くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「東京難民」福澤徹三

2014-10-27 19:21:55 | 文芸・エンターテイメント
 久しぶりに、嫌な感じの主人公でした。
 もっと考えて生きろよ! だから、そんなことになるんだよ!
 でも、この人、めげないですよね。最初はすごろくみたいな展開だなと思ったんですが、サバイバル系のロールプレイングゲームが雰囲気として近いと思います。選択の駄目さ加減がわたしにはいらいらしましたが、そうではない人も多いでしょう。
 なんといっても、かつて書評サイトを読んで興味を持った一冊なんです。「東京難民」(光文社)。作者は福澤徹三さんだったのですね。(怪談のイメージが……)
 勉強嫌いの大学生・修は、指導教官から逃げ回っていたのですが、父親の会社が倒産して学費が払われていないことから、除籍処分になります。ウイークリーマンションを追い出され、友人のアパートに居候。アルバイトもチラシのポスティング、テレフォンアポインター、ティッシュ配り、新薬開発のための治験、ホスト、工員……と次々変わります。その間の豆知識みたいなアドバイスもおもしろいですが。お金がないのにパチンコですっちゃったり。いつも考えなしで失敗してしまいます。
 仕事がかわるたびに、じめじめした布団で寝るのがつらい描写も多い(笑)
 UFOキャッチャーで取ったライトにナイフがついていて、逮捕されたときにはぎょっとしました。まあ、そのときに知り合った人に、あとで救われるので、結果的にはオーケーでしょうか。
 

「お召し上がりは容疑者から」似鳥鶏

2014-10-25 21:08:09 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 都会の隠れ家のような喫茶店プリエール。兄弟でパスタやハーブティー、デザートなどを提供してくれるお店です。
 弟の智は、元刑事。しかし、その早すぎる引退を惜しむ県警から差し向けられた直井楓が、様々な情報をもとに彼の頭脳を活用すべくやってきます。弟を巻き込みたくない兄の季(みのる)は、自分がまず話を聞こうとしますが。
 始めの事件は、ある岬から転落死した男性。ロンドンに住む恋人は、彼に新しい相手がいたのではないかと疑っています。
 ロースクールで知り合ったという的場莉子は、警察が関与してくるために内定を取り消されたと語り、季は申し訳ない気持ちに。
 その後、事件が解決。莉子が現在抱えているという弁護の謎解きとなります。
 すっかり親しくなった4人は、休日に別荘地に向かいますが、夜が明けたら近くの小屋で人が死んでいる。どうやらホットスポット問題で、地域はもめているらしいのです。
 様々な条件から、事実をむき出しにする智の姿に、莉子はどうやら他にはない感情を抱いているらしいと感じた直井。莉子は母親と近所付き合いのあったおばさんを亡くしていることを兄弟に告げます。
 途中で、小学校時代のロボットを壊されてしまった問題の話題が出たときには、何故なのかしばらく悩みましたが、そのせいで事件の真相を知ることができました。
 どのケーキも、非常においしそうなんです。
 特に桃のタルト・タタン! スフレも。メレンゲ土台のモンブランの話題は、なるほどと思いました。
 続編ありそうですよね。

「将棋ボーイズ」小山田桐子

2014-10-14 19:26:58 | YA・児童書
 この作品のモデルになった岩手の私立高校のドキュメンタリーが見たい! 実際、将棋の駒の動かし方くらいしか知らないわたしは、戦法や定跡はさっぱりです。だから、人間ドラマを優先してしまうのですが。
 モデルがいるせいか、個人の内面描写が物足りないように感じてしまいます。わがままですかね。
 「将棋ボーイズ」(幻冬舎文庫)。おじいさんが将棋好きで、「歩」と名づけられた少年と、やがて高校四冠を達成する実力者倉持とのパートを交互に描いています。
 二人は同学年ですが、交友関係がちょっと違う。同じ部活ですが、ぞろぞろと人物が出てきて、朝読者しているとこんがらがってしまいました。(ちょっと集中力に欠ける環境でしたね……)
 倉持、祐介、ハルヒ(「太陽」と書きます)、梶、歩、春久、内藤、さらに「名人」というあだ名の先輩も。男子校です。全員、将棋をさします。「中越プロ」という人も出てきて、これはニックネームなのか、本物のプロ棋士なのか、悩んでしまいました。
 ちっとも進まないので、家に持ち帰ることに。
 そしたら、すんなり読めましたよ。
 ボーイッシュな女子の話題をもっと読みたかったようにも思います。
 顧問の先生のひょうひょうとした感じもいい。

「青春白書」「七色いんこ」など

2014-10-13 20:58:38 | コミック
 ストーリー展開もすべてわかっているのに、同じ場所で泣いてしまう。そうなんですよ、中学生のときに読んだからかしら。
 実家で古いまんがを読み直しました。懐かしい! 今読むとあっという間なのに、当時は雑誌連載から追いかけていたせいか、時間が濃密だった気がします。
 曽根まさこ「不思議の国の千一夜」11巻まで。さすがに古くてあちこち焼けたりしみがついたりしているんですが、ヘンデクのクールな対応とか、セブランのかっこよさが本当に懐かしい。こういう民話的な話があちこちに散りばめられているのも好きですね。
 魔法で怪物になった王子さまが百回プロポーズを断られるエピソードが個人的には好みです。「美女と野獣」ですね。でも、いつも思うけど、「野獣」としての彼(外見も含めて)を好きになったのに、実は王子さま(違う外見)に戻ってしまうというのは、わたしだったらつらいんですが、どうなんですかね。
 曽根さんのほのぼのした暖かさ。さらにはそれを裏切るような恐怖も描けるストーリーテリングが素敵です。
 萩岩睦美「プーイ」「うりちゃんとくりちゃん」「悪魔のような天使」。この繊細な絵と物語構成! デビュー作から全部コミックもってます! ……の、はずなのに、「銀曜日のおとぎばなし」の一巻が見つからない……。悔しいので、残り五冊、もって帰ってきました。ポーを読むぞ。愛蔵版を古川の本屋さんで見かけたけど、これも一巻が売ってないのですよ。えーん。
 手塚治虫「七色いんこ」全七巻。七巻のカバーだけないのは、残りを揃えたのがずっと後だから。いとこに借りて読んだものの、最後の巻だけどうしても欲しくて。
 朝霞モモコが鳶の群れに襲われるあたりから、もう涙ぼろぼろです。
 でも、読み返してみると、ふと手塚治虫のほころびのようなものを感じる。どの作品も完成度高いんですが、鞄から不思議な何かが出てくる話とか、特に。幻覚を彷彿とさせるのですが。
 ドッキリカメラの結末の話も、ストーリー性があっておもしろい。
 で、上原きみ子「青春白書」。これは文庫版です。
 四回転ジャンプを跳べることから、フィギュアスケートの注目選手となった朝倉歩。スター選手の結城真とペアを組むことになりますが……。
 「ひとりペア朝倉」から、もうひたすら涙ですよ。息ができないほどです。次どうなるか、全部知っているのに! 
 でも、二人が国際大会で活躍したりする場面、ほとんどないんですよね。第二部の途中で、打ち切りが決定したのだそうです。
 歩の足のこととか、登場しただけで終わりになってしまったライバル選手とか(しかも、結構多数)、結城父はどうなったかとか、知りたいことはあるのですが。
 星川とみ「アトランティス」全四巻。紅とかげが好きです。
 杜野亜希「最後のバースデー」。キリカのエンディングも読んでくるべきだったか。でも、帰りに「屍活師」の最新巻買いました! やっぱり、好きな作家をずっと追いかけてしまうのですよね。
 

「おばあちゃんがぼけた」村瀬孝生

2014-10-10 05:18:52 | 社会科学・教育
 徘徊、頼んだことを忘れる、自分は二十歳だという、ひっかく、二階建ての建物で六階に連れて行けという、食べ物を受け付けない、妻を事務員だと思う、何度も電話をかけてくる……。
 以前、近所に住む同僚から、認知症のおばあさんの話を聞いたことを思い出しました。夕方になると、「帰る」というのだそうです。お嫁さんであるその同僚に、丁寧にお暇の挨拶をして。
「おばあさんにとっては、子どものころに住んでいた家に戻りたいのかな」と考えていたそうです。
 息子が手を引いて近所を一周して戻ってくるという話でした。
 「おばあちゃんがぼけた」(イースト・プレス)。老人ホームに勤めていた筆者が見た認知症の方々の生活を紹介しています。
 「安藤商店」のリポビタンDでないと満足できないおばあさんとか、早業で花を摘んでしまうおばあさんとか、その花を育てているおじいさんとのいさかいとか。
 介護の問題は、わたしたちの世代にとって、身近なものになりつつあると思うのです。
 エピソードは印象的なものが多く、それでいてどこかで聞いたことのようなものも多く、考えさせられました。

「名探偵に薔薇を」城平京

2014-10-09 03:33:21 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 平城京だと、思ってました。ごめんなさい。城平京「名探偵に薔薇を」(創元推理文庫)。研修の日の朝に購入。
 とにかく第二部まで読むようにと帯がうるさい。でも、期待を煽ります。弱いんですよね。どんでん返しとか、隠れた名作とかいう惹句。
 読みはじめて、かなりのグロテスクな表現にちょっとうんざりします。高速バスの待ち時間に読むには適した本じゃない。
 登場するのは、三橋という大学院生、彼が家庭教師をしている鈴花(中学生)とその家族、そして、「名探偵」瀬川みゆき。
 わたしのイメージでは三橋が野崎くんで、瀬川は結月でした。どのくらい「月刊少女野崎くん」に夢中なんだ……。
 まず「メルヘン小人地獄」(すごいネーミングでしょ?)というショートストーリーが、出版社等メディアに送られてきます。また、三橋は駅で鈴花の母親と立ち話をしているときに、見知らぬ男から「小人地獄」という言葉を聞く。そのとき、なんだかはっとしたような顔をしていた母親は、数日後猟奇的な死を迎えます。
 やがて、「小人地獄」に関わったある人物が、アパートの風呂で死体となって発見。
 「小人地獄」とは何か。
 十数年前にある博士が開発した毒。少量で、証拠を残さずに、人を殺す毒です。どうやら、材料として赤ん坊の脳が使われたらしい。殺された二人は、博士の娘と生産の助手をしていた男でした。さらに、殺害状況が「メルヘン小人地獄」に扱われる歌に酷似しているため、見立て殺人ではないかとメディアは騒ぎ立てます。
 歌には続きがあり、三人目の被害者について「フローラはむこう」というのです。りんごのように。
 フローラとは鈴花のことではないか。そう考えた三橋は、友人の瀬川に相談することにしますが……。
 これまでの「名探偵」と瀬川みゆきのキャラクターは随分違います。彼女は「名探偵」であることに強い負い目をもっている。でも、そうとしか生きられない。
 読み終わると、第二部のアイデアが先にあって、その伏線として第一部が書かれたのだろうという気はします。瀬川がおかれた混沌とした状況も、鈴花の言動もラストではっきりする。
 でも、「題名はこれしかないと読後に確信!」というようなことが帯に書かれているんですが、わたしには納得できないというか……。
 ただ、秘密を暴かれた鈴花は、やっぱり「むかれた」のだな、とは思いました。

「語りつぐ者」パトリシア・ライリー・ギフ

2014-10-07 04:57:04 | 外国文学
 「語りつぐ者」(さ・え・ら書房)。26年の課題図書です。
 筆者はパトリシア・ライリー・ギフ。(もりうちすみこ訳)
 父親の出張のあいだオーストラリアの叔母の家に預けられることになったエリザベス。母親は早くに亡くなったため、この叔母リビーと会うのも初めてなのです。
 その家に飾られた古い羊皮紙の肖像画を見て、エリザベスは愕然。だって、自分にそっくりな少女が描かれていたのです。
 わたしは翻訳ものが苦手でして。この本も結構とっつきにくいな、と感じていました。特に、過去のパーツ。独立戦争前のことなので、誰がどちらの味方なのかわかりづらくて。
 ただ、最後まで読んで、この過去の部分はエリザベスの想像としても読めるのではないかなと思いました。
 彼女は作家志望なのですよね?
 生き抜いて、子孫を残す。その子孫が自分のことを考えてくれる。そういう連綿とした時代のつながりのようなものを感じました。

「五日市憲法草案をつくった男・千葉卓三郎」

2014-10-06 20:04:41 | 歴史・地理・伝記
 台風が来ております。子どもたちの学校が休校になったため、わたしも年休とりました……。しなければならない仕事は山積みですが、仕方ありませんね。
 「五日市憲法草案をつくった男・千葉卓三郎」(くもん出版)を読みました。筆者は、伊藤始・杉田秀子・望月武人。
 以前から、ある町を通るときに、「千葉卓三郎生誕の地」と書かれた看板があることは気になっていたのです。千葉卓三郎とは、何者なのか?
 栗原市が統合し、あきる野市と姉妹都市の提携をし、やがて中学生の交流が行われて、教え子たちも参加したり。この姉妹都市のきっかけとなったのが、千葉卓三郎なのでした。
 彼は五日市で自分たちなりの憲法草案をつくり、それが非常に優れたものだったということを、耳にしました。
 地元の子どもたち対象に編集された「わがまち志波姫」も読んだのですが、この本はそれ以上に細やかで、おもしろく読みました。
 特に、卓三郎が自由や女性の立場、人権について語るあたり。自由を得るのに、武力か知力かと語らう学芸講談会のメンバーに、人権のことに触れながら話す姿が、非常に説得力がある。
 わたしとしては、五十年ほど前に深沢家の蔵からこの草案を発見した新井勝紘先生が「千葉卓三郎とは何者なのか」知るために奔走したあたりのことももっと知りたい!(ラストにある新井先生の文章もおもしろいのですよ)
 この蔵からの発見、色川大吉先生のゼミだったんですねぇ。
 今度、巻末の写真にある石碑を見に行ってみます!

「まんぷく仙台」「まんぷく東京」

2014-10-05 19:37:46 | コミック

 地元を描いたものが好きなので。
 でも、「まんぷく仙台」で行ったことがある店は、「彦いち」と「定義とうふ店」「あべかま」くらいしかないですよ。もちろん、「まんぷく東京」は一軒もない。
 どちらもメディアファクトリーのご当地グルメエッセイシリーズ。仙台はアベナオミさん、東京はまめこさんがレポートしています。
 買ってから思ったのは、仙台で食事って、しばらくしていないな……ということです。だいたい、仙台に行く機会が少ない。仕事がらみで年に数回(研修とか大会ですね。会場にしか行けません)、検診年一回、家族と年数回くらい。
 仕事なら弁当、家族となると定番は回転寿司。検診、くらいですかねぇ。今年はパスタを食べました。どうしても、好きな店に行ってしまう。
 最近食べたグルメっぽい食事といったら、石巻の海鮮丼(ほとんど娘が食べました)とか、佐沼の麺やさんのコース(写真)。
 こんなわたしが、行ってみたいのは、ピザ屋さんですね! おいしそー。
 それから、アベナオミさんのご当地ネタ(ラーメン体操とかあまんざ洋菓子店とかずんだ春巻き)が、ツボでした! わかるわかるー。
 
 「まんぷく東京」は、まめこさんが大好きなのでつい買ってしまったんですよ。仙台駅前で(研修でした。ちなみに、「まんぷく仙台」は一関で買いました)。めったに東京なんて行かないのに。ああ、うなぎが食べたい。
 浅草をゆっくり歩いて、由緒のある蕎麦屋さんでお昼を食べたいなあ。
 地元のおいしい店すら、あんまり行ったことがないわたしなのですが、やっぱり食べ物エッセイ好きです。

 ところで、万城目学「ザ・万字固め」を読んだところ、タルトがすごく食べたいです。出前のたびに味が違う寿司屋も気になります。しかも、静岡のうなぎも! 
 戦国大名でサッカーチーム作る話題もおもしろかった。
 わたし自身が今、関心のあるものはチーズケーキ。生協で取り寄せたりあちこちで目に付いたら買ってしまいます。ソフトクリームもね!
 まんぷくにはならないかもしれませんが、ソフトクリームなら案内人になれるかもしれません。(一位は秋田の栗駒ソフトです!)
 本の話じゃなくなってきましたね……。

「日本男児」長友佑都

2014-10-03 17:43:31 | 芸術・芸能・スポーツ
 東日本大震災のショックから抜け切らないある日、この本が届きました。「日本男児」(ポプラ社)。
 筆者の長友佑都さんが、被災地の学校に寄贈したいと、カードまでつけて(ブロマイドみたいな感じの印刷物ですが、なかなかできませんよ!)プレゼントしてくれたのです。
 長友佑都さんというと……。わたしのイメージとしては、震災後にACのコマーシャルでメッセージを伝えていたサッカー選手? くらいの印象でした。
 整備した途端、テニス部のMくんが借りて行って……半年経っても返してくれないので、かなりしつこく請求した思い出があります(笑)。でも、なんか持っていたい気持ちはわかりました。おもしろい! つい、朝の会で生徒に話をしてしまいましたよ。
 というのも、長友さんはサッカー名門校に進学したのですが、授業中は決して寝ない! 一人で自分たち兄弟を育ててくれるお母さんに申し訳ないからだそうです。
 お母さんへの感謝は、本当に随所にあるのです。でも、そんな大切なお母さんを蹴ってしまったこともあり、それを非常に後悔している。この本は、ある面ではお母さんへのメッセージではないかと思うところも多かったです。
 いろんな場所を、生徒に読んであげたくなるのですが、まず、自分のイメージを大切にして、「長友佑都らしくない」ことはしない。なりたい自分像を意識する。客観的に見る。
 言葉で言うのは簡単ですが、実行となると難しいですね。
 指導者ともしっかり心が通じるように動いているのが素晴らしいですね。