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いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

禁煙のコンプライアンス

2009年03月18日 | たまには意見表明

 3月14日からのダイヤ改正に伴って、東海道線のホームから喫煙所が撤去されて全面禁煙になりました。やや唐突な気がしなくもないですが、一部の喫煙所利用者のマナーが悪く、ずっと離れた階段やエレベーターからスパスパやりながら喫煙所まで歩いて行く人がけっこういたのは事実です。ですから、非喫煙者の権利を守るために他に方法がないと思ったのでしょう。全面禁煙はマナーを守って喫煙所で吸っていた人にはお気の毒ですが、受動喫煙の害を考えればいずれ公共の場は原則禁煙になるのが趨勢ではあります。

 問題は、喫煙所以外でタバコを吹かしていたようなアウトロー的な人たちで、実質的に罰則なしの規則が厳しくなったところで、こうしたコンプライアンスのない人は従ってくれないでしょう。今は警備員の巡回が増えているので見かけませんが、全面禁煙が今後も守られていくかどうかは少々気になります。路上禁煙区域を設定した名古屋駅周辺も、巡回が少なくなった頃から吸殻が目立ち始め、今では気の強そうな人なら平気で吸っています。

 実は病院もタバコでは苦労しています。少し前までは「どうしても我慢できない」という人のために喫煙所を設けていたのですが、「病院機能評価」や「禁煙外来」の導入で喫煙所を廃止せざるを得なくなりました。喫煙所のある病院は機能的に劣ると格付けされてしまうからです。その結果、駐車場や玄関前などで分散して吸われるようになり、敷地内の環境は却って悪化しました。これは火災防止の面からも管理しにくくなるので不都合です。

 確かに病院は病気の治療をする施設ですが、一部喫煙者のコンプライアンスの悪さを考えれば、喫煙所を作ってそれ以外の禁煙を徹底した方がいいようにも思います。これは駅でも同じじゃないでしょうか。

 ただ喫煙所にも見逃せない欠点があります。子連れの喫煙者が、子供を喫煙所に引き込んでしまうことが多いんです。最も守られるべき子供が、集団でモクモクやっている中で最悪の受動喫煙に曝される無残な光景を、空港などで何度も見ています。家庭でも煙を吸わされるのに慣れているのか、普通の子供と変わらず煙の中ではしゃいでいるのを見るとうんざりです。

 以上のケースをまとめてみます。タバコの害から守られるべき対象は、駅のホームや病院、空港などの公共施設にいる非喫煙者、とりわけ子供です。できれば、子供はそれぞれの家庭での受動喫煙からも守りたい。それから隠れタバコにより火災の危険が増大する建物と中の人ですね。これらすべてを完全ではないにしても、現状より少しでも守る手段としては、原点対策すなわちタバコの流通に手をつけるしかないのではないでしょうか。簡単に言えばタバコの値上げです。技術的にはタバコの有害物質を規制して、基準値以下の製品を優遇することも可能ですね。

 JRグループは独自の非喫煙者保護策として全面禁煙を導入したのでしょうが、喫煙所は残したまま政府にタバコ値上げを働きかけた方が実行があるように思います。先日も東海道線で列車のトイレにこもってずっとタバコを吸っている男性がおり、こういう人にコンプライアンスを期待しても効果は期待できないでしょうから。
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名言「ボクは大事だから支援してよ」

2009年03月06日 | たまには意見表明
 2月2日に慶應大学で開催されたシンポジウムで、経済産業省の村上敬亮メディア・コンテンツ課長が、コンテンツ産業の著作権強化の姿勢を強く批判したことに対して、当然ながら業界から反論が出ています。特に同大学(大学院メディアデザイン研究科)の教授で、最も業界寄りの論客(どころかレコード会社の取締役であり業界の一員)である岸博幸さんが、早速「コンテンツへの愛が感じられない」と訴えています。お膝元の大学で業界をこっぴどく叩かれたものですから、相当にテンションが上がっています。

 これを受けて、村上さん本人がCNET Japanのブログで釈明しています。ここで評価できるのは、お役人によくあるごまかしや言い逃れをせず、ご自身の発言をきちんと検証していることです。「勢いで言ってしまった」とか「真意は他にあった」ではなく、シンポジウムの発言がやや乱暴だったことを謝し、岸さんの反論のポイントを押さえながら、言うべきことはきちんと言っています。巧みですね。

 これだけ頭の回転の速い人がシンポジウムで単純な「失言」などするはずがなく、準備万端の上でコンテンツ業界を叩いたものでしょう。コンテンツ産業を振興するのは通商産業省の業務だが、決して利権を貪ることを認めるわけではないぞ、と強い態度で出たものだと思います。わざわざ慶應大学のシンポジウムを選んで言われたことですから、これは岸さんに対する宣戦布告に近い意味があります。岸さんも旧通産省と経産省の元官僚で、このOBとしての立場が彼の発言力を増していたことを考えますと、今回の事件は親元からの勘当に近い感じがあり、岸さんは経産省の主流派から「切られた」と解釈するべきなのかもしれません。もっとも、村上さんの口調は「岸さんには、後輩として、これまでもいろいろな形で本分野について教えてきていただいてきました。」と丁寧ですけど。

 従って、シンポジウムでの発言は本音と見るべきです。曰く「コンテンツ産業が儲かりたいから政府も支援しろと言うだけでは、その辺の兄ちゃんが“ボクは大事だから支援してよ”と言うのと同じ。制作の現場が本気で海外で成功しよう、成長しようと思っているのか極めて疑問。」これ、ユーザーとしては諸手を挙げて賛成ですよ。強いて言えば、制作の現場ではなく流通の現場ないし交渉の現場ですね。著作権を強化しようと活動、交渉している主体はクリエイターではなくレコード会社などの流通側ですから。

 本稿で「関所ビジネスしかできないレコード会社は不要」に記載しましたように、本来は最も優遇されるべきクリエイターの多くは著作権の恩恵を十分に受けていません。録音機材やカッティングマシンなどの設備が極めて高価だった時代にはレコード会社に利益の大半が吸い上げられることにも合理性がありましたけど、今はデジタルレコーダーだってビデオカメラだって(もちろん程度はありますが)個人で何とかなる機材です。もはやコンテンツ流通会社が著作権を取り上げて独占する意味は薄れていますし、あまっさえ著作権を強化して古いコンテンツからも「年金」を貰おうなんて厚かましい!

 村上さんの発言はコンテンツ業界の胡散臭さを簡潔に言い表した名言だと思いますし、私ならこう付け加えたい。著作権強化を画策するコンテンツ業界は、お婆ちゃんの年金に頼って生活しているニート君が、「ボクはお婆ちゃんを愛しているから年金を増額してよ」と言っているようなものです。飯の種を作ってくれるクリエイターを冷遇しておいて、長きに渡り(極端な人は永久に、と主張している)コンテンツから収入を得ようという感覚は「コンテンツへの愛」から最も遠いものだと感じます。

 私は(コンテンツ業界のこじつけとは違い)コンテンツこそ重要だと思っていますので、今回のシンポジウムにおける村上課長の発言を支持するものです。
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ポピュリズムの罠に落ちたラッド首相

2009年02月26日 | たまには意見表明
 日本の調査捕鯨船を公海上で攻撃する過激な「自称環境団体」、シーシェパードについては既に有名かと思います。調査捕鯨の主体である日本鯨類研究所のサイトを見ると、彼らによる危険な妨害行為の記録が満載。

 シーシェパードの本部はアメリカにあり、妨害に使われている船はオランダ船籍です。多分、資金集めにはアメリカが便利であり、妨害活動には日本との関係が深くないオランダが有利なのでしょう。どちらも日本が調査捕鯨をしている南氷洋からは遠く、彼らがオーストラリア近くの公海上で活動できるためにはオーストラリア政府の協力(少なくとも入港黙認)が不可欠でした。

 これまで日本政府(水産庁)は調査捕鯨船に対する同団体の危険行為を問題視し、オーストラリア政府にも取締りを要請してきましたが、オーストラリア政府は「国内で違法行為がない限りシーシェパード船舶が入港するのは自由」と要請をはねつけてきました。これはオーストラリア政府の調査捕鯨に対する見解が背景にあります。オーストラリア政府そのものが調査捕鯨に対するけん制行動をしているのですから。元々オーストラリアでは1970年代に捕鯨を打ち切って以来、捕鯨に反対する人が多いようですが、それでも前政権(ハワード首相)まではここまで強引な反対を見せませんでした。ラッド政権になって、前政権の「IWCで許可された調査捕鯨について賛成はできないが、妨害はしない」という見解が正式に撤回されたのです。

 ラッド首相は中国に親近感を持つ人物で、オーストラリアの重要政治家の中で最も中国寄り、言い換えれば日本から遠いと言われています。首相に就任した最初の外遊で中国を訪問して中国首脳の面子を立て、わざわざ(最大の貿易相手国である)日本を外すという挑発行為に出ています。去年の3月には「首相になる前に中国企業から資金提供」と報道されたこともあり、日本と中国の利害が相反する問題では中国の利益を重視すると見られています。

 首相に就任した後も、中長期的に「日本から離れて、中国に近づこう」と意図しているようです。この件については一般のオーストラリア人の意思があるわけではなく、日本との関係が深い産業界はむしろ反対でしょう。この意図を隠蔽して日本との距離を開けるために、一国の首相として不自然なほど調査捕鯨に反発して見せたのだと思います。こうしたポピュリズム的な政策が平均的なオーストラリア人にはかなり受け入れられたのか、ここまで日本とオーストラリアの市民感情を反目させることに「成功」しているのは、「美味しんぼ」の作者でオーストラリア在住の雁屋哲さんのブログからもうかがわれます。

 最初は鯨を食肉と捉える日本人と、ペットみたいなものと考えるオーストラリア人の行き違いに過ぎなかったものが、オーストラリア政府が哨戒用の飛行機まで出して準戦時体制みたいな大げさな対応をしたのがきっかけに、オーストラリアに根強く残る有色人種差別や先住民族迫害まで話が広がり、民族的な対立まで起こり始めているのは憂慮すべきことです。ラッド首相から見れば予期した以上の成功かもしれないですけどね。

 ところが、このオーストラリア政府がここにきて急に態度を変化させ、2月21日に警察がシーシェパードの妨害船「スティーブ・アーウィン」の強制捜索に乗り出し、証拠物件が押収されたと報道されました。この背景について、毎日新聞が(簡単すぎる)記事を載せています(引用魚拓)。

 シーシェパードは捕鯨以外にも妨害行為を世界で繰り広げており、それがエスカレートするのにつれて、国際的には相当の非難が寄せられています。カナダではアザラシ漁のカナダ人にカナダ領海内で接近して危険な妨害行為をしたため2人の構成員が逮捕され、カナダのハーン漁業相は"There sole aim is to suck as much money out of people who don't know what is going on."つまりシーシェパードは何も知らない人から(環境保護を隠れ蓑に)金を巻き上げるだけだ、と口を極めて非難しています。利害のないネット上では、あまたある自称環境団体がハーンさんを攻撃していますが、それは当事者でないから言えること。国民に重大な被害が出るのを黙って見ている大臣がいるはずもなく、カナダの措置は正しいと言えましょう。

 つまり、反捕鯨の国民感情を政治的に利用しようとしたラッド首相の予想を越えて、シーシェパードの妨害活動や国内の反捕鯨活動が先鋭化して、このままでは運動を焚きつけたオーストラリア政府の責任が明確になってしまう危険が生じたのではないでしょうか。少なくとも、日本国内で(一部とは言え)オーストラリア製品の不買やオーストラリア旅行自粛の動きが出てきたのは意図せざる結果に違いありません。

 鯨を食肉と見るか、ペットと見るかは個人の主義の問題であり、意見の違う人に反対するのは自由ですが、意見が違うから危険な目に逢わせてやれ、という過激思想は許されないことです。日本人にも捕鯨に反対する人はいくらでもいますが、だからと言ってシーシェパードの危険な妨害やオーストラリアのシーシェパード援護を正当化する人はほとんどいないでしょう。

 ラッド政権下で、2008年にオーストラリアを訪れた海外の観光客はこの20年間で最少でした。主な理由は景気の後退でしょうが、観光が重要な収入源であるオーストラリアにとって、日本人観光客(消費向性が高いと言われている)を減らしかねないラッド首相の火遊びが、そろそろ悪い影響を及ぼし始めています。今回のやや唐突な方針転換は、ポピュリズムで政権運営を狙った軽薄な首相が、やっと現実を見て日本とオーストラリアの関係修復に出たことと解釈し、とりあえずは歓迎の意を表しておきます。
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地上デジタル支援金は「バイ・ジャパニーズ」か

2009年02月18日 | たまには意見表明
 NIKKEI NETによれば(記事引用の魚拓)、自民党は景気刺激策として地上デジタル受信機(主力は地デジテレビと思われる)を購入する世帯に支援金を配布することを検討しているようです。

 今年になって初めての地上デジタル普及率調べで、目標を大きく下回る50%未満の数値に危機感を抱いてのことでしょうが、この「地上デジタル支援金」の効果は巨額(まだ地上デジタル機器を買っていない約2,500万世帯に2万円ずつ配布すると5,000億円!)の財政出動に見合うものでしょうか?いや、そもそも実現可能でしょうか?

 2月4日の衆院予算委員会で麻生首相はアメリカの景気対策法案に「バイ・アメリカン条項」が含まれていることを「WTOの原則に反している」と批判したばかりです。17日のクリントン国務長官との会談でも、「世界1位と2位の経済大国としての責任」が強調されたはず。底の知れない不況を1日でも早く脱するために、世界中が痛みを分かち合って保護主義と対決しようというこの時に、こんな「バイ・ジャパニーズ」政策を打ち出したりしたら、日本政府は世界の信用を失います。

 「テレビを買うことがどうしてバイ・ジャパニーズなのか?」という言い訳はアメリカに通じません。地上デジタルの基本仕様である暗号化とB-CAS社による認証システムは、日本の「官民複合パラダイス」にたてつく外部勢力を徹底して排除する非関税障壁だからです。地上デジタル受信機を日本で合法的に売ろうと思ったら、利権を持つ日本の電器メーカーや放送局のフロント企業であるB-CAS社の認証を受けて、B-CASカードを発行してもらわない限り不可能なのです。

 この競争阻害システムにより、安価な受信機を世界で販売しているアジアの企業は日本市場に本格参入できません。デジタルテレビを安価にパソコンに組み込みたいDELLやマイクロソフトも、日本では高くて使い勝手の悪い日本仕様に合わせざるを得ません。「地上デジタル支援金」が支出されたところで、消費者は世界に流通している安価な製品を買うことができないのです。

 アメリカのテレビ受信機メーカーは日本との競争に敗れて長らく壊滅状態だったのですが、最近はファブレス企業であるVIZIOが台湾企業の協力により安価な液晶テレビで北米のシェアを確保しており、日本への進出をうかがっています。日本のテレビ市場から不公正なやり方で同社を排除すれば、恐ろしい結果が待っていると考えるべきです。この点から国内メーカー限定の「地上デジタル支援金」など不可能ではないでしょうか。

 仮に「地上デジタル支援金」が可能だとして、その経済効果についても疑問があります。日本でデジタルテレビを作って売っているメーカーは何社あるでしょう?パナソニック、ソニー、シャープ、東芝、三菱、日立、ビクター、三洋、ナナオ、飯山、DXアンテナ、(パイオニア)、…。とにかく多過ぎるんです。

 かつて日本が世界に誇る基幹産業だった家電は、今や生産性の極めて低い構造不況業種です。理由は、どこも同じような物を作っていて競争力がないから。日本のメーカーが束になってもメモリではサムソンに勝てず、携帯電話ではノキアに勝てず、ミュージックプレイヤーではアップルに勝てず、という非効率を続けています。

 この業界を再編して世界で戦える体質に作り直すのが先決であって、斜陽産業にそのまま補助金を投入したところで(アメリカの自動車メーカーみたいに)ひとときの延命措置になるだけです。B-CASのような非関税障壁に守ってもらおうという家電業界のもたれ合い体質を排するためにも、デジタルテレビの市場は海外に広く開かれたものでなければいけません。

 ここまで地上デジタル受信世帯が伸び悩んできたのは、日本の消費者はデジタル放送の恩恵を正しく享受することができないため、高額の支出を伴ってまでデジタルに切り替える世帯が少なかっただけのことで、解決すべきより大きな問題はテレビの値段ではなく「テレビ放送のあり方」です。的外れの支援金政策に反対します。
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地上デジタルあの手この手

2009年01月09日 | たまには意見表明
 2011年7月24日をもってアナログテレビ放送が終了することが決定されて以来、政府関係者や放送業界から期日の見直しに言及されたことはありませんでしたが、ケーブルテレビに限って旧来のアナログテレビでも受信できるように緩和するらしいです。

 元々、VHFに比べて電波の直進性が強く、送信局のカバーエリアが障害物に影響されて狭くなりがちなUHF帯を使う地上デジタルでは、山間部などに受信困難な地域が残る傾向があり、だからと言って地上送信局を際限なく増やすことはコストを考えれば不可能です。このため総務省もケーブルテレビ業者に安価な地上デジタル放送の再送信サービスを要請していました。ケーブルテレビの多くは地上デジタルの再送信を既に行っているのですが、他のチャンネルとの抱き合わせなどで料金が高止まりしており、年金生活者などに配慮して、地上デジタルだけは安く契約できるようにしたものと思われます。

 地上デジタルだけを契約された場合、単価が低いため短期の契約ではあまりケーブルテレビ業者の収入になりません。これを埋め合わせるため、アナログテレビのまま数年間はケーブルテレビで地上デジタル放送を視聴できるようにはからったものでしょう。アナログでの再送信ですから、画質は旧来のテレビ放送と同等。電波でのアナログ放送がまだ終わっていない現時点では、同じ放送内容に追い金をしてケーブルで見たい人もいないでしょうが、いよいよアナログ放送終了が近づけば、機械に弱い高齢者などが検討してくれるかもしれません。

 しかし、これだけで地上デジタルの視聴可能エリアを大幅に拡大することは不可能ですし、これに乗った人も、暫定措置なので結局はデジタルテレビの購入とアンテナ工事が必要になります。ケーブルテレビは受像機1台ごとの契約なので、現在は当たり前の複数テレビ利用者では料金がかなり高くなるという問題もあります。所詮はその場凌ぎの政策で、これで地上デジタルが大幅に普及するわけもありません。

 地上送信局を補完する効果を考えるなら、ケーブルテレビ以上に普及したインターネットの方がコスト面で遙かに有利なのは自明ではありませんか。総務省も放送局もかなり焦っているようなので、今年は大きな動きがありそうです。ようやく視聴者の多くが納得できるような地上デジタルが見えてくるのでしょうか?
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電球型蛍光灯の品質管理を

2008年12月10日 | たまには意見表明

 我が家では極楽に引っ越して以来、できるだけ白熱電球を電球型蛍光灯に置き換える方向で消費電力の削減につなげようとしているのですが、どうも電球型蛍光灯はよく切れるように思います。特に15年前のシャンデリアを使っている時は連続して高価な電球型蛍光灯が故障し、器具の老朽化が原因と見て2月にこのファン付き器具に交換したばかりでした。それでもご覧のように切れてしまったわけです。

 消費電力は蛍光灯なので減っているのでしょうが、値段が1桁も高い電球型蛍光灯が、白熱電球以下の寿命ではたまりません。電球メーカーは環境対策商品として電球型蛍光灯を盛んに売り込んでいるようですが、もう少し品質管理をきちんとして頂きたいものです。
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「中の人」は繋がっているか(Friio計画完了)?

2008年10月09日 | たまには意見表明
 何かと話題のコピーガード無視デジタルチューナー、Friioが値引き販売だそうです。「一周年記念」だそうですが、そもそも長く売れるものじゃないことは「中の人」(台湾の製造販売関係者)も承知でしょう。そろそろ潮時と判断して在庫を消化しようとしているのか、いや、「もう引き上げろ」という指示が出たのかもしれないな、と私は思っています。

 どこからの指示って?日本の放送あるいは電器業界の「中の人」です。この1年間、Friioのお手並みはあまりに鮮やかでした。地上デジタルのコピーワンス(実際にはムーブのみのコピーネバー)を機器メーカーに守らせるため、公共放送であるNHKや無料の民放まで暗号化して、放送局団体の傀儡(かいらい)であるB-CAS社が認めた製品にしか暗号解読カードを発行しないという電波利権温存の仕組みの間隙を突いて、コピーフリー録画を可能にした製品企画はお見事でした。

 このインパクトは販売された台数以上に大きく、放送業界べったりの電波行政に風穴を開けて、地上デジタルで温存いや拡大されるはずの巨大な利権の足元を揺るがせた功績はとても大きなものです。Friioなくしては電波行政や放送業界へのネットの批判も十分な力がなく、日本のテレビ放送は誰のためにもならない「アンチコモンズ」の呪縛を解くこと叶わず衰退していくはずだったのです。

 Friioという誰でも買える製品がコピーワンスやダビング10を軽々と掻い潜って見せることによって、情報通信審議会(特にデジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会、通称デジコン委員会)でも消費者代表や権利者代表からB-CASシステムへの不信が提示され、ついに抜本的な見直しが始まろうとしています。わかりやすく言えば、地上デジタルにおけるB-CASの廃止です。この辺は公表された資料だけでは確信が持てないのですが、NHKなどに人脈を持つ池田信夫上武大学教授が廃止を明言されていますので、決まったことだと思います。「一次情報がある」とのことですので、総務省やNHKの幹部から直接聞かれたのでしょう。

 そして、今度はFriioの見事な撤退(私の予想が当たっていれば)です。Friioが登場した時から囁かれていた疑問が蒸し返されるのは当然でしょう。日本の放送あるいは電器業界の中枢から、台湾に援助がなされているのではないか?つまり、FriioはB-CASを崩そうとしている日本の関係者のフロント企業なのではないか?ということです。

 台湾のFriio製造販売元は、日本の放送システムの変遷に速やかに追随し、安価なチューナーを投入し、ソフトウェアのアップデートも怠りませんでした。またほぼ日本独特の巨大匿名掲示板をマーケティングの武器として使いこなし、日本の行政にも法律の抜け道にも詳しい彼らが、日本に拠点を持たないと考える方が不自然です。最後も「そろそろB-CAS廃止になるから、在庫処分しとけよ」と指示が入ったのでしょう。あまりにがんじがらめのアンチコモンズ状態になってしまったB-CAS(ひいては著作権行政)を打開しない限り、日本でデジタル機器は売れないぞ、と先を見た人が放送あるいは電器業界にいたとしても不思議はありません。こうした日本側の「中の人」が台湾の「中の人」と共同で開発したのがFriioという爆弾だったのではないでしょうか。

 Friioの販売は何回かに分けられており、各回数千台(の下の方)だったようです。従って総数でも数万台(の下の方)と推定され、世界の他の市場では必要とされない特殊な商品であることから、大規模な開発体制を整えて利益が出せるようなものではないはずです。一流のエンジニアと生産工場があれば、もっと汎用性のあるチューナーを作って世界市場を狙った方がビジネスとして成功するでしょう。「赤字でも構わないから、日本にある程度の台数のFriioを普及させる必要があった」と思えないでしょうか?構造としては単純なのに、一向に量産体制に入らなかったのも、「中の人」がB-CASの終焉を予見していたように思われます。

 時間は掛かったかもしれませんが、B-CAS廃止は「中の人」のシナリオ通りだったことになります。彼らはネット上の世論を味方に付け、ネットから情報を得て、ネットでマーケティングをすることでシナリオを成功に導きました。

 こうなると、利権や既得権を守ろうと必死に動いていた放送局や文化庁なんて、お釈迦様の掌で暴れて見せた孫悟空のように空しいものです。いくら詭弁を連ね、声を荒げ、番組や記事にならないように事実上の報道管制までしたところで、いい加減なマスコミすら打ち負かすようになったネットの力に敗北した、ということじゃないでしょうか。まだ悪あがきしている人もいるようですが、ネットが特別なものではなく、ごく普通のメディアになったこともわからないようでは、同じ失敗を何度でも繰り返すだけでしょう。
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導入できるかフェアユース規定

2008年10月03日 | たまには意見表明
 法律や規則というのはそもそも「べからず集」であって、これはならぬ、あれはならぬと決めておくのが本質だと思いますが、逆にある行為を許容する場合に、決め方がいくつかあります。

 まず原則禁止としておいて、「これこれこのような場合は除く」「これとこれの場合も除く」と細かい要件を具体的に決めておく方法。例えば日本の著作権法における私的使用はこれにあたります。

 これと根本的に異なる考え方が、「このような場合は構わない」と許容の範囲を広く設定し、不都合がなければ原則許容に近い管理をする方法。著作権におけるフェアユースの概念がこれにあたると言われます。著作権者に対して金銭的に償うべき被害が発生しない限りは、安易な著作権の行使を抑制する立場だと言えます。

 現行の著作権法は「まず規制しておいて、規制がそぐわないものだけ許可する」という前者の考え方なので、既得権や政治力を持つ著作権者に圧倒的に有利な条件になり、今まで規定されていなかった新しいスタイルの著作物利用に対しては抑制的に働くという弊害が目立つようになってきました。よく例に挙げられるのが、著作権法を厳密に解釈することでGoogleのような検索サービスが違法になるため、日本国内に検索サーバーを置けないという不合理です。

 こんなの誰が考えたっておかしいでしょう。今や情報は食料やエネルギーと並ぶ生活必需品なんです。それに対して著作権なんてのは一種の財産権(この他に著作人格権がありますが、直接の著作者じゃない著作権者には関係ないことです)に過ぎない。生存権より著作権が優越するなんて考えられないことです。国民が健康で文化的な生活をする権利を行使する目的で必要な情報を入手するためには、その障害となる著作権濫用があれば断固として排除されるべきです。政府が著作権の早期改正に向けて知的財産戦略本部を立ち上げ、総理大臣自ら本部長となり、また著作権法の第一人者たる中山信弘元東大教授を擁して議論を重ね、ネット時代に著作を促進しかつ著作物を最大限に利用するべく尽力しているのは当然のことです。

 現行著作権法の下では映画会社や放送局などの古いメディアの独占的な権益に反するものは原則禁止になっているから、新しいビジネスがなかなか成長しない、とは最早言い古されたことです。その一方で実際に創作するクリエイターにきちんと利益が還元されているかどうかは不確実で、ごく一部のスター著作者が大いに潤う反面、劣悪な労働条件の下でテレビ番組を制作する下請け会社の窮状も知られるところとなりました。著作権法が消費者に不自由なほどの制約を課するマイナス面に対して、創作を促進するプラス面が十分ではなく、著作権を買い叩く流通業者だけが経済的利益を独占しているのを見れば、この法律が本当に我が国を利するものなのかどうか考えさせられます。改正が急がれるのは当然ではないですか。

 然るに今回はJASRACなどの権利者団体が内閣官房知的財産戦略本部に要望書を提出し、権利者の意見を反映させるように求めたということです。それによれば「かかる法制化により大きな影響を受ける権利者を代表する立場の者が構成員として参加していない」とのことですが、事実はどうでしょうか?

 知的財産戦略推進事務局のサイトによれば、8月2日の時点で有識者10人の中には角川グループの角川歴彦さんや漫画家の里中満智子さんが入っており、バランスを崩さずにこれ以上権利者側の構成員を増やすのは無理でしょう。またもなりふり構わない権利者のごり押しと見られても仕方がありません。むしろ、消費者の代表がなぜ入っていないのかが大いに疑問です。

 解決の糸口が全く見えなくなった地上デジタルの録画問題にしても、フェアユースたる家庭内のタイムシフト視聴に対してさえ「著作権の侵害」として実体のない被害に基づいて対価を要求する権利者の論理に無理があるのは明白です。このままでは著作権の濫用が消費者の反発を買い、逆に著作権者であるテレビ局の経営を窮地に追い込むとさえ予測されている現状は不毛としか言いようがありません。このように誰も得をしない現行の著作権体系は社会の変化の前で有害無益な遺物になりつつあると判じられ、フェアユース規定の導入による構造改革が不可避であると考えます。政府と中山先生には不当な利権の切り崩しに尽力して頂きたいところです。
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B-CAS見直しにおける阿吽(あうん)の呼吸

2008年07月09日 | たまには意見表明
 日本市場から海外メーカーの受信機器を締め出すための謎の審査会社、ほとんどすべての録画機ユーザーの怨嗟の的であるB-CAS社会社法違反が発覚しました。

 GIGAZINEが取材しているように、NHKの近くに形だけのオフィスを構えるB-CAS社は、とても4000万枚以上のB-CASカードを審査して発行するだけの実体がなく、総務省(の中の旧郵政省でしょう)のお墨付きの下で、業界団体であるARIBの会員にだけ地上デジタル受信機の製造販売を(形の上では)認可してきたペーパーカンパニーで、普及価格帯の製品を得意とする韓国や台湾メーカーに対する不当な非関税障壁として市場を歪めてきたメーカー談合のシンボルです。出資者は受信機メーカー各社と放送局であり、社長がNHK出身者であることからもわかるように、とりわけNHKの影響が強く見られます。NHKはB-CASシステムを料金の徴収に使いたいのでしょうね。

 そんなことは一般視聴者の私が書くより、元NHKディレクターの池田信夫さんのブログが最も的確な説明をしてくれています。私が気になったのは、「なぜこのタイミングで不祥事が露見したか」ということです。B-CASによる(世界でも唯一の!)一般放送の暗号化が不便と高コストを招き、地上デジタル普及の最大の障害になっていることは隠しようがなくなったため、総務省の情報通信審議会でも流れはB-CAS廃止に動き出したようです。そもそもB-CAS社は政府の機関ではないため、政府の審議会で廃止を討論するなどおかしなことなのですが、民間企業であるB-CAS社が総務省(とNHK)の意向に沿って業界を保護してきたのは明らかです。

 しかしこんな利権体質のためにデジタル放送の録画はアナログ放送に比べて不便になり、デジタル対応受信機もコストダウンが進まない中で視聴者の金銭負担が強要されるため、かなりの数の視聴者が離反してしまいました。具体的には、多くの世帯がデジタル対応機器の導入を見送っており、2011年7月に間に合わないだろうということが統計からうかがわれます。テレビの普及台数は全国で1億2000万台とか言われていますので、地上デジタルの台数が3500万台を越えた、というのは決して順調とは言えないわけです。年間のテレビ販売台数は800万台から900万台。この調子で3年後にアナログ放送を打ち切ってしまえば、取り残された数千万台のテレビが単なるゴミになるのですから。

 事がここに至っては、法律で決められた期日を遵守してアナログ放送を終了したければ、(多少の利権を諦めるとしても)視聴者の非難が集まっているB-CASを廃止せざるを得ず、最早B-CASは総務省のお荷物である、という省内での認識の変化があって、この会社法違反が「発覚」したのではないでしょうか。不祥事を理由に会社を解散すれば、B-CAS社に関わる総務省やNHKなどの責任が表ざたになりませんから、詰め腹を切らされる浦崎社長以外は傷つかずに済むんでしょう。

 元々、メディアの寡占が進んでいる日本では新聞と放送局が系列化しており、大新聞は系列放送局を憚(はばか)ってB-CASやコピーワンスの批判をほとんどしませんでした。今回は朝日新聞がわざわざB-CAS社の不祥事を大きく載せたあたり、そろそろ関係者の呼吸が合ってきたのかなとも思わせます。

 そのような阿吽の呼吸があるとすれば、後は、既にB-CAS対応のデジタル受信機を買ってしまった視聴者に対してどう説明するかですね。「技術の進歩でB-CASカードの内容を受信機に組み込むことができるようになった」などと言うのでしょうか?いずれにしてもこのような混乱を見せられれば、視聴者はデジタル受信環境への投資に一層慎重になることは明らかであり、(本当に地上デジタルの普及が必要なら)早急に有効な対策が取られるべきです。
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消費者が見たダビング10(あるいは情報通信審議会)

2008年06月25日 | たまには意見表明
 予想に反してダビング10の導入日が政治決着されたようですが、そもそもダビング10は消費者が望んだものではなく、不便極まりないコピーワンスの実質的な緩和になっていないという重要な点を、消費者代表として情報通信審議会に入っている高橋伸子委員が指摘しています。

 コピーワンスの緩和策としてダビング10で(権利者主導の)折り合いがついた時、高橋さんが「本当にいいまとめができたのではないか」などとコメントしているのを見て、私は「高橋伸子は消費者代表ではない」と批判した覚えがあります。しかし今回の働きぶりはまさに多くの消費者を代弁するものと思われ、以前の批判を撤回する必要を感じています。

 それにしても高橋さんのこの態度の変化はどういうことなんでしょう。政府の審議会などというものは結論が予めほぼ決まっていて、その結論を導くための「言い訳」として委員を集めるものだ、などと揶揄されるように、審議会の行方を左右しかねないほどの高橋さんの厳しい論調を総務省が予想していたとは考えにくいのです。高橋さんの経歴をネットで検索してみても、録画や録音、放送、ネット関係の仕事をしていた記録はないし、画像音響機器やデジタル機器のヘビーユーザーでもなさそうです。録画規制に大きな利害がない人ですから、総務省や権利者にとっては、「あるべき結論」に大きく背かない、「使いやすい」消費者代表として採用されたのではないでしょうか。

 あくまでも推測ですが、高橋さんが消費者としての感覚を多くの国民と共有しているのであれば、この審議会のあり方そのものが許容できなくなった可能性は十分にあります。権利者団体の度重なる理解不能な主張を押し付けられて、さすがにこれはおかしい、と感じられたのではないでしょうか。元々、金融商品のアドバイザーとして活躍しておられた人なので、消費者が負担するコストについては厳しい目をお持ちなのでしょう。客観性に乏しい「コピーによる被害」や「リスペクト」などという曖昧な権利者団体の言い分を拒絶されたことは想像に難くありません。

 本当の背景がどうだったのかはわかりませんが、私はこれで初めて同審議会に消費者代表を得た思いがします。今まで、実質的な消費者代表(つまり録画、コピー規制に大きな利害を持つユーザー層)が委員にいないのをいいことに、権利者団体が「権利者こそ消費者の代弁者だからメーカーは譲歩を」という荒唐無稽なレトリックを弄していたのですが、この詭弁が通用しなくなるからです。だいたい、ネットで少し検索してみれば、多くの消費者が権利者団体をどう思っているかは明らかだし、MIAUというれっきとしたユーザー団体もできたので、総務省さえその気なら消費者の意見はすぐにわかるんですけどね。

 ともかく、メーカー団体が「補償金は無制限コピーによる損害を補償するもの」と真っ当な主張をしているのに対して、権利者団体が「補償金は家庭内コピーによる損害を補償するもの」としているのは論理破綻もいいところです。家庭内のコピーは私的利用の範囲内として昔から認められてきたものであり、LPレコード時代からずっと一般に容認されてきたものだからです。

 LPレコードをカセットテープ(もちろん当時はアナログ)にコピーして、ウォークマンで聴くのは誰でもやっていたこと。消費者はその利便性も含めてLPレコードの代金(もしくはレンタル料)を支払っていたので、損害などどこにもありません。LPがDVDやブルーレイやインターネットになり、ウォークマンがiPodや携帯になっただけのことで、本質的に何か違いがあるでしょうか?

 もし私的コピーが制限されればコンテンツが余分に売れる、と目論むのは独善もいいところで、今時レコード会社が株主総会で「コピーコントロールの徹底で売り上げ倍増を図り…」などとやれば株主席から生卵が飛んでくるでしょう。私的コピーの制限が売り上げ増に繋がらないばかりか、ユーザーの反発を招くのはCCCDで証明済みです。

 デジタル時代になって問題があるとすれば、無劣化コピーがいくらでも製造できてしまうことですが、そんなこと普通のユーザーはやりません。常識のある消費者なら私的利用を大きく越えたコピーがクリエイターを困窮させることはわかっています。だから本だって大っぴらにコピーする人はいないでしょう。たまにコミックを取り込んでネットに上げている人がいますけど、それは明らかな犯罪者ですから、個別に処罰すればいいだけのことです。

 そもそも、スキルのある犯罪者にとって、DRMなどほとんど役に立たないことはわかっているし、地上デジタル放送については「DRM無視チューナー(フリーオ)」が合法的に販売されているのですから、犯罪者にとってはコピーワンスだろうがダビング10だろうがコピーフリーだろうが変わりません。むしろ、スキルのない一般消費者が不便な状況でこそ違法コピーが儲けになると想像しますが、違いますか?少なくともメーカー団体が希望しているEPNまで緩和すれば、フリーオは潰れると思います。

 無料の地上放送に対する暗号化とコピーガードは、悪名高い禁酒法を連想するほどメリットのない制度(業界の自主規制だが実質は法律に近い)です。多くの消費者がその必要性とコストを理解できないまま、ごく一部の利害だけで消費者に負担を強要するものですから、あちこちに抜け道ができて制度が空洞化し、その裏で制度から抜けた者やアウトローだけが得をする、という救いようのない仕組みができています。文化庁や権利者が騒げば騒ぐほどフリーオが売れるし、ネットで違法コピーを買う人も増えるし、中国の画像サーバーに手を伸ばす人も出てくるという始末で、もはやダビング10などではどうしようもないことが理解できます。

 このままでは膠着状態が続くだけで誰も得をしないので、何かきっかけを掴んでリセットするべきです。例えば消費者庁の旗揚げとしてこの問題に切り込んで見せればいいアピールになるのではないでしょうか。漏れ聞く情報では食品表示などが消費者庁の主な業務になるようですが、そんな保健所でできるようなことを省庁がやらなくても、もっと消費者主体の行政が期待される分野はいくつもあります。著作権行政を文化庁から移管して、文化庁はまた元の神社仏閣の保存業務に邁進して頂けばいいと思います。
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本当に「ちゃぶ台返し」が必要なのかも

2008年06月10日 | たまには意見表明
 機器メーカーと著作権利者の綱引きに総務省、文化庁、経産省の利害(なぜか視聴者と小売業者の名前は出て来ない)が絡んで、どうにも動きの取れなくなったダビング10問題について、また小寺さんのわかりやすいコメントが出ています。今となっては、地上波は何もしないでアナログのまま放送を続けていた方が誰にとっても得だったということです。

 こうして分析してみるとわかるのが、今更ながら「ダビング10などいらない」「地上デジタルなどいらない」ということです。業界団体と監督官庁の思惑だけで、採算も合理性も無視して突っ走った結果が今の混乱の元凶なのであって、中村伊知哉教授が「もはや官の問題」とか、権利者団体を代弁する岸博幸氏が「経産省は何をしているのか」と反応しているのは、またも利用者軽視のボタンの掛け違えを繰り返すだけに思われます。今度こそ利用者(つまり納税者)の意見を入れないでどうするんでしょう?

 茶の間のブラウン管テレビを大事に使っている高齢者や、ベッドサイドで小型のテレビを見ている人、パソコンの画面に小さくテレビを出している人、入院先の病院でテレビを借りている患者さんなどにとっては、大画面でしかわからない画質向上なんてどうでもいいことです。かと言って、大画面の薄型テレビやレコーダーを買った人には強力なコピーガード(DRM)が使い勝手を悪くしており、どの層の利用者にもたいしてメリットのないシステムに膨大な国費が投入され、それが市場経済の流れをせき止める人たちの「利権」を生み出している不透明さにはうんざりします。

 省庁間の利害の調整なんて簡単にできるはずはないので、増田総務大臣が言っているような「北京オリンピック前の決着」はかなり難しいでしょう。そもそも、オリンピック直前にダビング10に移行したところで、多くの利用者や販売店は対応できません。少なくとも機器メーカーはそう思っているから、この「北京需要」を見送ってでも権利者や文化庁と対決する姿勢を明らかにしたのだと思います。

 利用者としては、唯一の代弁者として機能している機器メーカー団体を支持する以外に選択肢がありません。「泣く子と地頭には勝てない」式の安易な決着で手を打ってしまえば、いずれは権利団体の政治力が突出して強くなり、ドイツのように「モバイル機器1GBにつき1ユーロ」などという高額の補償金が現実のものになります。

 それでなくても国民の財産である電波は放送局に二束三文で独占され、空いたバンドで携帯電話を「使わせて頂く」のに別途高額費用を支払わないといけないなど、利用者は馬鹿にされ切っています。「アナログでコピーができるのなら、デジタルでもコピーを。アナログで編集できるのなら、デジタルでも編集を。」コピーや編集が大幅に緩和されるなら補償金も必要と思いますが、それでも金額の算定に実証的な根拠を示すべきです

 権利者団体はメーカー団体の補償金への不同意を「ちゃぶ台返し」と称していますが、本当にちゃぶ台をひっくり返してリセットしないといけないのは瑣末な出城であるダビング10ではなく、本丸である地上デジタルです。現状の普及速度では2011年のアナログ放送停止に間に合うはずがなく、ずるずるとアナログ放送を延長するしか手の打ちようがなくなってきています。それでなくても収益の悪化しているテレビ局にデジタル・アナログの同時放送は大変な負担になるはずであり、本気で普及させるならダビング10のような弥縫策(びほうさく)ではなく、根本的に戦略を改める必要があります。
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ダビング10など欲しくないが

2008年05月30日 | たまには意見表明
 地上デジタルにおける新しいコピー制限方式(DRM)、「ダビング10」の実施が暗礁に乗り上げたそうで、コピーワンスからわずかばかりの利用緩和さえ難色を示してきた著作権者の皆様にとってはご同慶の至りであります。ダビング10を潰して、それを「要求を全部呑まない機器メーカーのせい」と声高に叫んでおけば、本気にする愚民も少なくないでしょう。この世は所詮、声の大きい者の勝ちなのですから。

 私は消費者として、編集とメディア継承に大きな制約のあるダビング10なんか有難くも何ともありませんので、ダビング10が永久に棚上げになったところで構いません。しかし、権利者の主張にある明らかな事実誤認は訂正しておかないといけませんね。こんな不自由なDRMの掛かった状態で必要となる「補償金」とは何を補償するのでしょう?

 NTTドコモの設立した「モバイル社会研究所」というのがありまして、一線の学者との共同研究でモバイルビジネスに関する社会研究の結果を発表しています。その中で慶應義塾大学経済学部の田中辰雄助教授が、PtoPによる音楽ダウンロードの増加がCD販売に与える影響を調べています。

 それによれば、「現状の音楽ダウンロードによって全体としてはCD販売がわずかながら増加している」ことが示され、また詳しく見ると「著作権者の利益を損なうダウンロードは全体のせいぜい4割であり、ダウンロードすべてを被害額と算定するのは誤りである」というデータが出ます。画像については実証研究中だと推察しますが、恐らく同じような結果が出ると思います。

 著作権者の側はこれに対抗できる実証結果を持っておらず、ダウンロードはすべて損害であり補償されるべきだ、という前提で補償金を要求しているわけです。補償すべき被害額に根拠が乏しく、単なる「カネよこせ運動」と変わらないじゃありませんか。こんな被害感情とどんぶり勘定で出された要求を消費者や機器メーカーが呑むいわれはありません。

 実際のところ、機器メーカーの団体であるJEITAのアンケートでは、8割近い消費者が「地上デジタルの補償金は不要」と回答しているのです。しかも大多数の人が、「録画し損なってもわざわざ金を払って買う気はない」と回答しています。「地上デジタルのDRMを緩和すると、違法コピーがネット上で取引されて大きな損害が出る」という著作権者の今までの主張は根拠が薄い(と多くの消費者は感じている)ことになります。つまり権利者側の主張は理不尽でしかありません。補償して欲しいんじゃなくて、誰のカネでもいいから欲しい、というのが本音でしょう。もとより根拠のない要求ですから留まるところを知りません。

 ここで譲歩すれば、いずれは(今回は見送りとなったが)パソコンと周辺機器への課金やインターネット回線への課金が浮上することは明らかであり、著作権ビジネスを太らせることにより巨大な「著作権トロル」を生み出してしまうことになります。こうなると輸出産業である電器メーカーのみならず、一般消費者や利権を持たない一般のクリエイター、コンテンツ企業、ネット企業も少なくない打撃を受けることになり、とてつもない経済的、文化的損失が発生するでしょう。機器メーカーは消費者の代弁者として、DRMの実質的な緩和を勝ち取るまで譲るべきではありません。
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まだあったのか四国新幹線計画

2008年05月23日 | たまには意見表明
http://www.ehime-np.co.jp/rensai/shasetsu/ren017200805235368.htmlの魚拓
 国土交通省が四国新幹線調査のために毎年計上していた予算を打ち切るというニュースがありました。正直、「まだ造る気だったの?」という感想です。歴史に残る馬鹿査定である整備新幹線の中でも、とりわけ採算面で苦しい四国新幹線が、このご時世で数兆円を投じて建設される可能性はほとんどなく、現地事務所を維持するだけのために地質調査費を支出し続けていたのでしょう。

 計画によれば、大阪から淡路まで海底トンネル、淡路から徳島まで連絡橋、四国山地を抜ける大規模なトンネルだらけの新幹線を整備して、大分まではまた長大な海底トンネルですよ。本四連絡橋の4兆円の負債だけでは不足だと見えますね。天下り先企業にさえ金が回れば、後は野となれ山となれ、でしょうか。

 当の四国は失望しているかと思いきや、愛媛新聞の社説では上のように冷静に対応しているのには救われます。地元に実益をもたらさない夢物語に付き合いきれないのは当然で、何が何でも「オラが道路」「オラが新幹線」を要求してきた地方の感覚も変わってきたものだと思います。
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ウェブ魚拓

2008年04月24日 | たまには意見表明
 大手新聞のサイトにリンクしてもすぐに記事が非公開になりリンクが切れる、と文句を言ったばかりですが、「上に政策あれば下に対策あり」ということで、ネット上で該当の記事を保存できる「ウェブ魚拓」と言われる機能があります。

 例えば、愛知県に選挙区を持つ国会議員などが、後援会員などを五木ひろしショーに格安で招待した朝日新聞の記事はここ。この大村議員は改革派で売ってるはずですけど、やってることは自民党開闢(かいびゃく)以来のドブ板、露骨な利益誘導型選挙運動ですね。「ムネオハウス」で有名になった鈴木宗男からも1110万円を貰ったと報道されています。そんなややこしい金も観劇などに使われたんでしょうか。

 ウェブ魚拓は便利です。1年前の読売新聞の医学会総会の記事とか、例の奈良県大淀病院事件の速報とか、新聞社のサイトでは見られなくなった記事を検索できます。

 この大淀病院の事件は遺族の言い分をそのまま検証もせずに記事にしてしまったもので、当初の報道に合理的反論が加えられるに従って、多くの新聞やテレビが論調を変化させたことは明白です。このようなことがあるから、報道には速報であっても検証が不可欠ですし、一度報道された記事はいつでも見られるようにしておくべきです。ウェブ魚拓も悪くないですが、そろそろ日本の新聞も報道の責任としてアーカイブを公開したらどうでしょうか。
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ガソリンの急な再値上げは危険!

2008年04月02日 | たまには意見表明
 ついにガソリンが安くなりましたね。通勤時にバスから近所のガソリンスタンドを見てみたらレギュラー127円。暫定税率分の25円とはいかないまでも、安さを実感する値段になっています。4月末に与党が改正法案を再可決する方針が伝えられていますので、1月ばかりで再値上げの可能性はありますが、期間限定としても利用者には嬉しいディスカウントです。

 さて、庶民には喜ばしいガソリン値下げで困ることはあるでしょうか。まず、消防庁からガソリン買い置きをしないようにという注意が出ています。ガソリンは揮発性が非常に高く、家庭で扱われている灯油と同じ感覚で貯蔵すると引火、爆発の可能性があり極めて危険です。原付バイク用のガソリンを買い溜めして小分けして使っていた新聞販売店が炎上し、7人が焼死したという痛ましい事故はまだ記憶に新しいです。それでも短期間で急な再値上げがあると、危険とわかっていてもポリ容器などに買い溜める人が出てくるでしょう。

 ガソリンスタンドも急な価格変動に対応を苦慮しているようです。ガソリンスタンドで販売されているガソリンは元売からの出荷時点で課税されているので、4月1日の朝から暫定税率なしのガソリンが販売できるわけではなく、高い税金の掛かった在庫をさばいてから安いガソリンを仕入れることができます。ただし現場の混乱を避けるため、4月1日から値下げするスタンドが多く、在庫分は赤字で販売せざるを得ないようです。ただでさえ経営が苦しく統廃合が進んでいるガソリンスタンドなので、何らかの救済が必要と言われています。

 この2点に対しては、暫定税率の延長再可決による再値上げを見送れば何も問題ありません。「明日から25円(実際には暫定税率にも消費税が掛かるのでもっと高い)値上げだ!」となれば安全性を無視しても買い溜めに走るのは人情で、実際に買い溜めの方法がないか質問する人までいます。この質問の場合は穏当な回答がついているので安心ですが、質問も調査もせずにいきなり灯油容器を買いに行く人もいるだろうと心配されます。

 一度下がった税率をすぐに戻すことは混乱を生み、特にガソリンについては火災が頻発する危険もあります。この点を見ても暫定税率の再延長は慎重に検討されるべきです。

 あと、地方自治体の財源が不足して道路工事が滞っていると報道されていますね。豪雪地帯では除雪作業にこの財源が充てられていたようで、「除雪できなくなったらどうしてくれる」調のコメントが掲載されています。確かに問題ですね。

 でも、こんな状況になった原因を作ったのは誰なんでしょう?民主党が強行に暫定税率廃止を貫いたのは、多数の国民の支持があったからのことです。国民が地方財政の窮乏を防ぐために暫定税率の維持に理解を示したのなら、民主党がここまで強気に出られたはずはないのです。十分に利用されている道路の補修や除雪に税金が使われることに国民が反対するでしょうか?「地方の生活維持」を隠れ蓑に国土交通省とそのファミリー企業が自儘(じまま)な浪費を続けてきたから国民は反発したのです。マッサージチェアやカラオケセットは論外(倫理的には大いに問題だが金額としてはたいしたことない)としても、「地元の要望」だけで経済効果を無視した道路建設が続けられてきたことは誰でも実感できます。

 渋滞のない北海道の国道沿いに高速道路を建設することに何の意味がありますか?地元議員の利益誘導により過剰な高規格道路が建設されることに合理性がありますか?

 そりゃ、1日に数台しかクルマが通らない道路でも、その数台の利用者にとっては必要でしょう。それなら、極楽家と実家を結ぶ高速道路を1000億円で造ってくれと言ったら、造ってくれるんですか?どんなに経済効果のない道路でも、「地元の生命線」とか「地域住民の悲願」とか、理屈と膏薬(こうやく)はどこにでもつくと言いますから。でもそれが通るなら、無限に道路支出が必要になり財政はすぐ破綻します。「多くの人から徴収した税金」なのですから、「誰かにとって必要な道路」ではなく、「多くの人に必要な道路」以外は建設するべきではありません。この度は暫定税率という潤沢な財源がなくなることで、道路建設に歯止めが掛かることは、本当に必要な道路だけを選別するための苦い薬として必要なイベントだとすら思われます。

 「勉強するからパソコン買って。パソコンがないと学校のパソコン学習ができないよぉ!」と言って買ってもらったが最後、勉強せずにゲームとメールばかりしている子がいるとします。その上、オークションや怪しいサイトで借金をこしらえていたら、親が激怒するのは当然でしょう。その時になって「パソコンがなくなると課題ができないけどいいの?」とか言い訳されても聞けるはずがないです。国土交通省の言い分はこのだらしないガキと変わりません。

 庶民はガソリンの買い溜めを考えるよりも、政治を動かしましょう。国土交通省の「ガキの言い訳」に騙されず、暫定税率の廃止を訴えましょう。もし本当に必要な道路整備や除雪があるのなら、一般財源から正規の手続きで支出すればいいのです。そのためにガソリン税率をもう少し(本則で)上げようというのなら、不公平にならない範囲で協力します。一般会計が赤字なので、何が何でもクルマから税金を、というのは税負担が偏りすぎて好ましくありませんから。
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