草莽隊日記

混濁の世を憂いて一言

「完全な正義も社会分裂の原因になる」と指摘したホッファー!

2020年06月03日 | 思想家

黒人差別に抗議する暴動は分裂するアメリカを象徴している。エリック・ホッファーの皮肉な見方が的を射ているように思えてならない。「不正を正しても社会の協調度が増すわけではない。女性解放、人種間の平等、貧困に対する闘いは、さらなる国民の結束をもたらしはしなかった。それどころか、社会正義は不満を倍増させ、不和に油を注いだ。完全な自由のように、完全な正義も社会分裂の原因になるもかもしれない」(『安息日の前に』中本義彦訳)▼ホッファーがもっとも恐れるのは社会的連帯感の喪失である。その点を考慮するならば、「完全な正義」はセーブされねばならないのである。ホッファーが依拠するのは、教会や家族といった伝統的な権威の見直しである。それに取って代わるものを見い出せないでいる欧米社会を、「進歩の行進によって破壊された共同体のゴミ捨て場と化している」とまで書いたのだった▼そうした危機を克服した国家として、ホッファーは日本を高く評価した。「強固なアイデンティティと連帯感をもつ日本は、他国が経験した近代化に伴う社会分裂を回避し得た」との見方を示したのだ。欧米の悲劇は「社会分裂」によって引き起こされたものであり、彼らが学ぶべきは共同体を大切にし「中庸」に徹する日本人の生き方だというのである。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする