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メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

蜂飼耳 詩集

2020-06-12 09:57:43 | 本と雑誌
蜂飼耳 詩集  現代詩文庫 思潮社
蜂飼耳(はちかいみみ、1974~)を知ったのは詩ではなく、絵本である。
数年前から絵本の読み聞かせを始め、ある保育園でボランティアをしている。
それで知人から「ゆきがふる」という絵本を紹介されたら、その作者がこの人だった。その後、最初に評判になったという「うきわねこ」もあわせ、園で読んでみた。
 
二つとも牧野千穂の圧倒的にすばらしい絵もあって、これまでの絵本にはない不思議なストーリーなのだが、年長組の子供たちはさまざまに受け取ってくれたようだ。
 
そのうち日本経済新聞の年末詩壇時評とか、現代詩人の特集など、いくつかで時々名前を目にするようになり、それでは詩を読んでみようということになった。
 
現代詩にそうなじんでないものとしては、のぞいてみたというレベルかもしれない。
それでも、この人の詩は、意味の押しつけがましさはなく、かといってきれいで調子がいいというのでもない。言葉が一見脈略なく飛ぶが、その言葉が、何語、何行前後に飛んで結合したり弾けたりして、時々ああそうかと、何か(コスモス(小宇宙)が浮かんできたりする。少し気に入ったものを何度も読んでみると、もう少し何かが開けてくるかもしれない。
 
なかでは、たとえば「食うものは食われる夜」の中にある「モンゴロイドだよ」、「鹿の女」のように動物の世界にはいっていくもの、「この蟹や」、「食うものは食われる夜」のほかいくつかのように海岸から海の生き物のイメージ(潮干狩を思い出す)への飛躍、展開が何かこちらに照応、フィットする感じがした。
 
現代詩の本をまとめて読むのは久しぶりである。もっとも近代詩だってせいぜい萩原朔太郎、中原中也くらいだ。中原中也についてはほぼ全作読んでいるが、蜂飼の詩を読んでいて、時に中原中也を感じることがあった。略歴に中原中也賞受賞とあって驚いたけれど、これと関係あるわけではないだろう
 。
書棚をみると、現代詩としてはわずかに、吉増剛造、堀川正美、茨木のり子くらい。なかなか気安く入っていけない世界ではある。もっとも詩集というまとまった形でなく、何かの媒体で時々一遍ずつ目にするというのであればいいのだけれど。
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