くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「健康で文化的な最低限度の生活」柏木ハルコ

2016-02-29 05:26:28 | コミック
 書店でお試し小冊子を立ち読みしたのです。
 生活保護を受ける世帯では、高校生のアルバイトまで収入に入れて支給額が決められると聞いたので、シビアだなと思っていたのですが、それが題材になっていた。
 寿司屋でアルバイトをしていた息子の給料を返還しなくてはならないと言われ、衝撃を受けた家族に、なんとか特例が適応するのではないかと話すのですが、そこまでは甘くなくて……。
 ああ、こんないいところで止められると!
 二週間くらい続きはどうなるのか気になっていたのですが、三巻が出たこともあって、買ってしまいましたー。
 そしたら、お試しで紹介されていたストーリーは、一巻には載っていなくて。これで一気に買っていなければ、さらに気になってしまう仕組みでしょうか?

 公務員になって、専門研修も受けないうちに生活保護の世帯を百件以上担当することになった義経えみる。
 彼女の体当たりの仕事ぶりを描きます。柏木ハルコ「健康で文化的な最低限度の生活」。
 タイトルは、生存権から取ったものですよね。
 様々な取材から作られているという話をききました。
 仕事上、社会保証について知識が必要かもしれないと考えて調べているのですが、今まで意識しないできたことを痛感します。どう支援の手を受ければいいかも曖昧になっている。
 もっと知識を深めたいので、次巻にも期待しています!

「ふくしま式200字メソッドで」

2016-02-28 19:03:45 | 社会科学・教育
 職員室の本棚にあったのに、先頃まで気づかずにいました。
 「ふくしま式200字メソッドで『書く力』は驚くほど伸びる!」(大和出版)です。
 わたしは福島先生の著作はかなり読んだと思うのですが、この本は今までになく読みづらかった。
 主旨はいつもと同じです。「まとめる力」「言いかえる力」「たどる力」を鍛えて、国語の力をつけよう。今回は、「型」を使って、作文がかけるようになろう。
 根本の型は、
    「ア」は「1」なため「A」である。
    しかし、「イ」は「2」なため「B」である。
    だから、「ア」よりも「イ」の方が「C」であると言える。
 これに、適宜対比する言葉を入れていく。慣れてくれば、八百字やもっと多量の作文(小論文)が書けるようになる。
 それを、具体的に懇切丁寧に教えてくれます。
 生徒に書く力をつけたいという若い教師には非常に参考になる一冊です。

 でも、わたしには今回驚くほど読めなくて……。
 まずは、宮城県の入試で出題される作文が対比的なものではないからというのも一因でしょう。
 誤解がないように言いますが、わたしは授業では対比作文をできるだけ書かせるように取り組んでいる方です。「故郷」や「平家」だって対比して書かせます。
 でも、公立入試にはもっと抽象的な課題が出る。
 まあ、どちらにしろ、対比作文が書けるにこしたことはないので、それは必要です。
 読んでいて苦しかったのは、福島先生が自著の書名を何度も何度も出しているところ、なんですよね……。
 あの本ではこうやって取り上げたとか、詳しくはそちらもチェックしてほしいとか、結構頻繁に出てきて読みにくい。
 
 ところで、今回は読書感想文の書き方として「モチモチの木」が例文として紹介されます。主人公の成長を反映して、マイナスからプラスに発展させる。その差が感動につながっていく、ということが、その前の項に書かれていて、わたしは憂鬱になりました。
 これは、弁論原稿でもよく言われる手法です。
 一回挫折を乗り越える方が、主張がいきるんですよね。でも、わたしは好きになれない……。
 そういう気持ちで読んだせいか、お手本の感想文がすっきりと入ってこないのです。
 初めの豆太は臆病、経験を通して勇気をもつ。この成長物語という分析はいいのですが、そのあとに「800字超えの完成形」という形で載っています。
 でも、これは読書感想文ではない、と思います。

 物語のあらすじ、勇気をもつ行動で得た勇敢さ。そして、母親に全部やってもらう自分を反省……。
 って、体験が半分以上? さらに作品に戻ってこないままに終わるのは納得いかない!
 というわけで、なんとなくもやもやしています。

「楽に生きるための人生相談」美輪明宏

2016-02-26 19:39:24 | 哲学・人生相談
 人生相談本は、読まないわけにはいかないでしょう!
 ということで美輪明宏。「楽に生きるための人生相談」(朝日新聞出版)です。
 図書館に行くと新着本のチェックから入るのですが、先日はこの本がありました。確か一昨年、同僚が道徳の授業で取り上げたので、朝日新聞の人生相談について教えてもらったのです。
 つらさを訴える相談者に、自分がデビューしたときにはかなりひどいバッシングをうけたことを伝えます。
 でも、重度の障碍をもつ人のいる施設を訪ねたときに、背筋が伸びる思いをしたのだそうです。
 年下の三十代男性を好きになったという五十代女性には「五十歳を過ぎて、まだ子供の寝言のようなことを言って、恥ずかしくないんですか?」なんておっしゃる。
 美輪さんの声が聞こえてきそうな一冊でした。 

「さよならの手口」若竹七海

2016-02-25 20:43:01 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 「このミス」で上位の評価だったそうですね。立ち読みして、この話どうだっけ? と思ったのです。自分の本棚にあるのはわかっている。
 でも、冷静に考えるとまだ読んでなかった。
 若竹七海「さよならの手口」(文春文庫)。
 若竹さんの本はほとんど読んだのです。しばらく本が出なくてじれったい思いをしていたのですが、これが「悪いうさぎ」以来13年ぶりだとか。
 葉村晶はミステリ専門の古書店でアルバイトをしています。フェアに使う本を買い取りに出かけたところ、白骨を見つけてしまい、ケガをして入院。同じ部屋だった元女優から、行方不明になった娘を探してほしいと頼まれます。
 二十年前に失踪した娘。当時依頼を受けた探偵も、かなり詳細な調査をしながら、中途半端なまま姿をくらましてしまったのだそうです。
 晶は事実を調べるうちに、もうひとつの事件に巻き込まれていくのです。

 シェアハウスの暮らしが楽しそうなのです。
 実際やってみたら疲れるとは思いますが。
 大家さんの葡萄畑とか、歓迎の酒宴とか、差し入れの野菜とか。
 物語は二転三転し、晶は警察から目を付けられる羽目に。なんとか彼らから逃れようとするのです。
 若竹さんの登場人物は結構エキセントリックな人が多いですよね。今回はサイコパスと呼ばれる人もいます。
 おまけのミステリ案内もおもしろいです。

「本をめぐる物語 栞は夢をみる」

2016-02-24 05:23:21 | 文芸・エンターテイメント
 表紙がスカイエマさんで、本がテーマで、執筆者には北村薫。
 これは読むでしょう。
 でも、期待したほどではなくて……。すみません、わたしがダ・ヴィンチと合わなくなったからですかね。

 ダ・ヴィンチ編集部編「本をめぐる物語 栞は夢をみる」(角川文庫)。大島真寿美「一冊の本」、柴崎友香「水曜日になれば(よくある話)」、福田和代「ぴったりの本あります」、中山七里「『馬および他の動物』の冒険」、雀野日名子「僕たちの焚書まつり」、雪舟えま「トリィ&ニニギ輸送社とファナ・デザイン」、田口ランディ「カミダーリ」、そして北村薫「解釈」。
 読んでいない話もあります。
 おもしろかったのは中山七里かな。『馬および他の動物』という画集が語り手。主人亡き後、古書店に並べられた彼は近くの本たちと交流する毎日を送っていましたが、ある日盗難にあう。
 転売されたら日焼けして価値が下がってしまうことを恐れますが、盗んだ男は思いのほかじっくりと読む。本はやはり、読まれたいのだ、と幸福を感じます。しかし、男にはある秘密が。
 そりゃ、譲ってくれと言ったら断られるよねーという展開でした(笑)。
 北村さんの作品は、「吾輩は猫である」「走れメロス」「蛇を踏む」の作品を宇宙人が分析するのですが。
 一人称を「夏目漱石」にしたり、メロスの行動を見つめる太宰の体力に愕然としたり、というのはおもしろいのですが(「竹馬の友」には大受けしましたよ)、なにしろ宇宙人だし……。
 期待しすぎだったのかな。
 
 大島さんのは、私設図書館の館長だった父親の葬式にからむ物語。柴崎さんは憧れの人が営む本屋を訪れる話。雀野さんは近未来で紙の本がなくなっている時代に、昔の出版関係者の幽霊が現れる。
 福田さんのも電子書籍にまつわるもの。うーん、うまく説明できませんが、自分の運命に関わる物語を読むことになる若者の話です。
 それから、田口ランディは好きじゃないので読んでなかったのですが、出だしに引かれて急遽読みました。
 沖縄にユタを探しにいく。「カミダーリ」とは神がかりという意味ですかね。途中まではおもしろかったのですが、後半はやっぱり好みではなかった……。
 

「ラジオのお仕事」室井昌也

2016-02-23 05:24:57 | 産業
 通勤の車中ではラジオを聞きます。
 以前はFMを聞いていましたが、車検で代車を借りたときに偶然聞いたAMの番組で聞き覚えのある名前と声が。
 教え子が、アナウンサーになっていました。確かに、中学のときからラジオのアナウンサーになりたいって言ってましたよ!
 以来、ずっとAMを聞いております。
 やっぱり人の話を聞くのはおもしろいですよね。
 今回は「ラジオのお仕事」(勉誠出版)を借りてみました。
 荒川強啓さん、こういう表記なんですねぇ。「ネットワークトゥデイ」しか聞いたことがないんですけど、ずっとどう書くのか気になっていたのです。(最初キョウヘイだと思っていたのですが、彼の滑舌のよさでキョウケイだとわかりました)
 外部レポートとかお天気キャスターとか(森田さんでした)営業スタッフや報道、ラジオショッピングのMCの方まで多岐に渡ります。
 専門学校のレポートもありました。
 交通情報キャスターは、東京本部で一括採用なんですねぇ。全国に五十三カ所のセンターがあるそうです。学生時代の友人がときどき登場していたので結構注目していたのですが、最近聞かないなと思っていたら、結婚退職されたようでした。
 番組を作るためにたくさんのスタッフが関わり、充実感をもって働いているのが素敵だなと感じます。
 ラジオって、日常的ですよね。特番を組むにしてもテレビとは違う。年末年始もレギュラー番組休まないし。
 ただ、家では聞かないので……。わたしの青春のアイドル斉藤由貴が週一回ラジオをやっているらしいので聞いてみたいのですが……。
 

「世につまらない本はない」養老孟司

2016-02-22 05:26:11 | 書評・ブックガイド
 養老孟司が本について語り、後半では池田清彦・吉岡忍と鼎談するというコンセプトの一冊。「世につまらない本はない」(朝日文庫)。
 結構あちこち行ったりきたりしながら読んだのですが、普段自分では選ばない本が多いのと、現在手をつけている本とクロスオーバーする面があって驚きました。
 例えば、姜尚中「悩む力」は、ウェーバーと漱石の著作から悩みを紐解いていくのですが、養老孟司はウェーバーを評価しない。漱石は鼎談で触れていて、現在の小説の文体のもとになっていると池田さんが話しています。
 テーマごとに三人が三冊ずつ紹介するのですが、ほとんど手にとったことがない。まんがも「寄生獣」くらいです。
 太宰と安吾をテーマに語る回では、「走れメロス」は「太宰の実生活とは逆さま(養老)」「で、学生たちが得る教訓は『人生、そのときどきの便宜でいいんだ』と(笑)(池田)」なんていってます。確かにファースト太宰(わたしが今勝手に作った語)が「人間失格」だったら嫌ですよねぇ。

 脳について。漢字の認識だけで相当の場所をとるので、相貌認知が苦手であるとおっしゃる。
 確かにわたしは顔と名前を一致させるまで時間はかかります。
 でも、顔を覚えるのが得意な人は漢字は苦手というわけではないのでは。
 養老さんはドイツ人神父だった校長先生が、入学式までに生徒の顔を覚えて早々に呼びかけることを例としてあげますが……。
 この方のように百六十人は難しいけど、自分のクラスの三十五人くらいは、学級担任覚えるよねぇ。

 それから、流し読みで引っかかったところだけ読むとも言ってました。引っかかるほどおもしろい。
 ……正直に言います。わたしも流し読みをしました。
 熱烈に読みたい一冊は、海野和男「蝶の飛ぶ風景」!
 

「密話」石川宏千花

2016-02-21 05:40:00 | 文芸・エンターテイメント
 図書館で見たときから気になっていた一冊です。石川宏千花「密話」(講談社)。
 カバーは蓋の開いたマンホール。
 この下の下水道に、メアリーは住んでいます。
 子どものような大きさで、涙は泥水の臭いがする。
 誰にも気づかれず、教室のゴミ箱の陰や家の暗がりに潜んでいるメアリーを見つけたのは、転校してきたマミヤくん。
 はじめてできた友達に有頂天になるのですが、やがてマミヤくんは秘密の「お願い」をするようになります。

 担任のアイコ先生が自分だけに冷たい。だから、お願い。
 メアリーは不審を感じながらも、アイコ先生の家に忍び込んでネコを連れ出し、お母さんの眠りを妨げます。
 やがて、明るかったアイコ先生から笑顔が消え、学校も辞めてしまう。
 マミヤくんのクラスメートのカセくんやスナミさんの様子を見ているうちに、メアリーは自分が彼のためにしてきたことは間違っていたのだと気づくのです。
 
 もう、メアリーが気になって気になって。
 率直に言ってしまえば、彼女(?)は妖怪なのだと思います。
 仲間がおらず、自分だけで何者かを知らないまま長い間一人生きてきたメアリー。誰もその存在を見ようとしない。知らないふりをする。
 孤独な彼女を見つけて名前をつけたマミヤくんを、一途に信じようとするのです。でも……。
 「メアリー」と呼ばれていたのではなかった。
 そう知った瞬間の胸を刺すような痛み。
 異形のものである彼女が、マミヤくんと友達になってはいけなかったと気づく場面が印象的です。
 後悔と、苦しみと。
 いるはずのないものは、見ない。周囲の人々は、メアリーが「いる」ことを知りません。
 メアリーは小学六年生のきらきらした輝きが大好きで、しょっちゅう学校に出かけていたのだそうです。でも、自分が見つかってはいけない存在だということはわかっている。
 異質な存在でありながら、幼い子どものように純粋なメアリー。連載時のタイトルは「わたしと友だちになってはいけない」だったそうです。
 もっと語りたいことがあるけれど、うまく表現できません。
 メアリーの悲しみを、世の中が繰り返しませんように。

「大和言葉つかいかた図鑑」

2016-02-20 10:27:21 | 言語
 夫が買ってきました。海野凪子・ニシワキタダシ「大和言葉つかいかた図鑑」(誠文堂新光社)。
 わたしは「和語・漢語・外来語」の授業でクイズをしようと思っていて、和語にかかわる本を探していたところだったので、興味がありましたが……。
 でも、そういうニーズに合った本ではありませんでした。
 パターンとして、和語を含む短文「かろうじて失敗はまぬがれた」(「かろうじて」に傍点)と、凪子先生の解説、ニシワキさんの一コマまんがという構成。
 わたしは「整理→かたづけ」系のことをやりたかったので。
 語彙力をつけたい初心者向きでしょうか? 日常的な言葉ばかりだと思うのですが。

 わたしが初めて知ったのは「かぜをひく」という言葉。おせんべいがしけったときなどに使うらしいです。(先日、職場で消費期限切れの煎茶が山のように見つかりましたが、これを「かぜをひいたお茶」と言っていいのかな?)
 
 先日、わたしが書店に行ったとき、この本の隣に西東社の言葉にかかわる本(タイトルは忘れてしまいましたが、「2200」とついていたと思います)が並んでいました。
 外国語になった日本語(edamame,bonsaiのような)の一覧とか、地名の由来、着物の用語などトリビアルでおもしろかった!
 言葉に関する本は大好きですが、必要な情報をうまく引き出すためには、様々な本にあたることが大切だと感じました。
 凪子先生、また蛇蔵さんと組んで本を出してくださいよー!

「ようこそ、日本人の知らない日本へ」

2016-02-19 20:45:45 | エッセイ・ルポルタージュ
 書店で目について購入した一冊。春名久史「ようこそ、日本人の知らない日本へ」(リンダパブリッシャーズ)。
 著書は大学中退後、四十を過ぎてからTOEICに挑戦し、一回で高得点を取った経験を描いた方だそうで、現在は通訳ガイドとして活動中。
 外国人とのやりとりで感じたカルチャーショックを紹介した本です。
 自国の文化を知るには、他国との差異を見つめることが必要だと思いました。
 結構筆が割かれているのは、中国の方々の行動です。
 どうして近年爆発的に増加したのか。
 それは、中国の製品に信頼がもてないと香港に買いにいく人が多かったものが、あまりの傍若無人ぶりに耐えかねて拒否されるようになり、ターゲットが日本に変わったということのようです。
 爆買いした商品はバスに詰め込むので、ものすごいことになる。
 それはそうですよね。
 しかも、駐車する場所は決まっているのに、遠いからもっと店の近くに停めるように文句をいう。(荷物を持って歩くのが嫌なんだって)

 外国人に人気のスポットといえば、防災センターや西陣織会館、忍者レストランだそうです。日本人が考える観光とは少しずれがありますよね。でも、インスタントラーメン発明記念館でマイカップラーメン作りに人気があるのはわかる! わたしも横浜で作りましたが、楽しかったー。
 反対に、靖国神社を訪れる人もいるそうです。
 戦時下のことを、わたしたちも日本人としてしっかり考えていかなければならないと感じました。
 
 自分たちの文化との違いが楽しかったです。