日本よりも先進国といわれていた欧米で大混乱が起きている。とくにアメリカの現状は、まさしく内戦の様相を呈してきている。敗戦後の日本は、欧米流の民主主義を目指してきたが、そのモデルが混乱しているわけだから、ここで立ち止まって考えるべきときなのである▼自由であるがゆえに、それに堪えられずに、人々は暴徒と化して全体主義を目指しているのではないだろうか。『カラマゾフの兄弟』(米川正夫訳)の中の「大審問官」の物語では、イエスが自由を教えたことで、人類に悲劇がもたらされたということが書いてある▼大審問官はイエスに向かって「お前は世の中へ行こうとしている。しかも自由の約束とやらを持ったきりで、空手で出かけようとしている。しかし、生まれつき下品で馬鹿な人民は、その約束の意味を悟ることが出来ないで、かえって恐れている。なぜというに、人間や人間社会にとって、自由ほど堪え難いものはほかにはないからだ」と語ったのである▼人類にはパンを与え、崇拝に値するものを与えてやればいいというのだ。全体主義はそこに付け込むのである。蟻塚の蟻になりたい者たちにとっては、自由などどうでもいいのである。世の終わりを思わせるような空気のなかで、ドストエフスキーが問題にした自由の意味が今問われているのではないだろうか。
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(続)⑰笠井尚氏の会津の本の読む。 『湯川村史1』(末木文美士も執筆)