メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

WATER (エレーヌ・グリモー)

2016-02-18 10:07:28 | 音楽
「WATER」ピアノ:エレーヌ・グリモー(Helene Grimaud) 2014/2015 ドイツ・グラムフォン
ブラームスの協奏曲から久しぶりのアルバム。あるコンセプト、あるいはテーマでアンソロジーを作ることはめずらしくないが、そのアルバムのタイトルにしてしまうというのは、クラシックではあまりないように思う。
 
だからこれは個々の演奏を聴いてもらうことばかりでなくて、全体として何か受け取ってほしいという彼女の欲求であるのだろう。その結果はもう何度か聴いてみないと、こちらにもはっきりしてこないが、聴いていてここちよいことは確かだし、彼女のセンスは感じさせる。
 
べリオ、武満からはじめて、フォーレ、ラベル、アルベニス、リスト、ヤナーチェック、ドビュッシーで、この中で20世紀にかかってないのはリストだけだからほぼ「近現代」であるが、水のコンセプトであればこうなるのかなとは思う。リストも「エステ荘の噴水」で、ここに入って違和感はない。なかで、初めて聴くヤナーチェックの「In the Mists:No.1」はとても印象深かった。
 
一つ一つの演奏は期待どおりだが、欲を言えばもう少しピアノの音がオンになるような録音であってほしかった。このアルバムだと聴く方がもっと包まれてしまうほうがいいと思うのだが。
 
もう一つこのアルバムの特徴は、曲と曲の間にTransitionという1分半くらいの作品が挿入されていること。これはニティン・ソーニー(Nitin Sawhney)という人の自作・自演(キーボード/ギター/プログラミング)によるものである。はじめは何か変な感じだったが、再度注意して聴くと、次にグリモーが弾く曲へのイントロダクションになっていないこともない。たとえばラベル「水の戯れ」の前のもの。
 
それなりの高い評価を得ているピアニストであってみれば、こういうアルバム作りに否定的な意見も予想されるが、このアンソロジーをリサイタルでやるとすると、おそらく退屈というか、時間の起伏にとぼしい感があるだろうから、クラシックではあまりやらないが奏者のトークをはさむとかすることになる。録音アルバムにするとすれば、一つの解がこれということなのだろう。
なおソーニ-の録音は2015年で、ピアノ録音の次の年である。

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