いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

ダビング10など欲しくないが

2008年05月30日 | たまには意見表明
 地上デジタルにおける新しいコピー制限方式(DRM)、「ダビング10」の実施が暗礁に乗り上げたそうで、コピーワンスからわずかばかりの利用緩和さえ難色を示してきた著作権者の皆様にとってはご同慶の至りであります。ダビング10を潰して、それを「要求を全部呑まない機器メーカーのせい」と声高に叫んでおけば、本気にする愚民も少なくないでしょう。この世は所詮、声の大きい者の勝ちなのですから。

 私は消費者として、編集とメディア継承に大きな制約のあるダビング10なんか有難くも何ともありませんので、ダビング10が永久に棚上げになったところで構いません。しかし、権利者の主張にある明らかな事実誤認は訂正しておかないといけませんね。こんな不自由なDRMの掛かった状態で必要となる「補償金」とは何を補償するのでしょう?

 NTTドコモの設立した「モバイル社会研究所」というのがありまして、一線の学者との共同研究でモバイルビジネスに関する社会研究の結果を発表しています。その中で慶應義塾大学経済学部の田中辰雄助教授が、PtoPによる音楽ダウンロードの増加がCD販売に与える影響を調べています。

 それによれば、「現状の音楽ダウンロードによって全体としてはCD販売がわずかながら増加している」ことが示され、また詳しく見ると「著作権者の利益を損なうダウンロードは全体のせいぜい4割であり、ダウンロードすべてを被害額と算定するのは誤りである」というデータが出ます。画像については実証研究中だと推察しますが、恐らく同じような結果が出ると思います。

 著作権者の側はこれに対抗できる実証結果を持っておらず、ダウンロードはすべて損害であり補償されるべきだ、という前提で補償金を要求しているわけです。補償すべき被害額に根拠が乏しく、単なる「カネよこせ運動」と変わらないじゃありませんか。こんな被害感情とどんぶり勘定で出された要求を消費者や機器メーカーが呑むいわれはありません。

 実際のところ、機器メーカーの団体であるJEITAのアンケートでは、8割近い消費者が「地上デジタルの補償金は不要」と回答しているのです。しかも大多数の人が、「録画し損なってもわざわざ金を払って買う気はない」と回答しています。「地上デジタルのDRMを緩和すると、違法コピーがネット上で取引されて大きな損害が出る」という著作権者の今までの主張は根拠が薄い(と多くの消費者は感じている)ことになります。つまり権利者側の主張は理不尽でしかありません。補償して欲しいんじゃなくて、誰のカネでもいいから欲しい、というのが本音でしょう。もとより根拠のない要求ですから留まるところを知りません。

 ここで譲歩すれば、いずれは(今回は見送りとなったが)パソコンと周辺機器への課金やインターネット回線への課金が浮上することは明らかであり、著作権ビジネスを太らせることにより巨大な「著作権トロル」を生み出してしまうことになります。こうなると輸出産業である電器メーカーのみならず、一般消費者や利権を持たない一般のクリエイター、コンテンツ企業、ネット企業も少なくない打撃を受けることになり、とてつもない経済的、文化的損失が発生するでしょう。機器メーカーは消費者の代弁者として、DRMの実質的な緩和を勝ち取るまで譲るべきではありません。
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