くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「アサギをよぶ声 新たな旅立ち」

2015-09-29 04:45:53 | YA・児童書
 あーっ、もう次が気になってたまりません。なんていいところで終わるのか。
 森川久美「アサギをよぶ声 新たな旅立ち」(偕成社)。続編を期待していましたが、非常におもしろかった。なかなか見つからないため、仙台まで買いに行きましたよー。
 弓の腕比べで力を見せたアサギでしたが、戦士となることは認められず女屋で機を織る仕事をすることになります。
 そこにはいとこにあたるサコねえもいて、何かと立場の悪いアサギを助けてくれます。
 ところが、この年は「神とり」といわれる行方がわからなくなる人間が増えると言われていました。
 ある日、サコねえの姿が見えなくなり、村ではとうとう「神とり」が始まったのだと噂され……。

 サコねえを追って村から旅立つことになるアサギ。別れのときのイブキとのやりとりが好きです。
 小舟の女や白い猿も再登場。さらには穀物で村を豊かにする夢を語るヒコがいいですね。世の中の広さを感じます。
 児童書だからか読みやすいし、展開も早い。でも、密度濃いです!
 今回は弓矢シーンが少なくて残念。やっぱりアサギは弓を引いているのがかっこいい。
 もう一度言いますが、続きがすごく気になってたまりません。早く三冊めを読みたいです!

「悪魔の花嫁」あしべゆうほ

2015-09-28 19:03:55 | コミック
 わたしが小学校低学年だったころ、母が「プリンセス」を購入していました。
 花郁悠紀子さんとかせがわ真子さんとか好きでした。イケスミチエコさんの「孔雀の微笑」はコミックもってましたよ。連載まんがで「ハウスジャックななちゃん」という作品の最終回が載っていて、火葬のときに生き返ったおばあさんのことを黙っているななちゃんが忘れられないといったら、友人から「筒井康隆の『家族八景』じゃない?」と言われました。まだ原作読んでませんが。
 
 ということで、原作池田悦子・絵あしべゆうほ「悪魔の花嫁」(秋田書店)を借りてきました。この図書館、結構懐かしいまんがが多いのですよ。でも、2・5・6・8・9と飛び飛びなんですが。(多分紛失したものと思われます)
 で、もしかしたら学生時代に再読したことがあるのかもしれませんが、読んでいて、「これ、子どものころに雑誌で読んだよ!」という記憶のあるものが何作かあったんです。ひゃー、タイムマシンに心だけ連れていかれたような感じ?
 わたしが読んでいたのは、5と6に収録されていたものです。すごく鮮明に思い出したのは「命の終章」「闇の中の瞳」「叛逆の園」です。おそらくこの間に入っている話も読んだのでしょうが。うっすらと覚えている部分(ヴィーナスが蝶の化身になるところとか)もあります。
 「命の終章」は、とにかく人が死ぬこの作品には珍しく、白血病で自暴自棄になった少女が弥勒菩薩の助けで生きる力を取り戻す話。
 こう書くとなんだか宗教がかっていますが、自分を助けてくれた船頭は弥勒であると悟った彼女が、その右手の傷を見て「やっぱりあなたでしたね」と呟く場面、これ、子どものころは意味がわからなくて悩んだことも思い出しました。「ヴォードー教の呪いの人形」もインパクトありますよねー。
 「闇の中の瞳」は化け猫騒動をテーマに、美奈子たちが泊まった屋敷の因縁が描かれます。化け猫は油をなめるというのもこのまんがで覚えたのですねぇ。目の奥に腫瘍ができると猫のように輝く眼病って、本当にあるのでしょうか。
 「叛逆の園」は、オリンポスを舞台に、双子のウェヌスとグラティアがどちらがより美しいかを競うことから悲劇を招きます。審判のサチュロスに自慢のスタイルを見せつけようとする二人、覚えていますとも!
 そういえば、この時期には「オリンポスのポロン」も載っていました。
 ちなみに、幼いわたしに父がくれた最初のコミックは谷岡ヤスジの「メッタクチャ馬鹿」でした……。こちらは読み返したくはないなー。

「江戸しぐさの正体」

2015-09-26 20:54:47 | 書評・ブックガイド
 石原千秋「生き延びるための作文教室」を読んでいたらこんなくだりが。

  「江戸時代は心が豊かでよかった」みたいなことを言う人もいるが、差別が身分制度として制度化されていた江戸時代のどこがいいのか。

 理想の江戸を「一部の保守的な現代人がイメージしている」と考察されているこの事例、もしかしたら「江戸しぐさ」じゃないですか?
 石原先生、間違っていたらごめんなさい。そのくらい、わたしにとって「江戸しぐさの正体 教育をむしばむ偽りの伝統」(星海社新書)がおもしろかったんです。
 著者は「偽書」の考察に定評がある原田実さん。
 道徳の教科書にも載っている「江戸しぐさ」。いかにも江戸時代にマナーとして行われていたものだとして、「傘かしげ」「肩引き」「こぶし腰浮かせ」などが紹介されていますが、この時代の主流は和傘ではなく簑と笠のはず。(傘は贅沢品)
 「江戸しぐさ」は秘伝だったといいながら、戦前の小学校では雨の日などに「蟹歩き」の練習をしていたという記載もあり、矛盾している。
 検証していくうちに一九八〇年代に芝三光という人物が生み出し、その後越川禮子らによって広められたことがわかります。
 つまり、江戸時代にはなかった考えをあたかも史実のように伝えていることから「偽書」と認定。そのような嘘を教育に持ち込んではならないという主張です。

 以前、「江戸しぐさ」についての本の読書感想文を読んだことがあります。
 でも、ずっと紹介と賛美することだけで「感想文」ではないと思いました。ただ、これは県の審査会だったので……この作品、地区大会を抜けてきたのですよ。推した先生もこの行動を道徳的に感銘を受けたんですかね。
 原田さんが、「江戸しぐさ」をバックアップする教師集団としてあげている研究会は、わたしも何冊か著作を読んでいます。いろいろな考えの教員がいるから、これを道徳の授業にいかせると考える方もいるでしょう。

 さて、実際どのように教材化されているのか。調べたら二社ほど見つかりました。片方は「礼儀」、もう一方は「公徳心」の項目で載っています。どちらも越川禮子の文章からとったもので、「江戸しぐさ」をめぐってのエピソードを紹介して考えさせる展開。江戸しぐさを教えてくれた父への感謝。そして、ロンドン在住の友人が「江戸しぐさ」が残っているのは、今や東京ではなくイギリスだと嘆くという文章です。
 でも、ロンドンの人たちが実践しているのは「江戸しぐさ」ではないでしょう……。行動としては同一かもしれませんが、彼らはそのように捉えているとは思えません。無理やり結びつけるのは詭弁だと思うのです。
 不思議ですよねぇ。
 ついでに子どもでも「江戸しぐさ」の意識があったとして「稚児」という言葉を使うのもどうかと。(意味は「乳児」「寺に仕える子ども」ですよね)
 マナー向上を目指しているにしては、なんだか胡散臭く感じません?

「生き延びるための作文教室」石原千秋

2015-09-25 04:58:56 | 言語
 ラストの「坊っちゃん」の読書感想文を書く章がおもしろかった! 論文の視点は細部に宿ることがよくわかりました。わたしも学生のころにもっと考えを深めておくべきだったと思います。
 石原千秋「生き延びるための作文教室」(河出書房新社)。14歳の世渡りシリーズですが、これをすんなり理解する中学生は恐るべし。
 大まかにいえば、ふたつの作文指南をされています。「プロット型作文」と「審査員特別賞狙いの読書感想文」。
 まず、「プロット型」とは「ふつうは~しかし~」の構文で主張を書くもの。二項対立ですね。わたしは「確かに~しかし~」で書かせることが多いです。批判をそのまま相手に投げ返す「クオーター制」など参考になりました。
 で、読書感想文の方はというと、国語の教科書に採用されている「坊っちゃん」を俎上に、細部に目を向けて新しい解釈をする方法が描かれます。
 例えば、「佐幕派の文学」と唱えた平岡敏夫さんの視点。また、実は学歴のある「坊っちゃん」の立身出世を願う清が、将来麹町に家をもつのだと語る一貫性。
 そういえば、清水義範さんが教育実習でこの作品のテーマが「清への愛」だなんて納得いかないと憤慨していましたね。
 わたしは「坊っちゃん」は読書クイズ+文庫読みをしますが。(あんまり主題にはこだわらないので)

 「ふつう」であること。違う視点をもつこと。それでも、状況に合わないような考えはうまく隠すこと。
 中学高校で書くような「道徳的視点」や「みんな同じような読み方しかできない」ことから脱却させるために、石原先生は苦労されているようです。
 基本的には、文学を読み取るときにはある共通したストーリーがあるわけですが、作品の細部を読むことで違う物語が浮き上がるということだと思います。表面的に読んだだけではつかめない。
 わたしは学生時代、「春琴抄」の佐助犯人説に非常に感銘を受けたのですが、そういうことではないかと思いました。
 

懐かしの少女まんがを読み返す

2015-09-24 05:16:40 | コミック
 連休、天袋にあげてあったまんがを引っ張りおろしてひたすら読みました。
 どれも懐かしいっ。わたしは適当に整理しているので、間の巻がないものもあって悔しいです。でも、青春時代に読んだまんがって、例えば誰に借りたか、どこで読んだか結構覚えているんですよね。タイムカプセルのようです。
 読んだ順ではなく、ぱらぱら書きます。
 
 遠藤淑子「マダムとミスター」五巻まで。
 続きはあるのでしょうか。財産目当てで結婚したグレースと、執事のピーター(彼も養子に入っています)が巻き起こすドタバタコメディ。
 遠藤さんの作品って、破天荒なお金持ちの女性(エヴァ姫はお金ないけどお姫さまだから……)をサポートする男性のシリーズが多いですよね。
 グレースとお母さんとのわだかまりのエピソードが心に残ります。
 旅先で出会った女優の卵さんが、そのお母さんに憧れていたあたりとか、泣きそうになりました。
 打算的なことを言いながら結構お人好しのグレースが素敵です。

 萩尾望都「11人いる!」(小学館文庫)。タダとフロルがかわいい。なぜ10人の試験なのに11人いるのかは何回も読んだのでよくわかっているのですが、細部がおもしろい。タダがその宇宙船の配置を知っている理由とか病気のこととか。
 続編では、メンバーだった王様の国に招かれた二人が、陰謀に巻き込まれていくのですが、誰も本気で戦争をしようと思ってはいないはずなのに、どんどんよくないことになる展開。特に、友人の暗殺を命じられた四世の行動がつらかった。

 竹宮恵子「地球へ……」(中公文庫)。中学生のときにアニメを見て印象的だった作品。まんがははじめて読みました。
 ソルジャー・ブルーとかジョミー・マーキス・シンとか、ネーミングも印象的ですよね。
 超能力を持った人々が、彼らを除外しようとする人類と共存することはできないのか。せめて安住の地を求めたときくらいゆるして許してあげればいいのに……と思うのですが。
 それにしても、ブルーが亡くなるときにヘッドホンをジョミーが受け継ぐ場面、「ぼくの補聴器を取って」にものすごく時代を感じたのですが……。ソルジャー・ブルーはかなり長い年月を生きてはいますけど、そういう意味ではないですよね……。
 
山口美由紀「ドラゴン・ナイト」「おひさまの世界地図」「音匣ガーデン」(白泉社)。
 山口さんの繊細な絵がやっぱりいい。わたしは「おひさま」が最も好きです。AからZの頭文字をもつ子どもたちと、養父母役のケンとメリー。おてんばなアミは、のんびりしたジークと仲がよく、やがてはペアになる約束をしますが、ある夜ジークのもつ力が暴発してしまう。
 ジークが死んだといわれて嘆き続けるアミの前に現れる、もう一人の大人ゼロ。性格も外見も全く似ていないのに、彼にジークの面影を見てしまうアミ。
 舞台設定が意外と「地球へ…」と共通していました。

 あとは今市子「大人の問題」「あしながおじさんたちの行方」「幻月楼」、樹なつみ「花咲ける青少年 特別編」などを読みました。

「祝もものき事務所」4 茅田砂胡

2015-09-23 15:48:03 | 文芸・エンターテイメント
 なんかものすごく入り組んだ血縁関係で理解するのに時間がかかりました。「祝もものき事務所」4(中央公論新社)。
 事務所の最初の事件だそうです。凰華があちこちに出したメールのに早速返事をくれたのは、大学時代の先輩芹沢。
 彼の家は静岡のものすごい名家の分家筋。本家に招かれた百之喜と凰華は、その壮大さに衝撃を受けます。
 芹沢は亡くなったばかりの当主について話すのですが、実はその当主の息子であることが分かり……。

 毅然とした先代の未亡人浪江さんが素敵です。
 いろいろとつらいことを乗り越えているのだなと思いました。
 ちょっと登場人物が多すぎて出しすぎだろと思わないでもないですが、なんかみんな結びついていく感じが茅田さんぽくておもしろいです。
 

「名短篇ほりだしもの」北村薫・宮部みゆき

2015-09-19 08:47:04 | 文芸・エンターテイメント
 北村さんの対談が大好きで、もうそれだけで一冊作ってくれないかしらと思うほどなんですが。
 だから、この本も本当は宮部さんとの対談だけと思って借りたんですが、あぁ、この語りを読むと本文も読みたくなってくるんですよね。
 
 「名短篇ほりだしもの」(ちくま文庫)。石川桂郎「少年」がすごい。
 作品のミステリアスな部分を、北村さんが解説してくれるのです。わたしには非常に衝撃的でした。
 主人公は、知り合いから留守番を頼まれます。この知り合いは大学出を見込まれて大家の婿になった人ですが、見合いでは妻になる女が白痴であることを隠されていた。三年後にこの女は亡くなり、その妹と再婚して子どもも次々に三人生まれたのだそうです。
 一番下の男の子は身体が弱いらしく、人目につかないように育てられていました。主人公は、その子どもを一度だけ見たことがあるのです。
 留守番をしている彼のもとに、その一家が心中したという連絡が入り、愕然としてあの男の子の顔を思い出すのでした。

 彼らはなぜ心中したのか。
 姉と妹との結婚が、男にとっては我慢のならないことだった。それで財産を使い果たしたあとで死ぬ決意をしていたのだというのですが、宮部さんが言うように最初はともかく現在は幸せだったのではないのか、それなのに死を選ばなくてはならないことがあったのかと疑問に思いました。(以下ネタバレです)
 そしたら北村さんが、この男の子が外国人の血を引いているからだというのですよ。そうとしか読めないと。
 ヒントは彼の描写。ひぇー、たったこれだけのところからそれを読み取るのですね……。北村さんの読解力に感嘆しました。

 あと、この本を読んだ次の日、神津カンナさんがラジオで「母方の祖父が作家で……」といっていました。これは中村正常さんのことですよね。
 

「謎解き広報課」天祢涼

2015-09-16 05:37:07 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 長年PTA広報に関わってきたので、仕事のあれこれがよくわかります。毎月締切に向けて構成を練り、「町を愛してもらうために」頑張る主人公の奮闘ぶり、楽しく読みました。
 天祢涼「謎解き広報課」(幻冬舎)。
 とある理由のために、L県の町役場に就職した結子。ところが、その「理由」が無効になってしまい、夢も希望もないまま赴任します。
 3月に退職するつもりで、無難に過ごそうと思っていたのに、なぜか町の広報紙を一人で担当することになってしまい……。
「エスパーですか?」なんていって、結子の原稿に朱を入れる上司の伊達が実はスーパー広報マンで、彼の叱咤激励、町民の皆さんの暖かさでぐんぐん成長していくのがおもしろいんです。
 そして、トラブルのもとになる謎を推理するものの、結子としてはさらにピンチななってしまうことも。
 
 ところで、今回の舞台は東北。さらに、有名な広報マンとして岩手県藤沢町の方が紹介されています。藤沢の野焼き祭りにインスパイアされた祭りも開催されています。
 藤沢、割と近いのですが、そういうお祭りがあることを知りませんでした……。県が違うからですかね。
 早速パソコンで検索してみると、広報もバックナンバーが見られるようになっているとか。わたしのでは開けなかったため、そのまま一関市の広報を見てみました。
 そしたら、わたしも何度かいただいたことのある「I-style」が載っているではありませんか! えーっ、これが市の広報紙だったとは!(タウン誌だと思っていました)
 藤沢町は、合併で現在一関市になっております。そういえば、あとがきで取材協力に一関の方が挙げられていましたね。彼がスーパー広報マンのお一人なのでしょう。
  編集者の力で紙面は変わる。以前、PTA広報を町の広報課の方が(保護者だった)作ってくださったことがあったのですが、非常に垢抜けたんですよ。レイナウトからして違う。
 
 結子がやる気を取り戻し、この町を愛しはじめていく姿がよかった。
 どぶろく好きじゃないんですが、この饅頭食べてみたいです。
 天祢さんは一関まで取材にいらしたんですかね。

「空色の小鳥」大崎梢

2015-09-14 05:05:26 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 敏也が欲していたのは、家族だったのかなあ、と読み終わって思いました。だから、彼は幸せをつかんだのだと思います。余りにも近くにあって、気づかない幸せ。「青い鳥」をイメージする惹句が帯にありますが、同じテーマなのかもしれませんね。
 大崎梢「空色の小鳥」(祥伝社)。狡猾に立ち回ろうとしても、なんだかんだで人柄が出てしまう敏也と、彼を取り巻く人々の暖かさがよかった。
 西尾木敏也は大企業のオーナーの息子ですが、後妻の連れ子であるため肩身の狭い思いをしてきました。義父は養子縁組をしなかったため、母が亡くなったあとは卑屈になりながらも西尾木家で過ごしてきました。
 不慮の事故で亡くなった義兄の雄一に、内縁の妻がいて娘までいる。その情報をつかんだ敏也は、ある目的のため母子に近づき、やがて娘の結希の親権を取ることに成功しますが……。

 とにかく結希がパワフルで、子育てに奔走する敏也の姿がおもしろいのです。これまで高級マンションでスタイリッシュな生活をしてきた敏也が、結希のためにオムライスやパンケーキを焼きます。レシピは簡単そうなのに、思ったようにいかないし、結希に食事を残されて腹を立てたり。
 大人の関係だった恋人と会う時間がとれなくて(学童保育のお迎えとか、宿題のチェックとか。ちなみに残業もしません)別れ話を切り出すも、彼女が部屋にいついてしまったり。ついでに高校時代の友人で現在ニューハーフの汐野もやってきて暮らし始めるし。
 
 敏也は義父の溺愛していた義兄の娘を切り札にして、やがて西尾木の財産を得ることを考えています。会社の後継ぎと目される従兄の将人にも一泡吹かせたい。(嫌な奴なんですよ、これが)
 でも、冒頭、雄一から「おまえはちがうから。ここから出て行くことを考えろ」と言われた場面があって、どうしてなのかなーと思っていました。確かに敏也は雄一に屈折した思いはあったようですが。
 雄一にとって西尾木家は居心地のいい場所ではなかったのだと思います。父親に反発して家を出た雄一には、自分と同じように敏也が干渉されるのではないかと危惧したのでしょうか。
 ただ、彼が求めるものと敏也が求めるものは違ったのですね。
 わたしは元番頭の松尾さんが素敵だと思いました。

「少女まんが文庫カタログ 懐かし編」山本文子+ぱふ編集部

2015-09-13 05:59:17 | 書評・ブックガイド
 ダンボールに入れっぱなしだったこの本を、ゆっくりゆっくり読んできたんですが、とうとう読み終わってしまいました。懐かしい! とにかく少女まんがに浸りたくて、押し入れを開け図書館や古本屋をまわり、少しずつ読み返しています。
 「少女まんが文庫カタログ」(雑草社)。「懐かし編」とありますが、続編があるわけではないようです。
 恋した男性キャラクター、憧れの女性キャラクター、懐かしい名作について百五十人にアンケートをとったそうです。
 山本文子さんはわたしとほぼ同世代。だから、読んでいる本も重なっているものが多く、非常によくわかります。
 男性キャラ*真壁くん、アンソニー、天羽くん、伊集院少尉、アッシュ……
 女性キャラ*キャロル、亜弓さん、オスカル、ナタリー……。
 出てくる名前、みんなわかるよね。わたしだったら誰と答えるかしら。とりあえずこれを読んだあとものすごく読みたくてたまらない、あさぎり夕「あいつがHERO」の竜かなー。若菜はかわいかったよね。お京とか和人さんとか懐かしいなぁ。
 「ヨコハマ物語」のお卯野も好きでした。
 もう、ページを開く度に懐かしく、百三十作以上紹介されたなかで読んだことがあるのは百作弱、今でも自分で持っている(実家含む)のは二十作くらいです。
 図書館では「Lady Love」を借りてみました。尊敬していた先生の代役を困らせるつもりで、衣装の装飾ビーズの糸を切ったレージデージ。こういうのは意地悪役の行動でしょう。彼女がバレリーナとして活躍していく姿を描きます。
 多分、連載中はあまり好きではなかったため、飛ばして読んだのだと思います。わたしはこのヒロインのエキセントリックなところが苦手だなー。
 「悪魔の花嫁」も巻数不揃いだったけど、今度借りようと思います。
 結構最近だと思っていたのに、本が出てから十年経っているためかここに取り上げられている本、古本屋ですらほとんど見かけないものもあります。読みたくても読めないのは歯がゆい……。
 おそらく高校生や学生のときに読んだ本が多いと思うんですが、やっぱりその時期は染み込みが違うのでしょうか。
 それこそまんが本を持ち込んで、友達とあれやこれや話したい……。
 「あいつがHERO」のことを思い出していたら(この本には紹介されていないのですが)、いろいろと浮かんできたのですが、竜の仲間で女言葉を使う彼の名前をなかなか思い出せなくて……。柴ちゃんとか貴之さん(若菜パパ)とかわかるのに! と歯がゆく思っていましたが、一晩考えたら思い出しましたよー。宇佐美ジョー!(漢字だと丈)
 すっきりしました。