ギリシア人の物語Ⅰ民主政のはじまり 塩野七生 著 2015年12月 新潮社
「ローマ人の物語」全15巻(これは一通り読んだ)の完結から約10年、「ギリシア人の物語」(1年1巻で全3巻)が出てくるとは思わなかった。著者はローマが好きなこと、特にカエサルが好きなことは、よく書いているからこっちも納得している。だからギリシアはなぜ、ということだが、読者のこの反応は著者も予想したようで、巻頭に、まずローマのはじまりあたりで簡単にふれただけではギリシアに失礼ということ、そして民主主義、民主政、それとリーダーとのかかわりなどについて、その起源とされるものを踏まえたうえで、意見を述べたいということがあったようである。後者は読み始めて、いくつかのところでその視点として感じることができた。
本書は紀元前8世紀ころのいくつかの都市国家のはじまり、オリンピック、スパルタの「リクルゴス」憲法、アテネのソロンの改革と進むが、そのあとの著述のほとんどは前490年~480年のペルシア戦役である。ここではマラソンの起源になったマラトンの戦い、テルモピュレーの戦い、サラミスの海戦、プラタイアの戦い、デロス同盟、と興味をよぶ話は多いし、特にペルシア王ダリウス、クセルクセス、アテネのテミストクレス、スパルタのレオニダス、パウサニアスという英雄たちの話は面白さに事欠かない。
そしてこのペルシア戦役を耐えて勝ち抜いたこと、しかも複数の都市国家が独立性というかエゴイズムを持ちながら、全体としてペルシアにうまく対抗し、またそれぞれの都市国家が、必ずしも今の平等な民主主義ではない形態で、しかも寡頭制と期間限定の独裁制などを取りながら、意図してか結果としてかわからないところはあるものの、うまくいった。それはローマも知りうるところとなった、そして、ということだろうか。
ローマに比べ、記録、資料、(活躍した人の)像などが不足しているから、面白い話にするには不便もあっただろうが、これまでよく知らなかったギリシアについて、興味を持つことはできた。
一つ、ここに出てきた英雄たち、この体制が作り出した、必要としたともいえ、困難な事態を読みきり、相手の上を行く戦略を立て、戦局を有利に進めていくのだが、最後はそれをじっと見ていた、そしてねたんだ寡頭の人たちによって気の毒な末路をたどる。テミストクレスについて、そうでもないところも少しはあるのが、読後多少の安堵感となった。
「ローマ人の物語」全15巻(これは一通り読んだ)の完結から約10年、「ギリシア人の物語」(1年1巻で全3巻)が出てくるとは思わなかった。著者はローマが好きなこと、特にカエサルが好きなことは、よく書いているからこっちも納得している。だからギリシアはなぜ、ということだが、読者のこの反応は著者も予想したようで、巻頭に、まずローマのはじまりあたりで簡単にふれただけではギリシアに失礼ということ、そして民主主義、民主政、それとリーダーとのかかわりなどについて、その起源とされるものを踏まえたうえで、意見を述べたいということがあったようである。後者は読み始めて、いくつかのところでその視点として感じることができた。
本書は紀元前8世紀ころのいくつかの都市国家のはじまり、オリンピック、スパルタの「リクルゴス」憲法、アテネのソロンの改革と進むが、そのあとの著述のほとんどは前490年~480年のペルシア戦役である。ここではマラソンの起源になったマラトンの戦い、テルモピュレーの戦い、サラミスの海戦、プラタイアの戦い、デロス同盟、と興味をよぶ話は多いし、特にペルシア王ダリウス、クセルクセス、アテネのテミストクレス、スパルタのレオニダス、パウサニアスという英雄たちの話は面白さに事欠かない。
そしてこのペルシア戦役を耐えて勝ち抜いたこと、しかも複数の都市国家が独立性というかエゴイズムを持ちながら、全体としてペルシアにうまく対抗し、またそれぞれの都市国家が、必ずしも今の平等な民主主義ではない形態で、しかも寡頭制と期間限定の独裁制などを取りながら、意図してか結果としてかわからないところはあるものの、うまくいった。それはローマも知りうるところとなった、そして、ということだろうか。
ローマに比べ、記録、資料、(活躍した人の)像などが不足しているから、面白い話にするには不便もあっただろうが、これまでよく知らなかったギリシアについて、興味を持つことはできた。
一つ、ここに出てきた英雄たち、この体制が作り出した、必要としたともいえ、困難な事態を読みきり、相手の上を行く戦略を立て、戦局を有利に進めていくのだが、最後はそれをじっと見ていた、そしてねたんだ寡頭の人たちによって気の毒な末路をたどる。テミストクレスについて、そうでもないところも少しはあるのが、読後多少の安堵感となった。