メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ラブ・テーマ (桑原あいトリオ・プロジェクト)

2015-04-13 11:42:06 | 音楽
LOVE THEME (ラブ・テーマ)桑原あいトリオ・プロジェクト eweレコード
桑原あい(ピアノ) 森田悠介(電気ベース) 須川崇志(コントラバス) 石若駿(ドラムス)
 

桑原あいを知ったのは東京JAZZ2013の映像で、これにはびっくりし、早速デビューアルバムを聴き、その感性と積極性に感心した。その後の2枚は聴いていないが(最初のあれを聴くとしばらく置いた方が、特に新鋭の場合は、という余計なことも考えた)、4枚目の今回は既に書かれている曲をテーマ素材としてということらしいので、聴いてみようと思った。
 

最初はなんとエンニオ・モリコーネの「アマ・ポーラ」(なつかしい!)で、しかもテーマを借りてあとはメンバーのアドリブセッションなんていうものではなく、インスパイアされたところから始まる新しい創作で、10分以上の聴きごたえがある作品となっている。彼女のピアノソロからゆっくり始まって聴き手に深く広いイマジネーションを投げかけていく。音は極めて美しく、また粒立ちが心地いい。こんなピアニストだったんだ、、、そしてベース、ドラムスが入ってきて、ますます壮大な世界を見せる。
 

次のHere There And Everywhereもポール・マッカートニーのいいところをつかんでイマジネーションを誘う。コントラバスのボウイングも効果的だ。その他ピアソラの曲、デューク・ピアソンのNomadなども聴かせるし、私は名前しか知らないキング・クリムゾンの曲も迫力あるもの。
 

さらに、このアルバムで特筆すべきは録音で、ピアノやコントラバスもよく捉えられているが、特にドラムスの多彩な音をよく採ってミキシングしたと思う。
経済的な理由からかライブ録音がどの分野でも多いが、一回きりのよさはまさにその場で聴くのが一番で、パッケージとして出すものはやはりこういうしっかりしたスタジオ製作がいい。
 

今後もこのひとの音楽の多面的的な展開が楽しみである。この歳まで生きていてよかった。



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ミス・ブルターニュの恋

2015-04-08 15:43:15 | 映画
ミス・ブルターニュの恋(ELLE S'EN VA、2013仏、113分)
監督:エマニュエル・ベルコ
カトリーヌ・ドヌーヴ
 

往年のミス・ブルターニュ、全国のミス・フランスの決勝には出られず結婚し、夫とは死別、レストラン経営をしていて、母の介護にも苦労している60代後半、その女性を同じ年代のドヌーヴが演じている。
真面目な方ではあるらしいが、不倫の過去・現在もありそうだし、母や娘とも言い争いが絶えない。そんな中で車で外へ飛び出すといろんなことにあうし、広告会社が企画したあのミスたちは今というイベントで当時の同期たちが集うところに出かける途中、娘から孫の男の子を預かってその子の父方の祖父のところに届けてほしいと頼まれ、とんだ目にあいつづける。その中で、これまでの彼女の人生がいろいろわかってきて自業自得とも思えてくるけれども、それでもなんとか、周りの人たちも含め、「生きていく」というお話。
 

フランスらしい、ほかの国ではこういう話を映画にはしないだろう、とは乱暴な言い方だが、最後までなんとか見られるのはそういうところ。
原題も、(それでも)彼女は行く、ということだろうか。ドヌーヴもよくこの歳で、恥ずかしげもなく演じているのは、嘗てのイメージからすると意外だが、立派であるともいえるだろう。
ただ、フランスらしい風景、風俗などは、好きな人には楽しめるものだが、見た方がいいと強くいうほどの映画ではない。
 

中で、母親にやめろと言われているのに、いらいらしだすとタバコを喫い、日曜で店がどこも開いていないので、見ず知らずの人に一本くれないかと頼み続けたり、これが意外にも話の(本質ではないにしても)一つの細い線になっている。あの歳まで喫っていると、止めようと思っていてもああなってしまうのは、十数年前まで喫っていた私としてはよくわかる。
 

かってのミスたちの一人で、ミレーヌ・ドモンジョが出ている。しばらく前に「悲しみよこんにちわ」(1958)で再会して以来だけど、当時はパスカル・プティ、ジャクリーヌ・ササールとの三人娘、中でもちょっと年上のふわっとした容姿が好みだった。その面影は今でもある。ドヌーヴよりだいぶ上だけど。

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