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メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

楽屋 (清水邦夫)

2009-10-11 14:51:38 | 舞台
「楽屋~流れ去るものはやがてなつかしき」(作:清水邦夫)
演出:生瀬勝久
渡辺えり、小泉今日子、村岡希美、蒼井優
(2009年5月 シアタートラム、2009年10月9日NHK教育TV )
 
初めて見る劇である。演劇の世界では有名、名作らしい。清水邦夫(1936-)は名前だけ知っている。
この作品(1977)は女優4人だけ、しかも場面は楽屋だけ、見るものは集中しやすい。
劇団でプロンプターはやってもついに表舞台に立てなかった戦前からの女優A(渡辺えり)、同じ境遇の戦後の女優B(小泉今日子)が楽屋で亡霊のごとく化粧をしながらおしゃべりをしている。そこへ今の女優C(村岡希美)が出てきて、その境遇、立場の違い、なぜそうなったか、言い合いを始める。そしてそこにさらにそのあとの世代の女優D(蒼井優)が枕を持って現れ、皆に休息を勧める。
 
お互いの主張はかみ合うわけもなく、そしてこの人たちは劇団員として好きで憧れなじんだチェーホフ作品の台詞をとなえながら、このあとの生き方を探っていく。
 
見ているとしだいに、Aは戦前の左翼リアリズム、Bは戦争直後のそれ、そしてCはまさに戦後そのもの、戦後の知識人そのものでありおそらく1960年安保世代の作者といっては独断で失礼かもしれないが、そうきこえてくる。そして特定の主義をもたない新世代のDが表れると、彼女たちの対立、いやむしろ対立が成り立つ構造が崩れていく。それでも、なんとか彼女たちは生きていくのだろう、と思わせて終わるところがこの戯曲の価値、長く上演されてきた所以だろうか。
 
四人とも役をこなしてうまい。
村岡希美は初めて見るが、一番女優らしいという役の存在感は確かだ。
渡辺、小泉も舞台の演技は的確。そしてこの三人がいかにも役者が楽屋でしゃべっているという感じであるのに対し、このところいくつか舞台をやっているとはいえ、映画から出てきた蒼井優がなんとも異次元でしかもその場面の空気をつくってしまう演技を見せ、期待に応えている。
 
もともと演劇をそれほど知らないから、録画してみたのは蒼井が出ているから。
特に、各場面での第一声が素晴らしい。あの映画での「クワイエット・ルームへようこそ」というところを思い出してしまった。