いーなごや極楽日記

極楽(名古屋市名東区)に住みながら、当分悟りの開けそうにない一家の毎日を綴ります。
専門である病理学の啓蒙活動も。

B-CAS見直しにおける阿吽(あうん)の呼吸

2008年07月09日 | たまには意見表明
 日本市場から海外メーカーの受信機器を締め出すための謎の審査会社、ほとんどすべての録画機ユーザーの怨嗟の的であるB-CAS社会社法違反が発覚しました。

 GIGAZINEが取材しているように、NHKの近くに形だけのオフィスを構えるB-CAS社は、とても4000万枚以上のB-CASカードを審査して発行するだけの実体がなく、総務省(の中の旧郵政省でしょう)のお墨付きの下で、業界団体であるARIBの会員にだけ地上デジタル受信機の製造販売を(形の上では)認可してきたペーパーカンパニーで、普及価格帯の製品を得意とする韓国や台湾メーカーに対する不当な非関税障壁として市場を歪めてきたメーカー談合のシンボルです。出資者は受信機メーカー各社と放送局であり、社長がNHK出身者であることからもわかるように、とりわけNHKの影響が強く見られます。NHKはB-CASシステムを料金の徴収に使いたいのでしょうね。

 そんなことは一般視聴者の私が書くより、元NHKディレクターの池田信夫さんのブログが最も的確な説明をしてくれています。私が気になったのは、「なぜこのタイミングで不祥事が露見したか」ということです。B-CASによる(世界でも唯一の!)一般放送の暗号化が不便と高コストを招き、地上デジタル普及の最大の障害になっていることは隠しようがなくなったため、総務省の情報通信審議会でも流れはB-CAS廃止に動き出したようです。そもそもB-CAS社は政府の機関ではないため、政府の審議会で廃止を討論するなどおかしなことなのですが、民間企業であるB-CAS社が総務省(とNHK)の意向に沿って業界を保護してきたのは明らかです。

 しかしこんな利権体質のためにデジタル放送の録画はアナログ放送に比べて不便になり、デジタル対応受信機もコストダウンが進まない中で視聴者の金銭負担が強要されるため、かなりの数の視聴者が離反してしまいました。具体的には、多くの世帯がデジタル対応機器の導入を見送っており、2011年7月に間に合わないだろうということが統計からうかがわれます。テレビの普及台数は全国で1億2000万台とか言われていますので、地上デジタルの台数が3500万台を越えた、というのは決して順調とは言えないわけです。年間のテレビ販売台数は800万台から900万台。この調子で3年後にアナログ放送を打ち切ってしまえば、取り残された数千万台のテレビが単なるゴミになるのですから。

 事がここに至っては、法律で決められた期日を遵守してアナログ放送を終了したければ、(多少の利権を諦めるとしても)視聴者の非難が集まっているB-CASを廃止せざるを得ず、最早B-CASは総務省のお荷物である、という省内での認識の変化があって、この会社法違反が「発覚」したのではないでしょうか。不祥事を理由に会社を解散すれば、B-CAS社に関わる総務省やNHKなどの責任が表ざたになりませんから、詰め腹を切らされる浦崎社長以外は傷つかずに済むんでしょう。

 元々、メディアの寡占が進んでいる日本では新聞と放送局が系列化しており、大新聞は系列放送局を憚(はばか)ってB-CASやコピーワンスの批判をほとんどしませんでした。今回は朝日新聞がわざわざB-CAS社の不祥事を大きく載せたあたり、そろそろ関係者の呼吸が合ってきたのかなとも思わせます。

 そのような阿吽の呼吸があるとすれば、後は、既にB-CAS対応のデジタル受信機を買ってしまった視聴者に対してどう説明するかですね。「技術の進歩でB-CASカードの内容を受信機に組み込むことができるようになった」などと言うのでしょうか?いずれにしてもこのような混乱を見せられれば、視聴者はデジタル受信環境への投資に一層慎重になることは明らかであり、(本当に地上デジタルの普及が必要なら)早急に有効な対策が取られるべきです。
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