義子がプロミン(ハンセン病の特効薬)治療を始めるが、実は結核を併発している場合には重大な副作用が……。
妻の死、弟の死、自身は失明し、キリスト教にのめり込む。寮父をしていたころの教え子・五郎が、11歳年上の女と看護婦との三角関係に悩んで自殺。もう一人の弟が賭け事で借金を重ね、説得して改心させる。 さらに自治会を生まれ変わらせようと腐心しているのだ。あー、続きが気になる!
同じ全生園だし、共通する人物がいるかも? と「忘れられた命の詩」を読み返す。そしたら! なんと筆者がいちばん頼りにしている人が、松木さんではないの! 「良太」という名前になっていたからわからなかった!
寮父として子供たちに作文を書かせるにあたって、松木さんはこう言う。
「子どもたちの前途には恐るべき病魔が待っている。それと戦う言葉を持つことが大切だ。それが自己表現能力をつけることなのである。苦難のただ中で言葉も持たず、獣ように死んでいくほど悲惨なことはない。」
今年、あらためて借りてやっと全部読みました。この間にハンセン病に関わる本を読んだり、講演会に行ったりもしました。高山文彦「火花」は、北条民雄の生涯を描いたルポルタージュだけど、松木さんの文章から引用している部分もあり、しみじみ。(松本馨名義です)
松木さんは、エピソードの抽出がまた上手で、園長との確執とか売店の問題とかを自治会長として解決していく様子がいきいきと描かれます。片腕である平田さんと奮闘します。
わたしがちょっと不満だったのは「良太」がほとんど出てこないこと。確かに谺
雄二さんは草津の療養所に転院したとは思うけど、たまには消息を知らせてくれてもいいではないですか。
そう思っていたら、共産党員と意見が合わず、十三年務めた会長を辞任。しかし、党全員がそういう考えではない。自分の信頼する「平田も良太も」最後の一人になっても戦い続けると約束してくれている、という文で終わるのだ。
やっと出たよー良太! でもこんな最後の最後に突然出てくるようでいいの? それまで3ページしか出てこなかった良太のことなんて、普通忘れるでしょう。それとも、長谷良太=谺 雄二は識者にとって常識?
でも、とてもいい本なんです。欲しいんだけど、絶版の様子。何とかなりませんかねぇ……。