日本市場でのホンダ アコードは9代目にしてハイブリッド専用車になりました。
アコードハイブリッドです。中型以上のセダン需要が縮小して、法人顧客を掴んでいるトヨタ以外はこのクラスで商売にならなかったはずで、先代アコードも昨年は合計2,000台しか売れていません
(東洋経済調べ)。
今回は同じく気息奄々だった上級車インスパイアを統合、と言うよりもアコードの方をインスパイアに統合する形で出してきたようです。このため、名前はアコードですが内容はインスパイアだと解釈した方がいいでしょう。インスパイアは元々人気車である北米仕様のアコードそのものです。ホンダは日本の道路状況を慮って、北米仕様より一回り小さなアコードをわざわざ仕立てていたのですが、とてもそれでは元が取れないと判断したのは当然です。
従って、今度のアコードは旧インスパイアの大きさを引き継いでいます。全長/全幅/全高が4915X1850X1465mmは旧インスパイアとほぼ同じ。8代目アコードに比べると200mmほど全長が伸びています。このクラスになるといずれにしても日本の市街地ではやや持て余す大きさであり、取り回しを気にする人は手を出さないと思います。ちなみにクラウンアスリートが4895X1800X1450mmで、アコードの方がやや大きくなりました。クラウンはFRですし、取り回しには非常に気を遣っているので、最小回転半径がアコードの5.7mに対して5.2mと大差を付けています。これは日本では無視できません。
アコードはコロナやカリーナあたりと競合していた時代から、カムリと同クラスだった8代目、そしてついにクラウンの大きさを越えた9代目まで成長してきたため、一般のユーザーには商品としての位置づけがわかりにくいと思います。アコードの名前はCVCCの名前を世界に轟かせた初代から認知されているはずですが、小型車のイメージが強いため、最近のアコードは値段を見ただけでどうしても割高に感じるのですね。今回は旧インスパイアクラスの新型ハイブリッド車として努力した値段ではありましょうが、本体が365万円から390万円。ホンダにしてみれば「クラウンハイブリッドより安い」と言いたいところですが、ユーザーから見れば「カムリが304万円から買えるのに」という印象です。ただしアコードハイブリッドは8インチのHDDナビが標準装備。
価格だけを見ると商品力としてやや疑問のあるアコードハイブリッドが発売前から話題になっていたのは、ホンダの新型ハイブリッドシステムにより、JC08モード30.0km/Lという記録的な低燃費を実現したから。これ、軽自動車のN-ONEよりいい数字ですからね。カムリの23.4km/Lやクラウンハイブリッドの23.2km/Lを圧倒しています。ただしカムリやクラウンハイブリッドでも十分に燃費はいいので、余程長距離を乗る人でない限り、毎月のガソリン代は5,000円も違わないはず。400万円近い上級セダンでこれが決定的な差別化にはならないと思いますが、技術的には賞賛すべきでしょう。
アコードハイブリッドはホンダとして初の2モーター式。エンジンのスペックを控えめにしてモーターの稼働率を上げるのはトヨタ方式と一緒。排気量はクラウンハイブリッド、カムリの2.5Lより更に小さく2.0Lしかありません。クラウンより大きなクルマに2L4気筒!アトキンソン(ミラー)サイクルで膨張比を大きく取り、燃焼エネルギーを少しでも有効に利用しようとしているのも同じ。圧縮比はクラウンハイブリッドと同じく13.0で、レギュラーでこれを凌駕しているのはマツダのSKYACTIV-Gのみ。
エンジン単体もかなり効率が良さそうですが、このエンジンは駆動系に直結することも、切り離して発電機として使うこともできます。電池容量は7Ahで、トヨタ勢の6.5Ahと大きくは変わりません。車体重量に対して電池容量が大きいほどエネルギーを貯蔵できるため、電気モーターをより多く使う走行パターンになります。クラウンやカムリよりずっと小さいプリウスも電池容量6.5Ahなので、プリウスの燃費が良くなるのは当然でしょう。
アコードハイブリッドのサイトからわかるクラウンハイブリッド、カムリの違いは大きなものではなく、エンジンの排気量と電池がリチウムイオンであることぐらいです。電気モーターの効率も大きくは違わないはず。そうすると、ハードウェアよりはソフトウェアの改良でトヨタ勢を引き離したと解釈できそうです。後発の強みで、JC08モードに特化してシステムを作りこんできたとしたら、この数字も納得できそうです。
もしアコードハイブリッドの驚異的な燃費の原因がそれであれば、実燃費ではそれほどトヨタ勢との差が付かないはずであり、メディアの長距離市場や一般ユーザーからの報告で明らかになると思います。できればカタログ値に近い圧倒的な数字を出して、ユーザーを驚かせて欲しいものです。
ハイブリッドシステム以外のアコードの特徴としては、新開発のボディとフロントサスでしょうか。元々北米版のアコードはベストセラーであり、開発には十分に予算が取られています。足回りも定評があるものだったので、これは少なくともカムリよりはドライバーに歓迎されるでしょう。ただしこれだけ大きいと、気軽に運転を楽しむという感じはしません。ホンダのラインアップではシビックの消滅により、フィットとアコードの間が開きすぎていますので、何か新車種が欲しいところです。シビックの復活が難しいのなら、死に体になったインサイトを上級移行してもいいのでは。