ナイトメア・アリー / Nightmare Alley

 

 

シアターキノにて観ました。

目眩く一本、監督ギレルモ・デルトロの神聖なる悪夢世界!

この監督の前作 『 シェープ オブ ウォーター 』は、私はまごう事なき超傑作だと

思っておりますが、今作もやはり息を呑む素晴らしさでありました。

脳内の虚構世界と、現実のこの世界、どちらが真実かは渾然としているし、もしか

したら虚構の世界の方がより真実であるかもしれないという認識で生きているよう

なタイプの人だけが創り出し醸すことのできる特殊な幸福感に充ち満ちて・・・。

 

1930~40年代までは、この映画の前半の舞台であるカーニバル一座という異界

が、庶民生活の現実エリアと近接しながら共存を保っていられた時代でしょうか。

旅芸人たちの世界は、怪しく妖しく抗いがたい魅惑に満ちていて、

頭では嘘だと見破っているつもりが、知らず知らずに引き込まれて、思わず足を踏み

入れてしまう私たち遅鈍な見物人を冷笑し誘惑する、禁じられたもの達が跋扈して

いる領域。

棚にずらりと並ぶ奇形の胎児のホルマリン漬けの壜 ( その中でも出産時に母親を

噛み殺して生まれ出たとまことしやかに伝えられるエノクという巨大胎児は、主人

公とその運命を最後の最後まで見透す禍々しくも象徴的なアイコン )、

檻に繋がれ、鶏の首を咬み契るギーク ( 獣人 ) 、蜘蛛女、矮人、力自慢、

半裸で体に電流を流す女、ダイナミックなカラクリが仕掛けられた恐怖の館、

タロット占いと読心術、e.t.c. ・・・・

そして唐突に現れて立ち並ぶ、発電機と歯車と梃子の古ぼけた組み立て式テント

舞台は、映画美術における「 完璧 」 という賛辞をさらに越えている、何か、、、

何か、こう、つまり、、、魔法的なのです。

そうです、そこは、デルトロ監督の無双域、得意満面で手揉みしながら手掛けら

れ創られたのが伝わる哀愁と妄想の愛の王国なのです。

どぎつい色彩が経年劣化し色褪せて剥げかけいる木造施設の風合いひとつにも、

演し物の看板の手書き文字一つ一つにも、突然の嵐に大急ぎで男達が総出でテント

を畳む、その手慣れたやり方 ( このとても短いシーンは忘れがたし!  )にも、

小道具や衣装や、埃っぽく暗い全体の雰囲気にも、これでもかとばかりの愛情が

注がれている意匠の、文字通り息を呑む素晴らしさに呆気にとられてしまいます。

 

日の当たるこの世が当たり前の世界、という認識の私達には、そこは惨めで忌ま

わしく哀れむべき危険な世界であるわけですが、その危険な世界の住人たちは

平然とその中で、無遠慮な好奇心で覗き込もうとする私達を嗤っている。

日の当たる世界の私達の常識を。

善と悪、美と醜、優と劣の彼岸に立つかのようなギレルモ・デルトロの、濃密な

世界に、私は今も頭が痺れています。

 

 

明日金曜日は、パスキューアイランド・パン販売の日。

札幌の積雪ゼロ宣言からしばらく経ちました。

店の前の箱庭 ( このビルの大家さんのお庭 ) にもクリスマスローズが咲きました。

今週は、花瓶をお求めになるお客様が増えましたねー!

札幌の花の季節がスタート、お散歩がさらに楽しいシーズンスタート!

 

明日も、こんがりと焼けた丸いプチパンを山盛りにして、

みなさまのご来店をお待ちしております!!

 

グラハム粉の丸いプチパン

1個 150yen

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )