くじら図書館 いつかの読書日記

本の中 ふしぎな世界待っている

「ゼロの日に叫ぶ 戦力外捜査官3」

2017-04-30 14:55:05 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 一体いつ文庫になるのか。
 それを切望してずっと待っていたのです。文庫で揃えているし、4巻は図書館で借りて読んじゃったけど、なぜか3だけどこにもない。単行本ももはや書店にはありません。
 でも、古本屋で発見! 似鳥鶏「ゼロの日に叫ぶ 戦力外捜査官3」(河出書房新社)。それが校外学習(泊まりがけ)の前日だったので、早く読みたくて。
 表紙。設楽くんはまたもや左手をケガしております。
 4巻は再び宗教団体との抗争でした。この巻でも戦闘が? と思っていたら、あの人が登場しました。
 「名無し」です。
 七人のヤクザ相手に暴れまわる戦闘能力。人ごみに紛れる地味なスーツ。メガネとマスク。
 こんな人に、一人暮らしのアパートを襲撃されたらひとたまりもありませんよ! よく逃げ切ったと思います。
 今回は、テロ、です。
 しかも、携帯電話を乗っ取るという予想外のテロ。
 とある手段で携帯から緊急通報(警察、消防)をさせる。ひっきりなしにかかる連絡に、実質的な緊急出動ができなくなります。
 傍観者であることの罪を自覚させられる物語でした。
 似鳥さんはギャグやキュートなキャラクターで紛らわせちゃうけど、本質はハードだよね。
 署内の皆さんも、麻生さんや川萩さん、高宮さん、双葉さんと次々出てくるけど、不思議に誰なのか分かる。これはドラマ効果?
 あっ、文庫になるタイミングって、もしやドラマ化? (1はドラマ放映、2はスペシャルドラマでした)

「吹奏楽部あるある」

2017-04-26 21:33:37 | 芸術・芸能・スポーツ
 娘が吹奏楽部に入るというので、入部届を書きました。
 幼稚園からピアノを習っているから楽譜も読めるし、お囃子もやっていたので笛が吹けます。本人はフルートを担当したいみたい。でも、10人くらい入るそうなのでどうかな。思う通りの楽器になれなくてがっかりする子をよく見てきたので。まさに、「顧問に丸め込まれ、違う楽器へ飛ばされる」!
 自分も副顧問したことがあるので、この「吹奏楽部あるある」(白夜書房)、おもしろく読みました。
 「兄弟姉妹も吹奏楽部」(ちなみに兄は卓球部です)、「武闘派とまったり派の仁義なき戦いが勃発」(コンクール金賞を本気で狙うグループと日々の楽しさを追及するグループの食い違い)、「天然パーマの男子部員のあだ名は『バッハ』」、「なぜ顧問が怒っているのか理解できないことがある」、「コンクールでどの賞をとっても女子が泣く」等々……。
 イラストが可愛らしいし字も読みやすい。「鉄子の旅」の菊池直恵さんなんですね。
 「(ホルンを)『福山雅治と堺雅人がやってた』と言うと、まわりの見る目が変わる」というのも味がありますね。
 うちの妹もホルンやっていました。時々吹きたい気持ちになるみたいです。
 さて、娘はどの楽器になるのでしょうね。

「花魁さんと書道ガール」瀬那和章

2017-04-26 05:54:45 | 文芸・エンターテイメント
 図書館の新着図書コーナーで見つけました。瀬那和章「花魁さんと書道ガール」(創元推理文庫)全二冊です。
 「私」こと花沢多摩子は、白城大学教育学部の一年生。この大学を選んだのは、書道科があるから。人付き合いが苦手で、書にしか興味のない多摩子は、大学祭で焼きそば作りを担当すると、誰にも気づいてもらえないまま二日間ヘラを握って作り続けてしまうような女の子。しかも、せっかく部長が差し入れてくれたクレープを意図せずして断ってしまう要領の悪さ。
 憧れの遊宇くんと話すときには、緊張して体育会みたいな喋りになってしまいます。
 そんな彼女の親友は、やたらと顔の広い「林檎」と不機嫌な優等生風の「学」(愛称はガク)の双子。
 一緒に暮らすおばあちゃんが入院することになり、荷物をまとめているときに、しまい込まれた簪を発見します。
 ところが、その簪には花魁の幽霊が関わっており、なんと多摩子に取り憑くというのです!
 この花魁が「春風さん」。粋で気っ風がよく、恋に生きる女といえましょう。女子会で相談に乗ったことをきっかけに、恋愛カウンセラーとして学内で引っ張りだこになっていきます。

 わたしは、部長の恋を描く「アトリエはもういらない」が好きですね。
 部室棟の裏の森にあるガレージを整理して、美術部の凪子と共同でアトリエにしています。
 凪子は一緒に過ごすうちに彼のことを想うようになったのですが……。
 また、遊宇への気持ちは「恋」ではなく「憧れ」だったことを自覚。
 ガクとの関わりも変化してきて。
 
 「憧れ」を「恋」と間違えてしまうことや、実らない「恋」を引きずらないためには恥をかいて忘れる方がいいという春風さんの考え方が斬新でした。
 書道への多摩子の情熱も。
 二冊一気に借りてきて正解だったと思います。
  

「計画結婚」白河三兎

2017-04-24 20:49:10 | 文芸・エンターテイメント
 絶世の美女でありながら、独自の思考で周囲と調和しない久曽神静香。(苗字は、きゅうそじんと読みます)
 豪華客船のクルージングで挙式することになった静香を祝うために、幼なじみの怜美、美容師の桜田、結婚相談所職員の富永が、友人代表で出席します。
 同じテーブルには新郎の友人が三人いるのですが、彼らは全員代理出席者なのです。
 その中の一人高原は警察官。妹が詐欺にあい、その男を捕まえようと潜入しています。 
 友人たちが語る静香の様子が、なんとも面倒くさくて、でも、みんな彼女が好きなんだということが伝わってきます。
 特に富永が奥さんとのことを語る「エンディング・リング」が切なくて。
 なぜ、静香は船での式にこだわったのか。それまでの行動からは考えられないような所作で塚本に結婚を迫った理由とは?
 「空の上のお仕事」については途中で見当がつくのですが、奇想天外な静香のキャラクターと、回収されていく伏線が面白かったですよ。

「女王さまの夜食カフェ」古内一絵

2017-04-18 21:26:57 | 文芸・エンターテイメント
 シャールさんに再会できて、嬉しいですー。
 「女王さまの夜食カフェ マカン・マランふたたび」(中央公論新社)。今回も身体と心にきくお夜食が満載ですが、わたしが最も惹かれたのは「冬至の七種うどん」ですね。
 「七種」は「ななくさ」と読み、ニンジン、レンコン、ギンナン、カンテン、キンカン、ナンキン、ウンドン(うどん)の七つ。全部の具を入れて作ってあります。
 シャールさんの言葉を借りて説明すると、「全部の種にンが二回入るのよ」「どうして、ンが二回つくかっていうと、冬至は一陽来復、陰極まりて、陽に帰るって言ってね、一度終わりきったものが再生する日だからなの」。
 この物語では、シャールさんの友人柳田が視点になっています。
 娘が高2も後半のこの時期に、イルカの研究をしたいから理系に転科したいと言い出して頭を抱えています。
 娘は生粋の文系。理科教師の柳田には無謀だとしか思えない。
 シャールさんの店を訪ねたとき、久しぶりに男の恰好をしている姿に愕然とします。いつもは女装を否定する柳田なのに。
 やりとりの中で、柳田を「親友」と語るシャールさんにニヤリとしてしまいます。柳田は照れて「知り合い」なんて言ってますが。

 あとは、発達障碍の疑いのある子どものいるお母さんや、派閥に悩む派遣社員、マンガ家の夢を諦めざるを得ない男が、どうやってマカン・マランにたどり着いたのかが描かれます。
 こういうお店、憧れますよね。
 読み終わったとき、「マカン・マラン」にも「ンが二回ついている」と思ってしまいましたよ。

「かわうそ堀怪談見習い」柴崎友香

2017-04-17 16:28:47 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 恋愛小説家という、自分からはかけ離れた肩書きが重くて、怪談作家になろうと決めた「わたし」。郷里の大阪に戻り、実家の近くで暮らし始めます。
 とはいえ、霊感も心霊体験もない「わたし」は、旧友のたまみに連絡をとります。中学時代、彼女は怪奇体験を語ることがあったのです。
 たまみは、自分が蜘蛛に怨まれている話をしてくれます。夏休み、おばあちゃんの家でつがいの蜘蛛を見たこと、おばあちゃんはたまみの目の前で片方の蜘蛛を潰したこと、滞在中ずっと蜘蛛の視線を感じたこと……。
「離婚することになったんも蜘蛛の呪いちゃうか、とまじで思ったもん」
 大阪弁があっけらかんとした印象を与えるせいか、深刻なカラーではないのですが、語りきってしまわないのがじわじわ怖い。その後「わたし」は、闇の中でLEDのように光るものを見、たまみのことを今も蜘蛛が見ていることを読者に想像させます。
 作品全体に、視線は大きな役割をもっているように思います。
 死者が見えるというリエコは、彼らも自分が見られていることに気づいて睨んでくると語り、宮竹茶舗の蔵にいる何者かは「わたし」のことを見ていたと、近くに住む女性が教えてくれます。
 「わたし」は、怪談作家を志してから、様々な怪奇現象にみまわれますが、中でも印象的だったのは読みかけの怪談集が古本屋に戻ってしまう話ですね。同じ棚の、同じ場所に。
 「わたし」は同じ本であることを確かめるためにマークを付けたのですが、次のページになんと! 「ほっておいてください!」と殴り書きがあるというのです!
 このセンス、いいなあ。
 なぜ怪異はおきるのか。それは何をもたらすのか。
 それは追及されません。一緒にトークショーをしたらしき「鈴木さん」も、結局最後まで謎のままです。
 ただ、たまみがふとつぶやいた「幽霊、見たことないって言うたやん」「それ、ウソついてるで」は、ラストでエピソードが語られます。
 天井の低い家、山道の霧の向こうで話している少女たち、中国の行ったことがない村を紹介したホームページに写った「わたし」、ホテルの無声音のテレビに映る女性がどんどん近づいてくる話など、記憶のひだに残る話が多かったと思います。 

「活版印刷三日月堂 星たちの栞」ほしおさなえ

2017-04-12 21:58:28 | 文芸・エンターテイメント
 ずっと前に買ったんです!
 車のトランクに入れたまま、ふと気づいたら二冊めも出ているではないですか。
 読まなきゃと思いつつ、代車になったり奥に入れていて見つからなかったりして、先日息子の体験入塾のときに探し当ててやっと読みました。
 ほしおさなえ「活版印刷三日月堂 星たちの栞」(ポプラ文庫)。
 舞台は川越。店主亡き後空き家だった印刷所に、孫の弓子が帰ってきます。手キンという印刷機械で刷り上げられる、デジタルとは違う活版印刷の世界。
 誕生日にもらったレターセット。喫茶店のコースター。結婚式の招待状。
 それぞれの印刷物に思い出があり、ぬくもりとともに手渡される。
 コースターには高浜虚子の俳句が刷ってあるそうです。
「われの星燃えてをるなり星月夜」
 インパクトがありますね。この店のコーヒーを飲んでみたい。
 また、このコースターが縁で、弓子は高校の文化祭でワークショップをすることにもなります。
 宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」からのフレーズをちりばめた展示にも、心ひかれます。

 わたしは文芸部だったので、自分の文章が活字になることへの強い憧れがありました、 今では簡単に字を打つことができて、印刷もスピーディーです。 
 でも、活字を拾い、レイアウトして刷り上げるのは、相当の手間ですね。
 それを惜しまない心が、あるから伝わるのだろうな、と感じました。

「放課後の厨房男子 進路篇」秋川滝美

2017-04-10 05:26:14 | 文芸・エンターテイメント
 新入生歓迎会の点心があまりにもおいしそうだったので、今日の夕食は春巻きです!
 「放課後の厨房男子 進路篇」(幻冬舎)。三年生引退後、部長を引き継いだ大地は、個性的な一年生二人にからかわれつつ部活にいそしみます。
 でもねぇ、先輩たちはなかなか勉強にシフトチェンジできず、毎日調理実習室に現れるのです。そして、ミコちゃん先生に説教されるのです。
 これは引退セレモニーをきちんとするべきなのでは?
 文化祭で華々しく引退、ということができなかった(弁当コンクールと弁論大会に参加したからね)ので、区切りをつけたほうがいいという先生の提案で、翔平がコンクールで作った弁当を作ってもらうことにしたのです。(ありていにいえば、ミコちゃんも食べたいのですね)
 小麦粉教信者の一年生不知火がデザートを、大地ともう一人の一年生優也が汁物を作り、おいしく幕を閉じました。

 そんな感じで、包丁部の様々なイベントが描かれるのです。
 点心を思いついたのは、翔平の肉まんを食べたこともあるのですが、例年の豚汁だと調理実習室に引き込めないから。一緒に作ることによってこそ、包丁部のよさが伝わるのではないか?
 というわけで、新入生勧誘に向けて蒸籠を準備したり、ワゴンを借りたりと大忙し。
 
 今回は金森くんがバレー部から転部してきたこともいろいろとアクセントになっていておもしろく読みました。
 いちばんおいしそうなのは、やっぱり前巻のスコーンのような気がシます。

「神様の裏の顔」藤崎翔

2017-04-09 15:02:04 | ミステリ・サスペンス・ホラー
 よく本屋で平積みされていて、気になっていたのです。
 人格者として知られる元教師・坪井。彼の葬儀に集まった、同僚・教え子・近所の人……。
 口々に語られる思い出は、彼に相談に乗ってもらったことや、熱心な教師だったというエピソード。娘の晴美は、そんな父親の足下にも及ばなかったと感じます。
 彼女は、地元の小学校で学級崩壊にあい、教師を辞めたのでした。
 妹の友美は、駆け出しの女優として家を飛び出し、父を見とれなかったことを悔やんでいます。
 同僚だった根岸は、息子の素行について坪井に相談しており、余りにもひどい家庭内暴力に「バイク事故で死んでしまえばいい」と口走ったことを思い浮かべます。
 間をおかず、バイク事故で息子は重体に。現場には、今では入手困難なメーカーの登山用のロープの切れ端が残っていました。
 そのロープは、坪井も持っていたはずであることを知った根岸は……。
 殺人、盗聴、ストーカー、暴力事件、次々とわきあがる疑惑。
 果たして「神様」とまでいわれた坪井の正体は?
 藤崎翔「神様の裏の顔」(角川書店)です。わたしは単行本を借りたので、ラストには横溝賞の選評も載っていました。
 候補作の中でも「優等生」との評価は、道尾秀介。
 確かに、裏の顔が暴かれていくことに、さらに展開が続くのではないかと予想していましたが、その通りでした。
 裏に隠されているのは、もうひとつの顔……というダブルミーニングなんですね。
 もうひとつ、内田先生の裏の顔も、インパクトがありました。
 

「君はレフティ」額賀澪

2017-04-08 19:10:50 | 文芸・エンターテイメント
 左利きの人、増えてきたように思います。13人にひとりかぁ……。
 「君はレフティ」(小学館)。
 小谷野真樹は、夏休みに事故にあって記憶を失います。全く何も覚えていない状態で登校することになりますが、直前に、自分は写真部に所属していたこと、同じ部には同級生の春日(女子)と生駒(男子)がいて、親友だったことを知ります。
 休み明けの高校は、文化祭に向けての熱気に包まれており、クラス委員の前園さんが仕切って縁日をすることになりました。
 普通の高校生活を取り戻したい小谷野でしたが、謎の落書きが彼を不安にさせます。体育館の壁に大きく書かれたオレンジ色の「6.7」。その日直だったので日誌を見たら、同じ字が赤ペンで書いてある。
 誰が? 何のために?
 クラスの黒板やツイッターにも現れるその数字は、明らかに小谷野へのメッセージと思われ、記憶を失った彼にのしかかってきます。
 そんなとき、前園さんから、春日が中学時代に家出をしてニュースになったことを知らされて……。

 帯に「ラストは決して誰にも言わないでください!」と書いてあるので、どんでん返しがあるのかなあ、と思ったのですが、途中で予想したことはまるっきりその通りです。
 でも、まあ、それが肩すかしとは思わないですが。思ったようにはまっていくおもしろさという感じですね。
 記憶を失った小谷野が、以前の自分について理解していくのも、なんかいい人である自分を知って不思議に思うのも納得いきました。
 左利きでバレーって、かっこいいですよね。
 公園のシカ(今思えば、お気に入りのシカの話題も伏線!)の話とか、ジェットコースターとか、友人のなみちゃんとか、いろいろエピソードがちりばめられていて、楽しく読みました。