メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

ザ・ロイヤル・テネンバウムズ

2007-05-12 22:46:23 | 映画
「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」(The Royal Tenenbaums、2001年、米、110分)
監督:ウェス・アンダーソン、脚本:ウェス・アンダーソン、オーウェン・ウイルソン、音楽:マーク・マザースボウ、エリック・サティ、ナレーション:アレック・ボールドウィン
ジーン・ハックマン、アンジェリカ・ヒューストン、ベン・スティラー、グウィネス・パルトロー、ルーク・ウイルソン、オーウェン・ウイルソン、ダニー・グローヴァー、ビル・マーレイ
 
家長ロイヤルのテネンバウム一家の物語。夫婦に子供三人、男、女(養女)、男の順である。
よく家族の絆ははかなくちょっとしたことでほころびてしまうと言われ、文学、映画の素材になることもあるけれど、そうだったら逆に考えれば、ちょっとしたことで元に戻せるのではないか、という映画、それは半分真実で、その試みのおかしさを見せてみようというのだ。
 
三人の子供は、小さいときからそれぞれ金儲け、文学、テニスの天才、演ずるのは、ベン・スティラー、グウィネス・パルトロー、ルーク・ウイルソン。その父はジーン・ハックマン、母はアンジェリカ・ヒューストン、子供達の幼なじみはオーウェン・ウイルソン(ルークの兄)である。
 
二十歳過ぎればただの人ではないが、それぞれ挫折があり、その過程で父は家族から追い出されたような状態になっていて、母は同業のダニー・グローバーと結婚することになるが、それを知った父は、胃がんになって余命いくばくないと嘘を言って家に入り込む。それは入り込む口実で、目的は結婚の阻止と、次第にわかってきた崩壊した家族をもう一度つなぐこと。
 
みんな変な人たちなので、そのプロセスはおかしくないわけはないが、そんなにテンションは高くなく、どこかとぼけた、いい加減さが横溢している。この2人の脚本の特徴だろうか。
本当に悪い人はいない、そして、細かい道具、風俗で、にやりと笑わせるところを沢山作っている。
 
パルトローが14歳から隠れてすっていたタバコを、連れ合い(ビル・マーレイ)も他の家族も誰もしらないとか、自己で妻を亡くしたベン・スティラーと二人の息子が何故か常に赤いアディダスのジャージーを着ているとか。
 
二人の小さい子に、街の中でのいたずらをジーン・ハックマンが教えながら駆け回っているシーン、音楽はポール・サイモンがガーファンクルとのコンビ解消後最初のアルバムに入れた「ぼくとフリオと校庭で」(Me And Julio By The Schoolyard) 、この組み合わせがとてもいい。
 
養女マーゴ(グウィネス・パルトロー)と弟(ルーク・ウイルソン)との関係は描ききれていないが、意図的かもしれない。
 
グウィネス・パルトローは何時になく強く気難しい役で、これまでになくセクシーである。横じまのニットのシャツ・ドレスがそれを引き立てている。
 
末弟のテニス、ファッションはまさにボルグのフィラ、プレースタイルはどこかマッケンロー。
 
脚本はアカデミーでノミネートされた。それほどかと思うけれど、おそらく脚本家の新星は待ち望まれているだろうから、期待をこめてかもしれない。それにしてもオーウェン・ウイルソンが物書き志向とは知らなかった。ベン・スティラーとは仲がよくて一緒に出ることは多く、この二人を中心にした映画マフィアともいうべきものの活躍が目立つのも、こういう背景があるのだろう。
 
この映画の最後の始末のつけ方には、もう一工夫必要と思うけれど。

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