王様の耳はロバの耳

横浜在住の偏屈爺が世の出来事、時折の事件、日々の話、読書や映画等に感想をもらし心の憂さを晴らす場所です

「通貨」を知れば世界が読める を読む

2011-12-06 09:58:22 | 本を読む
PHP社が今年6月に初版の新書です。
著者は同志社大学院教授の浜矩子氏です。
近頃TVでも顔を見る厳しい物言い厳しいお顔の先生です。

さてこの本の帯には「円高円安に一喜一憂するのがバカらしくなる!」との副題があるのでかなり期待して読んだのですが結論は「何だか騙された気分です!」
本人も巻末に「完結感はない」と書いていますから800円は高いですよ。

全体の3分の2を「近代通貨小史」と思って読めばそれなりに面白いのでしょうがね。
ポンドが第二次大戦を機に基軸通貨の地位をドルに譲りそのドルが米国の放漫財政のため71年の「ニクソンショック」で金との兌換を振り切り紙としてのドルを垂れ流す。
従ってと言うかそれにも拘わらずと見るかプラザ合意以降もドル安は止まらず浜先生の見立てによれば「1ドル50円時代」も見通せる。
ではどうすれば良いのか?
それが書いて無いのですよ。
一応信用力ある地域通貨が基礎になり共通通貨を持つ様になるか? との読みも有るようですが「ユーロ」の危機を考えればそれもどうかなと思えます。

大事なのはドルの崩壊の巻き添えを喰わない様に知恵を絞って備える事しかなさそうです。

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「2008年 IMF 占領」を読む

2011-11-27 07:13:07 | 本を読む
今朝27日の報道2001で増大する社会保障費をどうするのか?
その財源との関係で消費税率の引き上げ、年金支給の引き伸ばし等の扱いに着き与党民主党の担当と自民党は林政調会長? み党は江田書記長それに学者2名が参加して結論のでない話をしていた。

さてこの本は:
森本亮氏著 光文社ペーパーバックス 2005年初版 の本ですから中の数字は過去のものです。
例えば国債発行残高が05年度末で682兆円です。
しかしその内容は新鮮にして鮮烈です。
浜爺が感銘した要点を幾つか;
①現在発行残高1000兆円に上る(赤字)国債の発行は昭和46年佐藤内閣の下で福田(赳夫)蔵相により行われた。この国債は償還されたがこの成功が日本の借金漬け財政の出発点でもあった。 浜爺も05年暮のブログでこれに言及しました
②現在の一般会計と特別会計 その他外郭団体の借入金、貸付金そして内部留保などいったい資産と負債が一覧で判るようにするには国家規模で「複式簿記」を導入しなければならない
③そのためには「単式簿記」で良しとしている日本国憲法の改正をする必要がある。
④さらに財政法4条「国の歳入は公債又は借入金以外の歳入を以ってその財源とする」が全く無視されてしまっている。そして国債の償還期間も1年以内から5年対には60年となし崩しに借金体制にした大蔵(今なら財務)官僚の無責任と無定見。
⑤そしてケインズが「貨幣改革論」の中で述べている国家破産の方式
1)債務帳消し型
2)債務所有者に対する資本課税型
3)財政暴力出動型 で戦後はハイパーインフレと新円切り替え(1と3のミックス)
があり今の日本は破産寸前であるとの認識。
⑥そして日本が自己改革出来ないと97年アジア緊急危機時の韓国の様にIMF管理になる。
因みに今の「ギリシャやイタリー」に対するEU中銀やIMの注文がそれを示しています。
さてその結果を見ると日本はどうなるでしょう?
IMF勧告を具体的に上げる。これは2002年2月衆議院の予算委員会でも「ネバダレポート」として明らかにされた。
1)公務員の総数および給料の30%カット。ボーナスは全てカット。
2)公務員の退職金は100%すべてカット。
3)年金は30%カット
4)国債の利払いは5-10年間停止。
5)消費税を15%引き上げて20%へ。
6)課税最低限を年収100万円まで引き下げ。
7)資産税の導入。
8)預金の一律ペイオフの実施。
と言う事になる。
こうなると年金生活者の浜爺は辛い。働き盛りの中年も若者も厳しくなる。

まず国と地方自治体の冗費節減から初めて貰いたいものです。

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大沢在昌 新宿鮫X 「絆回廊」 を読む

2011-08-01 07:56:14 | 本を読む
6月に出たばかりの新刊です。
友人が貸してくれたので早々に読む事が出来ました。

表紙の帯には「5年ぶりの鮫 最新作」とありました。
そう言えば前回の作品から大分間があった気がするし、はてそれがなんだっけ?!
思い出せない。 わははは!
大沢氏もそこは考えて?28ページあたりで「横浜中華街の中華店で鮫島の発砲で射殺事件があった事」に言及する。そうだったよな。これで鮫島と同期の出世頭「香田警視正」が警視庁を辞職した。

この作品でも鮫島は新宿署の生活安全課の刑事で上司には桃井課長がいる。
恋人の晶とも切れないでいるらしい。
今回は「懲役12年を22年掛かって釈放された男」の身元引受人を引き受けた女の独白で始まる」男には息子がいるらしい。
鮫島は売人(薬の)との接触で「警察官を射殺するべく拳銃の入手をはかる大男」の存在を知る。それと平行して「晶」にかかる覚せい剤使用の疑惑。
大男の言葉から新宿の暴力団「松栄会」とのつながり。
そして話は殺人事件を絡ませて複雑な展開をする。

第十話(X)は各人の状況から前作より5年も経っていないような気がします。
違う読み方が出来たら教えてください。

偶然でしょうが第十話の首題の一部は「絆」なんですよね。

新刊書のネタばれはよくありませんからここで止めておきます。

さて読み出したら面白くて途中で止めにくいですから夜更かしの出来る時間を選んで読む事をお勧めします。

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三橋貴明著 「日本のグランドデザイン」を読む

2011-07-13 07:27:57 | 本を読む
三橋貴明(みつはしたかあき)氏は2010年7月の参院選挙に自民党の比例区候補で出馬されましたが落選しました。
まだ40才前後かと思います。
この本は市の図書館に申し込んだ時「順番待ち6位」でしたが手にするまで半年掛かりました。
恐らくこの本は図書館に1冊しかなく借りた方は皆さん限度の2週間以内に返却しない為、中々手に入らなかったと思います。

せっかちな爺はこの本が届くのを待ちかねて三橋氏の「高校生でもわかる日本経済のすごさ」を大手書店の棚で探しました。
幸い上大岡の書店で見つけましたので数回通い「要点を流し読みしました」

その時の感想と「日本のグランドデザイン」は全く同じです。
勿論「高校生の」より詳しいですがね。

氏の説得の論理は:
その1:経済成長の定義として;名目GDPおよび実質GDPが増加する事
その2:GDPとは個人消費+民間投資+政府支出+純輸出(輸出-輸入)と定義した上で(これは別に間違いで無いと思います)
そこで意図的にGDPの伸びを期待するには政府支出を増やさなければいけないのに日本の政府の09年公共投資は1980年の22兆円を下回ると非難します。
さてその根拠は「誰かの支出は別に人の所得」との「絶対原則」を氏のドグマ(確信とか主張の核)として論理を展開してゆきます。

そこで「日本国家のバランスシート」を図表にして掲げます(P33)
これもよく読めば日銀の「資金循環統計」のみを取り上げていて日本国のバランスシート(貸借対照表)でも何でもありません。
そもそも日本国のバランスシートなんかないそうです。
それでもバランスシートを考えるなら:
資産の部(貸方)には現金・預金、売上金、資産や投資が上げられなければいけませんし、負債の部(借方)で借入金、資本金と当期利益(場合によって損失を計上してバランス状態が分かる仕組みなんです。

三橋ドグマは誤りではありませんが誤って使えば落語の「花見酒」と同じで熊さんの所得は八っあんの収入ですが「その取引に原価と経費と利益」が無視されていますから二人は酔っ払って酒が無くなり(酒代の)2文だけが残る事になります。この話はビジネスの仕分けが無視されている所に笑いがあるのですね。

さてかって企業戦士だった浜爺は企業経営分析なんて教習を受けました。
企業の経営状態を分析するには決算書を三期分連続で分析しないとその傾向がわかりません。三橋氏は損益計算書(P/L)に触れません。
これも日本国の損益計算書なんてありません。
しかし政府のP/Lを考えただけで借入金算約1000兆円、年次の利益(税収)が無いので借入金の金利と借り換えそして新たな借入金の計50兆円も借り入れないと回らないのです。
三橋氏は民間金融資金1400兆円を考えてもまだ国債は市場消化可能だと強調するのですがはてどうでしょう?
このたびの東日本大震災の被害を救済する為に政府はどのような財源を用意するのでしょう?
浜爺は氏がバランスシートの一部を取り上げ日本国の「花見酒」論を展開します。
ここで浜爺はこの本を読むのを止めました。
まあ日本のファンダメンタルには良いものがたくさんありますからそれを前向きに取り上げている点は認めますがね。
お疲れ様!

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偽書 「東日流外三郡誌」事件を読む

2011-07-01 08:46:16 | 本を読む
2009年12月新人物文庫発行による斉藤光政著「東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)」を読みました。
東奥日報記者斉藤光政氏が「東日流外三郡誌(つがるそとさんぐんし)」に関わる裁判事件の取材に関わる内に本書の真贋双方の支援者にインタビューを試み真相に迫る過程が詳細に書き込まれています。

青森県五所川原市(青森県の西側の半島)飯詰在住の和田喜三郎氏が「知られざる東日流日下(ひのもと)王国」の中に無断で写真を使われたとして近く訴訟を起こされるとの記事を1992年10月19日に記事にした事で真贋論争が全国的な扱いになりました。
くどくなりますがこの書は「東日流外三郡誌」等を基に編集した本です。

原告はこの方が研究している「猪垣(ししがき)」と呼ぶ近畿地方の石垣の写真が和田氏の「古代に存在した耶馬台城」として紹介された事に怒っていた訳です。

記事の2日後原告は記者会見で「東日流外三郡誌は偽書で専門家による鑑定を望む」と発言しています。
さて5ヵ月後には地元青森古文書研究会がこの書は:
江戸期に成立したと言われながら明治以降に作られた新語が出てくる。
筆写されたのは明治期とされているが字体に戦前から戦中に教育を受けた者の特徴がある。
一連の和田文書には戦後に生産された和紙が使われている。
つまり、発見者とされる和田喜八郎氏の直筆でなされたとしました。

その後斉藤氏の取材は偽書派の「産業能率大教授(当時)安本美典氏」擁護派の昭和薬科大学教授(当時)古田武彦氏の大論争にも関わり図らずも東北の村おこしに寄与した面があります。(偶然にもこの2年後三内丸山遺跡が発掘される)

丁寧な検証が続く中:
昭和22年夏、突然天井を破って落下した古い箱が座敷の真ん中に散らばった
ことから発見されたとする「東日流外三郡誌」の真贋論争は和田喜三郎氏死亡の後、この屋の相続人となった和田氏の父方のいとこ「キヨヱ」氏と立会いの二氏が座敷の天井を破りますが梁は細く屋根との間隔も狭く長持ちや箱に入れ数千部と言われる重量物を入れる空間は無かったそうです。そもそもハツヱ氏によれば47年(昭和22年)には天井も張ってなかったそうで「有りもしない天井を破って落ちてくるなんてはんかくさい」が全てを語っています。
大学やその道の権威とか言われても最初の一歩を誤ると正しい業績まで疑いの目で見られてしまう恐ろしい側面がありますね。
夏のミステリー並みに面白いですよ。お勧めします。
コメント (6)
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