6月19日(日)
すごいですね、世界のイチロー。とうとう、ピートローズが持っていた歴代最高記録のヒット数の通算4256本を超えました。
一打者が公式戦で4000本を超えるヒットを放つというのがどれだけ超人的なことかということは、野球ファンならずとも察しがつくことなので、わざわざブログの話題にするまでもないことかもしれませんが、実は、彼が7年前に張本勲氏の持つ日本記録歴代一位の3085本を上回った時に、ピートローズの記録まで到達するのは至難の技と思い、そのことをこのブログに記したことがあったのです。
2009年4月22日付け「数字に強く」の記事でした。
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「次の目標は世界新記録、ピートローズの4256本ですね」
という質問に、彼は次のように答えました。
「数学の苦手な人はすぐそういうことを考えますが、私は数学が嫌いではなく、それがどんなに遠くにあるのかということがわかりますので、今は考えられません」
張本氏は、テレビで「4000本はまず間違いない」と言っていましたし、私も、イチローがケガや故障に見舞われなければ世界記録に届くのではないかと、ひそかに期待している一人ですが、数字の現実を考えると、彼の言うとおり、軽々に口に出せる状況ではないのです。あと1170本。生涯に1000本打てば名選手の世界で、今からそれ以上のヒットを打たなければならないのですから。
でもメジャーで年間200本安打を8年連続で打っている彼のことです(このこと自体がすごい記録で、9年連続で世界新記録)。だから大丈夫だろうと思いがちですが、今年からさらに5年連続で200本安打を記録しても、まだ届かないのです。順調に行ってもあと6年かかります。そして年齢の問題。1973年生まれの彼は今年36才になります。6年後は42才になる年です。
日本の球界で40才を越えてもヒットを打ち続けている選手と言えば、筆頭は今年41才になる金本で、あとは楽天の山崎くらいでしょうか。この二人と同い年の広島の緒方や、1つ下で今年40才になる中日の立浪は代打出場がほとんどで、二人とも昨年のヒット数は15本でした。
2000本安打を達成している現役選手に広島の前田と石井琢朗がいますが、二人ともまだ30才台にして常時出場ができません。
競争の激しい世界で、はたしてイチローが何才までレギュラーの座を守れるのか。冷静に数字を見ると、やはり記録達成は至難の業と言わざるを得ません。
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という記述でした。
ちなみに、日本球界で張本氏の記録に次ぐのは、野村克也氏の2901本、王貞治氏の2786本で3000本に届きません。4000本に向かって行くというこの時点で、すでに前人未到の道に入ったといっても過言ではなかったのです。
しかし、超人イチローにとって、そんな憶測は全く通用しませんでした。
2009年からの3年間で620本超のヒット数を加え、2012年はシーズン中にヤンキースへ移籍する中で178本の上積みで通算4000本まで100本ちょっとに。翌13年は136本と減少したものの、シーズン終盤に4000本を超えました。
40歳直前にしてピートローズの記録まで250本となれば、あとはワンシーズン125本で二年間ですから、よほどのことがないかぎり記録更新は間違いのない状況です。
ところが、2014年は出番が少なくなり打席数が半減し102本。フロリダマーリンズに移籍した15年も常時出場はできず91本と二年間で200本に届かず、ピートローズの記録まで43本、MLB通算3000本まで65本の段階で今シーズンに入りました。
そして、16日に今季43本目と44本目を放ち記録更新、現在もう1本加えて通算4258安打になっています。
海の向こうでは、所詮は日米通算記録じゃないかという指摘もありますが、日本の公式戦はMLBより年間試合数が2~30試合少ない中、二十歳の若さで年間210本の記録を打ち立て、その後もコンスタントに活躍。7年後にアメリカへ渡ってすぐに242本のヒットを打ち、そのまま10年連続200本という前人未到の記録を残した見事な実績。まったく日本での本数がどうのこうのという話ではありません。
畏れ入ります。まさに超人、世界一の安打製造機と言っていいでしょう。
イチロー本人は「50歳までやりたい」と言っているそうですが、いったい、彼はあと何年打席に入って何本まで記録を伸ばすのでしょうか。
そこで調べました。日本球界でヒットを放った最高齢は、打者としては山崎武司氏の44歳、ということは、身体の管理という面でも完璧なイチローですから、さらに数年の上積みは十分に考えられます。
ところで、最高齢記録といえば、投手部門では、50歳まで現役を続けた山本昌投手が独占していますが、実は、その彼が48歳の時にヒットを打っていて、打者の記録まで塗りかえているのでした。
イチローと同じトレーニング方式を取り入れているという山本昌投手が50歳まで現役を続けたということは、イチローも50歳くらいまで現役を続けるのかもしれません。仮に、今シーズンを含めてあと8シーズンだとすると、ワンシーズン160~70本のヒットを重ねれば、メジャーでの本数だけでピートローズの記録に届く計算になります。
そんなことを想像していいのかどうか、とても常識では考えられない領域の話になってしまいますが、山本昌投手にしてもしかり、ある意味非常識な世界の中で生まれるのがレジェンドだとすると、地球上にベースボールがあるかぎり永久に破られないようなヒット数を記録してしまうかもしれません。
もしそんなことになったら、もう神の領域ですから、やはりここは難しいということにしておきましょう。
山本昌投手が50歳までマウンドに上がったといっても、最後の七年間を見ると、年々数字が下がって行くのは当然ですが、トータルの登板数は48試合で15勝10敗という、立派な数字とはいえ、全盛期とは比較になりません。
スポーツマンでない一般人のことを取り上げても比較になりませんが、私は43歳くらいから細かい字が読みづらくなり、その3年後には老眼鏡を使い始めました。衰えるのは骨や筋力だけではありません。バッティングに不可欠な動体視力なんかも、優れていればいるほどちょっとした衰えが気になるかもしれません。
すべての面で自己管理に厳しい彼のこと、そんなことは心配無用といっても、確実に年齢を重ねて行くのは事実。ヒットの出ない打席がちょっと続けば、どこのチームだってベテランより若い選手を使うのも当たり前なのです。
若手になんか負けずにと言うのは簡単ですが、あとは、記録ということではなくて、1打席1打席を大切にして、一日でも長く、一本でも多くのヒットを積み重ねてほしいと願うばかりです。
どこまで頑張れるのか想像もつきませんが、とにかく、もう十分な成績であることは間違いなく、仮に引退しても、日米とかには関係なく、「打撃の神様」として世界の野球界の指導者になる道が地平線の果てまで続いているのは間違いありません。偉人はこの世を去るまで休む暇はないのかもしれません。
そうそう、立往生のような形で都知事を辞めた方がいらっしゃいましたが、凡人は引退後ゆっくりと過ごすしかないようですね。
すごいですね、世界のイチロー。とうとう、ピートローズが持っていた歴代最高記録のヒット数の通算4256本を超えました。
一打者が公式戦で4000本を超えるヒットを放つというのがどれだけ超人的なことかということは、野球ファンならずとも察しがつくことなので、わざわざブログの話題にするまでもないことかもしれませんが、実は、彼が7年前に張本勲氏の持つ日本記録歴代一位の3085本を上回った時に、ピートローズの記録まで到達するのは至難の技と思い、そのことをこのブログに記したことがあったのです。
2009年4月22日付け「数字に強く」の記事でした。
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「次の目標は世界新記録、ピートローズの4256本ですね」
という質問に、彼は次のように答えました。
「数学の苦手な人はすぐそういうことを考えますが、私は数学が嫌いではなく、それがどんなに遠くにあるのかということがわかりますので、今は考えられません」
張本氏は、テレビで「4000本はまず間違いない」と言っていましたし、私も、イチローがケガや故障に見舞われなければ世界記録に届くのではないかと、ひそかに期待している一人ですが、数字の現実を考えると、彼の言うとおり、軽々に口に出せる状況ではないのです。あと1170本。生涯に1000本打てば名選手の世界で、今からそれ以上のヒットを打たなければならないのですから。
でもメジャーで年間200本安打を8年連続で打っている彼のことです(このこと自体がすごい記録で、9年連続で世界新記録)。だから大丈夫だろうと思いがちですが、今年からさらに5年連続で200本安打を記録しても、まだ届かないのです。順調に行ってもあと6年かかります。そして年齢の問題。1973年生まれの彼は今年36才になります。6年後は42才になる年です。
日本の球界で40才を越えてもヒットを打ち続けている選手と言えば、筆頭は今年41才になる金本で、あとは楽天の山崎くらいでしょうか。この二人と同い年の広島の緒方や、1つ下で今年40才になる中日の立浪は代打出場がほとんどで、二人とも昨年のヒット数は15本でした。
2000本安打を達成している現役選手に広島の前田と石井琢朗がいますが、二人ともまだ30才台にして常時出場ができません。
競争の激しい世界で、はたしてイチローが何才までレギュラーの座を守れるのか。冷静に数字を見ると、やはり記録達成は至難の業と言わざるを得ません。
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という記述でした。
ちなみに、日本球界で張本氏の記録に次ぐのは、野村克也氏の2901本、王貞治氏の2786本で3000本に届きません。4000本に向かって行くというこの時点で、すでに前人未到の道に入ったといっても過言ではなかったのです。
しかし、超人イチローにとって、そんな憶測は全く通用しませんでした。
2009年からの3年間で620本超のヒット数を加え、2012年はシーズン中にヤンキースへ移籍する中で178本の上積みで通算4000本まで100本ちょっとに。翌13年は136本と減少したものの、シーズン終盤に4000本を超えました。
40歳直前にしてピートローズの記録まで250本となれば、あとはワンシーズン125本で二年間ですから、よほどのことがないかぎり記録更新は間違いのない状況です。
ところが、2014年は出番が少なくなり打席数が半減し102本。フロリダマーリンズに移籍した15年も常時出場はできず91本と二年間で200本に届かず、ピートローズの記録まで43本、MLB通算3000本まで65本の段階で今シーズンに入りました。
そして、16日に今季43本目と44本目を放ち記録更新、現在もう1本加えて通算4258安打になっています。
海の向こうでは、所詮は日米通算記録じゃないかという指摘もありますが、日本の公式戦はMLBより年間試合数が2~30試合少ない中、二十歳の若さで年間210本の記録を打ち立て、その後もコンスタントに活躍。7年後にアメリカへ渡ってすぐに242本のヒットを打ち、そのまま10年連続200本という前人未到の記録を残した見事な実績。まったく日本での本数がどうのこうのという話ではありません。
畏れ入ります。まさに超人、世界一の安打製造機と言っていいでしょう。
イチロー本人は「50歳までやりたい」と言っているそうですが、いったい、彼はあと何年打席に入って何本まで記録を伸ばすのでしょうか。
そこで調べました。日本球界でヒットを放った最高齢は、打者としては山崎武司氏の44歳、ということは、身体の管理という面でも完璧なイチローですから、さらに数年の上積みは十分に考えられます。
ところで、最高齢記録といえば、投手部門では、50歳まで現役を続けた山本昌投手が独占していますが、実は、その彼が48歳の時にヒットを打っていて、打者の記録まで塗りかえているのでした。
イチローと同じトレーニング方式を取り入れているという山本昌投手が50歳まで現役を続けたということは、イチローも50歳くらいまで現役を続けるのかもしれません。仮に、今シーズンを含めてあと8シーズンだとすると、ワンシーズン160~70本のヒットを重ねれば、メジャーでの本数だけでピートローズの記録に届く計算になります。
そんなことを想像していいのかどうか、とても常識では考えられない領域の話になってしまいますが、山本昌投手にしてもしかり、ある意味非常識な世界の中で生まれるのがレジェンドだとすると、地球上にベースボールがあるかぎり永久に破られないようなヒット数を記録してしまうかもしれません。
もしそんなことになったら、もう神の領域ですから、やはりここは難しいということにしておきましょう。
山本昌投手が50歳までマウンドに上がったといっても、最後の七年間を見ると、年々数字が下がって行くのは当然ですが、トータルの登板数は48試合で15勝10敗という、立派な数字とはいえ、全盛期とは比較になりません。
スポーツマンでない一般人のことを取り上げても比較になりませんが、私は43歳くらいから細かい字が読みづらくなり、その3年後には老眼鏡を使い始めました。衰えるのは骨や筋力だけではありません。バッティングに不可欠な動体視力なんかも、優れていればいるほどちょっとした衰えが気になるかもしれません。
すべての面で自己管理に厳しい彼のこと、そんなことは心配無用といっても、確実に年齢を重ねて行くのは事実。ヒットの出ない打席がちょっと続けば、どこのチームだってベテランより若い選手を使うのも当たり前なのです。
若手になんか負けずにと言うのは簡単ですが、あとは、記録ということではなくて、1打席1打席を大切にして、一日でも長く、一本でも多くのヒットを積み重ねてほしいと願うばかりです。
どこまで頑張れるのか想像もつきませんが、とにかく、もう十分な成績であることは間違いなく、仮に引退しても、日米とかには関係なく、「打撃の神様」として世界の野球界の指導者になる道が地平線の果てまで続いているのは間違いありません。偉人はこの世を去るまで休む暇はないのかもしれません。
そうそう、立往生のような形で都知事を辞めた方がいらっしゃいましたが、凡人は引退後ゆっくりと過ごすしかないようですね。