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メドレー日記 Ⅱ

by 笠羽晴夫 映画、音楽、美術、本などの個人メドレーです

グノー「ロミオとジュリエット」(メトロポリタン)

2023-05-22 10:06:43 | 音楽一般
グノー:歌劇「ロミオとジュリエット}
指揮:ジャナンドレア・ノセダ、演出:バートレッド・シャー
ディアナ・ダムラウ(ジュリエット)、ビットリオ・グリゴーロ(ロメオ)、エリオット・マドール(マキューシオ)、ヴィルジニー・ヴェレーズ(小姓ステファーノ)、ミハイル・ペトレンコ(ローラン神父)、ロラン・ナウリ(キャプレット)
2017年1月21日 ニューヨーク・メトロポリタン 2022年4月 WOWOW
  
有名なオペラだがはて見たことはと調べてみたら、同じメトで有名なドミンゴ指揮の上演だった。
 
ここにも書いたように、ドラマを味わうというよりは、二人の歌唱、どの場面にもアリア、二重唱はたっぷりあって、好きな歌手の歌唱、演技を楽しむという感じなのだろう。
シャーの演出も時代性をあまり出さない(と本人も言っていた)で、レビューというか、「トリスタンとイゾルデ」をわかりやすくしたというか、そういうところで楽しませるようになっている。
 
最後、新婚の二人が愛し合って死ぬところなど、音楽も演出もイゾルデの愛の死を連想させる。
ダムラウとグリゴーロはそういう意味で熱演だったし拍手・コールはさもありなん。
小姓(ズボン役)のヴェレーズはチャーミングで、まずはこういう領域、そして役柄を広げていくだろう。
 
ところで思い出すのは、同じ物語の期限をもつベッリーニの「カプレーティ家とモンテッキ家」
これはもっとドラマ性があったと思う。グノーはシェークスピア作をもとにしているが、そのもとになった話はかなり昔からあったらしく、いろいろな脚色があるようで、ベッリーニのものは両家の対立とかで演出にも工夫のしどころがあるようだ。残念ながら録画を残してはいないがまた見てみたい。


ビゼー「カルメン」(ヴェローナ野外劇場)

2023-04-23 10:14:14 | 音楽一般
ビゼー:歌劇「カルメン」
ゼッフィレッリ生誕100年 ヴェローナ野外劇場
指揮:マルコ・アルミリアート、演出・美術:フランコ・ゼッフィレッリ
エリーナ・ガランチャ(カルメン)、ブライアン・ジェイド(ドン・ホセ)、クラウディオ・スグーラ(エスカミーリオ)、マリア・テレーザ・レーヴァ(ミカエラ)、ガブリエーレ・サゴーナ(スニーガ)、ピアシオ・ピッツーティ
アントニオ・ガデス舞踏団、ヴェローナ野外劇場管弦楽団
2022年8月11、14日   2023年4月NHK BSP

ひさしぶりのカルメン、野外劇場だと大味かもしれずどうしようかと思ったが、ゼッフィレッリ生誕100年記念でこの人の演出・美術はどうだったのかということにひかれた。
 
ドラマとしてはカルメン、ホセ、エスカミーリオ、ミカエラの関係を見ていけばいいのだが、オペラとしてはセビリア、時代、その社会、民衆、闘牛場など、その中でのストーリーとして見せようというものだから、演出特に多くの人の動きと美術は見せようがある。
そこはゼッフィレッリで、カルメンははじめて見たが、あの見事な「ボエーム」に通じるところがある。
 
カルメンもボエームもあの時代、社会の人たち、時代の流れ・雰囲気のなかでの何人かのドラマということで、音楽の中でいきいきとしてくるのは確かだ。
この作品もたばこ工場、軍隊、闘牛、密輸団など、やはり色を添える以上のものがある。
 
野外劇場ということから音がどうかなと思ったが、さすが最近は録音、バランスが秀逸、現地で聴くより聴きやすいかもしれない。
 
配役だが、ホセのジェイドはもうすこしひ弱そうな感じもほしいがまずまず、ミカエラのレーヴァはホセを諭し迫る歌唱がいい。エスカミーリオのスグーラは長身、かっこいいというか、歌唱もカルメンがなびくのもねという感じ。
 
さてそこでカルメンのガランチャ、どうしても12年前のメトロポリタンのイメージが強く、あの時は歌唱もいいがとにかくあの美貌と男がころっといきそうな肢体、身振り、これ以上のカルメンがいるだろうか、と思ってしまった。
 
今回、歌唱は問題ないし、ホセを手玉にとるちょっと年増のカルメンはうまく演じているが、私の趣味からするとカルメンはもうすこし若く見えて実は内面は男よりかなり大人という方がいい。野外劇場だからアップの映像にフィットする表現にはならないのだろうが。
 
アントニオ・ガデスのダンスは楽しめた。
指揮のマルコ・アルミリアート、たしかメトロポリタンでよく見ていると思うが、こういう雰囲気だし、うまくやっていた。
 
ちょっと思いついたのだけれど、この作品で、男と女の関係は闘牛なんだろうか。
 
いろいろうるさいことをいうオペラ好きも、本当に好きなのは「椿姫」、「カルメン」、「ボエーム」という説があるが、多分そのとおりだと思う。



グルック「オルフェオとエウリディーチェ」(メトロポリタン)

2023-04-08 12:55:43 | 音楽一般
グルック:歌劇「オルフェオとエウリディーチェ」
指揮:ジェイムズ・レヴァイン、演出・振付:マーク・モリス
ステファニー・ブライズ(オルフェオ)、ダニエル・ドゥ・ニース(エウリディーチェ)、ハイディ・グラント・マーフィー(愛の神アモーレ)
2009年1月24日 ニューヨーク・メトロポリタン
 
3年ほど前にシャンゼリゼ劇場の斬新な公演についてアップしたが、今回のメトロポリタンはそれより10年近く前、どちらかというと見やすい演出、といっても凡庸なのではなく、カラフルな衣装で楽しめるダンス、コーラスは後方、劇場バルコニー(3階くらい)のようなものに並べ、臨場感を出している。
 
オルフェオはカウンターテナーではなく、ここではメゾ・ソプラノ、いわゆるズボン役としてブライズが演じる。この形はよくあるようで、違和感はない。
 
前記の公演で本質的なところは気づかされたから、今回はグルックの優れたオーケストレーションを楽しみながら聴くことができた。はっきりした役は上記3人だけだから、追っていくのはやさしい。
 
ブライズは説得力ある表現だったし、ドゥ・ニースは声も容姿もふさわしかった。マーフィーのアモーレはもう少し不思議な(妖精というか)感じがあったらとさらによかった。
 
モリスの振付は退屈せずに楽しく見たが、もう少し大胆であってもよかったか。
この曲でレヴァイン?と思ったが、聴いているとやはり西洋音楽のオペラはここからという感じがして、聴いた甲斐があったと思う。
 
前記の公演についで、やはり男と女は、振り向く、振り向かないといや、ということが本質だろう。


バート・バカラック 補足

2023-02-14 17:01:40 | 音楽一般
二つ前のアップでバート・バカラックを追悼した。
 
その後思い出したのはNHK Eテレの番組「ららら クラシック」で、2021年3月5日に特集を組んでいてバカラックの音楽がいかにクラシックのいろんな要素を使って工夫に工夫を重ねて作られているか説明されている、とても説得性があっていい。
 
そして、バカラック自身のリモートインタヴユーがあり、この時期コロナで大変だが作曲は続ける、コロナが明けたら日本のみなさんにも届けたいというようなことを言っていた。このとき92歳、さすがに歳とった感じはあったが2年後こうなるとは。
この番組、再放送するといい。
  
あらためてこの長い生涯、「バート・バカラック自伝」で書かれた豊富なエピソードを少しずつ思いだしている。

ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」(メトロポリタン)

2023-02-08 14:48:30 | 音楽一般
ドニゼッティ:歌劇「ランメルモールのルチア」
指揮:リッカルド・フリッツア、演出:サイモン・ストーン
ネイディーン・シェラ(ルチア)、ハビエル・カマレナ(エドガルド)、アルトゥール・ルチンスキー(エンリーコ)、クリスチャン・ヴァン・ホーン(教父ライモンド)、エリック・フェリング(アルトゥーロ)
2022年5月21日 ニューヨーク・メトロポリタン・歌劇場 2023年1月 WOWOW
 
メトロポリタンでオペラを楽しむ人にドニゼッティというのはなくてはならない、聴く醍醐味がある作曲家だろう。ただこのルチアはこれまであまり聴いてこなかった。10年ちょっと前に同じメトでデセイが演じたものを見て感心し、持っていたカラスのLPをまた聴いてもよかったのだけれど。
 
今回の演出は舞台を現代アメリカのラストベルトに設定、すなわち過去には自動車産業などで栄えたが今は衰退を続け大統領選挙で話題になっている地域。
ここで事業をしているエンリーコは過去の繁栄から落ちてきて、金持ちのアルトゥーロに 妹ルチアを嫁がせ、勢いを取り戻そうとするが、ルチアには未来を誓った恋人エドガルドがいて、という設定。話の展開は「ロミオとジュリエット」みたいに想像がつくが、終盤に無理強いで結婚させられた相手を殺したルチアの狂乱の場が見せ場である。
 
現代に設定したということ、最初は違和感が少しあるが次第にそうでもなくなる。そしてこの演出では大スクリーンにルチアを中心とする過去のシーン、心象風景を映し出しているらしいが、生の舞台でなく映像だとあまりよくわからないうらみはある。またルチアの表情をカメラマンが前から追い、それがまたアップされたりする。これも一つのやり方ではあろう。
 
さて歌だが、ルチアはネイディーン・シェラ、先日のパリ祭コンサート2022で会場を完全に魅了してしまったが、それまで知らなかった。今回観るともうメトでも大変な人気のようである。
このルチアも歌も表情、動きも堪能させてくれる。いい意味でサービス精神があるようだ。
声は澄んで高いというよりはしっかり強いところがあり、変な言い方だがマライア・キャリーみたい。フロリダ出身でラテンの血も入っているらしい。これからも楽しみである。
 
エドガルドのハビエル・カマレナ、先に同じドニゼッティの「連隊の娘」でのハイCでパヴァロッティ以来のカーテンコールを得たが、ここでもとにかく損な役だし、身長が低くがっしりタイプだこれど、歌っているうちに見栄えがするシェラとも違和感がなくなってくる。
兄エンリーコのルチンスキー、この悪役に作曲家が振った歌をこちらに納得させる。
 
今回オーケストラ部分を聴いていて、あらためてドニゼッティのバック、のせ方、あおり方に感心した。プッチーニのような頭にすぐ入る旋律とはちがったタイプの流れ。
フリッツァの指揮も効果的だった。