くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「漢字のひみつ」

2016-11-29 22:10:53 | 言語
 これ一冊で、中学校国語の言語事項はほとんどカバーできます。
 「漢字のひみつ」(学研)、加納善光監修、中尾雄吉まんが。
 漢字の音訓、部首、画数、送りがな、熟語、六書、故事成語、対義語、類義語など。わたしがこれまで勉強してきたことがコンパクトにまとまっている。
 授業で学んだことを再確認するのにも最適です。
 もともとは故事成語の調べ学習に使おうと借りてきたのですが、なんかいろいろ参考になる。自分で一冊ほしいほどです。

 国語教育でわたしが最も得意とするのは、言語事項。
 他の分野に比べると、あまり脚光を浴びないかもしれません。研究授業でも歓迎されないし……。
 中でも、六書で漢字の成り立ちを紹介するのがいちばん好きなんですが、「転注」ではいつも困っていました。
 代表的なのは「楽」。もともと「音楽」の意味だったのに、「たのしい」という意味に転用した。
 教科書に紹介されているもの以外ももっと知りたい。でも、なかなか見つからないのです。
 この本には「長」が出ています。
 もともとの意味は「かみの長い老人」。次第にリーダー全体をさすようになり、「一番上のもの。かしら」という意味に広がった。
 なるほどー。

 部首は違うのに同じイメージの漢字もおもしろい。
 晴・清・静には「青」の字が入っている。部首はそれぞれ「ひへん」「さんずい」「あお」。同じ部分は「共通するイメージ」を示していて、他にも情や精、請があります。青のイメージは、「けがれなくすみきっている」。
 形声文字の発音符号というだけではないのですね。中国では同じ発音字を代替することがあると聞きましたが、これもそうなのでしょう。
 「且」は、「次々に重なる」(助・査・祖・粗・組)。力を重ねたり、気を重ねて邪魔したり、何代も続く先祖を表したりするそうです。興味深い!
 漢字の勉強は楽しいなあ。(転注文字使用) 

「遠い唇」北村薫

2016-11-28 20:48:52 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 北村さんの短編集「遠い唇」(角川書店)がおもしろかった。
 「しりとり」は「和菓子のアンソロジー」で、「解釈」はダ・ヴィンチの本で既読なんですが、こうやってノンシリーズの短編を読むことも興味深いですね。
 「解釈」、初読ではあまりおもしろいとは思わなかったのですよ。ふざけた感じが気になって。
 でも、さらっとしたおかしみが感じられました。
「セリヌンティウスですがーーメロス以外にも、友達がいるようです」
「この星の生物《馬》中から、セリヌンティウスの交際していた馬を探したのですが、見つけられませんでした。よほど特殊な生物かと思われます」
 ふふふ……。

 「遠い唇」は暗号ものです。
 長い年月が流れて、その鍵を見つけたとき、その人はもういない。
 悔恨の大きさにつらくなります。
 「続・二銭銅貨」も、話者の問題になるほどと思いました。
 「ビスケット」はダイイング・メッセージ。名探偵の巫弓彦! 懐かしい。それほどの時が経っているのだと感じます。
 北村さんは、シリーズの登場人物たちを大切にしているのですね。円紫さんと「私」のシリーズも、現在の姿が描かれていましたし。
 上質のミステリ。こういう傾向の作品、もっと読みたいですね。

「玉依姫」阿部智里

2016-11-27 19:21:22 | ファンタジー
 待ち望んでいた「玉依姫」(文藝春秋)。金烏はどうなっているのか、非常に気になっていたのでやっと読めて満足です。気がつくと、あっという間に百ページ読み、息子の大会の時間待ちで五章まで読みました。
 これまでの烏の世界とは異なり、現代日本の田舎町が舞台です。
 都内の高校に通う志帆は祖母と二人暮らし。亡くなった母の兄だという男が現れ、一度自分たちの村を訪ねてほしいと頼まれます。
 祖母は、志帆の母だけを連れて、彼が十歳のときに村を出たのだといいます。
 祖母に黙って村にやってきた志帆は、「ゴク」として山に置き去りにされます。
 現れたのは猿と醜悪な姿をした山神。
 「喰ろうてやるぞ」と脅す山神を恐れながらも、人型をとった烏の奈月彦に諭されてその場に踏みとどまります。志帆を母親として山神を育てなければならないのだと言われ、愕然とします。
 玉依姫と名乗る女が、逃がしてくれるというのですが、志帆は、自分の意志で山に戻るのです。
 この、志帆と山神との疑似親子ぶりがおもしろいのです。
 急に母親として振る舞いはじめる志帆に当惑しながらも、彼女を慕いはじめる山神。カッとなると自分を止められない山神は、志帆が自分を裏切ったと感じたときに奈月彦に怪我を負わせてしまいました。いつ暴走するか分からない不安。
 また、志帆を助けたいという銀髪の少年が、奈月彦と大天狗の前に現れます。
 山神とのかかわりが安定すると、その外見も変化してきました。志帆は、彼を「椿」と呼ぶようになります。

 荒魂と和魂。失われた神の名前。『英雄』。志帆を探しにきた祖母。金烏と山神の失われた記憶。『サヨ』。
 様々な伏線が、山神と玉依姫との結びつきを示していきます。
 わたしはこれ、ラブストーリーだと思いますよ。
 
 途中からなりを潜めている猿が、次回何らかの行動を起こすのでしょうね。うーうん、気になります。いつか一気に読み直したい!

「娘が不登校になりました。」小林薫

2016-11-26 18:36:41 | コミック
 先日「不登校は99%解決する」について書きましたが、その直後にこのまんがを見つけました。ああ、一般的にはこういうふうに考えている人が多いのね……と。学校の立場から見るとかなり複雑な思いを抱きますが、ちょっと紹介致します。
 小林薫「娘が不登校になりました。 『うちの子は関係ない』と思ってた」(ぶんか社)。帯には「原因は学校?家庭環境?友だちによるいじめ?それとも娘自身ー!?」とあります。
 もう、ここで「原因を探さない」という森田理論から外れていますよね。
 しかも、このお母さん、転校した学校でも登校を渋りはじめた娘にバケツで水をかけたり、自分に「死ね」というなら包丁で刺せとか言ったりするんですよ。
 最終的には、自分のやりたい学習が義務教育の分野ではできなかったけれど、専門学校でなら可能だから登校するだろうというラストになっています。
 だけど、本当にそうなの?
 嫌な感じがするのは、担任の先生に対しての恨み節です。
 吹奏楽部で厳しくされて、すぐ怒鳴ったり言葉が荒いところが苦手だった(しかもこの批判を、まんがでは友人が語っています……)のに、二年生になって担任になった。
 家庭訪問に来たことがさらに引きこもりに拍車をかけたように描かれています。
 が。
 この先生のTシャツに「浅草」と書いてあることが気になるのです。
 もしかしたら、浅草近辺の地名に関わるお名前の方なのでは。
 悔しい気持ちは分かりますが、やりすぎではないでしょうか。
 さらに、前年度担任の転勤先まで連絡して、対応できないと言われたら激怒。
 先生も人間だから、ちょっとは心配して会いにきてくれるのではないかと期待した、このとき誰かが真剣に娘の話を聞いてくれていれば……というのを悔やみ続けているというのですが。
 聞くべきなのは、母親であるあなた、なのでは?

 さんざん学校をけなしながら結局、転校することになりますが、そこでも休みがちに。
 先生方は怒鳴らないし、穏やかだといっていたその学校でも、結局不登校になりました。
 さらに、先生にまんが家は不安定だと言われて、そのこともわだかまりになっているようです。生まれ変わったらまんがは描かないといっていますが……。
 あざといですよね。
 小林薫さんて、「チャイナガール」の小林さんですよね……。愕然とします。
 巻末には、不登校の原因のうち最も多いのは朝起きられないことだ、と書かれていました。起きられないから行けないとはいえずに、理由をこじつけてしまうことがよくあるという解説もありました。
 

「晴れの日には」田牧大和

2016-11-23 22:38:22 | 時代小説
 藍千堂のシリーズ、二冊めです。
 「晴れの日には」(文藝春秋)。叔父と和解した清太郎と幸次郎の兄弟。
 清太郎は、雪の息子の節句に柏餅を作りに行った縁で、お佐菜という女と知り合います。幼い娘の「さち」と二人で暮らす佐菜は、どうやら訳があるらしい。
 佐菜は絵師で、色彩感覚が鋭く、清太郎はその視点に目を見張ります。
 柏餅作りのかかわりのお礼で、雪に目新しい柏餅を送ろうと考えた清太郎ですが、どのようなものにすればよいのか悩んでいます。
 そんなときに、佐菜は自分の郷里では餡として「ずんだ」を使うことがあると話します。
 えーっ、佐菜さん、仙台出身ですかー?
 皐月に枝豆ってイメージできないのですが、清太郎はその案を利用し、新しい柏餅を雪に渡すことができます。
 佐菜に心惹かれる清太郎ですが、やがて彼女は奉行所の鎧坂の妻だったことを知ります。
 鎧坂は、冷血で己の欲望に忠実に生きる男。策略や金儲けが第一なのです。息子が二人いますが、長男は自分そっくりの怜悧な男、次男は優しいけれど木偶の坊という有り様。後添いに入った佐菜は、子どもができないことを理由に離縁されたのです。
 鎧坂は策略のために娘を欲しがっている。さちのことを知ったら、平穏に生きてはいられません。佐菜は、親子ふたりでひっそりと生きていきたいと考えているのです。
 佐菜に惹かれる清太郎を案じる幸次郎と茂市。しかし、後見してくれる伊勢屋総左衛門が両親のなれそめについて話してくれたことで、二人を認める決心をします。
 健気な佐菜に切なくなりました。
 久利庵先生や母の「しの」らが関わり合うのが、とても良かったです。

「スズメの謎」三上修

2016-11-22 06:47:26 | 自然科学
 今年度改定の国語教科書に掲載されている「スズメは本当に減っているのか」の元本。三上修「スズメの謎 身近な野鳥が減っている?!」(誠文堂新光社)です。
 テストを作るのに、挿絵を参考にできないかと思って、再度借り出したのですが、そういえば以前読んだときに感想を書いていないかも、と気づきました。
 夏休みに家庭訪問の傍ら読んだため、タイミングを失ったのでしょう。田んぼの脇に車を停めて、時間まで読んでました。
 前任校では購入したのですが、現在の勤務校にはないのです。
 ただ、校内にはスズメがいます。クラブハウスあたりに巣がある。この本を読んだ当時、探しに行きました。

 わたしが中学生の頃、帰り道で電線からこぼれ落ちそうなくらいのスズメが留まっているのをよく見たものですが、言われてみれば最近見かけません。
 スズメに絶滅の危機がくるときもあるの?
 三上先生は、スズメの数を調べようと考えます。
 でも、正確な数がわかるはずがないので、調査の結果を検討して「減っている」と結論づけてよいという結果になります。
 わたしはこれ、クリティカルシンキングだと思うのですが、どうでしょう。正解ではなく、納得解。
 スズメの減少は、絶滅につながる可能性がある。かつてのリョコウバトのように。
 教科書に書かれている部分は、この本のほんの十数ページにすぎません。
 スズメという鳥のことを、わたしはありふれた鳥だと思っていました。田舎住まいのわたしには、朝からスズメの声が聞こえているのは当たり前でしたから。
 スズメが減っているという実感はありませんでしたが、事実を知ったからにはよく観察してみようと思います。

「女神めし」原宏一

2016-11-21 19:20:27 | 文芸・エンターテイメント
 前作「佳代のキッチン」、設定があまりにも破天荒だったため忘れられずにいました。
 そしたら、続編「女神めし」(祥伝社)が出たというではないですか。図書館で借りようと思ったら半年近くかかりましたが、無事読み終わりました。
 今回は、割とフツーというか。人情ものとして安心して読めました。佳代さん、キッチンカーで全国を周り、調理屋として生きていくと決意します。
 各地で様々な出会いがあり、調理屋の仕事が根付いていく感じです。松江のばあちゃんから、各地に支店を作るようにすすめられたため、氷見、下田、船橋、尾道、佐賀関、福江島で候補者を探しながら営業します。
 五十を過ぎてもカッコいい元プロサーファーの洋さんや、フランス人のアラン、沙良ちゃんのパパなど素敵なロマンスが予感されることも多いのですが結ばれることはありませんでした。
 何だか、「男はつらいよ」みたいな感じですね。(映画見たことないのですが)
 
 わたしが印象に残ったのは、尾道の出会い。土産物屋を営む家族の物語です。ここのお父さんとは交通事故で知り合うのですが……。
 お塩、好きなんですよ。調理に使いたいなあ。
 残念だったのは、今回は東北の出番がなかったことですね。前回は盛岡があったけど。
 震災関連だと書きにくいのかもしれません。なにしろ、前作は震災前の出版でしたからね。あれから時期的にはそう遠くないのかも。
 
 あっ、東北の食を舞台にしたまんが、土山しげる「流浪のグルメ 東北めし」(双葉社)もおもしろかった。仙台、塩竈、石巻を長距離トラック運転手の錠二の案内で食べ歩くのです。
 モデルになったお店に行きたくなりますね。土山さんは食べるシーンがすごくおいしそうなんですよ。
 最初に紹介されている「半口屋」のモデル半田屋でお昼にしようかなと思ったけど、今日はミスドの飲茶で! と張り切ってお店にいったら、システムの故障とやらで販売していませんでした。がっかり……。

「ふせんノート術」

2016-11-20 08:12:07 | 社会科学・教育
 帰宅途中にある図書館の、オススメコーナーにあったのが「ふせんノート術」(晋遊舎)。監修・坂下仁。
 ノートの活用も、授業で教えたいことのひとつです。
 わたしはできるだけポイントを絞って継続的に書かせたいのですが、前の題材とつなげたり、一時間ごとにページ分けてしまったりする生徒もいる。
 わたし自身のノートの作り方も練っているつもりではあるのですが、実際に板書すると変更することもあります。
 付箋紙なら張り替えたり外したりするのが容易なのでは?
 実際、去年からは毎時間行う漢字テストの問題を付箋に書いて、授業する予定のページに貼っています。
 先日黒板をイメージしたノートを買ったから、そこで使ってみてもいいかもしれません。
 付箋配置にも、いろいろあるのです。
 上下左右に並べるグリッド法、敷き詰めるようにするタイル法、ツリー法、タイムライン法、書いたことを隠したり(マスク法)分けて書いたり(ブレイク法)、多様な技があるようです。

 それはともかく、この本をめくっているとき、守衛さんが現れて司書さんとお話をしていたため帰るに帰れず……。
 なんでも、北海道から自転車で長野まで行くつもりの女の子(27)が公園にテントを張りたいといっているとのこと。
 家に泊めるわけにもいかないし、駐在さんに連れて行ったそうです。
 まだまだ冒険者はいるもんなんだなー、と思いました。

「燈火」三浦哲郎

2016-11-19 13:13:01 | 文芸・エンターテイメント
 三浦哲郎「燈火」(幻戯書房)。
 出版されていることを最近になって知り、慌てて注文しました。
 しみじみと、良かった。三浦さんの「素顔」が好きなわたしには、何よりの一冊です。
 作家の馬淵とその家族(妻の菊枝、娘の珠子、志穂、七重)の生活を描いた連作です。
 「結婚」をはじめ、折りに触れて描かれてきたこの一家の物語を、三浦さんが亡くなってからもう何年も経ってから読むことができるとは。想像以上の贈り物です。
 実は注文してすぐに図書館で単行本をみつけ、自分のチェックの甘さにがっかりしたわたしなのです。
 もし、注文前に気づいていたらどうだったでしょう。小躍りして借りたと思いますが、でもやっぱり自分で持っていたいのです。
 
 「花」には、泣きそうになりました。
 録音したカセットテープに残されていたある場面。何かの偶然で吹き込まれたこの音に、馬淵は驚きます。
 七重と、亡くなったお母さん(七重から見るとおばあちゃんですね)の会話です。庭に咲く白木蓮。郷里の辛夷を思い出させるこの花を、お母さんは「田打ち桜」と呼んでいました。
 読者にとって、三浦さんのお母さんは大きな存在です。
 収録された九篇は、身近な人々のエピソードが丹念に描かれています。ひとつひとつは小さなものかもしれません。でも、心に染み入る。
 自分自身の病気について語る「音」、妻と姉たちのことを重ね合わせた「涙」、娘たちの自立を描く「春」「風」「幻」、郷里の姉「炎」、友人「友」、未完の「旅」はお父さんの姿が描かれるはずだったようです。
 読み終わるのが、もったいなかった。
 大切な一冊です。

「居酒屋ぼったくり」5

2016-11-13 19:47:57 | 文芸・エンターテイメント
 「居酒屋ぼったくり」(アルファポリス)の五巻です。
 最近出た六冊めを見たら、なんだか美音が要さんといい仲になってる? えっ? そうなの? と驚いたので、図書館に戻るのを待ちかねていました。
 えぇもう、なんだかにやけてしまう展開でしたよ。要さんとオシャレなお店にいって、バーテンダーさんにカクテルを作ってもらったり。
 朝ごはんの、トマトとベーコンのオムレツがおいしそうです。
 
 わたしはこの日、とても疲れ果てていて、仕事の切りがいいところで帰ることにしました。し、しかし、今なら図書館に行けるんじゃない? と思ってしまい、そのまま回り道……。雪が降り出し、まだノーマルタイヤなのに、つい行ってしまいました。
 だって、貸し出し期間ずいぶん過ぎちゃったし。このままでは督促状がきてしまう。
 そこでこの本と「校閲ガール アラモード」(角川書店)を借りたのです。
 家に帰って、ご飯も食べずに寝てしまいました。
 
 「校閲ガール」は、娘がドラマを見ているので、つい続編が読みたくなって。
 結構アレンジされているけどなかなか工夫されていますよね。
「アフロくんって、誰が演ってるの?」
 と聞いて怪訝な顔をされました。確かに菅田将暉をアフロヘアにはできないよね……。
 「アラモード」は、悦子の周囲の登場人物にスポットを当てています。
 エリンギみたいな部長が担当した薄幸の美人作家さんや、貝塚がどうしても単行本を出したかった新人作家、藤岩さんが愛する、彼氏の論文など本づくり周辺の話題もおもしろい。
 先月三冊めも出たそうですね。
 
 とりあえず翌朝には無事復活したわたし、この二冊は早々に読み終わって昨日返してきました。だから感想もちょっと駆け足です。
 どちらも続編楽しみです!