ふるさと加東の歴史再発見

少し気をつけて周囲を見回してみると、身近なところにふるさとの歴史を伝えるものがある。

稲尾の虫送り-実盛さんのご上洛

2011年07月04日 05時44分49秒 | Weblog
 3日(日)夕方、加東市稲尾に向かう道の所々に白地に「稲尾の虫送り」と赤字で染め抜かれた幟がたてられていました。稲尾の鎮守である八幡神社の森に通じる道にも幟が立てられ、遠くから賑やかな声が聞こえてきます。
 朱塗りの鳥居の立ち並ぶ参道のトンネルを抜けて八幡神社の境内に入ると、杜の木立に囲まれてぽっかりと広がる空間があり、すでに多くの人が集まり和気藹々とした雰囲気に包まれて、虫送りの行事が始まるのを待っていました。
 3年前にもこの虫送りの行事に参加しましたが、この2年間は用事が重なり参加できなかったので今日は楽しみにしていました。
 稲尾地区では戦前の昭和初期まで行われていた「虫送り」の行事を復活し、地域おこしのきっかけにしようということで平成15年に取り組みが始まりました。地域の崩壊、地域力の衰退といった言葉で表現されるように、地域に元気がなくなり住民同士の関係も希薄になっているなか、地域の再生を伝統行事の復活という地区住民の共同作業によって実現しようという試みだったと聞いています。今回で9回目。区長さんや地域の住民の皆さんのそうした思いを今日も実感することができました。今年はオープニングとして水龍会の太鼓が披露されました。八幡神社は加古川筋一揆の起点となった神社でもあり、太鼓の激しい響きを聴いていると特別なパワーを感じました。

 神事に続いて、松明に火が付けられ、虫送りが始まりました。先頭はわらで作られた「馬に乗った実盛(さねもり)人形」、これに「虫送り」「豊年祈願」などの言葉が書かれた幟、長い竹の松明、そして一人ひとりが持つ短い松明、そして太鼓や鉦の鳴り物の列が揃うと神社を出発し、もう暗くなった地区の田の中の道を歩きます。
 「実盛さん」とは斉藤実盛のことで、戦いの最中に田の稲株に足をとられてころび、これが原因で敵にやられてしまったということで、その霊が田の虫となって被害をもたらすという言い伝えがあり、その実盛さんの名を呼びながら田の虫を松明の灯で誘い出して追い出すということです。ただ、「サネモリ」は実盛の名であるというほか、早苗、さなぼり、早乙女などの田に関係する「早」「サ」という音、言葉によるものという話も聞きました。わらでつくられた実盛人形は地区の方がこの人形に詳しい人から教えてもらって作ったそうですが、今年の人形は一層緻密に作られているように見えました。
 虫送りの列は真っ暗になった稲尾地区をぐるっと回り、南の高いところにある池の堤で終わりました。わらの実盛人形が火で燃やされ、虫とともに空に上がっていきました。「さねもりさんと上洛せい!」のかけ声とともに。


 


 
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