戦争と平和 ( War and Peace、1956米伊、208分)
監督:キング・ヴィダー、音楽:ニーノ・ロータ
オードリー・ヘプバーン(ナターシャ)、ヘンリー・フォンダ(ピエール)、メル・ファーラー(アンドレイ)、アニタ・エグバーグ(エレン)、メイ・ブリット(ソーニャ)、ハーバート・ロム(ナポレオン)、オスカー・ホモルカ(クトゥーゾフ司令官)
世界の名作といわれるものの中で大きな穴であったトルストイ、歳を重ねてあまりこだわりなく読んで見ようと数年前にこの「戦争と平和」を読んでみた。
そこにも書いたように、よく知られているロマンスの部分は半分以下で、ロシア社会と対ナポレオン戦争についての叙事の部分が多く、なかなかしんどいものであった。
したがって映画にするとなれば、ロマンスを中心にせざるを得ず、その背景にいかにうまく戦争をからめていくか、ということになる。
小説を読む少し前だったかイギリス製作の連続テレビドラマを見た。このくらいの長尺だと、複雑な人間関係もなんとか理解できるが、今回の映画は3時間半もかけてはいるけれど、理解するのは簡単ではない。小説、テレビドラマがあったから、思い出したというところもある。作り手も後半になってからわかってくればいい、と考えていたのかもしれない。
そしてここではオードリー・ヘプバーンを売りにしているのは明白、彼女はそれに見事に応えている。ただこれは彼女としてどうしようもないが、欲をいえばもう少し年齢が下で初め頼りない感じがあればよりと思われる。テレビドラマでナターシャをやったリリー・ジェームズはそういう点ではフィットしていた。
悩める人ピエールがヘンリー・フォンダというのはどうもしっくりこない。アンドレイのメル・ファーラーと逆でもよかったか。
そしてこの映画の最も優れているところ、また見た甲斐があったといえるのは、最後の30分近く延々と続くフランス軍の敗走シーンである。この大規模な、壮烈、悲惨はおそらくトルストイが書きたかったことの主要な一つだろう。なんというかさすがハリウッドの力というべきか。そしてここに流れるニーノ・ロータの音楽がこちらをゆさぶってくる。
そのほか、クトゥーゾフ将軍のひとことひとことが印象的であり、この人の戦略つまり無理して正面から戦わず、広大な大地に引き込んでいくというのはなるほど。これはその後独ソ戦でもそうだったように思われる。
もう一つ、1956年のカラー・ワイドスクリーンからビデオになったものだが、10年以上前の「風と共に去りぬ」に比べ鮮明さが不足しているように感じた。
監督:キング・ヴィダー、音楽:ニーノ・ロータ
オードリー・ヘプバーン(ナターシャ)、ヘンリー・フォンダ(ピエール)、メル・ファーラー(アンドレイ)、アニタ・エグバーグ(エレン)、メイ・ブリット(ソーニャ)、ハーバート・ロム(ナポレオン)、オスカー・ホモルカ(クトゥーゾフ司令官)
世界の名作といわれるものの中で大きな穴であったトルストイ、歳を重ねてあまりこだわりなく読んで見ようと数年前にこの「戦争と平和」を読んでみた。
そこにも書いたように、よく知られているロマンスの部分は半分以下で、ロシア社会と対ナポレオン戦争についての叙事の部分が多く、なかなかしんどいものであった。
したがって映画にするとなれば、ロマンスを中心にせざるを得ず、その背景にいかにうまく戦争をからめていくか、ということになる。
小説を読む少し前だったかイギリス製作の連続テレビドラマを見た。このくらいの長尺だと、複雑な人間関係もなんとか理解できるが、今回の映画は3時間半もかけてはいるけれど、理解するのは簡単ではない。小説、テレビドラマがあったから、思い出したというところもある。作り手も後半になってからわかってくればいい、と考えていたのかもしれない。
そしてここではオードリー・ヘプバーンを売りにしているのは明白、彼女はそれに見事に応えている。ただこれは彼女としてどうしようもないが、欲をいえばもう少し年齢が下で初め頼りない感じがあればよりと思われる。テレビドラマでナターシャをやったリリー・ジェームズはそういう点ではフィットしていた。
悩める人ピエールがヘンリー・フォンダというのはどうもしっくりこない。アンドレイのメル・ファーラーと逆でもよかったか。
そしてこの映画の最も優れているところ、また見た甲斐があったといえるのは、最後の30分近く延々と続くフランス軍の敗走シーンである。この大規模な、壮烈、悲惨はおそらくトルストイが書きたかったことの主要な一つだろう。なんというかさすがハリウッドの力というべきか。そしてここに流れるニーノ・ロータの音楽がこちらをゆさぶってくる。
そのほか、クトゥーゾフ将軍のひとことひとことが印象的であり、この人の戦略つまり無理して正面から戦わず、広大な大地に引き込んでいくというのはなるほど。これはその後独ソ戦でもそうだったように思われる。
もう一つ、1956年のカラー・ワイドスクリーンからビデオになったものだが、10年以上前の「風と共に去りぬ」に比べ鮮明さが不足しているように感じた。