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王様の耳はロバの耳

横浜在住の偏屈爺が世の出来事、時折の事件、日々の話、読書や映画等に感想をもらし心の憂さを晴らす場所です

ケープ・ベアの一族 上

2011-05-24 06:49:24 | 本を読む
ジーン・アウル著 集英社刊 「ケーブ・べアの一族」上巻を読みました。
大震災以降、本を読む気にならなかったのですがゴールデンウイークには「何処かにに出掛ける」なんて事は全くなかったのです。そこで本でも読むかと思って市の図書館から借り出したのがこの本です。

この本は著者による「読者の皆様へ」を読まないと本文中で判らないのですが「紀元前3万五千年頃の4-5千年の間ネアンデルタール人とクロマニヨン人が同一地区で共存していたのでないかとの推測を下敷きに構成されています」
そして彼らの生活ぶりも考古学的見地ではなく著者の推測の様です。

さて紀元前3万5千年頃のヨーロッパそれも黒海に面した辺りです。
(クロマニヨン人の)5歳の少女エイラは突然の大地震で家族も一族も失いさ迷い歩きだしました(東日本の大震災を思い出しますが全くの偶然です)。
5日目にケーブ・ベア(洞穴熊)をトーテムとするこれも大地震で仲間を失い新たな洞窟(住処)を探すネアンデルタール人の一族(といっても十数人)に拾われます。
エイラを最初に介抱したのが一族の薬師(医者)イーザそして彼女の兄のモーグル(まじない師)のクレブの助けで一族に迎え入れられます。
それから3年の間に彼女は「頭脳の良さ」が故に薬師の後継者としての能力を評価され体の柔軟性から「投石器」の名手としての腕を持つに至ります。そしてその腕でハイエナに襲われた子どもを助けましたが「一族の女は狩りをしてはならない」とのタブーに触れたようで一族の男衆の見る目そして族長のブルンの対応次第で追い出されるかもしれません。

物語はこのあと、波乱を含みながら彼女の成長とともに続きます。クロマニヨン人が裸の猿ではないとの見解には同意しますがエイラに代表されるクロマニヨン人の資質が前者と隔絶して優れていたのかどうか? 浜爺には判りません。 そんな点を無視すれば時間のある方は「読み物」として彼女の成長を追って読み継がれると面白いですよ。

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東野圭吾「白夜行」を読む

2011-01-20 08:24:10 | 本を読む
 累計200万部以上を売り上げた東野圭吾の同名サスペンスを映画化した『白夜行』の完成披露試写会が19日、東京・新宿ピカデリーで行われ、本作で悪女役に挑んだ主演の堀北真希をはじめ、高良健吾、船越英一郎、今井悠貴(子役)、福本史織(子役)、そして深川栄洋監督が舞台あいさつを行った。(シネマトゥデイ)

女優の堀北真希さんがヒロイン西本(のち唐沢)雪穂を演じる「白夜行」が上映されると言うので、彼女に相応しい役なのかなんて年初から思ったのですよ。

そこで急ぎ図書館から借りて読むこととなりました。
主人公の心情は周囲からの目線なり語りでしか書かれていませんから、どの様に理解しても成り立ちそうで作者東野氏の了解さえ取れればさまざまなシナリオ(脚本)を書くことが可能でその辺りが06年TBSでドラマ化、09年には韓国で映画化されています。
今回は「二人の関係を可視化して」映画化とありますからやはり東野ファンの反応はさまざまに分かれそうです。

さてネタバレを避ければ:
1973年10月(追って石油ショックによる買いだめの話などで判って来る)大阪府警本部の刑事笹垣潤造は近鉄布施駅近くで殺人事件に遭遇します。
近くの質屋の主桐原洋介が刺殺されていた。
容疑者西本文代にはアリバイがあり犯人は迷宮入りの様相を示す。しかし笹垣は事件に何か異様なものを感じ退職後を含めて19年犯人を追いかける事になる。
この笹垣を縦糸とすればさ質屋の息子桐原亮司と容疑者文代の娘西本雪穂(ともに小5位)を横糸に話は展開する。
さてそこで浜爺はネタバレを避けて「白夜行」の表題に拘ることにする。

本編で「白夜行」とは周囲は真っ暗だが太陽もしくは太陽もどきのものに照らされて白日の如き明るい場所を歩いているとの意味らしい。
うん、その様に思える。では白夜の太陽とは何であろうか??

また笹垣刑事の言葉を借りれば(もちろん作者東野氏の別の視点と思えますが)主人公の二人は「手長エビとハゼ」の様に相利共生の関係(手長エビの巣にハゼが住み着く代わりにハゼは穴の入り口で外敵を警戒する)のだとか!?
それにしてはハゼの思い込みが強いようにも思えます。

まあよく出来た推理&サスペンスですよ!
堀北作品評が出るようになったらネタバレ恐れず疑問点を論評しましょうね!
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「終身刑の死角」を読む

2010-12-17 07:03:41 | 本を読む
つい先日も「裁判員裁判」で鹿児島の老夫婦殺しで「死刑か無期か」と想定された被疑者に「推定無罪」が出ましたね。
日本の刑法が「死刑」を規定している事には国際人権組織が非難を浴びせたり09年5月から裁判員裁判制度が始まる事もあり「死刑に替えて仮釈放のない無期懲役」を制定したらどうか?との動きも有ります。
さて浜爺も「そんなに死刑が悪ければ仮釈放なしの無期懲役刑を設ける事には賛成でした」
過日ブログの知人「りゅうちゃんミストラル」の管理人りゅうちゃんが11月22日に「終身刑の死角」について言及していたので図書館から手に入れて読んでみました。
本は洋泉社発行、著者は河合幹雄氏で現在桐蔭横浜大学教授の方です。
さて後書きによれば著者は上述の世相を反映し08年5月から超党派の議員連盟が「仮釈放の無い終身刑」の導入をすべしとの方向に動き出した事を捉え「無謀な法案阻止」を目的として執筆したそうです。

冒頭部分で「犯罪白書」等に言及、犯罪件数は必ずしも激増していないとか「凶悪犯罪」も同様との氏の見解が述べられますが果たしてそうなのでしょうか?
浜爺の生活実感と一致しません。

それはさて置きに知識として日本には交通事故犯罪を除き毎年3万人が刑務所に入り前から入っている受刑者とあわせ7万人が刑務所にいる。

この3万人の多くは再犯者で「知能指数が低い(概ね70前後)、最終学歴が中卒以下、そしてその他のハンデ」が加わっている人だそうです。

又刑務所に入る人の年齢も高齢化して「介護や看護そして治療」を要する人の数が増えているそうですよ。その為「刑務所のバリアフリー化」を真剣に考慮しなければならない現状とか。

さて議連のメンバーは「死刑反対派」と「仮釈放なしの終身刑派」と入り乱れているそうです。これは「死刑廃止」に至る過渡期としても大切なのは「仮釈放なしの終身刑」は問題が多いとの指摘でしょう。

「死刑」に較べて「仮釈放なしの無期懲役」は軽い?或いは優しい様に見えますがそうでもないとの指摘で以下は河合氏の見解です。
日本の少なくとも刑務所の運用は「なるべく入れずに入った者は早く出す」の精神で成り立っています。 
そして「お勤め(刑期)を尽くすか更生を認められて仮釈放される事を収監者に対する餌と言うか希望の光にして刑務所内の治安維持が図られている」が故に刑務の一線は拳銃で武装しなくて済んでいます。
それが「刑務所に入ったら死ぬまで出られないと決まった収監者と刑務員がどう関係を維持するか?」刑務システムを再構築するほどの難事のようです。

その他多くの囚人を収監する刑務所の不足と社会復帰の難しい高齢で無技能の人達の老後を広い意味で「社会保障の最低線と捉えセフティーネットを構成する考え方が必要かも知れません」
安全な社会を維持する為に必要なコストを生活保護と別な形で考える機会を得ました。
1億2千7百万人に対し年3万人の犯罪者はざっと0.0023%で銀行金利並みの低率です。「死刑に替えて仮釈放の無い無期懲役」を考える良い資料です。
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「雷撃深度 19・5」 を読む

2009-08-27 00:00:24 | 本を読む
池上司著 文春文庫刊 「雷撃深度19・5」を読みました。
夏前に「真夏のオリオン」という日本映画が公開されました。見ようかどうしようかと思って「映画案内の公式HP」を見るとこの「雷撃深度19・5」が映画用の脚本の元ネタの様に紹介されていました。
早速図書館に予約を入れたのですが2ヶ月して入手したものです。

小説の縦糸は昭和20年の大東亜戦争中「日本のイ58潜水艦が米国の重巡インディアナポリスを雷撃し撃沈した」事実です。
横糸に「日本戦略物資輸送船団の護衛艦隊司令の少将」「イ58による少将の救助」「同少将による潜水艦の指揮」「特攻兵器回天を攻撃に使わず重巡を雷撃する秘策」が絡みます。

20年3月沖縄戦に参加したインディアナポリスは神風特攻機に突入され修理の為
メインアイランドで補修工事。7月の完了と共に「原子爆弾」の運搬を命じられます。
その内2個はテニアン島のB29基地へ届けます。余談ですがこれが広島と長崎に落とされた原子爆弾という訳。
さらに残りの1個は「」マッカーサーの要求でマニラに届ける 加えてマッカーサーの日本攻撃に関して独断専行を嫌う米軍の首脳部が「7月26日以降マニラ-グアムを結ぶ線に戦略物資を運ぶ大型船舶が航行する」との情報をリークして日本軍の攻撃を期待するとの高度の政略が下敷きになっている。と手の込んだ筋立てになっています。

この3発目の原爆に纏わる話が池上氏の創作なのでしょう。
又如何に船団護衛司令がイ58に移乗するか?
ヒ八八船団の米軍攻撃による日本船団の悲惨な記述は他の例も含めて事実に近いのですが少将が敵潜水艦に乗り上げて沈没した貨物船からイ58に救助される当りも創作でしょう。そして重巡の艦長と少将は少将の駐米時代の知己と言うか水雷理論戦に関するライバルという出来です。

あの手この手で潜水艦が重巡を撃沈します。
この時約900名が海上に投げ出されますが救助に日数が掛かり3百数十名しか
助かりませんでした。映画ジョーズで鮫狩りの漁師がインディアナポリスの乗組員で漂流中鮫に仲間が襲われたのでその復讐だ--見たいなセリフを吐く場面がありました。

さて表題の「雷撃深度」が良く分かりません?
通常「潜望鏡深度」という海軍用語があり「イ58では16メートル」に設定されているようです。恐らく艦底から19メートルになると潜望鏡が波間に2-30センチ出るよう機械的に自動調整されているようです。
少将は重巡雷撃時点で「潜望鏡深度19・5メートル」を命じます。常より50センチ深いのですから「潜望鏡は水面に出ません」

そこで50センチは手動で持ち上げるのですがこの動作を通じて慎重に潜望鏡の海面への突出を避けた配慮を示しているようです。
この時代、潜望鏡に頼らぬ魚雷攻撃は出来ませんでしたから手動で潜望鏡を59センチ上げたとすれば魚雷発射時の潜望鏡深度は19・5メートルで雷撃深度19・5メートルと云い変える必要はなんはてなんでしょう?と本筋と関係ない事を訝って見ました。

さて「真夏のオリオン」はどんな風に脚本が書かれたのでしょう? 
折があったら見たいものです。

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「パンツの面目 ふんどしの沽券」を読む

2009-07-07 00:39:42 | 本を読む
筑摩書房発行米原万理さんの「パンツの面目ふんどしの沽券」を読みました。
尊敬するブロガー「あれこれ随想録」の和尚様が5月に紹介されていたので本書を知り題名が愉快そうなので呼んでみました。
題名よりずっと中身は真面目でした。

冒頭ソ連邦での1950-60年代のエッセイが紹介されます。
年頃の娘が男と割り無い仲になりたいが「手作りのボロパンツ」が恥ずかしくて越えられない。友人から(東)ドイツ製の繊細で美しいパンツを身に着けて思いをとげる というお話。
情報公開の時代を受けこの手の作品も知る事が出来るようになった由。

そしてプラハのロシア人学校で米原さんが小学生時代「家庭科で最初に習うのが下着のパンツ作り」と言ううその様な本当の話。
そしてロシアでは第二次世界大戦が終了するまで工業生産品は無かったそうです。
戦後と言えどもパンツの工業生産量は十分なものでなく手作りであり続けたと。

戦後のドイツで下着のまま町を練り歩いたソ連人将校夫人の話が出ています。彼女達は綺麗なレースの縁取りがついたシルクのパンツやブラジャーが下着だと夢にも思わなかったのである--と断じている。
爺も若い頃この珍妙な記事を見た覚えがある。そう解説されると納得。

話はシベリア抑留時代の日本人捕虜の話:
尻を拭く紙の配給が無かった事
ソ連兵は将校までパンツを穿かない上に尻を拭かないから紙を配給する発想がなかったらしい。

話はあれこれ跳んで爺が興味があったのはふんどしの話。
ふんどしと言うと日本精神の体現みたいに思われているがそうでもないらしい。
北方系のパンツ、南方系のふんどしと腰布或いは腰巻(loin cloth-この発展系がスカートで中は何もつけない)の混合文化らしい。
昔はふんどしも腰巻もはかまも混在していたらしい。
書中いつごろかふんどしを穿いたかとの見解に「地獄の鬼は下っ端ほどふんどし、その上になるとふんどしの上に虎か獣の皮を腰布風に巻きつけている」そうだ。
爺は毎日新聞社刊「地獄ものがたり」の絵を見た。


確かに地獄の鬼はふんどしを締めている奴もいれば腰布風の鬼もいる。又地獄に落ちた男はふんどしと腰布風のが入り混じる。女は大体腰巻姿。
中世に中国から渡来した仏画の影響は受けていようが下々の下着は当時の日本の姿であろう。
あれやこれや「軽く読んでもしっかり読んでも」軽い表現に見えて重く効いてくる
米原万理ワールドです。
お勧めします。


蛇足:
米原万里さんと言えば父米原昶(いたる)氏が共産党の幹部でありテェコのプラハに5年赴任されたのに家族で行を共にされました。そんな事で一言も判らないロシア語の小学校に入学された由。

帰国後苦労され大学・大学院でロシア語を習得。90年代にはエリツイン大統領の同時通訳として名を上げました。
その傍らエッセイや随筆の面でも才能を示しました。
95年には「不実な美女か貞淑な醜女か」で読売文学賞を受賞しました。
爺も一読してからすっかりファンになりました。
残念ですが06年ガンで逝去されたんです。

写真:
地獄の青鬼(白ふんどし)
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