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メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

桑原あい トリオプロジェクト (新宿ピットイン)

2016-02-14 10:28:55 | 音楽
桑原あい トリオプロジェクト 2016年2月13日(土)新宿ピットイン
桑原あい(pf)、森田悠介(e-b)、須川崇志(b)、石若駿(ds)
 
桑原あいのトリオを生で初めて聴いた。12月のライブはドラムなしでストリングスを加えたものだった。
プロジェクトというのは、メンバと編成を必ずしも固定していないことからきているようで、特にベースはエレキとアコースティックを使い分けたり、二つ一緒に入れて4人でやったり、というかたち。
 
最初のアルバムから、また昨年の4枚目から、12月のコンサートから、そして新作と、彼女の世界をしっかり聴くことができた。
たくさんの音が詰まっているのとエネルギッシュな打鍵は相変わらずだが、ベース、ドラムと全体で音が埋もれたりつぶれたりということがなく、バランスがとれた形で聴くことができるのは、広い意味での「作曲」がしっかりしているからだろう。
 
比較的新しい作品では12月にもやった「919 Between」、「The Back」が、より大きく広がりのある世界を見せた。後者はモントルーで会ったクインシー・ジョーンズとのエピソードにもとづくもので、それについての語りもよかった。
 
後半の冒頭には時節柄のサービスとして「My Funny Valentine」、速いテンポであのビル・エヴァンス/ジム・ホールの傑作にも迫るもの。私もこの一週間に参加した二つのジャム・セッションで厚かましくも歌ってしまったこともあり(こういうのは早いもの勝ち)、楽しみながら聴けたのはうれしかった。
 
面白かったのは新作で楽譜を忘れてツアー(この前二日間は大阪、名古屋)に出てしまったので、一部の記憶をたよりにベースとやりとりしてやるといって始めた「Hands」、文字通り手拍子でしばし観客を巻き込んだ後、本人はさらにクラップでベースにモチーフを送り、ベースも同様に応えた後、曲に入っていく、声も使う、という斬新なものだった。
 
とにかく、この人のこの時期の演奏に接することができたのはよかった。ここは約100席+立ち見20人ほどだから、今回のように満席だとそのうちもっと大きいところになってしまうかもしれない。
 
ところでそのピットイン、20年以上前に数回行った記憶があるが、場所は今はない厚生年金会館の傍だったと思う。新宿二丁目交差点近くの今のところは初めてである。この数年行ったことがある多くの小さいライブスポットは、向い合せで飲食もできる店がほとんどだったが、ここはすべての席はステージに向いている。席の前にドリンクを置くところがあるのはいいけれど、灰皿も必ずあって喫煙可というのはいまどきいかがなものだろうか。立ち見スペースの隅あたりに限定とかできないか。
 
ある程度大きなバンドが入ることもあるからかステージの奥のスペースがかなりあって、そのせいだろうかピアノの音が少し引っ込んでいるように感じた。進むにつれ次第に慣れてはきたけれど。


イヴ・サンローラン

2016-02-02 21:16:11 | 映画
イヴ・サンローラン(Ive Saint Laurent、2014仏、106分)
監督:ジャリル・レスペール
ピエール・ニネ(イヴ・サンローラン)、ギヨーム・ガリエンヌ(ピエール・ベルジュ)、シャルロット・ルボン(ヴィクトワー)、ニコライ・キンスキー(カール・ラガーフェルト)
 
じヴ・サンローランの生涯については、すでにすぐれたドキュメンタリー映画があり、そこでは今回の映画でも出てくるサンローランのパートナー(公私ともの)であるピエール・ベルジュのモノローグが説得力を持っていた。それに比べると、今回の劇映画はいま一つ意図がはっきりしない。
 
サンローランとベルジュがディオールの死後に、そのブランドを引き継ぐ形になったものの、トラブルが生じ、独立したブランドになるところまではそう問題ない。しかしその後、サンローランの虚弱なからだ、鬱病、そしてそれらと結び付けられがちな非難・中傷の中におかれ、またそれからベルジュとも軋轢があり、というところを、まともに描きすぎていて、それらの中で彼の仕事がどうなっていったのか、必ずしもわかるとはいえない。ここで見るとかなり下り坂のように思えるが、実際はそうでもないだろうし、第一線から退いてもそこそこの年齢までは生きていた、ということともマッチしない。
 
クチュリエとしての仕事の変遷や彼が生まれたアルジェリアなどについてもう少し描かれればよかったと思う。それでも、オートクチュール新作発表のショウの舞台裏、特に誰をどこに座らせるかなどは、なかなか面白かった。