心ゆくままに



こういうお店は、きっとそうない、と思う。

扉を押して入った瞬間に、その日 ( もしくはその週、ここ数日 )の朝から体の中や

心や脳みそに充満していた、雑音・電磁波・ニュース・ネガティブでムーディーな気分な

んかが複雑にシャッフルされて刻まれていたリズムが、スッと消えてしまう。

その瞬時のフェードアウトの自然さに、そしてそれまでいかに自分の中がザワ付いていた

かに、気づいて驚くかもしれない。

静かなのだ。

先客達のおしゃべりがあっても、店内の隅々まで静けさと落ち着き、穏やかさに満ちてい

て、なんとも不思議。

無自覚にレヴェルを上げていた、ここに着くまでの自分の体内B.G.M.のボリュムが

一席選んで腰を下ろす頃にはもうすっかりと小さくかすかになって、 ” 自分ひとり ”

のこの状況に小さな幸せを感じずにはいられなくなる・・・・・。

欲しかったのは、こんなひとときだったんだ、と、頬杖をつきながら、足を組みながら、

置いてある本の中から一冊選んでページをめくりながら、丁寧な淹れ方であることが

わかる非日常コーヒーの香りを楽しみながら、ぼんやりと思ったりもする。


古いビルの一階にあるこのお店は、ビルの正面右の角を曲がった小路に大きめの立て看板

が目印で、扉を二回押して入る。

天井が高く、そしてほんのりと暗い。

要所要所の小さなランプの明かりが、なんと心地良いことかしら。

使い込まれた木のテーブルの、なんと落ち着くことかしら。

眺めるともなく店内を眺めながら、そういった事などを改めて確認し嬉しく思うのだ。


ここは、「 しみじみと  心ゆくままに  あれこれと  」 過ごす場所。

といっても、それを強要するごとき無言の威圧感は微塵もなく、ランチが終わって一休み

する為に爪楊枝くわえが似合いそうなサラリーマンのおじさまがいたりもする。

毎日通えるなら最高、週に一回でも、いいえ月二三回いや月一回っきり、数ヶ月に一度

ならなんとか・・・・と、その人ごとの環境が許す範囲で構わないのだけれど。

でもこんな店でひと時を過ごすこと、これを忘れて何ぞ人生。

喜ぶために生きているのだ。自分を寛がすことができずにどうする。

一人になりたい隙間時間があったなら、どうぞ行ってみてください。

街の真ん中にそっと存在する、” 隠れ家 ” という言い古された例え言葉通りのお店

ってこういう感じだと実感出来る、極限られた数しかなかろう上等店。

きちんとしていて、でもゆったりとしていて、( 受け入れの )間口が広い。

万葉の言葉 『 つばら つばら 』、

店主・まいさんからの静かなメッセージでしょうか。






『 つばら つばら 』札幌市中央区南1条西13丁目三誠ビル1階 ( 赤茶のビル 西向き仲通り )
営業時間 / 午後1時 から 午後11時
定休日 / 火曜日
Tel / 011-272-0023















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