毎週の出来事をお伝えします
電話室便り
エンパイア オブ ライト / EMPIRE OF LIGHT
シアターキノにて。
オープニング5分間ほどの映像にこころを持っていかれます。
息をのむ素晴らしさ!
溜息がもれる映像美!
1981年、イギリスの海辺の静かな観光地・マーゲイトという街の、夢のような
豪華な映画館、エンパイア劇場。
まだ薄暗い冬の朝、地味なオーバーコートの中年女性が、劇場の中央ドアの鍵を
開けて中に入っていく。そして、要所要所にて電灯のスイッチを入れていく。
眠っていた建物全体が、明かりと共に目覚めていくかのように、そのゴージャスで
壮麗な様式美が立ち上がるのです。
アールデコ建築の、それは奇跡のようなオリジナルなのです。
フロアに敷かれたレッドカーペット、技巧を凝らした彫刻の装飾品、ランプシェード、
階段の手摺りの真鍮の装飾、上映館内の高い高い天井、緩やかにカーブして弧を描く
ように整然と並んでいるブルーのベルベット張りのシート、赤の緞帳、ゆったりと
両腕を広げているかのような大スクリーン・・・・・。
さらに上映中の作品は、従業員が劇場の外壁に、そのタイトルの一つ一つの英文字版
を組んでセットして告知する!
1981年という時代設定からすると、エッ?!と感じてしまいます。
あり得ないくらい典雅で古風、1981年には私も映画館に通っていたのですが、
日本の映画館はたぶんどこもポスターはバンバン貼って、手描きの大看板は激減
していって、自動販売機が乱立し始めていて、猥雑さとサブカルチャーと斜陽の
ムードが入り交じった施設になっていたと思います。
いくら伝統を重んじる英国とはいえ、ちょっと時代が・・・と思いますが、
そここそに、サム・メンデスが込めた思いの丈が表現されているとも思うのです。
『 エンパイア オブ ライト 』 は、主人公ヒラリーの人生が、闇から光の方へと
変化していくプロセスを、そして諦めかけていた夢に再挑戦する黒人青年スティ
ーブンの純粋と困難をとても繊細に描いていますが、ヒラリーはエンパイア劇場
のマネージャー ( 劇場の鍵を開け、明かりを点けていった彼女 ) で、スティー
ブンはエンパイア劇場の新人アルバイター、二人の人生が交差し、揺さぶられ、
生きる希望を取り戻していく物語の、そのための舞台が土壌が、エンパイアー劇場
であり、養分の源が映画であったこと。
辛い時悲しい時、映画館で映画を観ている間だけは、全てを忘れて空想力を思い
っきり働かせて夢の中に逃げ込めるだろう?
そして笑って泣いて驚いて、観終わった時には、きっと軽くなっているだろう?
それが大事なことなんだ。困難なときこそ、仲間、音楽、そして映画館がいつも
そばにいてくれる・・・・・
コロナ渦のロックダウンで、映画館が次々と閉鎖され、映画を観ることも制作する
こともできなくなってしまった時期に、改めて映画への愛と尊敬を確認したサム・
メンデス監督が、栄華の絶頂時代の ” EMPIRE OF LIGHT ( 光の帝国=映画の別名 )"
から名付けられた映画劇場を舞台に、真心を込めています。
ヒラリー役オリヴィア・コールマン、スティーブン役マイケル・ウォード、ともに
素晴らしい演技。そして見事な映像。
映画ファンのための必見の一本だと思います。
明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。
観たい映画目白押し~~の春です。感想文がんばります、どうぞ読んでみて、
気になったなら観てみてください!
パンフレットやチラシを読み返しながら、コーヒーとともに、おいしいパンも
( 大きな劇場では、暗くなったらこっそりとパクつております・・へへへ )。
明日も、こんがりと焼けた丸いパンを山盛りにして、みなさまのご来店を
お待ちしております!!
グラハム粉の丸いプチパン
1個 150yen