くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「おぼれる人生相談」松浦理英子

2011-11-30 05:39:21 | 哲学・人生相談
かつて読んだときに滅法おもしろかったんですよね。ついまた借りてきてしまいました。松浦理英子「おぼれる人生相談」(角川書店)。
ふと思ったのですが、人生相談って文庫化しませんよねー。もしくは最初から文庫で出るか。相談ごとはナマモノだから? でも、古今東西悩みのパターンはあるかと思うのですが。
この本は、寄せられたお悩みを一定量に要約しているのですが、そのわきに「原文」がどのくらいあったのか示されています。「便箋3枚、1372文字」「便箋1枚、379文字」というように。たまにファックスやハガキで相談する人もいますが、たいていは便箋を使っています。
「月刊カドカワ」に連載されたそうですが、ふとこういう相談ものって、今はどういう形態で集まるのかと気になりました。
電子媒体なんですかね。それとも、こういうのはやっぱり手書きなのか。雑誌を買わないので、現在どの程度の頻度で人生相談を連載しているのかわからないのですが。
印象的だったのは、子宮筋腫で入院している妹さんに暴言をはいてしまったと悔やむ女性の相談。「死んじゃえばいい」と言ったとのこと。それはひどいなーと思っていたら、ちょっと意外な展開でした。
この方は、親戚のおじさんにケーキをご馳走したんですが、それを食べるのを妹さんは楽しみにしていたそうです。
「オマエ、サイテーだな! 謝れよ!」と怒鳴られ、「オマエの方が死にゃヨカッタンダヨ。だからフラれるんだよ」なんて言われてる。たかがケーキひとつで、死ぬのなんのって、ものすごいですよね。このお姉さんは29歳。妹さんだってそれなりの年だろうと思うんですが。
妹さんとの距離を置くようにと、松浦さんは忠告します。献身が素直に受け入れられるとは限らないのですね。
関東から東北に転校してきたら、同級生と笑いのツボが違っていて楽しくないという高校生の話も気になります。うーん、でも、どんなときに笑うのかって、集団の中でも差異はあると思うのです。
「どのようなことで笑うのかで、その人を計ることができる」と学生のときに聞きました。泣くのは意図的にできるけれど、笑うことはそうはいかない。下品な話題で笑う人も、一ひねりした冗談で笑う人もいる。
まあ、テレビ番組でもどこがおもしろいのかわからないギャグはありますね。
どうだかわからないけれど、その友達は相手のことがよく分かっているから笑えるのかもしれないとも思いました。
ダラダラしてやるべきことをしない、好きなことすらしないという相談にたいして、松浦さんが生活にメリハリがないからではないかと推測するのも考えさせられます。単身赴任のお父さんの分も、家のことで母親を助けなければという彼女に、新しい視点を投げかける。
言われてみれば、たしかに高校生の女の子に父親がわりなんてできるわけはないですね。おそらくその分手をかけずにすむよう自律してほしいということなんでしょうが。
深沢七郎のように破天荒な人生相談をしてみたいと語る松浦さんですが、文章から優しいお人柄が感じられ、ゆったりした気持ちで全文を読むことができました。

「ふむふむ」三浦しをん

2011-11-29 00:43:16 | 社会科学・教育
書名「ふむふむ」。著書は三浦しをん。新潮社発行のインタビュー集です。「ヨムヨム」に連載されていたから、こういうタイトルにしたとか。
修学旅行で購入。おぉっ、とすると読むのに二ヶ月かかったわけです。朝読書にちまちま読みました。
いやー、去年は重そうだからという理由で「魔法使いの弟子たち」を買わずに帰ったわたしなのですが、今年は地元でも買えそうなこの本をわざわざ買いました。
サイン本だったんです。
金のサインペンで書かれています。ちょっと特徴のある書き方。三浦さんらしい。
結構インタビューものや対談は好きなので、とてもおもしろく読みました。
様々な仕事に就いている女性たちが、どのように活動しているのかを語りますが、なにしろインタビュアーが三浦さんですから、結構マニアック。第一線で働く女性たちが仕事の魅力を語ります。
三味線の鶴澤寛也さん、もしかして「女に生まれてみたものの」で菅野さんが紹介していた人では、と調べてみたらやっぱりそうでした。楽しい方ですね。
いろいろおもしろかったのですが、フィギュアを作る会社の皆さんで、自分が何に熱中したかを年表にまとめたという話題がおもしろかった。ちょっと自分はどうかなと考えてみましたが、「銀河旋風ブライガー」、男子バレーボール(新日鐵、東海大)、三好達治、新井素子、三浦哲郎、アイリッシュ、中島みゆき、斉藤由貴、GLAY、なんという脈絡のなさ。
インタビューを受ける人は、いずれも女性で、様々な仕事をクリエイティブにこなされている方々。靴、お土産屋さん、染織、活版印刷、現場監督、ウエイトリフティング選手、いろいろな職種の活動の様子が興味深い。
三浦さんは聞き上手で、読んでいるとこちらも同席しているような気持ちになります。
グラビアのコーディネートをしているオカマイさんは、三浦さんと共通の知人が何人かいるようですが、そんなに近くても学生時代は親しい仲にはならない。住み分けているとでもいいましょうか。たしかに、わたしもこの二人と同年代ならば、三浦さんとは仲よくなれてもオカマイさんとは距離があるだろうなと思わせるものはありますけどね。
でも、思春期から歳を重ねて、いろいろ聞いてみると話が弾む。仕事を通してということもあるんでしょうが。
インタビューをするたびに、その人が作り出す世界に魅せられる三浦さん。確かに、わたしも欲しい! と思う作品が多かった。一点一点手づくりするものには、職人さんの細やかな配慮がゆき届いている気がします。
動物園飼育係の方のペンギンへの愛、漫画家アシスタントさんの高い技術、編集者国田さんの独特の雰囲気。いろいろな仕事に打ち込む女性たちの、はつらつかついぶし銀の魅力を、わたしもふむふむと頷きながら堪能させていただきました。
でも、読み終わってからさらに時間が経って、今は修学旅行から帰ってからもう三ヶ月になろうとしています……。

「女たちの怪談百物語」東雅夫・監修

2011-11-28 05:35:19 | ミステリ・サスペンス・ホラー
勝山海百合さんが参加されているというので、読んでみました。「女たちの怪談百物語」(メディアファクトリー)。
監修は東雅夫。見届け人は京極夏彦。他の参加者としては加門七海、長島槙子、三輪チサ、立原透耶、伊藤三巳華、神狛しず、岩井志麻子、宍戸レイ、勝山海百合、宇佐美まことの十人。語る順もこの通りです。
この本で初めて読む人もいましたが、やっぱり「語り」と「書く」のは若干の差異があるんだなと思いました。
勝山さんは創作では異界を随意に描かれるのに、怪談話の「ネタがない」と、いろいろな人に聞いている感じ。
わたしもまったく霊感がないタイプなので、なんとなく「自分の暮らす世界と同じ場所にいるのに、違う世界を見ている人もいるのだ」と感じました。
最初は他の本を読む間のつまみ読みみたいな気持ちだったんですが。夕方だし暗いなかで怪談を読むのは怖いかなーと。
でも、二話の「恐山」がとても印象的で、ぐいぐいと続きを読んでしまいました。宿坊のお風呂で、四五歳くらいの男の子が寝ていたと語る宿泊客。お坊さんは、「その子のことなら、よく分かっていますから、大丈夫ですよ」という。しかし、そんな子供がいたような気配はなかったはず……。
それから、同じ長島さんが語る「渓谷の宿」もドキッとしました。東北地方で舟下りができるようなG渓谷って……。やっぱりあそこのことだろうなーと。「上流は有名な古戦場」って、「つわものどもが夢のあと」のこと、で正解でしょうか。
ぬいぐるみの熊の首がうまくつけられなかったためにか、自分の首も痛くなった人形作家の友人の話(「熊の首」神狛)や、幽体離脱して体に戻ったはずなのに、なんだかすっぽりと入りきらなかったためか感覚がおかしいという幼稚園の先生の話(「体がずれた」宇佐美)もおもしろい。写真屋さんでアルバイトしていたときに心霊写真をやたらと撮ってしまうお客さんに遭遇する(「心霊写真」立原)、神社のあとを継いだ娘さんに、姪っ子が「ここには、お兄ちゃんが一人いてはるね」という話(「神社を守護するお兄ちゃん」神狛)も気になる。
加門さんは話し慣れているというか、ディテールが細やかで物語としての質もいい。ハワイで霊的存在と出会う「ハワイでの話」や、親友の死をめぐる「火葬場の話」が印象に残ります。
しかし、岩井志麻子はいろんな意味で彼女らしいよなー。自意識がすごい勢いで伝わるというか。
ちょっと似たようなパターンの話(マンションや廃病院にとりつく霊や、部屋に現れる幽霊、電車事故に関わることなど)もあり、語られる物語にはやっぱりある種の型があると感じました。
「てのひら怪談」の初期のころを思い出しました。あの本には、勝山さんや田辺青蛙さんが書いていておもしろかったんですよ。ポプラ文庫版の表紙カバー、ちょっと買う気になれません。変えてくれないかなー。

「柿のへた」梶よう子

2011-11-27 13:34:37 | 時代小説
媒体がなんだったかは忘れてしまいましたが、この話がおもしろいということを聞いてメモをとったのです。
わたしは気になる書評を見るとメモをするのですが、たいがいどこかに挟み込んで忘れてしまう。でも、つい文具を入れる引き出しに突っ込んだものだから、開けるたびに目に入るのですよ。梶よう子「柿のへた」(集英社)。
で、評判通りおもしろかった。こういうの好きです。「御薬園同心水上草介」という副題がついているので、続編も期待していいんですよね! ねっ!
御薬園というのは、小石川養生所のある薬園ですね。草介はそこに勤めて草木の世話や生薬の精製に携わる同心です。心優しく、植物のことに詳しい。しかし、欲がなくかなりのんきな彼を人は「水草さん」とあだ名で呼ぶのです。
呼んでいるうちにそれが苗字だと思ってしまう人も出てきたのでは。後半では、上司である芥川小野寺(薬園の半分を管理)までもが「水草」と呼ぶ。律儀に「草介どの」と言い、「水草」呼ばわりする人々に憤慨するのは、芥川の娘の千歳です。
千歳は若衆髷に袴をはき、道場に通う女剣士。かなりのおてんばで気丈、草介はよく振り回されますが、次第に心が通う容認なります。
まあ、まだ気配程度なんですが。でも、千歳が彼を思っていることは、草介本人は気づいてなくとも読者にはわかるという……。
草介は困ったことがあると額をぽりぽりとかく癖があり、千歳にそれを指摘される場面もあります。だんだん千歳が気になってきたようですが。
草介の植物に関する見識の深さがちょっとした問題を解明するのですが、例えば表題作には柿のへたを利用した薬が登場します。千歳が道場で目をかけている寅之助という子がいて、試合になるとしゃっくりがとまらなくなり必ず負けてしまう。
用事で町に出た草介は、古い団子で老人を騙そうとしていた男に果敢に向かう凛々しい若者を見かけます。これが恰好いい。臆さずに剣を振るうこの若い侍こそが、寅之助だったのです。
十四歳という年の割に背も高く、剣術の腕も立つ。それなのに、試合では勝てない。
なんとかしてやるために、草介は柿のへたを使った薬をすすめますが、薬では解決しきれない真実に、気がついて。
それから、「二輪草」に出てくる平太という子も健気です。絵師になりたいと江戸にやってきたものの、父親は足が不自由。親子が支え合って過ごすなか、薬園からトリカブトが盗まれて……。
絵を描くために、恐ろしいほどの観察をする平太。そんな子に、植物のことを少しでも知って教えたいと考える千歳のまっすぐなところがいい。
奉行所の同心高幡や看護人のおよし、菓子づくりに励む国太郎、養生所の蘭学医河島など登場人物も個性的です。
そして、草介が歩く薬園の様子がとても生き生きしているのです。ヘチマ、ドクダミ、レンギョウ、はす、ハクモクレン、あじさい、肉桂、かみつれ。なかでもはっとさせられたのが、「淡い紅紫色のアケビの花弁」。子供の頃、部屋の前にアケビの蔓があって、わたしは秋になるとよく実を摘んで食べたものです。あの蔓棚がなくなって、もうずいぶんになります。テレビなどで実が映されることはあるのですが。花の形状、ぱあっと脳裏に浮かんできて、懐かしかった。
わたしは田舎育ちなので、なじみの植物がたくさん出てきましたが、なかにはわからないものもあります。小石川に行ってみたくなりました。
ところで、養生所には榊原伊織(「大岡越前」で竹脇無我が演じていた)がいるような気がするのはわたしだけですかね……。

「終わりなき旅」村上もとか

2011-11-26 20:33:37 | 芸術・芸能・スポーツ
ああっ、痛烈に「龍-RON-」が読みたいっ。前から読みたいと思ってはいたのですが、なにしろ巻数が多いので……。
村上もとか「終わりなき旅 僕はマンガをこう創た」(徳間書店)。近くの図書館のオススメコーナーから借りました。こういう創作エピソード、好きなんです。「六三四の剣」懐かしいよ修羅くん!
しかし、少年マンガの常識を破る、主人公の母親(東北の鬼ユリ!)の再婚のことが思い出せず、夫に聞いてみたら、もう本は売ってしまったというのでした。
岩手のこと、剣道のことを知りたくて、奥さんの友人の旦那さんと知り合いになるエピソードが。この方の名前を六三四の父のモデルにしたそうです。
「僕の弟が現役で剣道部に所属しているので、弟に聞いてください」
と紹介されたのが、なんと「ドラゴン桜」の三田紀房。人の縁っておもしろいなあ。
望月あきらのアシスタントをしていたとか池沢さとしに共作を誘われたとか、高橋留美子や新谷かおると流氷を見に北海道に行ったとか、そういう話題もありました。
お父さんが映画の背景画家だったとか。やっぱり絵を描くのは、子供のころから日常だったのでしょうか。
ドラマ化した「仁-JIN-」の話題もありました。村上さんは、映像とマンガは違うメディアであると認識されていて、原作と同じものではつまらないと考えているようです。静止した状態の「絵」と映像では違う。テーマや訴えたいことが伝わるのであれば、見せ方が変わるのは仕方がない。
それから、擬音語を非常に考えて描いていることも印象的です。確かに、現実の音を言葉で表現するのは難しい。それを考えながらうまくはまったときの気持ちは、こたえられないでしょうね。
初期の失敗や、人気作でありながら自分の気持ちが入らないままに描いてしまった後悔。一瞬の場面を描くことへの情熱など、インタビュー本としてもよくできた構成です。
これまでの作品を振り返るなかで、やはり「龍-RON-」の存在は別格なのでしょうね。初恋に破れるあたりの記憶が強いのですが、そういえばていが女優になったといわれればそうだったような……。
これが、甘粕さんを登場させたいからゆえに考えついたエピソードというのも、気になりますね。
わたしの父は満洲生まれ。だから、そのあたりの状況には興味があります。
本には馬賊となったエピソードが採られていますが、これもいい。通して読みたいですー。
後カバーには諸外国で出版されたマンガ単行本がのせてありますが、中国版の作者は「村上紀香」。これは、当て字なのか本名なのか、ちょっとだけ気になります。

「ゴーストハント⑦ 扉を開けて」

2011-11-24 05:40:50 | ミステリ・サスペンス・ホラー
構成からずいぶん手を入れられましたね。後半でぼーさんがしていた「謎解き」が、もう中盤に出てきたときにはびっくり。一気呵成に迫るのではなく、ゆっくりと麻衣の思考に合わせて解いていく。
小野不由美「ゴーストハント⑦ 扉を開けて」(メディアファクトリー)。最終巻です。発売日に探して買いましたが、なかなか読まないまま……。
なんか、もうこれでラストなんですね。 二ヶ月ごとの発売を楽しく待ち侘びた一年でした。内容は既読で、まんがでも読んでいる。でも、緊迫感をもって読めました。
調査中にけがをおって入院したナル。ほかのメンバーも満身創痍で、金沢滞在が長引きます。ナルが強引に帰京すると退院。車二台に分乗して帰ることになりますが、途中道に迷います。
キャンプ場を抜ければ大きい道に出られるだろうと車を向けた先に、ナルはある湖のほとりで車を止めます。
「やっと、見つけた……」
湖には、彼の兄の遺体が沈められていて、なっちはずっとその場所を探し続けていたのです。
ダイバーを雇い、湖を捜索する間、このあたりの町長と助役がやってきて、ある廃校のことを調べてもらえないかと依頼します。
ダム建設のために移転した集落があり、そのために廃校になったと聞かされますが、実はある秘密が……。
全校生徒が十八人でも、一年生から六年生まで単一教室のわけないじゃんよーと思いつつも(笑)、おもしろかった。
半人前の自覚をもつ麻衣が、自らの力で体外離脱し、囚われたほかのメンバーを救う。いうなれば、彼女が「戦力」になることが証明された物語です。普通なら、これからが「ゴーストハント」として完成された集団の活躍を描くべきところ、とも考えられるのですが、小野さんはそうはしない。
今回のリライト版のカバーを見ると、後扉には登場人物たちの立ち姿が描かれ、そこからもストーリーの流れを汲み取ることができるようになっています。特に、この⑦は、やられました! 穴をあけるというのは聞いていたのですが、カバーではなくめくった表紙がカラー。しかも、カバーはナルですが、表紙はジーンです。さらに、後カバーには線描きのナルがいますが、めくると湖があるばかり……。非常に象徴的です。
ジーンが、最後に何を言いたかったのか。最後まで「ナル」として麻衣の前に現れていた彼の思いが、切ないです。そして、初案では「ナル」がどんな名前の愛称なのかを伝えるのはジョンでした。リライト版では、麻衣が夢の中で尋ねます。
「……ナル、って何の愛称?」
「……oliver……」
「……Nollなら、オリヴァーの略だよ」
ナルの本当の身分を、麻衣が察知すると同時に、ジーンの思いもひしひしと伝わる、美しい場面だと思います。

「くるねこ」①④⑤⑦⑧

2011-11-23 05:45:37 | コミック
うちの兄妹が今はまっているのは、「くるねこ」。借りるだけではいつまでも続きが読めないと悟ったらしく、本屋に行くと買わされるようになりました。息子は、読んでいない巻を前の方から(①②③は読んだので④を購入)、妹は最新巻(⑧)から買おうとします。
二人でパソコン検索して動画も見ておるらしく、時々なんか歌っている。(「ササミ食べたいなー」とか「トメちゃクッキング」とか)
そして、もう135センチもある息子はわたしの頭にわちゃわちゃよじ登ると、「ここ、トメの巣けってーい」と叫ぶ。布団の上で毛布に抱き着き、「ほっこり」してます。あー、でもこれは前からか。(学芸会で扱う人形が、ふわふわだったために離れがたいと語ってました)
二人のお気に入りはトメで、まんがの台詞をいいあいっこしてます。娘がトメで、息子はくるさん役らしい。
「だってね、ぜったいこのまんがをかいている人もね、トメがいちばん好きだと思うよ!」と息子は主張します。
そしたら、昨日買った⑦にまさしくそのようなことが書いてあるではないですか。膝上にやってくるトメをなで続ける場面に、「トメびいき」と。
わたしの知らない部分(アニメとかネットとか)で、似たような表現を見たのかもしれませんが、子供の読解力もあなどれんと感じたのです。(親ばか?)
わたしはどちらかというと流し読みタイプです。初読でつかめないことはその後もわからないままのことが多い。じっくりと読み込むこと、そして、内容に入り込むことでしか読めないものもあるのかな。自然に通じてくるのかしら。
さらに、自分が同じような比重のおかれている登場人物を四人までしか認識できないことにも気づきました。
くるさん、旦那さん、妹さん、ご両親、獣医さん、このあたりの区別はつきますよ。もんさんとトメとからすボンも見分けがつきます。でも、胡ぼんとポ子が頭のなかでごちゃごちゃになっている!
さらに預かり猫が登場するとお手上げです! これは、わたしが猫と暮らしたことがないからかしら。犬ならわかるのかしら。
ふと「猫の里親募集」のポスターが目に入るようになりました。でも、もらってくれるように書くのって難しいですよね。(子犬の貰い手を探したことはあるので、なかなか大変なのはわかります)
その点、このまんがは大成功だと思います。こういう子と暮らしたいなーと思わされる。娘は子犬育成のゲームで猫を飼って、「トメ」「トメちゃん」「トメちゃ」と三匹に増やすと言っています……。

「渡る世間は謎ばかり」

2011-11-22 05:50:59 | 総記・図書館学
遠い昔に一度読んだことがあるような? でも、巻頭の「小学館マーク、テーブルの下の謎の物体」に心引かれて、借りてきました。
これは、テーブルの脚なんだそう。うーん、壷みたいですよ。突起は足をおくところ。あれ? 「金魚屋古書店」でも似たようなことを紹介していたっけ?
まあいいや。「渡る世間は謎ばかり ニッポンの素朴なギモン188」。当然のように小学館発行。女性セブン編集部が取材した雑学の本です。
ただ、内容的には、とうに知っていたりそれほどインパクトがなかったりで、読んだ側から忘れていく感じでした……。
とりあえず印象に残ったものを。
「バカボン家の名字ってなんなの?」
作者にきこうと赤塚さんの事務所に取材したら、「あくまでもギャグなんで、バカボン一家には名字はないんですよ」と言われたとか。
「サザエさん一家はなぜ年をとらないのか」
オーソドックスな持ち味をなくさないためにそうしているという答えよりも、そのあとの、マスオさんが「ずっと係長だったのが、途中で課長代理に出世してるんです」の方が驚きました。
民法で、年齢計算は「生まれた当日を1日目と数える」「4月1日に生まれた人が満六歳になるのは、誕生日の前日、3月31日」というままのことも、なるほどです。かつてうちのクラスに、4月1日生まれの子がいました。4月2日生まれもいた。この二人、誕生日に一年の開きがあるのですね。不思議な感じ。
あと、「24時間営業のコンビニにシャッターはあるのか」という疑問に、もともとその建物についていたなら残すという答え。新しく作る場合はつけないし、一時的にクローズする場合は入口の鍵をかけるとのことでした。
クローズ状態のコンビニというと、わたしは震災のことを思い出します。シャッターがないから、新聞か何かで窓をふさぎ、訪れる人もいませんでした。

ほかには、人気のある名前を紹介たり、流行語をとりあげたりもしています。
「止めてくれるなおっかさん」
「みじめ、みじめ」
「タコが言うのよー」
「わかるかなあ、わっかんねぇだろうなあ」
「見てるだけー」
「……と日記には書いておこう」
な、懐かしい。
ヒットした歌はしばらくすると古いものになってしまいますが、こういう言葉も当然のように廃れる。でも、なんとなく胸に残る記憶も、捨て難いように思うのですよね。
松沢呉一さんが何箇所か答えている場面があって、おぉっと思いました。

「ビブリア古書堂の事件手帖2」三上延

2011-11-20 20:29:53 | ミステリ・サスペンス・ホラー
それしかない一冊の本。反目しあった相手の、本当の気持ちが託された一冊。
栞子さんが探し続ける「クラクラ日記」には、いなくなったお母さんの真実が眠っているのかもしれません。彼女はそれを信じている。冷たい仕打ちの影にある情を、見つけたいと考えている。
古本の価値を娘に教え込み、その人の所有する本を見ればだいたいの人となりは予想できると語った母親。栞子さんにそっくりな美人さんのようです。
今回はオープニングとラストがサンドイッチ形式で、大輔が発見した絵の謎や、かかってきた電話の真相も解明されて、非常に構成的です。
三上延「ビブリア古書堂の事件手帖2~栞子さんと謎めく日常~」(メディアワークス文庫)。大輔の前に高校時代の彼女・晶穂が現れ、本を引き取ってほしいと頼みます。栞子さんとその家を訪ねると、意地の悪いお姉さんが待っていて不快な思いをする。でも。
人ときっちり向き合うことが大切だと考えはじめる大輔。表面に現れることだけが真実ではないということを感じさせられます。
このときから、「大輔さん」「栞子さん」と呼ぶようになる二人です。いやー、サブタイトルが「栞子さんと」なのに、いつまでも「篠川さん」って呼んでるよなーと思ってはいたのですよ。なんか初々しくてかわいいよね。
しかし、そういう甘い雰囲気をもちながらも、この作品には「悪意」が描かれます。
「UTOPIA」を巡るやり取りから、母親のやりくちを推測した栞子ですが、それを話さない自分の姑息さにも同時に気がつく。
大輔に「一生結婚はしないつもりです」と告げるのは、自分の思いにストップをかけようとしているのでは。
その反面、「クラクラ日記」を探し続けるのは、母親へのこだわりを彼女なりに昇華したいのだと思います。本が見つかるなり、母親の真意が伝わるなりすれば、栞子さんも素直になれるのかな。
ミステリの連作だと、登場人物がその場限りのことが多いのですが、前巻のキャラもちょこちょこ顔を出しています。志田、坂口夫妻、奈緒、文香(二人が仲良くなっていて楽しい)。
奈緒の妹が書いた読書感想文を巡っての一話もあるんですが。真相は予想通りだった(笑)。
でも、それを巡る栞子さんの少女時代のエピソードがとても彼女らしくて、納得します。自転車であちこちの書店を巡るのは楽しかったでしょうね。小学生で「時計じかけのオレンジ」ってものすごいですが、文中で「不安定な年頃だから気をつけたほうが」と学校で言われるのはどうかなー。
仮に読書感想文にこういう作品があったら、わたしならどうするかちょっと考えてしまいます。でも、それについて面談で注意を促すかどうか。多読する子なら一冊二冊そういう傾向が混じってもそれほど影響ないと思うんですけど。
でも、栞子さんのお母さんは、持っている本で相手の性格を当てる名人ですからねー。
思春期に読んだ本に、実は隠された結末があった。「完全版」の出版でそのことを知った栞子さんは、きっと驚いたことでしょう。そして、あのころの自分は、「本当の意味で」あの本を読んだのではなかったのだと考える。
井伏鱒二が「山椒魚」のラストを変えた話を、ふと思い出していました。

「井上ひさしの読書眼鏡」

2011-11-16 21:04:04 | 総記・図書館学
このところ、図書館に行っても自分好みの本が見つからずにもどかしい思いをしているわたしなのです。なんとなーく借りてはくるんですけど。で、自分で読みたくて買ったはずの本よりも、勢い優先して読んでしまうんですが。
新着図書コーナーは、わりと細かく見るので、この本も目に入ってきました。「井上ひさしの読書眼鏡」(中央公論新社)。
ぺらぺらめくったら、中村哲「医者 井戸を掘る」という本のことが紹介されていて、釘づけです。
貧しい村に井戸を掘る医者たちの奮闘ぶりが胸に迫ります。何年か前に、ユニセフのパンフレットで水不足にあえぐ地域の子供たちの姿を見ました。汚れた水を飲めば、病気になるのは分かっている。でも、それしか飲むものがない。
井戸を掘り続けるなかで、滑車の事故で命を失った作業員。家に謝りに行った彼らに、父親は語ります。「こんなところに自ら入って助けてくれる外国人はいませんでした。息子はあなたたちと共に働き、村を救う仕事で死んだのですから本望です」
神の奇跡だと感謝する父親の言葉。苦しくないわけがないのに、そういう思いよりも村全体のことを考える気持ちが、尊い。
「読書眼鏡」は、讀賣新聞の読書欄に、何人かの執筆者が週替わりで書いていた連載だと思います。多分、斎藤美奈子や深町真理子も書いていたんじゃないかな。2001年頃なら、実際に紙面で読んでいたかもしれません。
まとめて読んで感じるのは、井上さんの興味が幅広いことと、主張したい内容が一定していることでしょうか。大江健三郎の本を絶賛し、戦後の捉え方を「自虐史観」だとする人々に反発し、日本語について考えます。言葉を読み書きするなかで母語は発達する。自国語を軽視して、他国の言葉を学ばせようとするのは日本人ばかりだという嘆き、全くよくわかります。
数学も理科も、思考は日本語で行うはず。語彙が少ない人は、その範囲に思考が収まってしまうのです。
井上さんの戯曲に関する考えや、人名事典の項目にどれほどの字数がさかれているかで、偉人の格付けをする方法(考案は菊池寛)、松本清張のエピソードなどなど、本を題材に広がる世界が多彩に描かれます。
こういう本を読むと、「読み手」というフィルターを通した感想ってやっぱりおもしろいなあ。どう読むのか、どう伝えるのか、考えさせられます。
同じ本を読んで自分の感想と比べたいところです。今回はわたしの既読の本があんまり重なっていませんでした。井上さんの読書エッセイ、ほかにもあるのかしら。
眠れぬ夜は辞典を読むという提案、そのうちやってみようかと思います。(だいたいの場合すぐ眠れるわたしではありますが……)