メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ラッシュ/プライドと友情

2015-02-10 09:52:41 | 映画
ラッシュ/プライドと友情(RUSH 2013米・独・英、124分)
監督:ロン・ハワード、脚本:ピーター・モーガン、音楽:ハンス・ジマー
ダニエル・ブリュール(ニキ・ラウダ)、クリス・ヘムズワース(ジェームズ・ハント)、アレクサンドラ・マリア・ララ(ラウダの妻マルレーヌ)、オリヴィア・ワイルド(ハントの妻スージー)
 

1975年~76年のF1グランプリで、ニキ・ラウダとジェームズ・ハントというレース・スタイル、性格とも両極端・対照的な二人のレーサーが繰り広げるドラマである。自動車にそれほど関心がなくても、当時ものごころついていた多くの人には知られていた二人で、このあたりからホンダ(エンジン)の再度参戦時期、F1は今から想像できないほど注目の的だった。
この時期の資料、代表的な車は残っているが、これだけの映画にするのは簡単でなかったはず。
 

この2年がとりわけ注目されたのは、同世代の二人だが、冷静で計画的なラウダはうまくチームに取り込み実績を上げ、驚くほど早くフェラーリに選ばれ1975年に年間チャンピオンになる。一方、私生活もやりたい放題のくせに走れば速い天才肌のハントが次第に追いついてくるがそれでもかなり引き離された2位だった1976年の夏、ドイツはニュルンブルクリンク、1周23㎞と通常の何倍もあり、F1では危険視されていたコースで事件は起きる。自身でレース中止を提唱しながら多数決に至らず開始されたレースでラウダはスピンし炎に包まれかろうじて命をつなぎとめるという目にあう。おそらくこの報道はほとんどの人が知っていただろう。このあと同様なものといえばアイルトン・セナの死くらいだろうか。
 

ところが、ここからがすごいストーリーで、顔が焼けただれたままのラウダは、年間の点数で追い上げるハントをいTVで見ながら無理とも見えるリハビリに耐え、なんと1ヵ月半後に復帰してしまう。そしてハントがあと3点に追いすがった最終戦は日本グランプリ、雨の富士スピードウェイ。
 

この二人とそれぞれの妻となる女性のほかは、特にどうという演出もない。そして二人とも見ている方は好きになれるという感じには描かれていない。それでも第3の主役ともいうべきレースシーンの魅力で、映画としては面白く、痛快である。そしてレースとしてはどうもという日本グランプリの顛末を二人のドラマのクライマックスとして描ききったのは見事だった。さすがロン・ハワード。
 

なお、英語ネイティブでない人には、吹替え版で見ることをすすめる。眼の動きの測定によれば、字幕だと70~80%そっちを注視しているそうで、おそらくこういう動きが早い映像の魅力はとらえがたいのでは、と思う。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする