くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「白銀の墟 玄の月」小野不由美

2019-12-10 21:52:51 | ファンタジー
 四冊一気に読みました。発売日に買っておきながら、読み始まるの遅かった……。
 小野不由美「白銀の墟 玄の月」(新潮文庫)。
 待ちに待った載国続編! 帰還した泰麒と李斎は、驍宗を取り戻すことができるのか? 偽王阿選との対立は?
 
 いやー、もう、続きが気になって。
 いちばん知りたかったのが、「驍宗はどこにいるのか」。
 同じく「十二国記」ファンの同僚と、「お供えがそうつながるとは!」「歌っている人がそうかと思ってたよ」と語り合ってしまいました。
 何と言っても、残り百ページしかないのに、まだまだピンチで大丈夫なのかが、本当に心配だった……。
 しかも、四冊目の表紙カバー阿選なんですよ?
 
 好きな場面は、羅喉(ちょっと字が違いますが、携帯では出てこない)を得るところ。
 衝撃的だったのは、恵棟の木札が破られていたところです。鳩怖い。
 登場人物多すぎて、「あれ? この人誰? いつ出てきた?」と思うことも。
 でも、世界観がしっかりしているので、ついていけます! 宗教とか山岳とか地形も、細かく設定されていますよね。
 待った甲斐がありました。
 更にシリーズ続編待っています。
 ちなみに、好きなキャラは項梁。

「後宮に星は宿る」篠原悠希

2018-10-11 19:53:17 | ファンタジー
 夏の旅行の帰りに横浜のアニメイトで買いました。
 二冊目まで買ってあるのですが、もう五冊くらい出ているのですよね。
 篠原悠希「後宮に星は宿る 金椛国春秋」(角川文庫)。
 金椛国(椛は国字ですが、舞台設定は唐や漢代をイメージしているそうです)の名門に生まれた星遊圭は、幼い頃から病弱です。薬師の胡娘から薬学の知識を学び、やがては宮中に出仕して……と、考えていたのに、皇帝の崩御により殉死を求められます。
 叔母の玲玉が正妃となったため、一族は粛正されることになったのです。(外戚の権威を封じる策がとられているためです)
 一人で逃げることになった遊圭は、以前手助けした娘明々に救われ、彼女とともに後宮で下働きとして働くことに……。

 いつ男とばれるかはらはらしている遊圭に、宦官の玄月は手助けをしてくれますが、次第に利用されるようになります。
 こういう男女入れ替わりものは結構好き。
 遊圭を救ってくれる厨房の趙婆や、ペットだった「天狗」(狸に似た外来種だそうですが……アライグマでしょうか)のキャラクターもいいですよ。

「烏百花 蛍」

2018-08-06 04:37:57 | ファンタジー
 「烏百花 蛍の章」(文藝春秋)、とても、よかったです……。
 シリーズの番外編なんですが、いちばん涙ぼろぼろだったのは、「まつばちりて」。藤宮連の禁官(女性ながら髪を切って男として仕える官吏)松韻の物語です。
 遊女屋に生まれ、美貌を期待されながら書道にのめり込む娘「まつ」。自分が育てようと申し出た楓蚕について宮中に上がり、松韻と名付けてくれた大紫の御前に認められようと頑張ります。
 以前からその手跡に感心していた忍熊という男は、出会ってみれば禁官に否定的。事あるごとにいさかうのですが、とある事件が……。
 もう、後半涙ぼろぼろで、何度も読み返しては泣いてしまいました。

 それからね、わたしはやっぱり澄尾が好きなんです。
 最初の「しのぶひと」で、雪哉より鮮やかに流鏑馬を決めてくれ、ラスト「わらうひと」で、いつか真緖の薄にその姿を見せると約束します。
 澄尾の思いが届いてほしい!

 それからですね、わたしは「単」のときからなぜ浜木綿が「すみ」なのか謎だったので、「すみのさくら」もよかったです。
 シリーズ読み返したいんですよね。文庫二冊買ってあるんですが……。
 短編集なのでいろいろな話を思い出しながら読めました。
 忍熊の育てる卵は、どこかに結びつくんでしょうか?(結?)

「弥栄の烏」阿部智里

2017-12-02 04:37:10 | ファンタジー
 これ、大型書店のSFの棚で見かけたんですけど、SFですかね?(まあ、わたしもファンタジーに分類していますが、ちょっと違う気も……)
 阿部智里「弥栄の烏」(文藝春秋)、やっと読めましたー。
 わたしの行く図書館は四ヶ所あるのですが、そのうち二館しかこのシリーズを入れていなくて。
 とりあえず、娘の加入している電子図書館で貸してもらえることになったのですが、わたしにはスマートフォンで本を読むのは、難しかった……。
 わかってはいるんです。この先目も悪くなってくるし本の置き場だってないし、電子図書に慣れた方がいいって。
 でも、読む気にならず、とうとう娘が返してくれました。ごめん。

 というわけで、やっと借りてきました。
 これで決着がつくと思うと、読むのがもったいない。
 澄尾ーっっ! てっきり真緒の薄さんと想いを交わすのかと思っていたのに、そ、そうだったのですね。
 「玉依姫」の物語が、烏たちの視点で描かれるため、先の展開はわかるのです。そして、なぜ山神に烏と猿が仕えているかもわかります。志帆がどういう行動をとるのかも。
 ただ、あの作品では語られなかった烏と猿との因縁がどうなるのかが気になって。
 
 猿の長が語る「事実」は、奈月彦の来歴を示すには納得できるものでした。
 一冊めの「烏に単は似合わない」のときにも、四兄弟の他に宗家があるのはどういうことなのか疑問だったのです。その謎もすっきり解けました。
 猿とともに山を統治していたのは、女神菜のですね。(言われてみれば、山の神というのは女性でしたね。嫉妬するから山への立入を禁じる昔話があります)
 烏が結ばれるのは、山神(雷神)の眷属の烏。
 奈月彦と浜木綿の間に生まれたのが娘であることも、何か今後に関わってくるような。
 こぼれ種から芽吹いたという青い朝顔の裏表紙が、幸哉の想いを象徴していて美しい。
 ところで、表紙の女性は誰をイメージしているのでしょう。白い椿から考えると雷神や志帆(「玉依姫」は赤い椿でしたね)と対になるのでしょうか。
 第二部はどうなるのか。非常に楽しみです。
 

「玉依姫」阿部智里

2016-11-27 19:21:22 | ファンタジー
 待ち望んでいた「玉依姫」(文藝春秋)。金烏はどうなっているのか、非常に気になっていたのでやっと読めて満足です。気がつくと、あっという間に百ページ読み、息子の大会の時間待ちで五章まで読みました。
 これまでの烏の世界とは異なり、現代日本の田舎町が舞台です。
 都内の高校に通う志帆は祖母と二人暮らし。亡くなった母の兄だという男が現れ、一度自分たちの村を訪ねてほしいと頼まれます。
 祖母は、志帆の母だけを連れて、彼が十歳のときに村を出たのだといいます。
 祖母に黙って村にやってきた志帆は、「ゴク」として山に置き去りにされます。
 現れたのは猿と醜悪な姿をした山神。
 「喰ろうてやるぞ」と脅す山神を恐れながらも、人型をとった烏の奈月彦に諭されてその場に踏みとどまります。志帆を母親として山神を育てなければならないのだと言われ、愕然とします。
 玉依姫と名乗る女が、逃がしてくれるというのですが、志帆は、自分の意志で山に戻るのです。
 この、志帆と山神との疑似親子ぶりがおもしろいのです。
 急に母親として振る舞いはじめる志帆に当惑しながらも、彼女を慕いはじめる山神。カッとなると自分を止められない山神は、志帆が自分を裏切ったと感じたときに奈月彦に怪我を負わせてしまいました。いつ暴走するか分からない不安。
 また、志帆を助けたいという銀髪の少年が、奈月彦と大天狗の前に現れます。
 山神とのかかわりが安定すると、その外見も変化してきました。志帆は、彼を「椿」と呼ぶようになります。

 荒魂と和魂。失われた神の名前。『英雄』。志帆を探しにきた祖母。金烏と山神の失われた記憶。『サヨ』。
 様々な伏線が、山神と玉依姫との結びつきを示していきます。
 わたしはこれ、ラブストーリーだと思いますよ。
 
 途中からなりを潜めている猿が、次回何らかの行動を起こすのでしょうね。うーうん、気になります。いつか一気に読み直したい!

「おせっかい屋のお鈴さん」堀川アサコ

2016-04-09 19:38:54 | ファンタジー
 早いもので4月もそろそろ中旬です。
 転勤してから怒涛のように忙しくて、本を読む時間もなかなか取れません。やっと今日、部活から帰ってからいくらか読めました。
 「おせっかい屋のお鈴さん」(角川書店)です。
 堀川アサコさんだから、時代ものかな? と思っていたのですが、舞台は仙台。地下鉄東西線八木山動物公園駅からほど近い本当寺を舞台にした、ファンタジー人情コメディです。
 二歳で両親が離婚したカエデは、亡くなった父親からもらった手紙が縁で本当寺にやってきます。そこに現れたのが、舞妓さんのような格好をした幽霊のお鈴と、奉公人の重兵衛。カエデがお鈴の墓につまずいたことにご立腹の様子。
 お鈴は、かつて自分を裏切って駆け落ちした二人を探し出すように言うのですが……。

 結婚詐欺師を懲らしめたり、役者志望の御曹司に振り回されたりするのですが、カエデと彼氏の「こんちゃん」、本当寺の近くに住む貸本屋のおじさん(泰平さん)のかかわりがとてもあったかいんです。
 目の前で教え子が事故にあい、世間から誹謗中傷をうける友人千佳の話が切なかったです。
 ラストが「さよならのかたち」だったので、てっきりお鈴さんも成仏するものと思っていたのに、全然そんなことはなかったので、続編もあるのかも?
 舞台が仙台なので、なじみの地名がよく出てくるのも楽しいです。泰平さんの息子一家は虹の丘に住んでいますが、わたしもそのあたりでアルバイトしていました。
 冒頭部分は4月はじめ。東西線は先日開通したので、実はこの物語は「近未来」なのです。すぐ時間が追いついてしまいますけどね。そういうところにもにやにやしてしまいました。

「食堂つばめ 忘れていた味」

2016-03-29 05:37:30 | ファンタジー
 「食堂つばめ」も六冊めです。ペース早いなあ。
 今回は、エレベーター事故で瀕死の重傷を負った人々を探す男性が登場。彼は餃子を食べたいらしいのですが、すごく忙しそうに走りまわっていてなかなか店に現れない。
 子どもと離れてしまい嘆き続ける女性や、店員さんを連れてきて、彼らの蘇生に一役買います。無事に見つけてもらった子どもは、その直前まで、自分よりも少し年長の少年と一緒だったと語りますが、どうやらその少年とも関係があるらしく……。
 
 餃子がすごくおいしそうです。アボカドの餃子食べてみたいー。
 我が家では餃子だけたくさん食べるという習慣がないのですが、楽しそうでいいですね。
 ラストで出てくる激辛ラーメンも気になるため、この日のお昼はみそラーメンになりました。

 ちなみに夜はハヤシライスとポテトサラダ、松橋流エッグベネディクトでした。 
 松橋周太呂「すごい家事」(ワニブックス)でおいしそうだったので。
 でも、高野豆腐がうちの子たちには好みではなかったようです。固かったからか……。
 この本を読むと東京ハンズに痛烈に行きたくなります! 仙台駅にオープンしたらしい! ただわたしにそういう余裕がないので、とりあえずホームセンターでウタマロ石けんを買ってみました。

「ここはボツコニアン」5 ファイナル

2015-11-02 20:43:52 | ファンタジー
 最終巻です。「ここはボツコニアン」(集英社)。
 宮部さんが後半でこんなことを書かれていました。

  「テレビゲームをプレイしたことはないけど、『ボツコニアン』は読んでるよ」という奇特な方がおられましたら、深くお礼とお詫びを申し上げます。

 ああ、それわたしです。テレビゲームはしたことないです。わたしのゲーム体験は、「ゲームウォッチ」の「マンホール」で止まっています。ぐーっとはまって飽きるの早いのですね。ゲームは小学生でやめたため、その後発売されたテレビゲームとは無縁です。
 でも、宮部さんだからと最後まで読みました。そりゃ、わからないところも結構ありましたよ。内輪なら伝わることってあるんだろうなあ、と思いながら。
 今回はトリセツとか「門番」の意味とか、やっと出たパレちゃんとか、羊の秘書の秘密とか、解き明かされて良かった。
 宮部さんは、先ほどの「テレビゲームを~」のくだりのあたりで、印象に残る「ラスボス」戦アンケートをしようとしていますが、この意味は、あんまりラスボスについて覚えていないことが多いということでした。
 そういわれてみると、案外自分も読み終わった本の内容を全部覚えていないような気になるから不思議です……。
 わたし、このところ忙しくて、この本の感想を書く余裕がないまま一週間経ってしまいました。とりあえず、明日返却しないと……。

「ぶたぶた洋菓子店」「ぶたぶたは見た」

2015-10-14 02:52:33 | ファンタジー
 先日、I図書館に行ったら、「ぶたぶた」シリーズ全部入っていた!
 わたしはかつての勤務校にこのシリーズを買った分だけ寄贈してきたので(徳間デュアルだけ何冊か残していますが。入手するの大変だったんだもの)、読み返すということがない。
 最近、結構早いペースで出版されるので、気になるジャンルのときしか買わないと心に決めたのですが。
 こうやって、全部揃っていると嬉しいよー。
 早速借りることにしたのですが、実際読んでいない本がどれなのか迷ってしまいます。とりあえず四冊借りましたが、今回はまず「洋菓子店」から。
 彼の料理の実力は折り紙付きですが、いやー、わたしも「コション」に通いたいです! ぶたの顔がついたマカロンとかマドレーヌとかシュークリームとか。どれもおいしそう。
 お菓子教室やスペシャルケーキなどの企画も楽しそうです。
 しかし、ぶたぶたにケーキづくりのアドバイスをもらう高校生三人組の一人が「岸利融」(キシリトール)なのはびっくりです。おじいちゃんがお茶問屋さんなのでものすごくおいしいお茶が淹れられる。だから、ケーキでも日本茶。
 「帰ってきた夏」が個人的には好きです。なんかラブコメでした。
 会社で窮地に立たされた中で、相手にやり返したあと退職して帰郷した倫子。友人からお菓子教室に誘われても気が向きません。そこに現れたのは飲み仲間だった小久保。どうやら倫子を追って転勤してきたようですが……。
 
 「ぶたぶたは見た」は、ワイドドラマ仕立てでした。
 主婦の苑子は交通事故で入院することになります。心配なのは家事。夫も子どもたちも全く家のことができないのです。
 しかも、苑子につきまとうおじいさんがおり、もしかしたら彼が事故の原因となったのではないかという疑惑が出てきます。
 そういう謎解き的なところもおもしろいのですが、なんと苑子さん、わたしと同じ年なのよー! まだ小中学生の子をもつ身として、なんとなくショックです。(彼女の息子は大学生)
 
 あと二冊は返却日までには読み終わらない気がするのでまた今度。

「空棺の烏」阿部智里

2015-09-08 04:08:29 | ファンタジー
 期待を裏切らないおもしろさ! 阿部智里「空棺の烏」(文藝春秋)です。
 前回猿たちとの争いから新たな目的をもった雪哉。山内衆の養成所勁草院に入学し、武官の訓練を受けることにします。
 同じ部屋になったのは、かつて雪哉にこてんぱんにやられた同郷の市柳と体格のいい茂丸。さらに西家の御曹司明留や下人階級出身の千早が加わり、訓練に明け暮れることになります。
 ちょっと学園ものっぽいところもありました。雪哉を座学の先生として勉強会を開いたり(でも、雪哉は彼らが何を理解できないのかわからないので不向き)、明留がつっかかってきたり、ひいきする教員に目を付けられたり。
 そして、金烏としての奈月彦にはある理由から即位の延期を告げられます。

 タイトルの「空棺の烏」は、奈月彦の前の金烏が禁門の向こうから帰ってこなかったことに由来します。だから、その棺には遺体がない。奈月彦に金烏としての特徴が欠けていることはそのせいもあるのではないか。
 今は鍵を外しても誰も開けられない禁門。そして、そこには前金烏のある決意があったらしいのです。
 
 宮部さんの「荒神」に続いてまたマンイーターものを読んでしまいましたね。
 後半に出てくる「小猿」が言うには、ニンゲンを食べる猿は愚かになるのだそうです。
 まだまだ隠された秘密がありそうなんですが、次巻でいよいよ明らかになりそうです。ただ発売は来年なんだって。「玉依姫」、楽しみです。